遺伝子改変によって作られた食品のアレルギー誘発性

遺伝子改変によって作られた食品のアレルギー誘発性
Allergenicity of Foods Produced by Genetic Modification
Food Science and Nutrition Vol.36
1996
International Food Biotechnology Council and ILSI Allergy and Immunology Institute
エグゼクティブ・サマリー
序論
本レポートは、ILSIアレルギー・免疫学研究所(AII)が国際食品バイオテクノ
ロジー協議会(IFBC)と共同で作成したものである。AIIはアレルギーと免疫学の
分野、中でも食品アレルギーの診断・治療法と予防・制御方法について理解を深めるため
の研究や学術的プログラムを後援している科学団体である。IFBCは 1988 年の設立以
来、遺伝子組換え技術により生産された食品の安全性に関する科学的な課題について取り
組んでおり、1990 年には「バイオテクノロジーと食品:遺伝子組換え技術を用いて生産
された食品の安全性確保のために(Biotechnologies and Food:Assuring the Safety of
Foods Produced by Genetic Modification)」を出版している(RegulatoryToxicology and
Pharmacology, Vol.12,No.3, Part 2)。
現代のバイオテクノロジー、特に遺伝子組換えや遺伝子導入など最新の技術によって作
られる食品の安全性は、科学的な原則に則って評価されるべきであり、この 1990 年のI
FBC報告書はそうした原則に関する意見を代表するものである。遺伝子組換え食品の安
全性評価についてのこれまでの議論において同報告書は広く引用されてきたが、アレルギ
ーに関しては、それがバイオテクノロジーによって生産される食品の安全性評価に関係す
るにもかかわらず、問題が複雑かつ特殊すぎるという理由で議論されていない。本レポー
トにおいてAIIとIFBCは、食品アレルギー及び食品アレルゲンが遺伝子組換え技術
を用いた植物の新品種開発に関係していることを特に考慮し、この問題についての考察を
行うとともに、食用植物に導入されうる遺伝子産物の潜在的アレルゲン性の評価方法を提
案する。ただし、遺伝子改変された微生物・動物用飼料についての議論はここではされて
おらず、また、グルテン過敏性腸症(セリアック症)も特にとりあげられていない。
本レポートの作成に当たっては、関連分野の専門家、例えばアレルギー学、食品科学、
食品の安全性に関する政策やバイテク製品開発に携わる 80 名以上の方々に事前にコピー
を送り意見を求めた。これに対して約 35 の有益なコメントが寄せられ、指摘の多かった
点については内容を変更した。なお本レポートは、バイオテクノロジー及び食品業界関係
者、一般大衆、規制官公庁とあらゆる政府関係者を主要な読者として想定している。
このエグゼクティブ・サマリーでは、本レポートが扱う主な課題とAII・IFBCの
提案する方策について、また、遺伝子改変された食品と食品原料が受容される際の判断基
準について、以下にその要旨を述べる。
食物アレルギー
本レポートにおいてI型と定義するIgE仲介型の食品アレルギー反応に苦しむ人の数
が、成人人口の1−2%と推定される。どの食品がアレルゲンとして最も問題になるかは
その地域の食習慣によって異なるが、世界的に見れば、もっとも一般的なアレルギー食品
は、卵・牛乳・魚・甲殻類・ピーナッツ・大豆・小麦・ナッツ類であるというのが大方の
認識であろう。牛乳や卵などの食品に対するアレルギーは子供には高い頻度で認められる
が、成長に伴い寛解することが多い。アトピー症状を起こす人に見られるアレルギーのう
ちの90%以上はこれら一般的なアレルギー食品に引き起こされるものであるが、臨床報
告を調査した結果、そのほかにも 160 以上の食品もしくは食品に類する物質がアレルギー
の発症に関係しており、その中には、主要穀物、油料種子、野菜あるいはビールやチョコ
レートのような加工食品も含まれている。
多くの場合は、食物アレルギーは口唇部の痛みあるいは下痢など、不快という程度の症
状にとどまるが、ある特定の食物(例えばピーナッツ)に非常に感受性が高い人の場合、
気管支痙攣、窒息、吐き気、嘔吐、血圧の低下などの重篤なアナフィラキシー反応が起こ
り、その食物の摂取が生命の危険につながることもある。摂取されるアレルゲンがごく微
量であっても感受性が高い人が反応が起こすことを示す詳細な報告は多数あり、これらの
人々は総じてアレルギーを起こす食物を摂取しないよう細心の注意を払っている。それゆ
え、一般的な食物アレルゲンを含む加工食品の適切な表示は、アレルギー症状を持つ消費
者が食事をする上で重要である。
在来の食物と従来の遺伝子改変方法における食品アレルギー問題
殆どすべての食物アレルゲンは蛋白質であり、主要食品の原料となる事が多い穀物類に
は数万種類もの蛋白質が含まれる。その蛋白質組成は、植物体の部位により著しく異なり、
気候や病虫害など環境的な因子によっても大きな影響を受ける可能性がある。また、多く
の育種家は作物の品種改良のために野生近縁種との交配を日常的に行っており、それによ
っても蛋白質の種類が更に多様化している可能性がある。
我々の日常の食生活で摂取される蛋白質の多様さと量を考えれば、アレルゲン蛋白質は
そのうちのごくわずかでしかない。従来の作物改良の手法によって我々が摂取する食品の
蛋白質組成が変わることはまれであり、それによって主要な食品の潜在的アレルゲン性が
影響を受ける可能性は、もし仮にあったとしても、ごくわずかである。一方、食物に対す
る嗜好の変化が新たなアレルギーをもたらす原因となる可能性は非常に高い。例えば、ピ
ーナッツに対するアレルギーは欧米では非常に頻繁に起こっているが日本ではそうではな
いし、逆に米に対するアレルギーは日本で多いが欧米では希であり、この違いはその食品
の摂取量の違いを反映している。また、キウィフルーツのアレルギーのように、最近にな
って導入された新たな食品が新規の食物アレルギーを起こす要因となることもわかってき
た。これらのことから、日常供給される食品中に潜在的にアレルゲン性をもつものは多く
ないが、時として新規のアレルギー食品が外部から市場に導入される事がわかる。
最新バイオテクノロジーの応用
バイオテクノロジーの最新技術は、食糧供給事情を改善する大きな可能性を秘めている。
収量・利用の可能性・栄養の質が大きく改善される可能性があり、そうした作物の例とし
て、害虫に対し抵抗性をもつトウモロコシ、より栄養学的に優れた油が搾油できるダイズ
などがある。遺伝子組換え技術による特定遺伝子の分離や組み込みは、従来の品種改良で
起こる遺伝子のランダムな組換えに比べて遥かに局所的かつ正確である。しかし、ある作
物から別の作物に遺伝子を移動させたり、あるいはこれまで食物として利用されていない
生物から遺伝子を作物に導入すると、ある遺伝子が主要な作物に導入された、食物間でア
レルゲンも同時に移動するのではないか、また、導入される蛋白質があまり食経験のない
ものであれば、この導入遺伝子による蛋白質が新たなアレルゲン性を持っている可能性は
ないのかとの恐れを抱かせることにもなる。アレルゲン蛋白質の同定およびそれらが遺伝
子改変により食物に導入されるリスクを最小限にする一助として、本レポートでは安全性
評価の手法を提案する。
最新バイオテクノロジーの応用により生産される食品の安全性評価
遺伝子組換えで開発された新しい植物品種を用いた食品に関し、その潜在的アレルゲン
性を合理的に評価する手法として、本レポートでは段階的に評価を行う慎重な方法を提案
する。ここで提案するのは判断樹を用いた方法で、導入された遺伝子の起源、既知アレル
ゲン遺伝子とのアミノ酸配列上の相同性、in vitro および in vivo での免疫学的分析結
果について評価を行うほか、導入された遺伝子産物の物理化学的特性についても検討する。
これらの総合的評価によって、新品種を用いた食品の安全性が従来から利用されているも
のと同等であることが公正に確認され、万一アレルゲンが導入された場合には適正な表示
を行うことでアレルギーをもつ消費者がそれを摂取するのを避けられることをここでは強
調しておきたい。
判断樹ではまず導入される遺伝子の起源について注目し、それが
ギー食品か
材か
1)一般的なアレル
2)一般的ではないアレルギー食品、もしくは食品以外の既知アレルゲン素
3)アレルギー性に関する報告例がない素材か、を分類する。
アレルゲン性評価の第一段階として、全ての導入遺伝子についてそのアミノ酸配列に既
知アレルゲンとの著しい免疫学的相同性がないかどうかを検討するため、あらゆる既知ア
レルゲンが登録されているデータベースを用いたスクリーニングが行われる。T細胞結合
エピトープの長さに関する知見に基づき、本レポートではそれらの配列上に、隣接する最
低 8 アミノ酸の一致がみられる場合アレルギー発現の可能性があるとみなし、その遺伝子
産物についての更に詳しい試験を求める。本レポートではこの方法の限界を指摘しながら
も、アレルゲン性の予見にあたって十分効果的なスクリーニング方法であると結論してい
る。またこの分析法の普及の為、本レポートにはアレルゲンになりうると報告されている
198 の食品・非食品蛋白質のアミノ酸配列リストが併せて掲載されている。これらは公的
に利用可能なデータベースから引用されており、新たなアレルゲンが同定されれば、その
都度更新されるものと予想される。
一般的なアレルギー食品
ほとんどのアレルギー食品には主要アレルゲンと副次的アレルゲンの両方が存在し、食
品アレルギーのほとんどは、一般的なアレルギー食品に含まれる一種もしくはそれ以上の
主要アレルゲンに対して感受性が高いために反応が起きている。ここで主要アレルゲンと
は、感受性が高い人の 50%以上が反応するものを指し、副次的アレルゲンはそれ以下の
ものを指す。一般的なアレルギー食品に由来する遺伝子産物がその食品に感受性を示す人
にとって主要アレルゲンかどうかを統計的に有意な方法で判断するには、臨床試験用試料
(血清など)及び被験者が必要である。本レポートでは、一般的なアレルギー食品に由来す
る新しい遺伝子をもつ食品については、一連の固相イムノアッセイを行うことを提唱して
いる(例えば in vitro radioallergosorbent test (RAST)あるいはRAST阻害テスト、
もしくは Enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) など)。ここで提案するのは、
遺伝子の由来する食品に感受性が高いと報告されている最低 14 人の被験者から免疫血清
を得て、それぞれの組換え食品について試験を行う方法である。この方法によると、
99.9%以上の確率で主要アレルゲンを、また 95%以上の確率で感受性の高い人のうちの
20%以上が反応する副次的アレルゲンを検出することができる。in vitro 試験で陽性の
結果が出た場合、その導入蛋白質がアレルゲンである恐れがある。in vivo 試験でアレル
ギーが発現しなかったとしてもその可能性が否定されるわけではないので、1992 年のF
DAの方針に基づき、その新規導入遺伝子を含む食品は導入遺伝子の由来を明示すること
が要求される(「新植物品種から生産される食品に関する方針声明」連邦官報 57:22984
−23005)。固相イムノアッセイの試験結果が陰性あるいはあいまいな場合は、最低 14 人
の被験者による in vivo 皮膚刺激試験を行う。ここで陽性結果が出た場合も、上述の in
vitro 試験の場合と同様の危険が懸念されるため、その食品への表示が求められる。これ
らの試験でいずれも陽性反応が見られない場合その食品にはアレルゲンが含まれないよう
に思われるが、本レポートは万全を期す為に、更に最低 14 人の被験者を用いた二重盲検
食品感作試験(DBPCFC)を行うことを勧めている。このDBPCFCだけはその実
施に当たって、Institutional Review Board の認可を得るべきである。DBPCFCに
おいても何ら反応が見られない場合は、導入された遺伝子の素材となった一般的アレルギ
ー食品からのアレルゲンが移った可能性はほとんどなく、こうした食品に関しては導入遺
伝子の由来の表示を求める科学的根拠は存在しない。
アレルギー頻度の低い食品アレルゲンまたはその他の既知アレルゲン
AIIおよびIFBCは、非一般的アレルギー食品に由来する遺伝子を評価する場合に
一般的アレルギー食品と同様の厳しい基準を適用することは必ずしも妥当でないと考えて
いる。本レポートが勧告する評価方法は、最低 14 人の感受性被験者の血清を用いた免疫
学的分析であり、結果が陽性であれば、その蛋白質の由来に関して情報表示することを求
める科学的根拠があるとするものである。しかしここに掲載される多くの非一般的アレル
ゲンの場合、それらに感受性の高い被験者の血清を入手することは極めて困難である。し
たがって、5名以内の被験者の血清でしか試験が実施できず(この場合の主要アレルゲン
を検出できる可能性は 95%未満)かつすべての結果が陰性の場合、その遺伝子産物につ
いての物理化学的評価試験が行われる。遺伝子産物のアレルギー性について試験を進める
ことにより、非一般的アレルギー食物を代表する血清のライブラリー化が促進され、その
結果、血清の入手はより容易になる事が期待される。5名以上の被験者の血清が入手でき、
かつ陽性反応が見られない場合は導入遺伝子の由来を表示せねばならない科学的根拠がな
いとみなし、そうした食品はその遺伝子産物に関する表示をせずに市場に導入できる。
主要アレルゲンの多くは消化や通常の食品加工工程の条件に対して安定である。したが
ってある遺伝子産物がそうした環境下で安定でないことがわかれば、それがアレルゲンで
あるとは考えにくく、逆に、消化や熱変性に対する耐性が高い蛋白質は食品アレルゲンで
ある可能性が大きい。これらのことから、本レポートは固相イムノアッセイを5人未満の
血清でしか検査できなかった非一般的アレルギー性食品由来の遺伝子産物については、in
vitro での胃液による消化試験と、その食品に対して通常行われる加工条件下での安定性
評価を行うことを提言している。もしその遺伝子産物が消化や通常の食品加工に対して安
定でないなら、その導入遺伝子についての表示をせねばならない科学的根拠はなく、その
食品は遺伝子産物に関する表示をせずに市場導入すべきである。一方、遺伝子産物が消化
や加工条件に対し安定であることが判明した場合、開発者は適当な規制当局と討議の上、
今後の方策を決定すべきである。なお、主要食品アレルゲンのほとんどが食品中に高濃度
に存在することからわかるように、その遺伝子産物の食品中における濃度はその際に考慮
せねばならない項目の一つである。
アレルギー性に関する報告例がない素材
アレルギー性に関する報告例がない素材に由来する遺伝子産物の評価は、アミノ酸配列
に関する比較から始まることになる。導入蛋白質について、既知アレルゲンがすべて登録
されているデータベースを用いてスクリーニングを行い、免疫学的にそのアミノ酸配列に
既知アレルゲンとの著しい相同性がないかどうかを検討する。アミノ酸配列に既知アレル
ゲンとの著しい相同性がある遺伝子産物を含む食品の場合、先に述べた「非一般的なアレ
ルギー食品またはその他の既知アレルゲン素材に由来する遺伝子産物を導入された食品」
の場合と同様の手順で安全性評価を行う。既知アレルゲンとの相同性が確認されなかった
遺伝子産物についてはさらに物理化学的評価試験を行い、その結果アレルゲン性がなけれ
ば表示を必要とする科学的根拠がないと結論する。
その遺伝子産物のアミノ酸配列に既知アレルゲンとの著しい相同性がない場合でも、消
化や加工条件に対する高い安定性が認められた場合は、開発者は適当な規制当局の助言を
受けるべきである。
AIIとIFBCは、遺伝子産物のアレルギー性に関する評価のための動物実験系につ
いても検討を行い、本レポートでは、動物モデルはアレルギー発病の機構やさらに詳しい
研究をするのに有用であっても、ヒトにおける潜在的なアレルギー発病の可能性を広く予
測できるような信頼性の高いモデルは現時点ではないと結論している。
ここで記述される科学的根拠に基づく判断樹を用いた方法は、遺伝子導入で作られた作
物の品種改良に関連する新品種の潜在的アレルゲン性を評価するものであり、一連の評価
の過程で得られるすべてのデータを比較考慮することでその潜在的アレルゲン性を判断す
るものである。この手法で得られた評価を用いて、組換えによる新品種の植物から作られ
た食品は、何世紀もの間伝統的な育種技術で開発されてきた植物から作られたものと同等
の信頼性を持って市場に導入できる。
第1章
アレルギー疾患序論
Yoseph A. Mekori
Department of Medicine, Meir Hospital, Kfar-Saba, and Sackler School of Medicine,
Tel-Aviv University, Tel-Aviv, Israel
1、
はじめに
アレルギーとはアレルゲンにさらされることの結果として起こる過敏性の免疫媒介の状
態である。また、アレルゲンとはアレルギー反応の原因となる生物的、もしくは科学的物
質のことである1。最も一般的なアレルギー反応は免疫グロブリンE(IgE)よって媒介さ
れる反応で、主にマスト細胞や好塩基性細胞などの炎症反応や臨床発症を引き起こすエフ
ェクター細胞の活性化が原因となる。
食品アレルギーがほとんど流行していないにもかかわらず、アレルギー病は先進国にお
いておおよそ 10%から 25%という全人口のうちのかなりの人々に影響を与える。臨床病
は遺伝的な体質と環境的なアレルゲンとの接触の両方を必要とする。なぜ一部の人々はア
レルギーが進み、それ以外の人は進まないのかはっきりしていない。しかしながら、アレ
ルギー(アトピーと呼ばれる状態)に対する遺伝的な体質を持つ人は非アレルギー体質の
人と比べて非常に多くの量の完全で明確な IgE を作り出している。
IgE による反応はすべての普通の人々の中で起こるが、抗原特性やアトピー状態の医学
的発症にはある遺伝子の存在が必要である。遺伝的な感染はもしも片親がアレルギー体質
だったら子供たちがアレルギー体質になる確率は 1:3 になる兆候を示したという有名な疫
学的発見によって知られている。そして、もしも両親がアレルギーを持っていた場合、さ
らに高い確立(60%から 70%)で子供たちが何らかのアレルギーの兆候を示すであろう。
アレルギー病はそれが激しく流行するため、大半の医学的で公然の健康問題へと帰着す
る。たとえばアメリカ人の約 20%の人がアレルギー性鼻炎に苦しんでいる。また、アメリ
カ人の 8%から 12%の人が喘息を持っている。慢性病の中でも鼻炎は学校に長期欠席する
主な原因であるとともに 1990 年には合衆国で一年当たり約 4000 人の死因となっており、
合衆国の鼻炎関連の病気に対する見積もり費用は 62 億ドルであった1。それゆえ先進国に
おけるアレルギー病の経済的で社会的な衝撃は重大なものであるということは明白なこと
である。
2、
免疫反応の細胞
正常な免疫システムは健康にとって不可欠なものであり、機能障害を起こしたシステム
は病気のもとである。免疫細胞生成物の不足や不完全な免疫機能は幅広い免疫不全病の原
因となるかもしれない。免疫システムのさまざまな構成要素の活動のしすぎはアレルギー
病や自己免疫病の促進の原因となる。複合細胞は免疫システムの中に含まれており、それ
は表 1 に示している。アレルギー反応の誘導やアレルギー反応を引き出すことに直接かか
わっている細胞は下記においてより詳細に論じる。
A、
Bリンパ球
B細胞は免疫システムの主な構成要素の一部を構成している。B細胞は体液の免疫反応に
おける認識とエフェクターの機能の両方を作り出している。膜免疫グロブリン表現体のB
細胞はさまざまな子減退を認識し反応するため、認識細胞である。抗原的な刺激に続いて
それらのものはエフェクター細胞に分化し免疫グロブリンを分泌する。B細胞によって作
られた抗体の広大な配列は 5 つの免疫グロブリンのクラス(イソタイプ)すなわちIgM、
IgD、IgG、IgA、IgE、に属している2。免疫グロブリンの基本構造は図 1 に示した。
骨髄でのB細胞の生活史は 2 つの主な段階に分けられる。その 2 つの段階とはinitial
antigen-independent phase(プレB細胞からB細胞への段階)とantigen-dependent
phase(Bリンパ球からantibody-secreting原形質細胞への段階)である3。プレB細胞の
段階は多様的造血幹細胞とともに始まる。初期段階のB細胞前駆体はμ鎖(IgMの重鎖)
を細胞質の中に持っており、その表面には免疫グロブリンを持っていない。B細胞の成熟
分裂における次の認識可能な段階においては、κ軽鎖やλ軽鎖も造られる。これらのもの
はμ重鎖と関わっており、そのため組み立てられたIgM分子は細胞の表面に発現する。し
たがって、より詳細に区別されたB細胞(ただしまだ未成熟なもの)は完全な細胞質と表
面のIgMを持っている。発達のこの段階における細胞は繁殖せず、抗原に対する反応にお
いて詳細に区別される。実際、自己抗原のような抗原との遭遇は活性化よりもむしろ不応
答性(耐性)を引き出すかもしれない。いったんB細胞が免疫グロブリン分子の完全な重
鎖や軽鎖を発現すると、B細胞は不確定の部分(抗原特性)を持ったその他の重鎖や軽鎖
を作り出すことができなくなる。成熟したB細胞はその細胞質IgMを失い、表面IgMに表
面IgDを加える。両方の種類の細胞膜免疫グロブリンは同様の不確定部分を持っており、
それゆえに同じ抗原特性を持っている。いったん成熟したB細胞が抗原(やそのほかの信
号)によって刺激されると、それらは繁殖し分化し、免疫グロブリンをだんだん多くなる
割合の分泌された形で作り出し、次第に少なくなる割合で膜結合の形で作り出す。活性化
の後、どんな与えられたクローンのB細胞も免疫グロブリン生成物をIgMから異なった重
鎖の種類(イソタイプ)の抗体へと変化させるが、同一の抗原結合特性を持っている。そ
のためこれらの細胞は、たとえばμ,γ,α,ε以外の免疫グロブリン重鎖の種類を表現
し始める。イソタイプが変化するこの決定的なステップは免疫グロブリン生成物における
B細胞の反応の多様性を促進し、染色体 14 に存在するCμ遺伝子(IgMの不変の部分に対
する遺伝子)の中のエキソンの接合と削除を含んでいる。そのほかの活性化されたB細胞
は抗体を分泌しないが、その代わりにさらなる抗原刺激なしで数ヶ月間生き残り、血液と
リンパ組織の間で活発に循環する細胞膜免疫グロブリン表現型記憶細胞として存続する。
抗原によるそれらの刺激は次の抗体反応を引き起こす。成熟したB細胞や記憶B細胞の抗
原を誘導する分化は抗体分泌細胞の発達となり、そのうちいくらかは形態学的に原形質細
胞として判別される。抗体の初期作用は抗原にはっきりと結びつき、害を与えてくる毒素
や微生物、寄生虫やそのほかの外来物の不活性化や体からの除去を引き起こすことである。
人間の免疫グロブリンの生物学的特徴は表 2 で紹介する。
表面結合した免疫グロブリンは抗原受容体として認識される。免疫グロブリン分子に架橋
している抗原やそのほかの多価の配位子は休んでいるB細胞を細胞周期の中に入らせ、大
きくし、合成の仕組みを発達させ、分割のための調整においてDNA合成を開始させること
ができる。表面免疫グロブリンに結合している抗原分子は抑圧され、部分的に消化される。
抗原フラグメントはB細胞の表面に再生利用され、主要組織適合性遺伝子複合体(MHC)
のクラスⅡ分子との結合において表現される。B細胞表面上での抗原フラグメントとクラ
スⅡ分子との結合はT細胞によりその抗原受容体をもって認識される。この方法によりB
細胞はヘルパーT細胞に抗原を提供し、順番に抗原提供B細胞の分裂増殖と区別とを促進
するT細胞分泌要素の生産物(リンホカイン)を刺激する。そのほかの重要な抗原提供細
胞(APC)はマクロファージとランゲルハンス細胞とを含んでいる。B細胞の区別に影響
を与えることが知られているリンホカインはIgE生成物に対するスイッチを制御するイン
ターロイキン4(IL-4)4、それにインターロイキン5(IL-5)やIgA生成物に対する反応
であるトランスフォーミング成長因子βやIgE合成を抑制するインターフェロンを含んで
いる。
B、
Tリンパ球
Tリンパ球(T細胞)は免疫機構の重要な構成要素である。B細胞と違って抗原がMHC
の細胞膜結合生成物に連結したとき、T細胞は抗原を主に認識する。抗原とMHCのこの二
重の認識は細胞障害性T細胞を含むエフェクターT細胞と免疫調整T細胞の両方の活性化
にとって大切なことである5。
T細胞は幹細胞から発生し、胸腺で
教育
され、それゆえに
T
細胞という名前で
ある。胸腺の中心的な役割は転位とT細胞受容体(TCR)遺伝子の生産的表現、それと成
熟T細胞に外来の抗原を認識するが自らの抗原を認識しないようにする抗原受容体のレパ
ートリーの選択に関係している。胸腺において、初期のT細胞(未発達のT細胞)はCD2
やCD7 のようなT細胞特有の表面抗原(や遺伝標識)を発達させる*。未発達のT細胞は
胸腺の表層においてCD1 やCD4 やCD8 の遺伝標識を表現するプレT細胞へと分化する。
それから比較的未熟なCD4+8+ 細胞のつりあいはCD4 かCD8 のいずれかのCD4+8- や
CD4-8+になるための表現を失う。細胞膜上のCD3/TCRの量は増加し、CD1 分子は失われ
る。T細胞はさまざまなクローンへと発達し、それぞれのものは特定の抗原MHC複合体に
対して効果のある異なったCD3/TCR分子を持っている。胸腺にいる少数のプレT細胞だけ
が首尾よく成熟Tリンパ球へと分化しリンパ組織や血液へと移動する。周辺血液において
は 70%のリンパ球がT細胞である。
T細胞はその機能に関しては不均一である。T細胞は免疫反応を始めたり、抗原の特殊
なエフェクター反応を仲介したり、他の白血球の活性化をリンホカインと呼ばれる可溶性
因子を分泌することによって規制したりする。細胞膜抗原遺伝標識の表現とT細胞の機能
上の活性には相関関係がある。T細胞のエフェクター機能はT細胞がクラスⅠMHCに結合
している抗原や単独のクラス1MHCを認識する仲介細胞の細胞障壁を含んでいる。これら
のT細胞はウイルス感染したクラスⅠを持つ細胞を撲滅し、同種移植拒絶における重要な
エフェクターである。これらのものはCD8 遺伝標識を持っており、直接的に標的に対して
影響を与えようとする6。そのほかのT細胞は遅延型過敏症反応(DTH)を引き起こす。
これらの細胞はAPC上の抗原クラスⅡMHCに反応し、主にリンホカイン生成物や他の細
胞の活性化によって結果を生じさせる。これらの細胞は通例CD4+である。
調節T細胞はT細胞間やT細胞-B細胞間のさまざまな相互作用を通して免疫反応を増
加したり、抑制したりする。ヘルパーT細胞(普通CD4+)は他のT細胞の分裂増殖や活
性化と同様に、分裂増殖や成熟分裂やイソタイプの切り替えを含む多くのB細胞機能を制
御する。これらの細胞のほとんどは抗原クラス 2MHCに反応する。最近二つのタイプのヘ
ルパーT細胞がサイトカイン生成物のプロフィルによって判別されている。Tヘルパー1
(TH1)細胞は主にIL-2 とIFN-γを作り出しDTH反応において活動する。Tヘルパー2
(TH2)細胞はIL-4、IL-5、IL-6、IL-10 を作り出し、主に抗体生成物とアレルギー性炎
症反応に影響を与える。ほとんどのものがCD8+であるサプレッサーT細胞は免疫反応を抑
制し、さまざまな相の免疫抑制や耐性や自己免疫においてじゅうようであると信じられて
いる。それらは自由TCR含むさまざまな仲介物質を分泌することによってある程度作用す
るのである。
前述の例として、抗原が APC の細胞表面に存在しているときで、MHC においてコード
化された多形性細胞表面ポリペプチドに結合している場所でのみ、T細胞は抗原を認識す
る。この二重の特異性はT細胞の注意を細胞に結合した抗原に集めさせる。それゆえに、
分泌した抗体が直接働くB細胞と違って、T細胞は細胞間の接触を通してそのほかの細胞
を規制したり殺したりする。この接触は配位子が MHC における残留物により複合化した
外来の抗原の破片で構成されている TCR を通して仲介される。その受容体は抗原片と
MHC の両方の一部に接触するようである。
TCRはT細胞の細胞膜に受容体を固定している細胞表面に接近している不変の部位と
細胞表面から離れた多形性のさまざまな部分(V部位)を持つαグリコプロテイン鎖とβ
グリコプロテイン鎖で構成されたジスルフィドヘテロ二量体である。ゆくゆくは異なった
抗原を認識する異なったT細胞のクローンを発達させるα鎖とβ鎖のさまざまな部位(抗
体のような)の構造は異なっている。完全な分子はトランスメンブラン部位や細胞内部に
伝達する信号に対して反応する細胞質部位を持っている。TCRは細胞表面上で活性化信号
を仲介するのに加わる少なくとも 5 つのポリペプチドからなる複合体であるCD3 と非共有
結合をしている8。
免疫グロブリン遺伝子のように、TCRα鎖とβ鎖を符号化する遺伝子は分割遺伝要素の
参加から成っている。胸腺におけるT細胞の個体発生の間に連続したV遺伝子を形成する
ための介在 DNA の削除によってこれらの遺伝子切片は配列しなおされる。TCR 遺伝子を
形成するための遺伝子切片の再配列は受容体の多様化の世代を生じさせる。
最近ではT細胞のより小さな集団は(α鎖やβ鎖の代わりに)γ鎖とδ鎖で構成されて
いるジスルフィド結合のヘテロ二量体である受容体を表現することにおいて判別される。
これらの鎖はⅤ部位や不変(C)部位によって構成されており、再配列遺伝切片によって
符号化されている。これらの細胞は普通のα/βT細胞と似ているが、それらの受容体の中
でⅤ遺伝子切片のより小さなレパートリーを持つことで判別される。受容体に対するそれ
らの機能と配位子は知られていないが、多くのことが標的の細胞に対する MHC が制限さ
れていない殺害を証明している。
第2章
John
食品に対するアレルギー反応
A.Anderson
ミシガン州デトロイト、ヘンリー・フォード健康システム小児科・内科部門、アレルギー・
臨床免疫学部
Ⅰ.はじめに
食品アレルギー
という言葉は、一部の医師や科学者もそうであるが、一般市民によ
って、食物に関係した好ましくないもしくは厄介な問題というように称せられてしばしば
濫用されている。食品に対するアレルゲン反応を議論するに際しては、一連の定義を設け
るか、もしくはこれらの反応のタイプについて記述することは重要である。表 1 は以前の
分類から数年間かけて進められた用語集である1。この一群の定義においては、食品不耐
性は無毒で非免疫媒介による反応について用いられ、一方、食品アレルギーは免疫反応、
通常は免疫グロブリンE(IgE媒介)に関係するものである。
Ⅱ.食品逆反応の発生
最善の推定によれば、総人口の 1∼2%の人々が食品アレルギーにかかっていることを示
唆しているが、食品に対する逆反応の発生は判っていない2,3。しかし、食品成分に対す
るアレルゲン反応の重要性について人々の認識は、限られた臨床試験で確認されたこのよ
うな反応の発生よりも実質的に超えている。ある調査によれば成人のアトピー性患者の 4
分の 1 は特定の食品を消化した結果、逆反応を経験したとしている4。逆反応の発生は、
コロラド州デンバーにおける続いて出生した 480 名の幼児について人生のうち最初の 3 年
間 、 二 重 盲 法 で プ ラ セ ボ 管 理 食 ( DBPCFC : double-blind,placebo-controlled
food
challenge)によって確認され、その結果は 8%であった5。これらの子供で 25 名(5.2%)
は牛乳にアレルギー性を示したが、11 名(2.3%)はDBPCFCによってそうなったものと
確認されている。1749 名の新生児についての 1985 年に行われたデンマーク他単一の病院
におけるコホート研究では、39 名(2.2%)は牛乳タンパク質を飲んだ後の組織的反作用
によるものと判明している6。
子供における食品添加物由来の反応の発生についても未知であり、論議の対象となる。
たとえば、4274 名に及ぶデンマークの 5∼16 歳の児童生徒における最近の発生研究が報
告されている7。スクリーン法による質問表による選択と食品保存料、色素及び香料の混
合物によれば、17 名の回答者のうち 12 名がDBPCFC法によるテストに応じ、6 名(50%)
が反応を示した。この 6 名中 5 名は色素に、1 名がクエン酸に反応を示した(1 名はじん
麻疹であり、5 名はアトピー性悪性の皮膚炎を示した)。この研究に基づき、デンマークの
児童生徒中で、6/4274 で 0.14%ではあるが、食品添加物に反応する者は 1∼2%であると
推測された7。
成人で最も多い呼吸器系反応は、木、草、雑草、そして北アメリカではブタクサの花粉
によるアレルギー性鼻炎である。そのような呼吸器系症状は、一般に食品アレルギーに含
まれないが、花粉アレルギーをもつ人は、ある種の新鮮な果実や野菜を摂取したのち、口
腔咽頭域に限られた軽い逆反応にあう。この口腔アレルギー症候群において、そのような
新鮮な果実や野菜に触れると局部に制限された口腔咽頭域のかゆみや腫れが現れる8−10。
1447 名のブタクサによる花粉症患者のうち、6.2%はメロンやバナナに限ったアレルギー
症状をもつことが判った11,12。3 種の花粉(樺、草及び/あるいはヨモギ)のうち 1 つ以
上にアレルギーを示す 274 名の患者のうち、111 名(47%)は、リンゴ、ジャガイモ、ニ
ンジン、セロリ、モモ、メロンに臨床症状もしくはIgE抗体を示した8。
最後に、アナフィラキシー及び食品や食品添加物(とくに亜硫酸塩)に対する他の全身
反応発生の推定は、2 年以上にわたる 73 のコロラド緊急領域の展望調査により得られた1
。2 歳から 71 歳に及ぶ 25 名(3 分の2は 18 歳以上)は深刻な反応を示した。2 名は心
3
肺蘇生を必要とし、1 名の患者は死亡した。生命を脅かす反応に対する全体の緊急用ルー
ムへの入院に比べ、食品に関連した反応発生に基づくと、緊急介入を必要とするおよそ 950
件の食品および食品添加物に対する深刻な反応が合衆国で毎年発生すると推定されており、
これは総人口 2 億 5 千万人の 0.0004%である。これら全ての報告は、食品に対する逆反応
発生の様々な展望を示す。
表1
食品に対する逆反応:分類
Ⅰ.有毒反応
これらは、その投与が充分多ければ誰にでも起こる。有毒混合物は、自然発生するか、あ
るいは食品加工あるいは汚染菌によって引き起こされる。いくつかの有毒反応の症状は、
アレルギーによって引き起こされる反応と類似していることがある。
Ⅱ.無毒反応
A.免疫媒介
食品アレルギーという語は、免疫媒介反応に勧められる。アレルゲンは、免疫反応のも
とである抗原性分子と定義される。
1. IgE 媒介
症状はアナフィラキシーおよび肌、消化器、GI 管の症状を含む。これらの症状のな
かに特定のものはない。
2. 非 IgE 媒介
病気には、タンパク質が引き起こす胃腸症およびセリアック病が含まれる。そのよ
うな病気に含まれる免疫機構における食品の正確な役割は解明されていない。
B.非免疫媒介
食品不耐性という語は、非免疫媒介反応に勧められる。
1.酵素的
副次的なラクターゼ欠乏は世界人口の多くに影響を及ぼすが、多くの他の酵素欠乏
は代謝における稀な生来の誤りである。
2.薬理学的
不耐性のこの形は、いくつかの食品に通常現れる血管作動性アミンのような物質に
異常に敏感な人々に現れる。
3. 定義されないもの
これは、いくつかの添加物不耐性を含む、害となる機構が判明していない食品の逆
反応を含む。
Bruijnzeel-Koomen 他より採用
Ⅲ.食品アレルギーの自然史
食品アレルギーの発生研究により、食品反応の臨床徴候は、人生の最初の 3 年間に最も
多く見られることが示された。展望的な研究では、状況の 80∼87%において、ひとたびあ
る食品に敏感であると判った児童が 3 歳までにその食品に臨床的に耐性を示すことがある
5
。臨床的な耐性は、大豆、小麦、牛乳、卵のアレルギーに現れる。だが、食品に対する
最初の臨床反応が深刻であればあるほど、児童に耐性が現れるまでに時間がかかる14。年
長の児童および成人では、害となる食品が確認されその際に食物から完全に取り除かれれ
ば、食品に対する臨床的な耐性が数名の患者に現れることも示された15,16。
ピーナッツ、堅果類、魚のような食品、エビ、クルマエビ、カニ、ロブスター、ザリガ
ニのような甲殻類にアナフィラキシーを現す患者において、さらに摂取することによって
アナフィラキシーを繰り返すリスクが確実に持続するかは判明していないが、一生続くも
のである4。ピーナッツアレルギーの集団では、ピーナッツに対する反応を繰り返すリス
クは少なくとも 14 年持続している17。
Ⅳ.食品アレルゲンの暴露
大抵の食品暴露は、最初消化(GI:gastrointestinal)管によるものである。GI管は、
必要とされない完全なタンパク質が体内に迅速に取り入れられるのを妨げる免疫学上の、
また非免疫学上の防御機構の障壁を提供する4。いくつかの完全なタンパク質が取り入れ
られる。だが、口腔耐性は、大抵の食品タンパク質に現れる。食品アレルギーに対し乳児
の感染しやすさが増加していることは、幼年時代にGI障壁が比較的免疫学的に成熟してい
ないためであるとある程度まで信じられている。その結果、遺伝的に感染しやすい乳児に
おいて、摂取され吸収された食品タンパク質は、他の異常な免疫反応同様、特定のIgE抗
体構造を刺激する。これらの食品タンパク質への再暴露が臨床反応となることがある(病
理生理学については、Yoseph
A.Mekori著「アレルギー性疾病概論」参照)。粘膜がその
後口腔あるいは炎症を起こした皮膚において食品抗原に接触することも、充分反応を引き
起こすものである9。後者の例の一つは、アナフィラキシーを引き起こす 5%のカルシウム
のカゼイン塩を含むひし形の発疹軟膏に見られる成分である牛乳のタンパク質に、炎症を
起こした皮膚が暴露された牛乳にアレルギーをもつ乳児だった18。
食品に対するIgE媒介反応の原因である主要な確認されたアレルゲンは、この問題に関
し、Susan L.Hefle他著「アレルゲン性食品」およびSteve
L.Taylor,Samuel
B.Lehrer
著「食品アレルゲンの原則と特徴」に詳しく述べられている。これらの食品アレルゲンは、
大抵耐熱性であり、タンパク質分解に耐性をもつ。臨床的に、多くの患者は1つの食品族
から 1 つあるいは数個の品目にしか反応しない。ピーナッツにアレルギーをもつ者は、大
抵他のマメ科植物(エンドウマメ、豆、大豆)に敏感なIgE抗体をもつが、臨床反応を示
さずに定期的にこれらの食品を摂取することができる19。主要な魚のアレルゲンは、Gad
c1である4。このアレルゲンは、さまざまな淡水および海水に見出されるが、特定の魚
の種類を摂取するとただ臨床的に反応する者もいる20。
成人において職業上かかる食品アレルギーでは、食品タンパク質への最初の接触は吸入
あるいは皮膚への接触によるものである21。おそらく、最もよく知られた例は、パン職人
のぜん息である。パン職人のなかには、吸引したり皮膚が小麦粉に接触したりした後にぜ
ん息や鼻炎となる者がいる22。だが、多くのパン職人は反応を示さずにパンを摂取する。
だが、他の労働者は、呼吸器や皮膚の接触ルートによって最初に敏感になってから、加工
されるか調理された同じ食品が摂取された際に反応を示す。カニを扱うズワイガニ加工者
23
、卵を扱うパン職人24、ニンニクを扱うニンニク・スパイス加工者25の場合はそうで
ある。IgE反応もエアゾール化された魚や魚介タンパク質に暴露することによって発生す
る23。従って、調理による食品タンパク質のエアゾール化は、強い食品アレルギーをもつ
者にリスクを与える。
Ⅴ.食品アレルギーの臨床的な発生
様々な食品アレルギーの臨床的な発生があり、これらはこの項で概説する(表2)。
表2
食品アレルギーの臨床的な発生
Ⅰ.アナフィラキシー
Ⅱ.口腔アレルギー症候群
Ⅲ.食品による運動が引き起こすアナフィラキシー
(F-EIA:Food-dependent,exercise-induced anaphylaxis)
Ⅳ.アトピー性鼻炎(AD:Atopic dermatitis)
Ⅴ.GI 反応
A. IgE 媒介の即反応
B. 食品タンパク質が引き起こす腸炎症候群
C. 好酸球胃腸炎
D. セリアック病(グルテン過敏腸症)
Ⅵ.呼吸器反応
A. 鼻炎
B. ぜん息
Ⅶ.職業上かかる食品アレルギー
A. じん麻疹/血管浮腫/アナフィラキシー
B. ぜん息
C. 過敏症繊維性肺炎
Ⅴ-Aアナフィラキシー
アナフィラキシーは、じん麻疹、血管浮腫、喉頭浮腫、気管支痙攣、低血圧、下痢、不
整脈、吐き気、嘔吐、腹痛、また死さえも特徴とする全身反応である。アナフィキラシー
の最初の症状は大抵数分以内に、そしてほぼきまって暴露して 30 分以内に始まる26。ア
ナフィラキシーの3つの臨床パターンがきっかけとなるアレルゲンに関わらず説明されて
きた。これらは、単一相、複相の、また、長引くというパターンである27。単一相反応で
は、症状は食品を摂取した直後に現れ、数時間持続する。複相反応では、速い相と遅い相
は 1∼8 時間の間隔で分離される。長引くアナフィキラシー反応では、症状は緩和される
ことなく 5∼32 時間持続する。
生命を脅かす食品誘発のアナフィキラシーを経験する人々の多くは、ぜん息を含むアレ
ルギーの多数の臨床的徴候を示し、原因とされる特定のアレルゲンに対し明確なIgE抗体
をもつ28,29。生命を脅かす反応の原因である食品が含まれるが、ピーナッツ、甲殻類(カ
ニ、エビ、ロブスター、ザリガニ)
、堅果類、牛乳、卵に限られない。生命を脅かす反応を
引き出す食品のより複雑なリストは、「アレルゲン性食品」に載っている28,29。死亡の
多くは、不注意にもこれらの食品を自宅外(レストランやパーティーなど)で、また変形
された形で(ペストリー、キャンディー、サラダ、サンドウィッチ、オードブルなど)で
摂ったアレルギーをもつと証明された人々で起こる。
アレルギー源の食品に暴露されたアレルギーであると判った児童および青年のグループ
における死亡と死亡にほど近い状態の主要な違いは、いかに速くエピネフリンが出される
かということであった。大抵の児童はエピネフリンが 1 時間以内に出されれば生存する29
。
Ⅴ-B
口腔アレルギー症候群(OAS:Oral
Allergy
Syndrome)(果実・野菜症候群)
木(とくに樺)、草や雑草(とくにヨモギ)、ブタクサの花粉にアレルギーをもつ人々に
おいて症状が起こるのは、新鮮な果実や野菜のなかのアレルゲンと口腔内で暴露してから
である8−11。OASの初期症状は、大抵新鮮な果実や野菜を摂取している間に口腔がひり
ひりする感じを含み、引き続いて唇、舌、口腔粘膜のかゆみが生じる9。口腔部の腫れが
症例の 2 分の1で発生する。多くの症状は口腔内に限られるが、いくつかの症例では限ら
れた症状も全身の症状、特に鼻詰まりや鼻水、あるいは結膜炎に、また、少数の症例では
全身のアナフィラキシーに関連している10。
症例の大多数において、症状は食品を摂取してから 5 分以内に始まる30。大抵、限られ
た症状が 30 分以内に和らぐ。ほぼ全ての症状は、特定の害となる食品の摂取を中止して
90 分後に、また、水で口をすすいだ後に、療法を取らなくても消える。
OASに関連した食品は、ブタクサによるアレルギーをもつ人々ではメロンやバナナ、樺
の花粉アレルギーの人々ではリンゴ、ナシ、ジャガイモ、へーゼルナッツ、ニンジン、セ
ロリ、キウイ、草アレルギーの人々ではモモ、トマト、セロリ、ヨモギによるアレルギー
の人々ではセロリを含む9,10,30。
文書で証明されたラテックスによるアレルギーの人々のなかには、バナナ、クリ、アボ
カド、キウイに対しアレルギーを示す者もいる31−33。情報によれば、天然ゴムのラテッ
クスのアレルゲンとブタクサおよびイチゴツナギの花粉に交差反応の存在が示されている
34
。
Ⅴ-C
食品による運動が引き起こすアナフィキラシー(F-EIA)
運動が引き起こすアナフィラキシー(EIA)は、激しい運動後のじん麻疹、血管浮腫、
ショック症を含む身体アレルギーの形態の一つである。ほとんどの運動が含まれるが、合
衆国ではジョギングが最も頻繁に原因となっている35。この症候群は、運動が引き起こす
ぜん息やコリン作動性じん麻疹と区別されなくてはならない。EIAの正確な病原生理学は
知られていないが、誘発されたヒスタミンの解放は1つの要因である。199 名のEIAの人々
に関する疫学上の調査により、症例の 54%において特定の食品を摂取する過程がEIAにか
かる付加的な要因であることが示された35。
F-EIAに関連する食品にはセロリ、エビ、カキ、鶏肉、モモ、小麦が含まれる。遅い発
病のF-EIA反応の証拠がいくつか存在するが、おそらく小麦アレルゲンの製品を消化する
反応によるものである36。最後に、F-EIAの人々においては、いかなる型の食事の摂取も
激しい運動をして数時間以内に症状を早めることがある。
Ⅴ-D
アトピー性皮膚炎(AD)
AD は、病原菌が免疫および非免疫要因の両方を含む幼年時代の初期の皮膚状態である。
DBPCFCを含む大きなシリーズにおいて、ADの児童の約 3 分の 1 が食品にアレルギーを
もっていた37。これらの症例では、ADに関連した湿疹が少なくとも部分的にIgE媒介の遅
い相のアレルギー性食品反応によって説明される。ADの児童にDBPCFCを用いる研究は、
児童が大抵卵、牛乳、ピーナッツ、小麦、大豆のような 1 種か数種の食品にしかアレルギ
ーを示さないことを示した。試験管内の研究データは、活性ADをもつ患者の好塩基球は患
者がアレルギーを示す特定の食品を日常摂取する際に自然にヒスタミンを解放することを
示した38。これらの状況下で仲介解放は局部的なIgEによるヒスタミン解放要因によって
調整される。AD患者の食事から原因となる食品を除去した後に、自然発生の試験管内好塩
基球ヒスタミン解放傾向は、皮膚状態に付随する改善とともに消滅する38。
ADの児童と食品アレルギーは、皮膚テスト(ST:skin
testing)および食品に特有の
IgE抗体に対する試験管内テストに比較され、DBPCFCの数値を評価する目的で研究され
てきた。たとえば、テストの結果は、食品の急速な悪化と関連する母親の病歴とほとんど
関係していなかった37,39。アレルギーSTおよび僅かではあるが特定の食品アレルゲンに
対する試験管内テストは、続くDBPCFCテストが最終診断に使用された時にどの食品が関
連するかを示した39。
Ⅴ-E
胃腸の反応
GIの徴候および症状は、食品アレルギーの最も一般的な臨床徴候である。これらには、
口腔部のかゆみや腫れ、吐き気、嘔吐、下痢、吸収不良、
(児童における)大便の血液およ
びタンパク質損失が含まれる40。これらの反応は、直接のIgE媒介反応、あるいは、食品
が引き起こす大腸炎に見られるような遅れた反応である。アレルギーをもつ児童では、症
状は幼少時に始まり、通常の乳児調合乳に見られる牛乳タンパク質に対する不耐性やアレ
ルギーに関連する6。
Ⅴ-E-1
食品が引き起こす大腸炎
食品が引き起こす大腸炎、タンパク質不耐性、牛乳過敏腸炎のような児童におけるGI食
品反応を区別するためにいくつかの語が使用されてきた。小腸、大腸の両方が含まれる。
小腸は粘膜の縮小、絨毛萎縮、クリプト過形成、リンパ球・形質細胞・好酸球の炎症性浸
透を含む様々な損傷を受ける40。下痢が長引く場合、脱水症状、吸収不良が起こり、成長
できないことがある。
牛乳が引き起こす大腸炎は、大腸炎症候群に関連しており、潰瘍性大腸炎に非常に類似
している。生体組織検査が診断し、腸壁における好酸球の炎症性浸透を説明するために用
いられる4。粘膜が脆いために、潜血あるいは全血液の損失が起こることがある。
これらの症候群では、GI症状は後で(数時間から数日後に)起こる。これらは、しばし
ば食事で摂取される牛乳と関連があると証明される。だが、これらの反応は、IgE媒介の
反応(アレルギー)によるものであると断定的に証明される41。そのような反応も魚、大
豆、米、鶏肉に発生することがある。
Ⅴ-E-2
好酸球胃腸炎
好酸球胃腸炎は児童と成人の両方に影響を及ぼす。この病気は、腸壁の好酸球浸透、末
梢血液好酸球増多症、GI症状によって特徴づけられる4,40,42。臨床症状の程度は、病
気の関わる程度による。患者は痙攣性の腹痛、吐き気、嘔吐、下痢、排泄物の血液損傷を
起こす。成長妨害(児童)や体重減少(成人)を起こすこともある。
好酸球胃腸炎の報告された 150 症例のうち 2 分の 1 は、重度のアレルギーをもつ人々に
見られた。児童では、牛乳がこの条件に含まれる主要なアレルゲンである30。この条件の
成人では、多数の食品アレルギーが一貫して証明されている。好酸球胃腸炎のアレルギー
形態をもつ患者は、高いIgE総レベルをもち、ぜん息や鼻炎を含むアレルギーの付加的な
臨床上の徴候を示す。病気は食事やステロイドにより管理される。
Ⅴ-F
呼吸器反応
食品アレルギーは、上部呼吸器(鼻炎)と下部呼吸器(ぜん息)症状の主要な原因では
ない43。だが、食品に対する全身のアナフィラキシー反応の間に、一般に花粉症やぜん息
のような症状をおこすことがある26。食品に対し深刻な生命を脅かすアナフィラキシーを
患った多くの人々は、多くの物質に強くアレルギーを示し鼻炎やぜん息の両方を発症する
28,29
。食品が鼻炎やぜん息を引き起こすというより確信的な証拠のいくつかには、主と
してADのアレルギーを現す児童の約 3 分の1がDBPCFCの間にアレルギーをもつ食品に
上部および下部の呼吸器症状を示すという報告が含まれる37。
牛乳のタンパク質が引き起こす牛乳タンパク質への沈降素と関連した再発性肺浸透が特
徴づける乳児における一つの症候群が説明された44。これらの乳児のなかには、肺に鉄の
澱をもつ肺ヘモシデリン沈着のある者もいた。この幼年時代の症候群は、今日ほとんど報
告されておらず、成人において同様の病気は報告されていない。病原には、生後数日は牛
乳を基にした調整乳を求めることが含まれると考えられており、これらのタンパク質が肺
に入ると、多量の牛乳に特有のIgE抗体を生産する高免疫反応が起こる。続けて牛乳を与
えると、細胞媒介の組織反応同様、免疫錯体を引き起こす45。浸透は牛乳を排除すれば解
決する。
Ⅵ.グルテン過敏腸症
セリアック病あるいはグルテン過敏腸症は、児童ならびに成人における永続的な小麦あ
るいはグルテン不耐性の病気である46。この病気は、アメリカ合衆国よりもイギリスやヨ
ーロッパ諸国で多く見られる。診断は、異常な短い(平らな)または欠けた繊毛、クリプ
ト過形成、固有層におけるリンパ球および血漿細胞の細胞の炎症性浸透を証明する空腸の
生体組織検査の結果による。これらの腸壁変化は、患者がグルテンを含まない食事を与え
られるようになると消滅し、グルテンを再び摂取するようになった時のみ再発する。臨床
的に、慢性の下痢、貧血、くる病、筋肉の消耗を患った敏感性の「太鼓腹の」成長の遅い
児童についての古いテキストの記述は、今日ほとんど見られない。一般に、疾患はそれほ
ど厳しいものではなく、児童に見られる成長の遅れや貧血、成人に見られる慢性の体重減
少やおさまらない下痢のような単一の諸徴候は、調査や介在を必要とする。
この病気の病原はなお討議中であり、グルテンに対する有毒反応はなお可能であるが、
グルテンに対する細胞媒介の免疫過敏性を原則的な病原菌の出来事として証拠が示されて
いる 46 。セリアック病の患者の中には、関連した皮膚病である疱疹上皮膚炎(DH:
dermatitis
herpetiformis)を患うものもいる。DHの患者の多くは、セリアック病の生
体組織検査と区別がつかない簡単な腸部腹部の生体組織検査を受ける。多くのDH患者は
グルテンなしの食事に好ましい反応を示す。セリアック病の患者には、一般の人々に比し
て悪性のリンパ腫が発生する 50∼100 倍増のリスクがある。
Ⅶ.職業上かかる食品アレルギー
成人における食品アレルゲンに対する反応も、職業環境で発生する(表 3)。職業上の暴
露によって、感染しやすい人々はしばしば呼吸器や皮膚を通じ食品タンパク質に対する
IgE過敏にかかる21,23,47。これらのアレルゲンに繰り返し暴露されると、鼻炎、気管
支ぜん息、結膜炎、接触性および全身性じん麻疹、またいくつかの例では全身性アナフィ
ラキシーが発症する21。
表3
食品あるいは関連産業において使用され職業性ぜん息や鼻炎を引き起こす素材
動因
職業上の暴露
動因
動物性製品
植物/きのこ類
海洋性動物
エビ
職業上の暴露
穀類/粉
魚介類加工
粉(小麦/ライ麦)
パン職人、製粉業
カニ(タラバガニ、ズワイガニを含む)魚介類加工
ソバ
食品業者
カキ
カキ養殖業者
米
精米業
エビの粉
養殖
大豆
農業従事者
魚粕
工業労働者
穀類粉末
穀類業者
真珠層
ボタン工場労働者
ホヤ
カキの殻空け職人
ニンニク
貝
貝粉砕業
コリアンダー、メース、ショウガ、工場労働者
香辛料/ハーブ
工場労働者、農業従事者
パプリカ
農作物
牛
酪農業者
シナモン
香辛料業者
パプリカ植物
温室労働者
豚
養豚業
家禽
家禽業
ブロメリン
工場労働者
キジ、ウズラ、ハト
飼育者
パパイン
工場労働者
卵
卵加工業、パン職人
虫
家禽
ダニ家禽業
酵素
その他
コーヒー
コーヒー工場労働者
茶
茶工場労働者、茶畑労働
ハーブティー
ハーブティー業者
者
(トリサシダニ)
穀類貯蔵ダニ
(イエニクダニ駆除?
穀類業者
)
花粉
サトウダイコン、ヒマワリ、ブドウ業者
グルテンのアルカリ加水分解誘導体
ミツバチ
ミツバチ飼育者、蜂蜜加工業
Bee-moth
魚餌飼育者
酵素
パン職人
アルテリナリア/アスペルギウス属
コロフォニー
家禽販売業
ホップ
醸造所化学者
ペプシン
製薬業
コンニャック
食品業者
トリプシン
製薬業
マッシュルーム
スープ製造業者、栽培者
すい臓酵素
製薬業
かびアミラーゼ
パン職人
バーティシリウム arbo-atrum 温室労働者
その他
スピラマイシン
ヒヨコ飼育者
ポリビニル塩化物または
肉包装業者
ラベル接着剤の熱分解製品
O’Neil および Lehrer より変更
職業上かかる食品アレルギーの最も重要な徴候は、職業性ぜん息である。成人がかかる
ぜん息全体約 2∼15%は、薬品、毒、天然タンパク質への職業上の暴露によるものである。
たとえば、職業性ぜん息にパン職人の 10∼30%48、ズワイガニ工の 15%23、熟していな
いコーヒー豆に暴露された職人の 3%49がかかっている。
職業性ぜん息は、炎症、薬理学上あるいはIgE機構の結果である。IgE媒介の職業上の食
品アレルギーの最も明確な例は、小麦粉への暴露によるパン職人のぜん息48、ズワイガニ
をゆでる際の水蒸気に暴露されるズワイガニ加工業者23、ニンニクの粉に暴露される香辛
料業者25、エアゾール卵タンパク質に暴露されるパン職人24である。
パン職人のぜん息では、小麦粉とライ麦が通常病因学上の動因である。アレルギーが起
こるのは、呼吸器を通じてであり、その人物と家族のアトピー歴、暴露の持続、職場での
小麦粉とライ麦の粉レベルと相互に関係がある。パン職人実習生において、小麦粉に対す
る陽性の直接的な皮膚テスト反応は 5 年以上の暴露期間にわたって 8%から 30%に増加し
た48。ぜん息をもつパン職人は、たいてい自分の焼くパンを食べる。だが、呼吸器を通じ
てアレルギーとなるズワイガニ加工業者や香辛料業者は、食事で調理されたカニやニンニ
クを摂取するとやがて反応を示す23,25。過敏症繊維性肺炎は、食品に対する職業上の反
応のもう一つの徴候である。この病気では、カビ、昆虫、あるいは食品(動物、魚、鳥が
源)からとられた多数の異なるタンパク質への激しく長引いた呼吸器暴露により、高免疫
反応および多量のIgE抗体に至る。これらの原因となるタンパク質をひき続き基準として
再暴露することは、間質および肺胞を含む肺における拡散した単核浸透によって特徴づけ
られる免疫錯体反応を引き起こす47。
Ⅷ.食品不耐性
食品に対する多くの逆反応は、免疫形態を含まない機構によって媒介される。これらの
反応のなかには、アレルギーと混同されるものもある。これらの反応は、自然発生する毒
薬,微生物や化学上の食品汚染菌、代謝障害、特異体質反応によることがある50。
Scromboid魚中毒は、微生物が引き起こす食品汚染菌に発生する反応の例である。この
症例では、Scromboid魚(マグロ、サバ、カツオなど)やそれ以外の魚(マヒマヒあるい
はムツ)は、腐ってしまうが調理して食べられる。モルガネラmorganiiや肺炎桿菌のよう
な魚の組織に存在する細菌は、ヒスタミンをつくり出す脱炭酸ヒスチジンをもつことがあ
る。そのような魚を摂取する人々は、ぴりっとしたコショウのような味、口腔内にひりつ
く感じ、摂取したヒスタミンによる顔面紅潮、頭痛同様、続いてしばしば吐き気、嘔吐、
腹部の痙攣、下痢を経験する。また、じん麻疹、ぜん息、ショック症も発症する。一般に、
症状は腐った魚を摂取して 30∼60 分以内に始まり、2∼8 時間持続する51。
ヒスタミンを含む他の食品には、チーズやある種の赤ワインがある51。東洋の食品は、
特に調理に発酵が含まれる場合、ヒスタミンを含むことがある52。
食品アレルギーのいくつかの症状に擬態した食品における内因性の薬理学上の動因には、
チラミン、フェニルエチルアミン、セロトニン、カフェイン、テオブロミンが含まれる52
。これらの天然物質は、特に偏頭痛のある患者で頭痛を一層悪化させる要因であるが、し
ばしばこれらの報告はきちんと証明されていないことがある。
一般に食品には自然発生する毒薬が含まれるが、幸いにも多くの場合消費される量は非
常に少ないため、逆反応はほとんど見られない51。安全と誤解される安全でない食品の一
例は、テングダケ、マッシュルームである。だが、
「中毒」あるいは有毒反応が起こる時に
は、吐き気、嘔吐、下痢のようなGI症状以外にアレルギーのような症状が含まれることは
ほとんどない。微生物毒あるいは細菌などの伝染性動因により汚染した食品に対し同様の
状況が存在する。食事後の逆反応の可能性を考える際に、これらの逆反応の型を覚えてお
くべきである50,51,53。
特定の食品を摂取した後の代謝反応は、特定物質を消化する個人の能力の差によるもの
であるか、あるいは付随する薬物治療、疾患の状態、栄養失調と関連している。たとえば、
血管作動性アミンは、モノアミンオキシダーゼ(MAO:monoamine
oxidases)と呼ば
れる等酵素群によって物質代謝で変化させられる。抑制のためにMAO反応抑制剤を使用し
て治療される患者では、チラミンを豊富に含む食品(チーズなど)の摂取が急速な血圧上
昇や激しい頭痛を引き起こすことがある。この反応は、チラミンの抑制されない作用ある
いはエピネフリンまたはノルエピネフリンの分泌の間接的な作用によって引き起こされ、
薬理学上の動因である副腎MAO代謝不足が引き続いて起こる51。抗結核医薬品イソニア
シドを摂取している患者においてマグロを摂取している間に、同様の反応が発生した。イ
ソニアシドは通常魚肉に存在するヒスタミンを退化させるヒスタミナーゼを抑制するため、
反応が起こった53,54。
おそらく、アレルギー反応と混同される食事が引き起こす最も一般的な問題は、GI管に
おけるラクターゼ欠乏による乳糖不耐性である56。乳糖は、乳製品に見られる水溶性二糖
類である。腸刷子縁におけるラクターゼ酵素は、吸収の前に乳糖を単糖成分に分析する。
この酵素が欠乏するか全く存在していない場合には、消化されない乳糖は、腸で発酵し、
ガスやむくみ、腹部の痙攣、鼓腸、ゆるい便の症状が結果として生じる。
先天的なラクターゼ欠乏は稀である。初期のラクターゼ欠乏は、大抵乳児の離乳期後、
思春期前に現れる50。乳児期あるいは幼児期のGI感染は、この疾患の発症を早めることが
ある。ラクターゼ欠乏がひとたび確立されると、適度な量の乳糖の摂取(全乳 100∼240ml
で 5∼12g)が感染しやすい人々に症状を引き起こす50。ラクターゼ欠乏による二次(後
天的)乳糖付耐性は、アルコール依存症、スプルー、牛乳アレルギーを含む多数の臨床疾
患を引き起こす。ロタウイルスなどのGI感染後、一時的に発生することもある56。自然発
酵食品は、時としてラクターゼ欠乏の人々に耐容性があることがある57。
Ⅸ.食品添加物に対する逆反応
添加物は加工食品に加えられることが多い58。これらは、食品を保存し、成分を安定さ
せ、風味や色素によって食品の魅力を増加させるのを助ける目的で加えられる。時にはア
レルギーのような反応と関連した食品添加物は、抗酸化、ブチルヒドロキシアニソール
(BHA:butylated
hydroxyanisole)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT:butylated
hydroxytoluene)、アスパルテーム、色素、グルタミン酸ナトリウム(MSG:monosodium
glutamate)、benzoateナトリウムを含む。そのような反応との関連のため、食品添加物(亜
硫酸塩、黄色 5 号など)のなかには食品表示に明確に表示されなくてはならないものがあ
る。アレルギーのような逆反応は、一般に(1)じん麻疹、血管浮腫、一般的なアナフィ
ラキシー(2)ぜん息に分類される57,58。
Ⅸ-A
皮膚反応/アナフィキラシー反応
Sporadicの報告は、じん麻疹をタルトラジンと関連させた(黄色 5 号)。これらの研究
の大多数は、きちんと制御されていない。DBPCFCの厳格な基準を用いると、タルトラジ
ン摂取後、じん麻疹が発症すると判明したケースはほとんどなかった59。DBPCFC技術
を用いた際にサンセットイエロー(黄色 6 号)に対し 2 名がじん麻疹を発症したという唯
一の報告もある60。じん麻疹についての逸話の報告に関係した他の食物色素は、アマラン
ス、エリスロシン、紅色(それぞれ赤色 2 号、3 号、40 号)、食用青色 1 号、インジゴチ
ン(それぞれ青色 1 号、2 号)である57。
少なくとも2つの亜硫酸塩が引き起こすアレルギー反応についての文書で証明された報
告がある58。患者はそれぞれ亜硫酸塩に対し陽性の直接反応IgE皮膚テストを示し、IgE
亜硫酸抗体の受動性転移が可能であった61,62。
BHAあるいはBHT保存料に対するじん麻疹の報告は稀である。だが、慢性のじん麻疹を
発症し、食事からこれらの保存料を除去した後に回復した 2 名の患者は、DBPCFC技術を
用いたこれらの化学動因に陽性を示した63。アメリカ合衆国で報告されたbenzoateナトリ
ウムを含むじん麻疹の証明された症例はないと思われる58。
MSGに対する報告されたcutaneous逆反応には、発汗、顔面紅潮、顔および胸部の締め
付けや火照り、
「皮膚がむずむずする」感じが含まれる57。これらの症状とMSG消費との
関係は、多大な研究と論議を必要とする問題であった。東洋の食事は、時としてMSGを数
グラム含むことがある。この症候群における症状のなかには、中国料理店で出されるいく
つかの食品の高ヒスタミン含有量によるものがある52。MSGによって再現できるじん麻
疹の証明された(DBPCFC)の症例はなかった。
アスパラテームが引き起こすじん麻疹および血管浮腫の 2 つの症例は、DBPCFCによっ
て確認されると報告された64。これらの 2 つの症例にも関わらず、アレルギーのようなア
スパルテーム反応がアメリカ合衆国及びカナダで研究されると、研究者はじん麻疹と血管
浮腫、DBPCFCを用いたアスパルテーム暴露の間の明確な関係を実証することができなか
った65。さらに、結合した単盲法、二重盲法プラセボ管理研究の結果から、他の研究者は
アスパラテームにアレルギーを示すと考える人々は再現できる反応を示さないと報告した
66
。
Ⅸ-B
ぜん息
非IgE媒介ぜん息反応と関連した主な動因は、亜硫酸保存料(メタ重亜硫酸塩ナトリウ
ム[Na2S205など])および関連した化合物、さらに硫化酸素(SO2)である。一般に
害となる食品には、亜硫酸処理のサラダ、アボカド料理、酢、ソーセージ、乾燥野菜、果
実飲料、サイダー、ビール、ワインが含まれる50。
ぜん息患者は、1.0ppm以下の硫化酸素に暴露されるとゼーゼー言う58。この観測に従
い、特に 1980 年初頭に、レストラン、特にサラダバーの亜硫酸塩動因で処理された食品
を摂るとゼーゼー言うぜん息患者についての一連の報告があった67。
亜硫酸塩による激しいぜん息悪化の原動力は、しばしば亜硫酸塩保存料を含む食品が咀
嚼され、さらに/あるいは嚥下されると解放される硫化酸素ガスの吸入である68。さらに、
選ばれた人々では、あまり重要ではない亜硫酸オキシダーゼ酵素欠乏が報告された。他の
者では、亜硫酸塩に対する稀なIgE媒介反応が重要なことがある58。ぜん息患者の約 3.9%
は、亜硫酸塩あるいは硫化酸素による激しい発作のリスクにある69。これらの患者のうち、
深刻なあるいはステロイドによるぜん息患者ではリスクが約 8.4%であり、軽い症状から
中程度のぜん息患者では 0.8%である。食品包装上の亜硫酸塩表示をより必要とし、新鮮
な果実、ジャガイモ以外の野菜への亜硫酸塩の使用を禁じるためにアメリカ合衆国の連邦
指針が変更されたため、また食品産業が適用するいくつかのものに対し亜硫酸塩の代用品
を採用したため、亜硫酸塩が引き起こすぜん息の報告はほとんどなかった。
レストランでMSGを含む食品摂取後、亜硫酸塩が引き起こすぜん息に類似した激しいぜ
ん息の発作が出た患者は少数であった70。だが、DBPCFC研究において、他の研究者は
口腔内 7.5gまでのMSGが相当なぜん息を引き起こす、あるいはメタコリンに対する気管
支反応を変更するという主張を実証することができなかった71,72。過去にぜん息を引き
起こすものとされた他の食品添加物はタルトラジン(黄色5号)である58。多数の報告は、
タルトラジンの摂取がぜん息の悪化に関連すると主張した。だが、特にアスピリン過敏症
のぜん息患者において、より近年の、出来の良いDBPCFC研究はこの関連を確認すること
ができなかった59,73。
Ⅹ.食事要因によって影響されるその他の臨床反応
Ⅹ-A
乳児疝痛
科学上の確証が実際にほとんど、あるいは全くない時に食品アレルギーが役割を果たす
という主張がなされた多数の疾患がある。このそれぞれの状況において、食事はまだ定義
されていない役割を果たす。乳児疝痛はそのような症例である。この症候群は、しばしば
牛乳アレルギーや不耐性について論じる際に言及される40。乳児全体の約 20%は疝痛を
発症する。この疾患は自己に限られ、乳児や母乳を与える母親の食事の型に関わらず発症
する74。照査された研究では、乳児に対する増加した動作や注意のような食事以外の介在
が疝痛を起こす痛みを制御するうえでいかなる食事上の操作よりも役に立つことがある 7
5
。
疝痛を発症した乳児に関するある照査された研究において、研究期間のあいだに通常の
牛乳を基とした調整乳では約 25%が自然に回復した一方で、25%は大豆を基にした乳児用
調整乳で回復し、50%はカゼイン加水分解酵素乳児用調整乳で回復した76。乳児の疝痛の
経過に影響を及ぼすこれらの食事上の違いに対する説明は全くなかったが、原因としての
食品アレルギーはいくつかの症例で関係があるとされてきた。
Ⅹ-B
行動の変化
食事構成成分に対する食品アレルギーあるいは他の型の逆反応は、一般に機能亢進、攻
撃性、無作法、不充分な学習性のような行動上の問題に関連があると言及されてきた77。
おそらく行動を食品の逆反応に結びつける最も広く知られた説は、食品添加物、とりわけ
着色料やフレーバー、保存料が天然のサリチル酸塩同様に注意欠乏症(ADD:attention
deficit
disorder)の児童に運動亢進を引き起こすことがあると提言した 1960 年代半ばの
Feingold78の説である78。
着色料、天然のサリチル酸塩、保存料を欠いたFeingoldあるいはKaiserの永久(KP)
食の使用について当初熱意があったが、着色料研究に基づいたその後の分析は、KP食は機
能亢進の児童の約 2%にのみ役に立つらしいと結論を下した79。ある研究は、機能亢進で
あるADDの児童、だが活発に行動する正常でない児童が、プラセボではなく着色料混合物
に接した際に特別な研究室学習テストにおいて革新的に悪く振舞うことを見出した80。こ
の研究は、着色料が医薬品のような薬理学上の動因として機能することができ、行動や学
習に影響を及ぼすという結論に導いた。この問題は、運動亢進であるADDの少数の選ばれ
た人々において臨床上重要であると考えられた。これらの研究は、ADDの児童を助ける食
事の使用を取り巻く熱意を抑えると思われたが、1989 年のカナダの報告は再論争の火をく
べた77。24 名の就学前の機能亢進な少年のうち 12 名の行動が人工着色料、MSG、保存
料、カフェイン、チョコレートおよび家族が子供がアレルギーを示すと信じる「いかなる
食品」を用いない食事で改善した81。さらに、今日一致しているのは、運動亢進が食事に
よって影響を受けるならば、その効果は事実免疫学的またはアレルギー性であるという証
拠は全くない77。
運動亢進および攻撃的な行動も砂糖の含有量の多い食事によるものである77。砂糖アレ
ルギーという語は誤称である。この疾患は、アレルギーに全く関係がないし、いかなる免
疫機能も含まれない。照査された研究は、砂糖が運動亢進の児童において行動上の逆効果
を引き起こす証拠はほとんどあるいは全くないことを示した82。研究のなかには、実際に
これらの人々における食事に含まれる砂糖の鎮静効果を証明するものもある。さらに、青
少年非行者および正常な人々を含む将来の二重盲アスパラテーム制御食事研究は、食事に
おける砂糖(スクロース)に対する逆反応の証拠を証明しなかった83。
Ⅹ-C
偏頭痛
頭痛は、一般市民における共通の疾患である。より深刻な偏頭痛も相当行き渡っている。
成人女性の 25%、成人男性の 15%、15 歳までの児童の 5%までがこの疾患で悩んでいる7
。偏頭痛は家族に遺伝している。偏頭痛患者の 63∼88%には、偏頭痛を患う近親者、遠
7
縁者がいる。人口の約 20%が含まれるアトピー性疾患も家族に遺伝している。これらの事
実を心に留めると、アトピー性の人々も偶然偏頭痛になることがあると仮定することは不
合理である。実際は、偏頭痛と食品アレルギーの関連が 19 世紀以来定期的に、大抵逸話
の報告で示された77,84。
食事と偏頭痛のあいだの関連を支持した近年におけるDBPCFC技術を利用したいくつ
かの研究が存在した85−87。104 名の成人偏頭痛患者のうち、15%は再現できる二重盲プ
ラセボ管理の明白な食品に関連した偏頭痛であった87。だが、偏頭痛のある児童のうち、
食事が偏頭痛の型を改善した児童においてさえ、食品に対する皮膚テストとの直接の関連
がなかった85。偏頭痛をもつ 36 名の児童を伴ったある研究において、食品アレルギー皮
膚テストも食品に対する逆反応の歴史も、頭痛を伴うDBPCFCに反応する患者を区別する
ことができない88。43 名の成人偏頭痛患者を伴った別の研究においては、直接の皮膚テ
ストの結果は、患者がDBPCFCに頭痛で反応する特定の食品を選ぶうえで役立つと思われ
る86。偏頭痛になりやすい人々についての多くの研究は、頭痛もちの成人と正常な人々の
あいだにある免疫学上の違いを全く示さない84。
食事が引き起こす偏頭痛における特定の食品を摂取することで化学が仲介する解放を含
むいくつかの証拠がある。偏頭痛の徴候に関連した特定の食品を摂取した後に高レベルの
プラズマ・ヒスタミンを有する 3 名の患者が報告された86。血中ヒスタミンおよびPGF2
α(プロスタグランジンF2α)の 3 倍増が証明された牛肉の摂取後、再現性の頭痛を患
う 1 名の患者も報告された89。最後に、食品が引き起こす偏頭痛を患った 5 名の他の患者
に 3 倍から 38 倍プラズマ・ヒスタミンの増加および頭痛症状の徴候をもつPGD2(プロ
スタグランジンD2)の増加が見られ、食事摂取の 4∼6 時間後にPGD2が二度目に上昇し
た90。
要約すると、IgE 媒介の食品アレルギーは、たとえあるとしても、偏頭痛の病原におい
ておそらくほとんど役割を果たさない。食事は、明らかに少数の人々において役割を果た
す。選ばれた患者では、偏頭痛病原生理学は化学が仲介する解放を含むことがある。
ⅩⅠ.論争を招く概念
アレルギー性緊張性疲労症候群は、運動亢進、不眠症、不安、無関心と疲労の交互の発
生の過程を示す児童のことをさす77。この症候群は、かつて食品アレルギーと関連すると
考えられた。だが、そのような関係を証明するきちんと計画された臨床上の研究は全くな
かった。
慢性疲労症候群の診断は、特に成人で普及した。激痛、arthralgias、筋肉薄弱、過熱あ
るいは寒気、うつ病、無関心、頭痛、不眠症、喉の痛み、リンパ節の痛みを含む他の体質
上の症状に関連した長続きするあるいはなかなか治まらない疲労の複合症状について多数
説明された77。これらの患者のうち何人かに多数の免疫異常が報告された。食品アレルギ
ーもしくは食事との関係は証明されていないが、この疾患と診断された患者は高い割合で
皮膚テストによって定義されたアトピーでもあることをある研究は示した91。
今世紀前半以来、食品および食事はリウマチ様関節炎の病原に役割を果たすと考えられ
てきた77。関節炎が食品アレルギーに一貫して関連したことはないが、単盲および複盲の
手当たり次第に管理された研究は、食事操作がこの疾患をもつ患者の少数(5%)におい
てリウマチ様関節炎に影響を及ぼすか悪化させることを示した77。
ⅩⅠ-A
偽食品アレルギー
食品アレルギーによると考えられる一連の疾患をにアレルギー医に示した 23 名の成人
集団が 1983 年の研究で詳細に調べられた92。少数のこれらの患者には、アレルギーのよ
うな症状があった。残りの患者は、うつ病、疲労、頭痛、精神神経質、不調、myalgia、
関節炎、無関心の症状を示した。これらの患者の多くは、ある程度まで食事を制限したの
で、栄養不足の徴候もあった。全ての患者は、アレルギー医にみてもらった後に心理学者
によって個々に査定された。患者はそれぞれ食品アレルギーを査定され、重要であると考
えられる食品に対しDBPCFCがあった。4 名の患者がアレルギーであることが判り、これ
らの患者には典型的なアレルギー型を示す症状があった。心理学者によって検査された際
に、全ての患者は正常な心理にあった。残りの 19 名の患者においては、DBPCFCの食品
に対する逆反応は見られなかった。これらの 19 名の患者は、大抵アレルギー性疾患によ
らない
体質上の症状を示した。心理学者によって検査された際に、全ての患者に心理的な問題、
特にうつ病があることが判った。食品摂取の結果に直面した際に、これらの患者の多くは、
その後かつてアレルギーを示すと信じた食品を摂取することができた。残りの患者は、時
が過ぎ、また心理カウンセリングを受けることによって、正常の食事を摂ることができた。
Pearson93は、人が食品アレルギーを患うのは、食事を不必要に栄養上不健康な程度まで
制限するためである、という誤った信念を示す偽食品アレルギーという語を創りだした。
ⅩⅡ.食品アレルギーの診断
ⅩⅡ-A
歴史
食品アレルギーをもつ疑いのある患者の歴史には、
(1)問題ならびに典型的な症状の記
述(2)摂取される食事および特定の食品もしくは食品暴露の他のルートに関連した症状
の始まりと持続のタイミング(3)症状の頻度(4)食品の暴露に関連した他の状況が含ま
れる。大多数の状況において、患者が訴える症状が食品アレルギーによって引き起こされ
る場合には、その人にはアレルギー歴がある(AD、ぜん息、アレルギー性鼻炎など)。食
品アレルギー性の人々におけるぜん息の存在は、深刻な生命を脅かす食品反応を示す少数
の人々のリスク要因と考えられている。
食品が急性じん麻疹や全身のアナフィラキシーのような即座の反応を引き起こし、特定
の食品が一般にこの事象に関連しており時折摂取されるならば、その食品は患者の症状の
原因らしいと容易に確認することができる。他方で、患者にADやぜん息のような長続きす
るもしくは慢性の問題があるならば、来歴によって特に関連する食事の成分を正確に指摘
することは困難であることが多い。事実、DBPCFCによって確証された食品アレルギーを
患ったADの児童についての研究において、母親が原因であろうと確認した食品にはテスト
との関連性がみられなかった37。
アレルギー症状を引き起こす食品は明らかではなく、広範囲にわたる詳細の研究を必要
とする。稀な食品アレルギーの例には、マリネにされた鶏肉を摂取している際に2つの全
身反応を示し、DBPCFCによってコリアンダーの香辛料に対しアレルギーであることが示
された患者94、「乳」製品以外に含まれる牛乳タンパク質に反応を示した牛乳にアレルギ
ーを示すとされる人々95,96、ダニ・タンパク質に汚染された商業的インスタント食品を
用いて焼かれた揚げ物を摂取している際にアナフィラキシー反応を示すハウスダストのダ
ニにアレルギーをもつ患者97、コレステロールを下げるのを助ける成分と見なされたオオ
バコを含む朝食のシリアルを摂った後じん麻疹を発症した暴露から便増量剤までオオバコ
に敏感な看護婦98が含まれる。
ⅩⅡ-B
ST と試験管内分析評価
Intrademal技術は食品抽出物を用いた不特定の陽性反応の頻度を増加させるので、食品
アレルギーに対するIgE抗体を検出するためのアレルギーSTは、ほとんどepictaneousルー
ト(刺したり傷つけたりする技術)によってのみ成される4。食品の抽出物は、大抵 1:10
の容量濃度の重量で背中あるいは前腕の皮膚に塗られる。刺したり傷つけたりするテスト
は、15∼20 分で読み取られる。その結果生じるみみずばれは、陰性の希釈剤対照試料より
3mm以上大きければ陽性である。DBPCFCによるIgE媒介の食品に対するアレルギー反応
を示すほとんど全ての被験者がその食品に対するIgE皮膚テストおよび試験管内テストに
陽性を示すことが実証された5,9,15。
商業的に入手できる食品アレルゲン抽出物が必ずしもテスト動因として確かであるわけ
ではないと認識することは重要である99。IgE媒介の反応の原因であるアレルゲンは時に
は実に易動性であるので、口腔アレルギー症候群を引き起こすと疑われている果実および
野菜を研究している際に、これらの品目のうちフレッシュジュースを用いたepicutaneous
皮膚テストが必要なことがある30。
食品の抽出物を用いたSTは、食品に対する全身のアナフィラキシー歴のある人々の評価
において注意して成されなくてはならない。これはSTが導入する微量の食品アレルギーが
逆症状を引き起こすためである4。1 つの選択は、たとえこれらのテストが幾分感度が低い
としても、試験管内分析評価においてIgE特有の食品アレルゲンを用いることである41。
食品アレルギーSTは、広範囲にわたる皮膚病(AD、じん麻疹など)の人々もしくは皮膚
テスト反応(鼻炎、じん麻疹など)を遮断する抗ヒスタミンを投与した人々において可能
ではないことがある。これらの状態において、試験管内の抗原特有のIgE分析評価は役立
つ。好塩基球脱顆粒テストは、食品アレルゲンに対するIgE媒介反応を評価するために用
いられることがある。この型のテスト結果は、アレルゲン特有のIgE抗体の試験管内にお
ける測定によって得られる結果と比較できるが、一般に定期的に入手できるものではない
4
。
DBPCFCによって測定された食品に対する証明された臨床反応および陽性のアレルギ
ー皮膚テストまたは試験管内テストのあいだの関係は、ADにおいてよく証明されてきた3
9
。主要食品(牛乳、卵、ピーナッツ、小麦、大豆)に対するアレルギー皮膚テストが陽
性であるならば、その食品に対するDBPCFCが陽性である見込みは約 50%である。特定
の食品に対するIgE皮膚あるいは試験管内テストが陰性であれば、DBPCFCがその食品に
対し陰性である見込みはほぼ 98%である4。DBPCFCにおいて陽性であることが示された
食品では、IgE皮膚テストあるいはRASTTM検査が陽性であった4,19,39。
ⅩⅢ.日誌、食事、食品摂取
食事日誌は、急性じん麻疹の孤立した発作のたびたびのエピソードを記録するうえで役
立つ。消費される食品の記録は、これらの特定のエピソードを取り巻く他の出来事同様に、
変化を狭め、害になる見込みのある食品を確認するのを手伝う。アレルギー反応にほとん
ど関連しないと思われる食品から構成される特定の食事は、食品アレルギーが(大抵陰性
の食品アレルギー皮膚テストの)問題の原因であると思われないnabulous状況において、
あるいは陽性のアレルギー皮膚テストが存在するが臨床的な活動歴のない状況において役
立つことがある53。これらの状況において、全身のアナフィラキシーのような疑わしい深
刻な生命を脅かす反応は全くない。特定の食事が家庭で 2 週間試される。その後、新しい
食品は 2∼3 日の間隔で加えられる。牛乳、卵、小麦のような最も一般的な食品は、すば
やく患者の栄養上健康な通常食に戻すために最初に加えられる。だが、与えられた症状群
および食品に対する暴露のあいだの可能性のある関連について確実である唯一の方法は、
人に試すことである4。管理された条件下の陽性のDBPCFCは、関連を確立する100。陰
性のDBPCFCは、引き続いて試す手順において使用された食品を摂取することによって確
認されることを必要とする。
DBPCFCは、食品の逆反応の病原調査を考察する研究を調査するために重要である。さ
らに研究が進む前に、実際に示された集団がその食品に反応を示すことを証明することが
重要である101−104。陽性の食品は、逆の事象の機構を確立しない。陽性の食品は、食品
アレルギーおよび食品不耐性において発生する。
食品反応は、食品に対するさらなる暴露の危険が厳しく生命を脅かすことがある場合、
臨床研究所において大抵主張されない26。大抵、患者が一般にアナフィラキシーと関連が
あるとして知られる食品に対し明快な繰り返される反応(レストランでエビを食べて数分
内に一般的なじん麻疹、血管浮腫を示す、ゼーゼーいうなど)を示す際には、害を示す可
能性のある食品に対する試験管内分析評価のみが成される。このテストが陽性であるなら
ば、食品アレルギーという仮定の診断がなされることがあり、患者は特定の食品を摂取し
ないように指示される。
患者がアナフィラキシー症状を示した食品に対する不注意による暴露の場合、患者はエ
ピネフリン自己注射器あるいは伝統的なエピネフリン注射を使用するように指示される。
これらの装置3つが必要なときに1つをすぐに使えるように患者に処方され配置される。
患者は症状の最初の兆しである全身の食品アナフィラキシーがあると証明されるか仮定さ
れた場所に、その後発生した部分にエピネフリンを使用するように指示される26,29。患
者は最初に抗ヒスタミン剤を使用しないように、あるいは「待って観察」しないように注
意される。
SampsonおよびMetcalfe4はDBPCFC技術における以下の段階を主張している。
1.手順はアナフィラキシーを認識し管理することが可能な人々によって管理された条件
下でなされ、この状況を発生しなくてはならない。DBPCFCは病院、診療所、研究室で
なされる100。
2.疑わしい食品は 10∼14 日前に食事から除去されなくてはならない。
3.抗ヒスタミン剤は 12 時間前に中止される。
4.テストされる患者は、テスト前に循環器、肺、代謝が安定した状態になくてはならな
い。
5.食品は絶食状態でテストされなくてはならない。
6.テスト自体は、プラセボあるいは症状を引き起こすと思われない低量から始め、
(凍結
乾燥食品の 10∼50mg 以下)食品の量を徐々に増加しなくてはならない。
7.食品あるいはプラセボの量は、耐容性があるとして大抵 15∼20 分毎に倍にされなく
てはならない。
8.食品の最大量は凍結乾燥食品の 10g に近い。
9.DBPCFC 手順の完了に続き、食品を与えられる人に対する最小限の推奨される観察は
食品アレルギー反応に対し 2 時間、食品不耐性に対し 4∼8 時間である。最終ポイント
である GI 症状をもつテストされた全ての人々は、テストが完了してから 4∼8 時間観
察されなくはならない
10.食品テストが陰性の場合には、疑わしい食品を 24∼48 時間引き続いて自由に与える
ことが推奨される。
ⅩⅣ.食品アレルギーの管理
A. 証明された食品アレルギー
害となる食品をアレルギー患者の食事から厳密に除去することは、食品アレルギーの診
断が確立されてから唯一証明された療法である4。長期にわたってある種の食品を避ける
ことは、特に加工食品を扱う際に、また自宅外のレストラン、カフェテリア、パーティー
で食事を摂る際に困難なことがある。安全とされる食品を使って自宅で調理した「弁当」
を持っていくことは、アレルギー性の人々に重要になる。栄養の維持は健康な食事を維持
するために必要である4。健康の専門家は、食事、レシピ、一般的な食品アレルゲンもし
くは食品添加物を含む加工食品のリストに関する情報を得ることができる105。患者支援
グループは、食品アレルギーに苦しむ患者あるいは患者の両親に助けとなる。食品アレル
ギーを扱う際に、加工食品の適切な食品成分表示は患者にとって非常に重要である。
食品に対し仮定されたもしくは証明されたアナフィラキシー反応のある患者は、特に自
宅外で、常にその食品への不注意による暴露に備えなくてはならない28,29。生死の差は、
アナフィラキシー症状が始まった後にいかにすばやくエピネフリンが投与されるかによる
28
。
B. 低アレルゲン性乳児用調製粉乳
牛乳に対し食品アレルギーのある乳児の取り扱いは特に問題である。しばしば乳児は「神
経質」または真性乳児疝痛の問題のために従来の牛乳を基にした乳児用調整乳から大豆を
基にした乳児用調整乳に替えられる。そのような変更はいくつかの症例において長所をも
つが、食品アレルギーのためではない76。大豆タンパク質に基づいた乳児用調製粉乳は、
牛乳タンパク質によって引き起こされるスペクトルと同じ臨床反応のスペクトル、特にGI
反応を引き起こした40,106−108。大豆アレルギーは、牛乳アレルギーに引き続いて直ち
に起こることが多い。従来の乳児用調整粉乳に対するGIアレルギーもしくは不耐性のある
全児童の約 33∼50%は、大豆を基にした調整粉乳に耐容性をもつことができない109−11
1
。従って、アメリカ小児科協会の栄養委員会は、従来の大豆を基にした乳児用調整粉乳
が牛乳あるいは大豆の不耐性もしくは証明されたアレルギーの症例において使用されない
ことを推奨する109。
牛乳に対するアレルギー反応あるいは不耐性を証明した乳児に対し理想的な代用品は、
(1)牛乳アレルギーあるいは不耐性をもつ乳児においてDBPCFCにより安全と証明され
たもの4、(2)栄養になり正常な成長と発育を考慮したもの、(3)長期間味のよいもので
ある。
不幸にも、現在、牛乳に対しアレルギー性あるいは不耐性の乳児用のための完璧な低ア
レルゲン性調整粉乳はない106。代わりとなる調整粉乳には、主としてカゼイン加水分解
物、乳清加水分解物、結晶性アミノ酸から得られた調整粉乳が含まれる。全ての市場に出
される調整粉乳には、明らかに少ないが、いくつかの報告された不耐性あるいは味覚の問
題の例がある110−116。
C.食品アレルギーの予防
与えられる前の母親の食事およびアレルギーの両親に生まれた子供に与えられる乳児食
を操作することは、食品アレルギーおよびおそらく他の形式のアレルギーが予防されると
いう仮定のために何年にもわたり人気のある概念であった。4 ヶ月だけ母乳を与えられた
アレルギー性疾患のリスクにある(アレルギー性疾患の両親に生まれた)乳児において、
18 ヶ月までに発生するADの累積発生率および激しさが減少することに見出された15。特
にこの研究において、数名の母親は、授乳期に牛乳、卵、魚、ピーナッツ大豆を避けてい
た。それ以外の母親は通常の食事を摂っていた。ADの発生率は、母親が制限されない食事
を摂る母乳栄養児(44%)に比べて、母親が特別食を摂っている母乳栄養児のグループで
低かった(22%)。他の研究では、母乳栄養もすぐれていることが判った117。
いくつかの照査された長期にわたる研究は、大豆を基にした調整粉乳が初期の食品アレ
ルギー症状の発生あるいは長期にわたる吸入アレルギーの発生に影響を及ぼさないことを
示した118−120。アレルギー性疾患を予防する食事の役割を評価するきちんと照査された
研究は見直される必要がある120。予防策をとられている 101 名の乳児および母親のグル
ープにおいて、母親は最終月および授乳期に牛乳、卵、ピーナッツを避けていた。母乳栄
養でない乳児は、カゼイン加水分解物であるNutramigenを与えられていた。乳児は全員、
牛乳、トウモロコシ、大豆、柑橘類、小麦を 12 ヶ月間、卵、ピーナッツ、魚を 24 ヶ月間、
口にしなかった。185 名の乳児と母親の照査されたグループにおいて、正規に受け入られ
るアメリカ小児科協会の摂食法に従っていた。アレルギーが 1 年で累積して行き渡ること
は、予防策のとられたグループで(27%に対して 16%)食品に関連した症状のように(16%
照査に対し 5%)少なかった121。だが、24 ヶ月では、2つのグループで鼻炎、ぜん息、
皮膚あるいはGIアレルギーの症状、吸入に対するIgE皮膚テスト陽性反応の発生率に全く
違いはなかった。従って、短期間では、高リスクの乳児において食事が食品アレルギーの
症状の発生率に影響を与えることがあるが、母親あるいは乳児の特別な食事が続いて起こ
るアトピー性疾患の発生に長期にわたって影響を及ぼすことはない。
ⅩⅤ.医薬品およびアレルゲン免疫療法の役割
長期にわたる抗ヒスタミン剤、コルチコステロイドの使用、口腔クロモリンナトリウム
のような他の予防療法が食品アレルギーにおいて試された。そのうちの 1 つとして最小限
の効き目以上のものがあると証明されなかった4。舌下食品点滴剤、皮下中和を含む口腔
アレルギーの証明されない療法は効き目がなかった。使用されるならば、おそらく適切な
情報に基づき同意を伴った研究に制限されなくてはならないだろう77,101。
従来のアレルゲン免疫療法は、食品アレルギーに対する承認された治療上の選択ではな
い4。この療法は、口腔アレルギー症候群の予防を助ける目的で実験的、間接的に(口腔
および注射の樺の花粉療法)、ピーナッツアレルギーを防止するためにピーナッツの抽出物
を使用することによって直接的に試された122,123。木のアレルゲン免疫療法は、口腔ア
レルギー症候群における食品症状の取り扱いにおいて役立たなかった122。ピーナッツの
抽出物を用いて治療された患者のなかには、ピーナッツ・アナフィラキシーの保護に対す
る臨床上、免疫学上の両方の証拠がある者はほとんどいなかった。後者の研究から、食品
に対しひどく生命を脅かす症状をもつ数名の患者は必ずしもこれらの食品を避けることが
できないため、食品アレルギーに対する免疫療法を含むさらなる研究が遂行されなくては
ならないと結論が下された124。食品アレルゲン免疫療法の滞在リスクは、不注意による
アレルゲンへの暴露の真のリスクより少ない28,29。
第3章
Peter
植物性タンパク質の生物学
R.Day
農業分子生物学センター、Rutgers,ニュージャージー州立大学、ニューブランズウィック州、
ニュージャージー州
Ⅰ.はじめに
本論文は、植物性タンパク質の特徴を要約し、この問題について続く論文が解説可能な基
礎を提供する。植物のタンパク質源について論じ、食用植物のタンパク質の役割および機
能、その天然種を解説し、微生物および病原菌がどのようにして時にタンパク質を含む他
の物質を食品に取り込み製造することが可能であるかを述べる。このことは、植物性タン
パク質の化学的性質を包括的に論じたものではない。より詳細な情報に関しては、植物な
らびにタンパク質の生物化学に関する教本を参照されるとよい1,2。
タンパク質は、元来アミノ酸構成成分から構成されるポリマーを発生する。人間を含む
全ての生物の細胞全ては、きまって何万ものタンパク質を含んでおり、それぞれ構造上複
雑で性質が異なる。これらの構成タンパク質は、生物のゲノムにより暗号化される。ゲノ
ムの型から算出すると、個々の種において発生すると思われるタンパク質の総数を概算す
ることが可能である。小雑草植物Arabidopsis
thalianaでは 15000 から 60000 の遺伝子3
および同数のタンパク質がある。
植物たんぱく質には 20 の異なるアミノ酸がある。栄養士にとって最も重要であるのは、
食用植物タンパク質におけるアミノ酸構成成分のバランスと消化管での消化中の有効率で
ある。人間の身体は、効率的に食品タンパク質を消化中にアミノ酸構成成分にする。その
後、成長、発育、正常機能の維持に必要とされる他のタンパク質を合成するための成分と
してアミノ酸を利用する。タンパク質は消化中に部分的に分解され、元のタンパク質の機
能上の活動をもたないペプチドと呼ばれるより小さな分子となる。これらは特定のアミノ
酸を連結する結合の酵素分割に由来する。
栄養上の機能に加え、タンパク質は食品のテクスチャー、風味、芳香、満腹感、加工し
やすさ、食品の品質に貢献する。だが、敏感な人々では、タンパク質は摂取する人々にと
ってアレルゲン性になったり有害になったりする免疫グロブリンE(IgE:immunoglobulin
E)と相互に影響し合う(この問題についてYoseph
John
A.Mekori著「アレルギー疾患概論」、
A.Anderson著「食品へのアレルギー反応」を参照)。栄養除去の過程および制御さ
れた食品拒否は、もしあるとするならば、食品タンパク質個々が健康によく食品が誘因で
ある諸問題を免れることを避けなくてはならないことを明らかにする。食品アレルギー、
食物不耐さらに中毒の一覧表がそのような情報から集められた4,5。それらは、ある種のタ
ンパク質を食事で摂取することによって引き起こされる問題について医師が患者に助言す
るうえで手引きとなる。
Ⅱ.植物性タンパク質:発生の生物学
発育の際の分化の結果、植物の細胞は植物における初期機能に適合させる様々な形態を
とる。だが、全ての植物細胞に共通する多数の特徴がある。細胞各々が、選択的に溶解の
際イオンを通すタンパク質脂質膜が境を接した原形質体を取り囲むセルロース壁をもつ。
原形質体は、主に、様々な溶質を含む流体で満たされた中心にある空胞を取り囲む壁に沿
って並んだ原形質群からなる。たとえば、レタスの見慣れた葉状の組織は、主に細胞壁か
ら成る。細胞空砲の流動体および壁により課される物理的圧迫は、細胞を膨張させ、消費
者が期待する新鮮な歯ごたえを作り出す。レタスのタンパク質含有量は低く、葉組織の乾
重量の約 1∼3%、あるいは湿重量の 0.5%以下である。原形質にある細胞の核は、様々な
核タンパク質および細胞分裂で染色体と呼ばれる組織に分解する核酸から成る。核の染色
体に運ばれる遺伝子は、タンパク質合成を指示するが、その多くは酵素である。遺伝子は
受け継がれた情報単位である。文における単語のように線状の順序で配列された多数のヌ
クレオチドから成っている。だが、遺伝子で表された文には 4 つの文字しかなく(ヌクレ
オチド、アデニン、チミジン、グアニン、シトシン)、各単語には 3 つの文字しかない。そ
れぞれのトリプレットはアミノ酸を表すので、トリプレットの連続はポリペプチド鎖もし
くは遺伝子のタンパク質製品を構成するアミノ酸の線状の連続を暗号化する。遺伝子式は、
環境上発育上の合図に反応する核内部の要素により調整される。各種細胞でつくられるタ
ンパク質総数がその細胞の特徴である。主要な変化が一群の遺伝子式により引き起こされ、
細胞の型をそれぞれ区別する形式や化学構造の特徴になる。
各細胞の遺伝規定因子の主要な位置は核であり、緑植物の細胞は 2 つの他種の物体、ミ
トコンドリアおよび葉緑体をもち、これらもまた遺伝情報を伝える。葉緑体は、二酸化炭
素と水から砂糖やデンプンのような炭水化物をつくるために日光エネルギーを用いる過程
である光合成の場である。この過程で酸素がつくられ、放出される。光合成によりつくら
れたものは、細胞が使うエネルギーの流れをつくりだす酸化酵素の場所であるミトコンド
リアによるエネルギー源として、また多くの他の合成物の合成原料として用いられる。葉
緑体で発生し、光合成で重要な役割を果たす酵素リブロース、ビスマスリン酸化塩カルボ
シキラーゼ(ルビスコ)は、これまでの地上における最も豊富なタンパク質である。その
構造は、葉緑体DNAおよび細胞核DNAによって暗号化されている6。緑の植物部分の細胞
は、1∼50、あるいはそれ以上の葉緑体を含んでいる。緑でない植物部分(根や塊茎など)
は、通常、葉緑体を含んでいない。ミトコンドリアは葉緑体よりも小さく、何百にもおよ
ぶ数であらゆる植物細胞に見られる。ミトコンドリアは酸化酵素の場であるため、呼吸の
過程に関わる。この過程で、酸素が供与体分子から電子を受け取るために用いられ、その
結果、細胞の代謝において一連の他の反応に駆り立てることを可能とする電荷を運ぶ。
成熟した植物の成長や発育に責任をもつメリステムと呼ばれる植物の苗木に、活発な細
胞分割の2つの中心がある。新芽の頂上にあるメリステムは、葉、茎、やがては花のもと
になる。根の頂上にあるメリステムは、根の組織のもとになる。メリステムは、ニンジン
のメリステムのように簡素で分枝していないものであるか、芝生の草の根のように大いに
分枝し繊維質であるかである。成熟した植物の特徴的な形が発達する際に、未成熟な細胞
は、形、化学上の構成、タンパク質の補体においてたいてい逆行できない様々な変化をす
る。ひとたび成熟した形になると、これらの細胞はもはや分割することができず、多くは
死んでしまうことがある。たとえば、植物の根や茎にある木質部あるいは水伝達組織は、
空の細胞から構成される管状組織から成る。これらの細胞の内部直径は、0.01∼0.10mmに
及び、長さ 1∼8mm以上になることがある。個々の木質部細胞(木質部要素)は、強化さ
れた壁をもつ。それらは、水および水に溶けた材料を運ぶ管状網をつくり出すために、根
から葉および土の上にある他の植物部分まで配列される。木質部構成部分がその最大の大
きさおよび成熟した形に達すると、最終機能を準備した計画された細胞の死を迎える7。他
の細胞は長く幅の狭い形をしており、非常に厚い壁を育て、風雨によって課される機械的
な圧迫に対し、茎や葉を強化する機械的に強い繊維の帯やブロックをつくり出す。木の茎
では、これらの 2 種の細胞、水を運ぶ細胞と繊維細胞は、商業で使用される材木のもとと
なる。食品となる植物では、繊維細胞は人間の食品に重要な機械的特性を与える。
人間が食品としてよく用いる植物の部分は、根(ニンジン、ラディッシュ、カブ)、塊茎
(ジャガイモ、サツマイモ)、茎(コールラビ、ハゴロモランカン、アスパラガス、セロリ)
のような貯蔵器官を含んでいるが、また、葉(キャベツ、レタス、ホウレンソウ)球根(タ
マネギ、ニンニク)、花(ブロッコリー、カリフラワー、アーティチョーク)、果実(リン
ゴ、ナシ、トマト、ベリー類、カボチャ、メロン、キュウリ、バナナ)、種子(トウモロコ
シ、米、エンドウマメ、豆類、小麦、ナッツ類)のような広範囲の他の植物部分も含む。
これら全ての植物部分で主要なカロリー源は、炭水化物である砂糖とデンプンである。し
ばしばそこに多く集結している種子を除き、異なる 1000 のタンパク質が存在するというの
に、植物細胞は少量のタンパク質しか含まない8。図1は、トウモロコシの苗木の新しく発
芽した新芽から分離され、二次元のゲル電気泳動によって示された細胞タンパク質の走査
像を示している。それぞれが異なるタンパク質を表す 1500 以上の斑点が分析されている。
これらはおそらく新芽組織に存在する全タンパク質の少量のみ表している。種子は、いく
つかの特別なタンパク質を比較的多く含んでおり、脂肪や油の源でもある9。
何年もの間、15 の主要な作物が世界の食糧事情に大いに責任を負ってきた。これらは、
穀類(米、トウモロコシ、小麦、モロコシ)、マメ科植物(豆類、大豆、エンドウマメ、ピ
ーナッツ)、根菜類(ジャガイモ、カッサバ)、サトウキビ、サトウダイコン、バナナ、コ
コナッツである。だが、近年の研究は、100 以上の食品となる植物種が個々の集団や社会に
とって重要であることを示した10。これらはマンゴー(サンタルチアで消費される野菜の
重量の 28%)、白菜(韓国で 12%)、タロイモ(サモアで 18%)、キノアあるいは穀類アマ
ランス(ボリビアで重要)、ササゲ(ニジェールで重要)を含む。
Ⅲ.植物タンパク質の役割
タンパク質は、若い発育途中にある細胞において、細胞の成長、分割、分化のための化
学上の機構である。細胞タンパク質で最も重要なものは酵素である。これらは、細胞構成
成分を生み出す生物合成の道における個々の反応段階に責任をもつ触媒である。他のタン
パク質は、調整機能をもつ核酸の部分に結びつけることによって、核の遺伝子式を点けた
り消したりする信号として機能する。だが、他のタンパク質は、核酸および他の細胞構成
成分に対し、機械的な役割を保持しており、構造上の枠組み、すなわち足場を提供する。
タンパク質の特性は、その構造機能である。タンパク質は、20 の異なるアミノ酸の線状
の鎖となり、正確に三次元構造に組み合わされた大きな分子である。多くの植物タンパク
質は、小さな砂糖残留物を付着しており、他の細胞構成成分と反応する方法に影響を及ぼ
すグリコシル化されると言われている。様々な種類の空洞、溝、突起を含み、異なる電荷
を運ぶタンパク質の表面の特徴は、他の分子と相互に影響し合う方法を決定し、触媒とし
て機能する。これらの表面の特徴も、肌と外部で接することによって、あるいは、口また
は腸の粘膜によって、タンパク質分子が人間の身体に知覚される方法に影響を及ぼす。
Ⅳ.タンパク質の合成
各タンパク質のアミノ酸の連続は、遺伝子に相当する DNA 部分のヌクレオチドの連続に
暗号化される。一般的なトリプレット暗号は、一般に植物タンパク質に見出される 20 のア
ミノ酸それぞれを明示する 3 つの塩基の連続を用いる。遺伝子の DNA の連続は、始めに伝
令 RNA(mRNA)に転写され、それからリボソームと呼ばれる小さな分子によって加工さ
れる。リボソームとして発生するタンパク質の集合は、mRNA の連続を読み取り、転移 RNA
分子のプール分から選択することによって、アミノ酸の連続に移す。転移 RNA 分子それぞ
れは、特定アミノ酸を結びつけており、タンパク質合成の間に正しい時間と場所にアミノ
酸を提供するアダプターとして機能する。リボソームが mRNA に沿って動く際、リボヌク
レオチド鎖は分解し、その場所にアミノ酸の成長中の鎖を残す。この鎖に課された二次構
造、三次構造は、しばしば化学的橋架け構造の確立によって引き起こされるが、また、タ
ンパク質分子を可能である限り最も安定した機能上の形状に合わせる機能をもつシャペロ
ン・タンパク質により影響を受ける、一部分自発的な折りたたみである。
mRNA への転写および核酸の連続のアミノ酸への置き換えの過程は、全ての遺伝子に連
続的に起こらない。遺伝子式と呼ばれる過程は、活性化され抑制される遺伝子の側に位置
するプロモーター、染色体成分によって制御される。プロモーターは、レプレッサーと呼
ばれる小さなタンパク質分子が遺伝子の転写が活性化するのを防ぐことによってプロモー
ターに結び付けられる際に、一般に抑制される。遺伝子が誘導されると、誘導する動因は、
レプレッサーとプロモーターの結合を妨げることによって、プロモーターを解放する。構
造が明示された遺伝子は、常に表される。遺伝子式の信号制御は、正常な発育にとって非
常に重要である。それらは、適切な遺伝子が活性化され、必要とされる時間と場所が表さ
図1
一次元(平面)で等電点電気泳動により、二次元(垂直面)で分子量により分離され
たトウモロコシの苗木の新芽から新しく発芽したタンパク質の二次元ゲル電気泳動分離の
走査像(Pioneer Hi-Bred
International,Inc.の許可により複写)
れ、もはや必要とされなくなるとシャットダウンされることを保証する。
トランスジェニック植物の式制御の研究から、発育上の制御は異なる属および科の異な
る植物の間で非常に類似しているという証拠がある。たとえば、Altenbach
et al.11は、
キャノーラやタバコにおけるブラジル豆 2S種子貯蔵タンパク質を表すために、インゲンマ
メのプロモーターを使用した。同様に、タバコに小麦粉種子内胚乳グルテンタンパク質を
暗号化する遺伝子は、タバコの種子にのみ表れる12,13。それぞれの例で、クローン遺伝
子は、全く異なる植物の信号制御に反応することのできるプロモーターを含んでいた。
より大きなタンパク質分子は、異なるサブユニットから構成されている。異なる遺伝子
は異なるサブユニットに責任をもつため、このことはおそらく遺伝子の集合や合成を容易
にする。たとえば、リビスコは 2 種のサブユニットから構成されている。55kDaまでの大
きいサブユニットは葉緑体遺伝子によって、15kDaまでの小さいサブユニットは核の遺伝
子によって暗号化される14。全構造も、たいてい酵素の触媒活性にとって重要であり、初
期の化学反応が起こる場所に位置する金属原子あるいは人口補綴群も含んでいる。タンパ
ク質分子の三次元構造はX線晶化によって確立される。この技術は、分子の三次元像を再現
するX線光線に位置するタンパク質結晶によって引き起こされる回折型を用いる。
多くのタンパク質は、細胞内の合成された場所では使用されない。これらのタンパク質
のいくつかは、アミノ酸鎖の片端で、細胞の特定の場所にタンパク質を導く、いわゆる信
号あるいは目的となる連続を持っており、その後除去される15,16。これは、タンパク質
の特性が利用される膜の上あるいは内部の場所である17。
Ⅴ.タンパク質の変異
概して、生物がより厳密に関連していればいるほど、その構成タンパク質は類似してい
る。ルビスコのような多くの酵素と基本的な細胞の機能を成す、いわゆるハウスキーピン
グ酵素は、たいていの植物で共通しており、保護されている。タンパク質を暗号化する DNA
の基本的な連続における唯一の変化は、分子のある地点で不適切なアミノ酸の代用に導く
ことがある。これはこの変化あるいは突然変異の場所に依存し、タンパク質の機能を廃止
したり変更したりする効果をもつことがある。進化の期間にわたる突然変異的変化も、大
部分タンパク質分子が機能する方法にほとんど効果をもたないアミノ酸変化を引き起こす。
これらの変化に共通する効果は、大きさや電荷を基準としたタンパク質を分離する技術で
ある電気泳動においてタンパク質の移動性を変更することである。酵素タンパク質の変更
された形は、アイソザイムと呼ばれる。異なる形式は、同じ種の範囲で発生するか、種の
あいだで異なる。多くの点でこれらの変化は進化の跡であり、ほぼ確実に進化のより早い
段階において自然に起こる突然変異の結果として発生した。重要な機能を廃止する、ある
いは実質上変更する変化は、致命的であるか生物の適合性を減少させる。一般に、これら
の変化は、生物が生き残らず傷つけられていない形に対し競争して種子を生産しないので
実際選ばれない。時折、突然変異は生物にとって有益なことがあり、他の型に競争上の利
点を与える。これが進化の基本である。
タンパク質の構造において自然発生する変異は、植物の抽出物の二次元電気泳動によっ
て最も容易に発見することが可能である(図 1 参照)8,18,19。だが、この技術は、おそ
らく特定の組織に存在するタンパク質総数のうち少量しか解明しないだろう。
タンパク質の機能に関連し有益なあるいは中性の変化は、アレルゲン性であるかアレル
ゲン性を高めた分子をつくり出すならば重要である。だが、人間が通常食事で触れている
非常に多量のタンパク質および自然発生するタンパク質変形に対する IgE 伝達のアレルギ
ー反応の頻度が非常に少ないことを考えると、この発生の可能性はほぼ確実に大変少ない。
種子貯蔵タンパク質を除いて、個々の植物性タンパク質の大多数は、IgE 伝達反応を刺激す
るうえで必要とされる閾以下である少量で集中して存在するのみであることを心に留めて
おくことも重要である。
Ⅵ.植物製品により食品に導入されたタンパク質
タンパク質のいくつかは、植物細胞およびオルガネラの形に貢献する機械的すなわち構
造上の機能をもつ。たとえば、細胞の代謝において固有の様々な反応の場である細胞内の
巻く組織は、タンパク質分解酵素の性質をもつ。だが、しばしばリグニンのようなポリマ
ーによって強められる炭水化物誘導体は、我々が植物において馴染みのあるひどく堅い繊
維質の構造となるうえではるかにより重要である。
酵素は、細胞の成長、細胞分割、代謝を伴う多くの生物化学上の過程を指示するタンパ
ク質である。発芽中および発芽後に苗木の成長および発育を維持するために使われる種子
には、多量のタンパク質が貯蔵されている。これらは、しばしばタンパク質組織体として
細胞に発生し、酵素により化学反応が起こされるか結集され、種子が発芽する際に急速に
成長する部分で運ばれ再び集められる。多くの他の植物部位と違い、種子には乾性重量の
10%から 50%、あるいはそれ以上を構成する多量のタンパク質がある9。これが種子やナ
ッツ類が人間の食事において重要なタンパク質源である理由である。貯蔵タンパク質の多
くは、比較的高濃度で存在する。多数の報告により、タンパク質のレベルとアレルゲン性
のあいだの相関性が示された(この問題に関しては、Steve
Lehrer著「食品アレルゲンの原則と特性」、Robert
L.Taylor,
K.Bush,
Susan
Samuel
B.
L.Hefle著「食
品アレルゲン」を参照)
。種子における貯蔵タンパク質の高いレベルは、一部分、ある人々
が種子(ピーナッツなど)または加工された種子食品(パンの小麦)を消費した後に過敏
になる理由を説明する。
通常、植物組織に存在するタンパク質の多様性に加え、他のタンパク質は、植物に関連
する微生物によって、あるいはウイルス、バクテリア、菌類のような侵入性の病原菌によ
って取り入れられる。全ての新鮮な食品および農産物は微生物植物群をもつ。一般に、果
物は表面で成長する酵母を運ぶ。全ての植物の表面には、塵分子や他の岩石の破片の上で
運ばれたか、雨や灌漑水によってはねかけられた土壌生物が存在する。風媒のカビ胞子は
植物の上に堆積される。
我々が消費のために購入する果実や野菜のなかには、植物疾病生物を運ぶものがある。
植物のウイルスは、感染細胞において莫大な数に増殖するので、ウイルス性の被覆タンパ
ク質、あるいは含有組織を形づくる他のウイルス性タンパク質は総細胞タンパク質の相当
量を成す。表 1 のデータは、スーパーマーケットで入手された 4 つの異なる果実(カンタ
ロープ、ハニーデューメロン、イエロークルックネックカボチャ、ズッキーニカボチャ)
において測定された、異なるウイルスの被覆タンパク質のレベルを示している。これらの
データは、我々の食品供給の構成要素である異なるウイルス性被覆タンパク質の変異性お
よび程度を例証する。
多くの場合、植物の疾病を引き起こす生物の存在は、その構造における更なる変化に関
連する腐敗病や変色(萎黄貧血、壊死)によって示されている。これらの症状は、畑で収
穫前あるいは農産物が流通や販売以前の貯蔵状態にある収穫後に現れる。軽い腐敗病は、
細胞壁と細胞壁自体のあいだにあるペクチン結合を破壊する侵入性の微生物によって形成
される細胞外酵素を解放することによって引き起こされる。親細胞の死が後に殺された親
の更なる成長と Sporulation の基質として使用する病原菌によって作られる毒素によって
引き起こされる場合もある。内因性タンパク質も、病原菌の侵入に応じて、あるいは他の
環境上の圧迫の結果として、植物によって形成されることがある。
7.ストレス反応タンパク質
植物は、病原菌により侵入されると、侵入する病原菌の成長を制限するため、あるいは
阻止するために、しばしば予定された防御システムの構成要素(しばしばタンパク質)を
合成することによって反応する。近年、植物の感染の初期段階で現れるいわゆる病原関連
(PR:pathogenesis−related)タンパク質に多くの研究が集中した21。これらのタンパク
質の量は多くなく、総細胞タンパク質の 0.01%以下である。その機能は特殊な耐性メカニ
ズムおよびこれらがPRタンパク質によって制御される方法に関して理解されていない。イ
ンゲンマメ(Phaseolus vulgaris)の2つのPRタンパク質は、起こりうるアレルゲンとし
て見なされてきた22。病原菌によって生み出されるタンパク質がそのような効果を引き起
こす証拠はない。
侵入に成功した病原菌によって形成された化学製品を消費することは、厳しい結果とな
るという情報が相当ある。たとえば、貯蔵されたピーナッツは、発がん性と知られる非タ
ンパク質化合物アフラトキシンを生み出すカビ(Aspergillus
ことがある
23
spp.)によって侵入される
。牛に与えられる感染したあるいは汚染された飼料により、牛乳にアフラト
キシンが存在するという証拠もある。
人間の栄養において問題ではない2つめの例は、カビのエンドフィチンを含む牧草に問
題がある家畜生産者が遭遇するものである26。これらのエンドフィチンのカビは、草の葉
および葉の組織におり、性的に再生され胞子をつくるまで、目に見える疾病の兆しを出す
ことはない。だが、カビにより生産されたある種の化学的代謝物質は神経の損傷の原因で
あり、放牧動物において旋回病として知られる病気を引き起こすことがある。カビによっ
て生産される他の合成物はabortifacientであり、仔牛の死産を導く。これらの合成物は、草
に害虫や干ばつへの耐性を与え、その両方は選択的長所である。この理由で、abortifacient
は芝生栽培者にとって関心事である27。
これらの食品および飼料の滞在的に危険な物質例は、カビにより生産される。これらは、
タンパク質ではなく、多数の遺伝子の生成物(酵素)のよって制御されるやや複雑な合成
の結果である。新しい作物の Cultivars の生産において、植物栽培者は一般に必要とするあ
る種の特性を探すために、集められた多くの物質を自然および他の栽培者から保護する。
害虫や疾病耐性は、大抵そのような保護プログラムの重要な特徴である。耐性生成物が部
分的にその耐性の原因である自然発生の毒性化合物の過度に高い濃度を含まないことを証
明するために注意が払われなくてはならない。
高温および極度の干ばつを受けた植物組織は、熱ショックタンパク質を形成する28。こ
れらのタンパク質は、気温が下がるか多くの水が手に入る時に正常機能を修復するのを助
けるために植物細胞によって使用される29。熱ショックタンパク質は、他の重要な細胞タ
ンパク質が正確な三次元の配置をもつことを保証する役割を果たす。熱ショックタンパク
質もシャペロンと呼ばれる。
Ⅷ.結論
タンパク質は、植物の構造、機能、発育において、重要で本質的な役割を果たす。人間
はアミノ酸を合成することができないので、植物および他のタンパク質源は我々の食事の
必須成分である。毎日、我々は植物および植物関連の微生物から、何万もの異なるタンパ
ク質を消費する。これらの多くは食物に少量で存在するが、穀類や種子における貯蔵タン
パク質は我々が消費する植物タンパク質の相当な部分を成す。これらのタンパク質は、植
物において多くの異なる役割を果たすが、消費されたのち、一般に迅速に構造から酵素ま
で個々のアミノ酸に分解され、その後他のタンパク質や栄養素を合成するために我々の身
体により使用される。
謝辞
著者は、本稿のために情報を提供して下さった Dr.Roy Fuchs、Dr.Rod Townsend 両
氏のご協力に謝意を呈する。
表1
酵素に関連した免疫ソルベント・アッセイにより測定されたスーパーの果実のウイ
ルス性被覆タンパク質測定
果実
CMV(µg/kg
fruit)
PRV(µg/kg
fruit)
ZYMV(µg/kg
fruit)
WMV2(µg/kg
YC77EZW20
ND
ND
68.4
430.6
C1
355.200
18.000
14.400
10.320
C2
130.464
5.472
10.944
115.488
C3
ND
252.000
28.800
720
C4
ND
ND
864
ND
C5
>2.400.000
1.200
8.400
ND
C6
>3.216.000
ND
14.000
ND
C7
>3.216.000
ND
12.864
ND
H1
ND
7.200
9.480
ND
H2
ND
6.840
1.800
ND
H3
ND
ND
2.200
ND
H4
359
4.752
3.888
173
H5
269
3.168
3.168
260
H6
238
ND
2.592
ND
H7
ND
5.928
1.824
137
H8
664
13.272
1.896
190
H9
82
960
24
24
H10
ND
ND
250
ND
H11
ND
ND
1.560
ND
H12
ND
ND
480
ND
H13
ND
ND
2.200
ND
H14
ND
3.120
720
ND
H15
ND
10.080
1.700
ND
H16
ND
ND
3.100
ND
Y1
ND
ND
11.424
ND
Y2
ND
ND
ND
ND
Y3
ND
ND
1.152
ND
Y4
ND
ND
13.056
ND
Z1
ND
ND
140
ND
Z2
ND
ND
ND
ND
Z3
ND
ND
454
ND
Z4
ND
ND
ND
ND
fruit)
Z5
ND
ND
ND
ND
Z6
ND
ND
576
ND
Z7
43
ND
2.592
ND
Z8
14
ND
2.900
ND
注:CMV
キュウリのモザイクウイルス被覆タンパク質、PRV パパイヤのリングスポッ
トウイルス被覆タンパク質、ZYMV
WMV2
ズッキーニの黄色モザイクウイルス被覆タンパク質、
スイカのモザイクウイルス被覆タンパク質、ND 検出されず
C1−7 はカンタロープ、H1−16 はハニーデューメロン、Y1−4 はイエロークルックネック
カボチャ、Z1−8 はズッキーニカボチャである。1 行目は、市場用に発育されるカボチャの
トランスジェニック種である。
Hector
Quemada,Asgrow
Seed Company の許可により転載
第4章
食物中タンパク質の遺伝子改変
Peter R. Day
Center for Agricultural Molecular Biology, Rutgers, The State University of New
Jersey, New Brunswick, New Jersey
1、
序文
食物として育てられ、栽培されている作物はすべて意識的な選択および品種改良によっ
て改善されてきた。また収穫量や質、生物や生物でないものによるストレスに対するすべ
ての抵抗力は農業的な生産性を改善し、食物と飼料とに対する人類の増加していく必要を
満足させるために高められてきた。作物の品種改良は改良されていない細菌の原形質の生
の素材から、現在私たちが依存しており、多くの収穫量を出している作物や牧草の種類を
作り出してきた例外的に成功した事業である。近年までプラントブリーダーたちは自分た
ちの目的を達するために実験的な方法に頼らなければならなかった。彼らは種々のものを
そのほかの特徴を持った、後に異なった種へと分離した世代において望んだすべての特徴
をあわせ持つ次世代を作るだろうと予測されるものとかけあわせた。そして大規模な試験
が行われた後、これらのものは新しい種類として紹介された。しかしながら作物の形質転
換の発見によって多くの栽培者たちが具体的な必要性を満足させることのできる新しい種
類のものを作る試みへと近づく方法が変わりつつある。遺伝情報は普遍的なものであるの
で、直接的な遺伝子組換えは重要で新しい道具を提供し、ほとんどのどんな生活形態の遺
伝子情報であっても使える可能性があることを教えてくれている。
作物の品種改良を通じての食物を構成するタンパク質の計画的な組み換えは、タンパク
質の役割やどの程度それらのものが食べ物の素材の質や人間の消費への適合性に影響を与
えるのかということの発見を待たなくてはいけない。小麦や米、大豆におけるこのことの
いくつかの例については後で議論する。品種改良を通じて作った作物の中ではいつのとき
でも遺伝子変化が起こっていることを遺伝子論はほのめかしており、新しい表現型の生成
物の中にあるたんぱく質に連想される変化がある。
遺伝における遺伝子制御では DNA をメッセンジャーRNA(mRNA)へと転写し、それ
がポリペプチドの鎖やタンパク質といったアミノ酸配列へと翻訳される。また遺伝子表現
型のタンパク質生成物の多くは、集合的に細胞の個性を決定するさまざまな構成要素の集
合体を管理する酵素であり、組織や器官、有機体を全体として順番に作り上げていく。こ
れらの遺伝子の表現のタイミングや調整はレギュレイトリーエレメントと呼ばれるそのほ
かの遺伝子構成要素によって管理されている。この組み合わせの効果はともに働きながら
成長や発達や分化として認識される変化を引き起こす、異なった遺伝子のカスケードの発
現である。これらのことは食物として消費される収穫物を作り出すために、苗木から成熟
して花を咲かせるものとなる植物の成長として観察される。
品種改良にある有機体の構成における変化を普通は微妙に、時として深く導入するとき、
そのタンパク質の変種が期待される。新しいタンパク質が形成されるかもしれないし、そ
うでなければ存在しているタンパク質の調和が変化するかもしれない。近親の野性種の生
息地域からの遺伝子情報を導入することによって新しい種類の農作物を創ってきたことに
ついての長い歴史は、健康の課題のために市場から撤退しなければならなかったなかでめ
ったに結果が出なかった。プラントブリーダー達は少しでも食物の安全に対して影響のあ
った数千の作物を導入してきた。
遺伝子工学に対する懸念は、この新しい技術のおかげでプラントブリーダーが生きた生
物の遺伝子情報や DNA 配列の集合体にアクセスできるようになったという事実に起因し
ている。遺伝子工学を使った新しい植物種の開発者は、新しく導入された種とこれらの種
から独立した食品が伝統的な類似品と同じくらい安全で栄養があるということを確立する
責任を持っている。この論文では植物分子生物学を基礎とする新しい技術によって発達し
つつある新しい植物種の典型と典型的な品種改良とを比較し、農作物の発達の方向性を手
短に述べる。またこの論文では特に、大半の作物から得られる食物の持つアレルギーを引
き起こす可能性を遺伝子工学がどのようにして変えることが出来るのか、ということに焦
点を当てる。
2、
初期の品種改良
種を保護するためにより優れた親の植物を選ぶということが実践されたことは、大昔の
人類が狩猟者から耕作者や家畜の飼育者へと変わっていった時期にその起源を持つ。彼ら
は簡単に収穫できる実や種やそのほかの食べることのできる部分といった収穫物を与えて
くれる種を作為的に選んだのである。
最初の作物は狩猟者たちによって試行錯誤の末に選ばれた。おそらく彼らは毒のある植
物や苦い植物、彼らを病気にしてしまう植物、それに飢えを満たすことのできない植物を
避けることをすぐに学んだのであろう。十分早めに集めておき、冬の間保存しておいた種
はおそらくは春や初夏のころに植えられたのだろう。農業の価値が学習され、耕作が食料
探しにおけるすべてのことを偶然に頼ることに満足できない集団の生活方法となったこと
をこのようにして想像できるかもしれない。農業の初期の発達において、種と作物は交換
され、収穫量や種子の発芽率、よい味といった質のよりよいものが評価されたかもしれな
い。より優れた農民は選別を行い自らの観察を記録し、異なった別の要因から種子を守る
ことによって品種改良の最初の段階に踏み出した。ブリテンにおけるこのような農家の家
系は初期の農業雑誌や日記に記録されている名前が与えられた。
近代の品種改良はエンドウを使った遺伝実験でのメンデルの観察の再発見にその起源を
持つ。後に遺伝子と呼ばれるメンデルの要因は遺伝が個々のものであり、インクと水が混
ざったときのような特徴の一体化の結果によるものではないということを示した。
イギリスのケンブリッジで働くBiffen1氏は、さび病に対する小麦の抵抗力がメンデルの
特性のように遺伝することを証明した。彼に続く人々は、私たちが食べる多くの食品作物
の病気にたいする抵抗力の形を作為的に選ぶというプロセスを始めた。もしも農家で栽培
されているものの中に十分な品種が見つかっていないものがあったときは、必要なものを
見つけるために関係のあるまだ開発されていない野生の品種を集め、スクリーニングした。
また、植物調査者や収集家たちは遺伝子バンクや植物園に保存するために種や生きた植物
を送ったり返したりした。これらの遺伝子的な種のたくわえは、オリジナルの、時には間
接的な、収集場所をそれ以上十分にたどることができない遺伝子的な変種のもととして、
保存されるようになった。現在の遺伝子バンクの中で最もよいところは、コンピュータ化
されたデータバンクによってすべての品種の起源と特徴を教えてくれる詳細な一覧を維持
しているところである。なぜなら、時を減ると種は劣化してしまうため、保存物の新しい
種を一新して貯蔵物がプラントブリーダー達やそのほかの人々 2にとって役立つものを維
持するために、定期的に種をまかなければいけないからだ。
20世紀はじめの品種改良が勢いに乗ったときの交配や選別の過程で、作物は本来持つ
ものとは別の多くの特徴を含むようになった。これらすべての企画には収穫物の収穫量や
質を改善したり、作物が育てられる場所への適応力を最大化するために環境的なストレス
に対する抵抗力を選んだりするという共通の目的があった。品種改良プログラムによる生
産物の試験を行った最初の消費者は品種改良を行った人々自身である。彼らは収穫量が少
なかったり品質の悪かったりするものを捨てることで、より優れたものを保存し、最も満
足できるものと比べた。そして改善点は残され、さらなる交配に使われた。最終的には市
場が何に価値があるのかを決定した。今日育てられている農作物は品種改良の多くの段階
の蓄積の結果である。しかし、病気への抵抗力における品種改良での初期の成功のあと、
病原菌もまた変化できるということが発見された3。人の持つ病原体が抗生物質に抵抗でき
る形に発達したように、植物の病原体も以前の抵抗力のある変種を攻撃できる突然変異の
形へと進化したのである。小麦のさび病の原因を研究していたカナダの植物病理学者であ
るJohnson氏4はこのプロセスを人が導いた進化だと評した。
近代の最初の品種改良プログラムのほとんどは大学や専門施設で公的資金を使って行わ
れた。個人的なプラントブリーダーも存在はしていたが、彼らが育てた品種を保護する法
律が最初は存在していなかった。1930 年代に導入された雑種のトウモロコシはこのことを
劇的に変化させ始めた5。それぞれの雑種の親世代のものが秘密裏に売買されるようになっ
たため、農家によって蒔かれるF1 雑種の種を準備するために、とうもろこしの近親交配を
した血統の所有者が維持していた、どのようにしてそれを作るかという知識が使われた。
農家は作付けをするために新しい種を毎年購入しなくてはいけない。もしもまかれた種を
農家が農家自身の作物から保護したら、遺伝子と染色体分離による遺伝形態の混合が引き
起こされるかもしれなかったのである。
1950 年代の北アメリカとヨーロッパにおけるプラントブリーダーたちの権利の導入は、
プラントブリーダーの権利を認め、ある農家が作付けをするためにほかの農家が非交配種
の作物の種を売るということに対して制限を設けることで、産業としての私的な品種改良
部門の急速な発達を促した6。そして農作物の新しい耕作からの特許権使用料による収入は
さらに改良を進める企業の収入源となった。
収穫量や病気に対する抵抗力といった農業的な特徴の改良は今日の種の産業を支え続け
ているが、高油糧作物や低油糧作物や手を加えたコーンスターチなど特別な特性へと徐々
に注意が集中してきている。このような特性は市場におけるプレミアムの価値を支配し、
新しい技術を応用するユニークな機会を提供してくれるかもしれないのである。
3、
品種改良とバイオテクノロジーとの比較
従来の品種改良ではブリーダーが掛け合わせるために探し出した異なる個性を持ってい
ると思われる異なった親同士の間での交配を行っていた。導入できる個性の数と種類の主
な制約とは交配されている植物の間の性的な適合性である。もしもそれらの植物が遺伝学
的に遠かったり無関係であったりすれば、交配によって種を得られる可能性は非常に低い
ものとなる。たとえ種が得られたとしても、その種は発芽できないかもしれないし、その
種からできた植物には繁殖力がないかもしれない。たとえばトマトの品種改良をする時に
は新しい遺伝子種の主な源とされるのは栽培されている同じ Lycopersicon esculentum
種の違うものか、性的に適合性のあるLycopersicon の違う種のものである7。表 1 は伝統
的な品種改良によって導入された病気に対する抵抗力の特徴のリストである。栽培されて
いるジャガイモを含むSolanum属に属する種は関係あるにはあるが、トマトと交配を行っ
て種を作るほどには充分に近い関係ではない。こういった受粉による受精が起こるとして
も、その受精卵は発育不全だったり発芽できる種ができなかったりすることがよくある。
ただし、時としてそれとは別に未成熟になった交配種の胚については、その胚を切開して、
若木へとさらに成長させるための栄養媒体においておくことで助けることができる8。
親世代の交配により次世代において繁殖力を持った作物ができたとき、その子世代はブ
リーダーの目標との一致に応じて選別される。また、親たちの遺伝子の多くが異なってい
る場合、多くの異なった分離している形態の間で個性の明確な結合がまれにおこる。した
がって、ブリーダーたちは遺伝子的に分離した子世代の大きな集団を使って研究を行わな
くてはならない。これらの集団は形や質、収穫量、それに害虫や病原菌に対する抵抗力が
要求される域まで近づいている植物を選択するためにスクリーニングしたものである。こ
れらの選択のプログラムは厳密なものであり、有効になるためには安定して要求される性
質を目的の作物が遺伝していくこと証明するために季節を通じて何年も続けて行わなくて
はいけない。たとえば冬小麦の場合、品種改良の大きなプログラムは毎年 1000 交配がな
されているが、新しいものはできないし、だいたい 8 年から 10 年たって始めて変種の証
明が終わるのである9。
品種改良の結果として、毎年数百の作物の新しい種類導入されている。変種の登録と国
の試験とを要求する国々には毎年導入されているそれぞれの作物種の新しい作物の数につ
いての正確な統計がある。新しい導入物が種の販売におけるブリーダーの特許物としての
資格を得るためには、国による試験で収穫物の特殊性や均一性、安定性、それに収穫量や
質が調べられる(表 2)。新しい作物を作るために 6 年から 10 年ほどかかるかもしれない
ということが考えると、新しい作物の商業的な寿命は短いことが多い。イギリスではちょ
っとした穀物がそのほかのさらに優れたものにとってかわられるまでの商業的な寿命は 5
年から 7 年ほどである。また、合衆国におけるとうもろこしの交配種の商業的な寿命も同
じくらい短い。
プラントブリーダーによって使われている種のほとんどは、初期の世代の農家やブリー
ダーによって作られた農作物や農業種を含む遺伝要素のコレクションや、農作物の期限の
地理的中心から集められた関係のある野生種や、今日の成功した種会社が発達させた原料
から来ている。生殖質バンクが保持している変種の多くは進化の間に自発的な突然変異か
ら生じたものである。突然変異とは DNA の遺伝的な変化であり、ひとつ以上のヌクレオ
表2
1995 年にヨーロッパの目録に登録された主要農作物の新種数
作物
アルファルファ
新種数
26
ワタ
9
アマ
12
トウモロコシ
233
エンドウ
28
ナタネ
43
ソルガム
25
ダイズ
24
ヒマワリ
89
コムギ
114
野菜(46種)
1760
合計
2363
1994 年 12 月 1 日現在
チドが消去されたり別のヌクレオチドに置き換わったりすることである。突然変異が選択
的なメリットを与えてくれる場合、それは生き残り、ある範囲においてはそれまでの形に
取って代わることもある。ほとんどの作物で自発的な突然変異が起きることをブリーダー
は見てきており、時には特質の遺伝のためにそれらを選択することがある。たとえば果物
の木で、いわゆる枝代わりはその果実が異なった色や形を持つことが知られている。ピン
ク色の果肉をもつグレープフルーツやデザートのりんごの異形はこのような方法で作られ
たのである10。
普通は低い突然変異の頻度を増やすことに関心が向いてくるのは、もっともなことであ
る。そこで、ひとつの方法としてDNAを変化させるために突然変異原と呼ばれるある化学
物質の特性やイオン化放射能(X線やガンマ線、ニュートロン)の使用がある11。しかし、
このように誘導された突然変異の大半は有害なものである。突然変異原の取り扱いの結果
できあがった苗木の数多くが新しい形を見つけるために簡単にスクリーニングできる作物
においては、病気や除草剤に対する抵抗力を回復させることにおいてわずかな成功例しか
ない。人工的な培地において培養されている、組織化されていない植物の癒合組織が分裂
組織を再生し、芽を出せるようにしたとき(図1)にそのほかの方法では観察された自発
的な突然変異を使用する。回復する植物は形態やそのほかの特徴において、かなりのこと
をよく示す。このソーマクローナルバリエーションの多くは限られた現実的な関心しかな
いが、新しく選りすぐれた品種を生じさせる役に立つ形態が回復してきたのだという主張
がある。
繁殖力のある、二倍体の、除草剤に対する抵抗力を持った作物が得られた除草剤を含ん
だ培地において培養された、科学的な突然変異を起こしたBrassicaという花粉の小胞体の
場合のように、組織培養や突然変異誘発は組み合わされてきた12。1964 年から今まで、誘
発させた突然変異を通して誘導された少なくとも 14 の新しい作物がカナダにおいて登録
された。これらの中にはエンプレス大麦やレッドウッド 65 フラックスやシャムロックア
ップル、アーリーブレンヘイムアプリコット、サンバーストスウィートチェリー、それに
ステラーキャノーラを含んでいる11。
4、
植物の形質転換
組み換えDNA技術は性的適合性による障壁を克服した。この技術のおかげで、今ではト
マトの遺伝情報だけでなく、ほかの生物の遺伝情報もトマトに導入することが技術的に可
能である。植物でないものの遺伝子は植物細胞によって効果的に処理されうるように実質
的に作り変える必要があるが、ウイルスやバクテリアや菌類やその他の植物やその他の生
物の遺伝子を導入することができるのである。異質なDNAを植物に導入するプロセスは植
物形質転換と呼ばれている。下記のものは作物の植物形質転換にあまり精通していない読
者に案内しようとするときに使われる主要な方法の簡単な記述である。International
Food Biotechnology Council13による初期の出版物はこのことと遺伝子処理された食物の
別の側面とをより詳細にカバーしており、ずっと多くの参照文献を作っている。
遺伝子の形質転換を行う技術は約 15 年前に発達した14。いくつかの方法が使用されたが、
すべての方法が適切な培地での組織培養に頼ったものだった。葉や茎や根のような認
識できる組織が形成されていない組織化されていない細胞(癒合組織)によって組織培養
は成り立っている。しかし特別な培養条件の下では全体的に繁殖力のある植物が再生され
うる新芽を発達させる小さな組織化された分裂組織を形成できることがある。
双子葉植物(一般に広い葉を持っており、草の持つ長くて幅の狭い皮ひもの形をした葉
を持たない)に一般に使用される形質転換の方法は、クラウンゴールバクテリウムである
Agrobacterium tumefaciensに頼る方法である15。これは双子葉植物の組織の傷を侵略す
る植物の病原菌である。このバクテリアは自らのDNAの小さな切片を宿主の染色体で一箇
所以上の不可欠な部分となる細胞の細胞核へと導入する。実際にこのことはバクテリアに
とっての避難場所を作る伝染病の場所における腫瘍やこぶの形成という結果を生じる。実
験室においては、クラウンゴールバクテリウムのtumor-inducing(Ti) DNAがそれ以上の病
気の原因とならないように無害にした。これは腫瘍の細胞形成の元凶であるTiプラスミド
が運んできた遺伝子を除去することによってなされた。これらの遺伝子を除去した後にの
こったものはすべて、外来のDNAが結合されうるそれらのものの間にいくらかのDNAの
基礎とともに宿主の細胞核に組み込まれるDNAのかけらのあちこちの限界や 境界線 で
ある。境界線の中に外来のDNAを運んでくる無害化されたTi DNAは依然として組み込ま
れはするが、腫瘍は形成されない。導入されたDNAを持つ細胞は正常である。この方法で
欲しいDNAは無害化されたTi DNAの中に接合され、宿主の細胞の細胞核へと運ばれると
きに宿主の染色体の不可欠な部分となる(図2)。もし導入された遺伝子が適切な調整する
要素やプロモーターを持っていたり、それらが遺伝子に張り付いていたりした場合、それ
らは宿主の作物の成長の適当な段階の適切な組織(例:葉や花、実や種)において発現す
る。
クラウンゴールTi DNAによる組み換えの能率は低い。トランスフォーミングバクテリ
アに接した宿主の細胞のうち 10,000 から 100,000 に1つのみで形質転換されるのである16。
もしも形質転換されていない細胞が成長できた場合、それらは形質転換された細胞を閉め
出してしまう。それゆえに、形質転換されてきた宿主の選択の方法が必要とされるのであ
る17。培養中の多くの双子葉植物の細胞は抗生物質のカナマイシンに敏感に反応する。も
しもTi DNAもカナマイシンに対する抵抗力を持つ遺伝子(一般に土のバクテリアが持つ
遺伝子)を遺伝子がいつでも発言される原因となる構成力をもった植物プロモーターとと
もに運んできたとしたら、抗生物質を含んだ組織培養の媒体においてこの遺伝子を持つ細
胞だけが成長するだろう。そして形質転換していない細胞は殺される。抗生物質に抵抗力
を持つ作物には農業的な価値はない。しかしながら、有用な遺伝子がカナマイシンに抵抗
力を示す遺伝子と結合していた場合、カナマイシンに対する抵抗力を示す形質転換された
組織がそのほかの遺伝子を持ち、発現する可能性は高い。
形質転換の
生物学的
方法はAgrobacteriumを使う方法に変わる方法であり、病原菌
に感染しにくい単子葉植物に対してしばしば使われる方法でもある。この方法は爆発的な
量で高圧のヘリウムや放電を使って部分的な真空の中にある組織培養細胞のほうへと加速
されたトランスフォーミングDNAをコーティングした微細な金やタングステンの微粒子
を使う18(図2)。DNAにコーティングされた推進体の入った細胞の小さな部分は形質転換
される。もしそれらが標準的に植物を殺してしまう除草剤に対する抵抗力といったような
適切で選び出すことのできる目印を持っていた場合、それらは形質転換されていない組織
という背景から選び出され植物全体を回復するために再生されうる。この方法による変異
体は炭化珪素の微粒子や色ガラスと渦ミキサーとをDNAを宿主の細胞に運びこむために
使う。
またほかの方法では硬い細胞壁が酵素処理によって取り除かれた培養された細胞の原形
質体を使う。適切な新党物の中に浮遊する原形質体が電界で脈打つときDNAはDNAの自
然な取り込みやエレクトロポレーションによって細胞の中に入る19。外側の原形質体の細
胞膜がDNA分子に対する細胞の透過性を大いに増やすとき短い電流の流れが小さな穴を
開くのである。
5、
植物の形質転換と作物の改良
最初に、作物の改良における遺伝子工学の使用に対する主要な限界は有用な数の作物を
回復するために十分に高い頻度で形質転換を起こすことの難しさである。細胞系を培養す
る確実な方法の発達には大変長い実験を必要とした。また、この方法はある作物種の個々
の品種に対する特異性に適合するために調整を必要とした。穀物の場合は特に難しいとわ
かった。米 20や小麦 21に対する方法は最近になってようやく発達し、除草剤に対する抵抗
力という目印を使うことで促進しており、まだ決まった手順になっていない。表 3 では現
在まで首尾よく形質転換された植物を載せてある。
別の限界は形質転換プログラムに使われる遺伝子を分離し、特徴付けるところにある。
植物分子生物学の発達まで生化学やプラントブリーダーがほとんどの興味を向けた特徴の
遺伝子操作に対する理解はほとんど進歩しなかった。この詳細な知識を使ってのみ、植物
の改良で結果を出すだろうと思われる変化を企画し、デザインすることができるのである。
6、
遺伝子のクローニング
最近の植物分子生物学の多くは植物の成長と新陳代謝に必要となる遺伝子の同一化と分
離を含んでいる。このほとんどが性質と含まれている多くの小道の制御を確立させるため
の基礎的な研究である。ブリーダーにとっての主な興味を向ける特質の多く(たとえば収
穫量や干ばつ、ストレスに対する耐久力など)は多くの遺伝子によってコントロールされ
ている。食糧生産物を増やす変化をどこでどのようにさせるかということの分析はかろう
じて始まっている。分離され、植物に導入されてきた最初の遺伝子のいくつかは表 4 に載
せておいた。これらの生産物のいくつかはすでに商業的に利用されているが、一方でその
ほかのものもあと数年で商業界に出回るようになるだろう。現在のところ品種改良のプロ
グラムの中で使われている形質転換によって導入された特質のいくつかについて次の項で
説明する。形質転換によって組みかえられた植物は形質転換したとか遺伝的に処理された
とか言われる。遺伝子組み換えという専門用語が時々使われるが、このことは品種改良に
よって改良されてきたどんな生物にも同様に適用することができるのである。
7、 遺伝子サプレッションテクノロジー
DNA の転写は分子に沿って 5´末端から 3´末端への一方方向にのみおきる。暗号化し
た配列が DNA の中で進入してきた命令によって書き込まれたとしたら、転写はセンス鎖
から起こる代わりに DNA 分子のアンチセンス鎖から起こる。結果としてアンチセンス型
の mRNA が作られ、それらは細胞の中の普通の遺伝子によって作られたセンス形の RNA
にくくりつけられる。束縛は正確な基盤の組み合わせによって起るので非常に明確である。
二つの mRNA の形が互いに衝突しあうとき、その衝突はアミノ酸配列に対する標準的な
レベルの転写を妨害する。結果として、遺伝子作成のレベルは大きく減少し作り変えられ
た表現型に帰着する。
U.S. Department of agriculture(USDA)とFood and Drug Administration(FDA)による
次のレビューは、そのようなアンチセンス型の構成物をもつトマトが 1994 年に合衆国で
導入されたことについてである。このトマトはポリガラクトロナーゼ(PG)に対するアンチ
センス型の遺伝子を持っており、その上で正常なセンス型の遺伝子も持っている22。PGは
果実が自然に熟するうちに作られ、いったん完熟すると起こる軟化の部分的な原因となっ
ている。この酵素は果実を組織する細胞を一緒に持つ物質を崩壊させる。アンチセンスPG
遺伝子を持つトマトは果実の熟成の間でのPGのレベルを著しく減少させた。果実の熟成と
ともに標準的に起こる軟化のプロセスにおけるいくらかの遅れをこれらの植物によって作
られる果実は見せる。軟化が果実をだめにする前に完全に赤く熟れた段階の果実の実物そ
っくりにそのアンチセンス遺伝子の合計を 5dにすることで収穫前に蔓になったまま熟す
ることができる。
抗生物質のカナマイシンに対する抵抗力を示す選択遺伝子も持つ無害化されたTi プラ
スミドベクターを使った形質転換によってこれらのトマトは作成された。ビタミンAやC
といった重要な栄養素と同様にアルカロイドトマチンのようなトマトの中に標準的に見つ
かる周知の有害な複合物のレベルがそれの起源となる培養物と違いがない、ということの
詳細な証拠がFDAに提出された。処理された種にはトマトが果実を含むすべての組織で酵
素のネオマイシンホスホトランスファーゼⅡを作る原因となる選択的遺伝子が利用されて
いる。この酵素はカナマイシンの効力を減らし不活性にする。ネオマイシンホスホトラン
スファーゼが哺乳類に有害であることは知られていないが、そのかわりたとえカナマイシ
ンがほんのまれにしか人類医学で使われないとしても抗生物質の臨床使用を妨げるネオマ
イシンの潜在能力に注目が集められている。酵素はその活性を破壊する消化器官の中で急
速に破壊されていく。消化器官の中の食物から消化器官のマイクロフローラの一部をなす
微生物に遺伝子が転写するという証拠は何もない23。FDAはそのトマトには危険はないと
結論を下し、販売における制限や遺伝子工学の製品というラベルを貼れという要求を課さ
なかった。こうして、このトマトは合衆国における初の遺伝子組み換え食品として 1994
年に取引された。
アンチセンステクノロジーの発見からセンス型の構造体を持つ遺伝子組み換え作物に
おいてしばしば遺伝子の抑圧が起きるということがわかった。トランスサプレッションと
かコーサプレッションとか呼ばれている技術は特定の遺伝子の活性をなくする型にはまら
ない、時としてよりシンプルな方法を提供してくれる24。最近、エチレンの生成を減らす
ためにコーサプレッションを使った木で熟したトマトはFDAのレビューの後に合衆国で
売り出されるようになった。アレルギー要因の背景において、たんぱく質を暗号化する外
からの遺伝情報が遺伝子サプレッションテクノロジーによっては、ほとんどもしくはまっ
たく導入されないため、ほかの遺伝子(下記を見よ)の偶然の分裂による不特定の影響や
形質転換を選択するために使われるマーカー遺伝子の生成物からはリスクだけが生じるよ
うである。
8、 除草剤に対する耐性
先進世界の農業において、雑草のコントロールはもっぱら作物には害がないが主要な雑
草を枯らしてしまう農薬が使われる。初期の除草剤のいくつかは環境への望まない効果を
持っていたが、多くのものは使用量が非常に少なくてすみ、土壌にいる微生物にすばやく
分解されるため環境に持続しないより新しい農薬へと使い代えられた。これらの農薬は成
長している作物にのみ使える。そのほかの作物には使えないのである。たとえば広く使わ
れている除草剤であるグリホセイトは望まないすべての植物を枯らしてしまうように作ら
れた一般的な除草剤であるため、どの作物に対しても直接使用することができない。除草
剤の働き方の分析はそれらに対する抵抗力を示す遺伝子の発見へと行き当たった。例えば
これらのことには、除草剤のために不活性になることがない重要な酵素の作りかえられた
形の代用や、除草剤を減殺する遺伝子の使用も関係している25。抵抗のメカニズムが知ら
れているため、決定力のあるたんぱく質の変化の性質もまた知られており、従来の品種改
良よりもずっと高い精度で可能である。除草剤へ耐性の利点は、抵抗力を持たせるための
遺伝子を導入するための形質転換の後で使用される培養の媒体の中に除草剤を混ぜること
で、直接選び出せることである。除草剤に対する耐性の変種は除草剤のより選択的な使用
を促進し、減反のような土地の保存の実践を促進するだろう。
9、 病気に対する抵抗力
作物の発達において、先天的に病気や害虫に抵抗する品種をブリーディングすることに
かなりの努力が費やされている。殺虫剤に対する幻滅が大きくなってきていること、それ
らの環境への影響、いくらかのものが人の健康に害を与えるかもしれないということの認
識は遺伝子での抵抗力に対する興味を大きく高めた。抵抗力を持った作物種を発達させて
いくための方法に徐々に影響を及ぼしていくと思われる作物の病気に対する抵抗力の性質
やメカニズムについての活発な研究がなされている。今でも非常に広くなされている伝統
的な方法は、他の品種や関係のある原生種を探し出すために生殖質を調べたり、病原体を
摂取した時や高いレベルの病気の感染に耐える状態にさらされた時に高くて役に立つレベ
ルの抵抗力を見せてくれる個性的な植物や集団を見つけたりするというものである。最も
期待できる抵抗力の付加は、商業的な利用に適する遺伝子交配を保つ一方で、抵抗力を持
つ遺伝子を分離するための交配のプログラムを始めるためにひとつ以上の現在の品種を掛
け合わせることである。このことは少ない収穫量といったような悪い特徴のせいで、10 年
以上はかかる長くてうんざりするプロセスになった。しかしそのプロセスは主要な効果を
持つ優勢の抵抗遺伝子の選択を促進するプロセスでもある。不幸なことに、こういった遺
伝子はこれらの遺伝子に影響されない病原種を強く選び出すので、このような遺伝子の便
利さは農業において短命であることが非常によく証明されている。何人かの著作者はそれ
がより安定して長持ちする土壌において、マイナーな遺伝子の抵抗力の選択をすることを
主張している26。
メカニズムの変種は病気への抵抗力にとって重要である。すべての植物には防御反応の
行動を取る能力がある。その反応は病原体として見つけられた有機体によって傷つけられ
たり、損害を受けたり、侵略されたりしたときに始まる。最初の反応のひとつは病原反応
(PR)たんぱく質と呼ばれるたんぱく質のグループの発現である27。だが、PRたんぱく質の
役割と機能は充分にわかっていない。反応の次の段階では、侵略してきている微生物の成
長を抑止するさまざまな化合物が形成される。この段階にフェニルプロパノイド新陳代謝
の生成物も含まれている。また、体系的な反応を合図する化合物を生成することの強力な
証拠もある。これらの反応は最初の侵略場所からの少しはなれたところで、同じ葉の別の
場所だけでなく違う葉や植物の別の部分でも効果がある。この現象はsystemic-acquired
抵抗と呼ばれ、病原体から植物を保護する上で重要な役割を果たしているように見える 28
−30
。
もっともなことではあるが植物分子生物学の初期の目的は病気に対する抵抗力のため
の遺伝子を分離し複製することであった。1994 年の夏までにとうもろこしやArabidopsis、
トマト、亜麻、タバコにおいて病気に対する抵抗遺伝子の複製に成功したという報告が数
多くなされた31−34。これらの遺伝子は菌の毒性を不活性化するとうもろこしの酵素35のよ
うな病気に対する抵抗反応のこのような構成要素にとって重要であるようであり、無毒性
の対立遺伝子を見つけると推測上で認識されているたんぱく質は菌やバクテリアの病原菌
によって運ばれる。
自然に存在している抵抗遺伝子が病気に対する抵抗力のためのブリーディングを加速
する方法として遺伝子工学作物で使用されるために分離されると思われる範囲は調査中で
ある。しかし、このアプローチは非常に成功した、さらには非常に安全な従来のブリーデ
ィングのアプローチによく似ているので、アレルギーを引き出すというリスクは低いよう
に見える。たとえ豆などのアレルギーを引き起こすことが知られている作物から得られた
抵抗力のための遺伝子であっても、その遺伝子製品は市場に出る前のテストで潜在的なア
レルギー起因の可能性まで評価されるだろう。
(詳細は以下の大豆についての例とこの出版
物にある Dean D.Metcalfe 氏他による”Assessment of the Allergenic Potential of Foods
Derived from Genetically Engineered Crop Plants”を見よ)
従来の品種改良において、病気と害虫に対する抵抗力の培養を特別なテストのために選
出することはなかった。なぜなら、この方法によって危険性が導入されたということの形
跡がほとんどなかったからである。従来の品種改良のプログラムによる生産物はその製品
が一般的に安全なものとして認識されるかどうか(GRAS)ということの市場に出る前の
承認が要求されない安全性の基準によってかばわれてきた。食品作物の残留殺虫剤による
危険についての討論において、われわれの日々の食事において生じる毒性物質のレベルは
非常に多くの懸念の原因となる微量の殺虫剤よりもずっと高いということを主張する人が
いる。また、同じ食品作物において自然に生じるアスコルビン酸(ビタミン C)やリボフ
ラビンなどの抗毒性物質がこれらの毒性物質の影響から人間を保護しているということも
示唆している。
10、 病気や害虫に対する抵抗の新しいメカニズム
A、 ウイルスに対する抵抗
重要で植物にダメージを与える数多くの病気はウイルスが原因である。これらの多くは
アブラムシや樹液を吸うことによって食事するものなどの虫によって運ばれてくる。タバ
コのモザイク病の遺伝子の原因となるウイルス(TMV)に対するコートたんぱく質遺伝子
を宿主作物に導入した場合、その表現系はウイルスの増幅と系統的な拡散を阻害するとい
うことが 1986 年にPowell-Abelら37によって発見された。これはウイルスの伝染に対する
植物の抵抗力を作り出した。ほかの人たちはすぐにこれが数多くのほかのウイルスとその
宿主とでも当てはまることを証明した38,39。効果的なウイルス抵抗はそのときまでほとん
どなかったので、この発見はウイルスによる病気を制御するための新しい方法の先触れで
あるとみなされた。可能で商業的な応用のひとつはきゅうりのモザイクウイルスやスイカ
のモザイクウイルス、ズッキーニイエローのモザイクウイルスのコートたんぱく質遺伝子
のかぼちゃへの導入である40。処理されたかぼちゃは 3 つすべてのウイルスに抵抗するが、
ウイルスたんぱく質はかぼちゃの実のすべてのたんぱく質のうち 0.1%以下しか構成して
いない。このことは、広範囲に及ぶため一般に消費されているウイルスが自然に伝染して
くる植物の幾分高いウイルス含有量と比較される(表 1 を見よ)。これらの生産物はアレ
ルギーを引き起こさない。
ウイルスに対する抵抗力の別のアプローチはレプリカーゼを暗号化するウイルス遺伝
子のクローニングを含んでいる。これはウイルスが自身のゲノムRNAを複製するために必
要とする酵素である。多少驚くべきことに、ウイルスのレプリカーゼを表現する植物は関
係のあるウイルスに対して抵抗力を示す。そしてこれは過剰なレプリカーゼが整然とした
ウイルスゲノムの複製を邪魔するためであるとみなされている41。隣接した宿主細胞につ
ながるプラスモデスムのルーメンを拡大するのに重要であると思われる特定のたんぱく質
もウイルスは生成する。この拡大はウイルス微粒子が系統的な伝染を確立するために細胞
から細胞へと移動できるようにするのに必要なことである。ウイルスの移動たんぱく質に
対する遺伝子は宿主植物の中で複製され表現され、ウイルスのたんぱく質の移動を阻害す
ることができるため、これによって抵抗力を与えているのである42。
B、 菌の病気に対する抵抗
多くの病原菌の細胞壁はキチン質でできており、ある宿主植物たちはキチナーゼ作るこ
とによって菌の伝染に反応しているということの観察は、この酵素を本質的に表現する新
しい形質転換した作物の製作を拡大してきた。キチナーゼ遺伝子のさまざまな源にはそれ
を含んでいる他の植物(豆)やバクテリア(Serratia marcescens)を使用している。面白
くて潜在的に見込みのある結果が報告されているが43、実用においてこれを菌の伝染に対
する主要な防御として使用する培養はまだひとつもない。
C、 虫に対する抵抗
Btは成功した商業的な、土壌のバクテリアであるBacillus thuringiensisのいくつかの菌
株によって作られた結晶体タンパク質のうち毒素を基にした生物殺虫剤である。敏感な虫
の幼虫によって摂取されたとき、殺虫タンパク質が裂け、分子の活性部分が幼虫の腸の刷
子縁膜に付着する44。結果として腸壁は半透性のその特性に負け、その虫は血リンパを空
洞につないでしまい脱水状態に陥り、ついには死んでしまう。異なったグループの虫にと
りわけ活性のある数多くの異なっていて認定されているB.thringiensis内毒素たんぱく質
が存在している 45。たとえばcryⅠたんぱく質は数多くの鱗翅類の幼虫に効き、一方でcry
Ⅲたんぱく質は甲虫類の幼虫によく効く。CryⅠタンパク質を含むBt殺虫剤の広範囲にわ
たる使用では人間に対する毒性やアレルギー性についての形跡は見られていない 46,47。し
たがって、生物学者たちは本質的なプロモーターにつなぎ合わさった様々な殺虫タンパク
質を暗号化するB.thringiensisを形質変換した作物を無視の攻撃から守るために使用する
ことを切望した。現在のところこの戦略は、ワタミハナゾウムシの攻撃から綿を守ったり、
コロラドポテトビートルの攻撃からジャガイモを守ったり48、ヨーロッパアワノメイチュ
ウの攻撃からトウモロコシを守ったり49するために使われている。
食物のために使用される作物の組織でのBt毒素の使用には話されなくてはならない問
題点が増えている。明らかにいろんな場合において、使用されているタンパク質の形質が
人間や家畜にとって無害であることや、そのタンパク質がアレルギーを引き起こさないと
いうことの満足のいく証拠がなくてはならない。ジャガイモやとうもろこしや綿を含むい
くつかのBtを基にした形質転換作物は市場への導入が近づいている(表 4 を見よ)。これ
らBtを基にした作物について、虫に対する抵抗力を持ったジャガイモはUSDAのレビュー
とFDAの協議が完了し、U.S. Environmental Protection Agency(EPA)によって認可さ
れた50。EPAはB.thuringiensisの亜種であるtenebrionisからとられる殺虫Btたんぱく質の
安全性について、アレルギーを引き起こす可能性も含めて(安全な使用の歴史とそれが消
化作用に影響を受けやすいことをもとに)はっきりとした評価をし、重大な懸念はないと
みなした。Btを基にした害虫に対する抵抗力を持つとうもろこしと綿についてもUSDAと
FDAとEPAのレビュープロセスが 1995 年に完了した。いくつかの場合では、殺虫たんぱ
く質の表現は特別なプロモーター組織の使用を通して消滅させられるある組織に制限され
うる。Btはジャガイモの早く木で発現されうるが、塊茎においては作られない。殺虫遺伝
子の発現が虫にかじられることが原因であるような傷に反応してのみ起きるようにするた
めにその遺伝子をデザインすることもできる。こういったどんなシステムも経済的に便利
な制御ができなくてはならない。
どんな殺虫剤の使用も連想される重要な問題点はもし害虫が抵抗力を発達させるなら
その有効性が損なわれうるということである。たとえばBtを表現しているかなりのエーカ
ーの作物は比較的殺虫たんぱく質の影響を受けにくくなっているどんな虫に対しても強い
選択圧をかけているようである。Btに対する抵抗力はBt殺虫剤の広域使用がされていると
ころのdiamondback mothに観察された51。殺虫剤は紫外線(UV)光によって減成され、
雨によって葉が洗い流されるために自然界において比較的短命であるので、このことは選
択が比較的激しくないという事実にはかかわらないことである。形質転換作物において構
成プロモーターの制御下では、Btの発現は植物の一生を通して不変である。Bt作物の開発
者は抵抗力のリスクに気づき、Btを効果のある生物殺虫剤として保つことが実行されるこ
とを必要とする特別な管理の実行を推奨した。
虫に抵抗するために採用されている別の戦略はささげの生殖質や貯蔵された穀物を攻
撃する蛾の幼虫に対して非常に抵抗する種の毒素コレクションから分離したトリプシンイ
ンヒビター遺伝子の使用である52。幼虫が食べることによって摂取される植物のたんぱく
質の消化を妨害することによって、この遺伝子を発現する形質転換植物は適度に高いレベ
ルの抵抗力を見せてくれる。トリプシンやその他のプロテインインヒビターは私たちの大
半の食べ物や食用作物の多くの一般的な構成要素である。しかしながら、大豆に含まれて
いるクニッツトリプシンインヒビターはアレルギーを引き起こす原因になることがとりわ
け知られているので、新しいトリプシンインヒビターを含むどんな形質転換食用作物も安
全性を保障するためのテストが必要とされる。そのため、適切な抵抗力管理の戦略はどん
な形質転換作物に対しても発達させる必要がある。
Bt と ト リ プ シ ン イ ン ヒ ビ タ ー の 両 方 と も Federal Insecticide, Fungicide and
Rodenticide Act (FIFRA)とFederal Food Drug and Cosmetic Actの規定の下でEPAが 植
物殺虫剤
として規制しようとしている生物殺虫剤の例である53。
11、 特質:増強タンパク質の内容と改造タンパク質の発現
A、 とうもろこしと大豆
いくつかの欠乏は植物のたんぱく質のアミノ酸組成が人や動物にとっての栄養の理想
の組成と比較されるときに確認される。たとえば、豆のタンパク質は重要な硫黄アミノ酸
であるメチオニンとシステインが理想の組成よりも少ない。大豆のあら引き粉がベースで
ある家畜のえさは栄養学的に十分な食事を供給するためにメチオニンが補われなくてはな
らない。家畜に与えられるとうもろこしのあら引き粉はアミノ酸であるリシンを限定的な
量しか含んでいない。多くの研究グループはこれらの問題に焦点を当てた。たとえばとう
もろこしの粒においては、opaque-2 と呼ばれる突然変異体においてリシン含有量が増加し
た54。より多くのリシンを含むえさを作り出すために品種改良でこの遺伝子を使用するこ
とにかなりの労力が費やされてきた。貯蔵穀物へのその他の影響とリシン遺伝子に密接に
関係している農学的特質のために、微生物によってリシンを補うえさの製造についての競
争におけるこれらの努力はそれほど成功しなかった。Messing氏と彼の同僚たち 55はとう
もろこしの内胚乳の特定のメチオニンリッチタンパク質の量を選択的に増加させることに
よって穀物のメチオニン含有量を改良するという別のアプローチを使用した。
大豆においては、Townsend氏ら56は木の実の中に見つかった 2Sタンパク質を暗号化す
るブラジルナッツから複製された遺伝子を使用し、形質転換によってこの遺伝子を導入し
た。ブラジルナッツの 2Sたんぱく質は 18%のメチオニン含有量を持つ。そのタンパク質
は形質転換された大豆の種において発現し、栄養学的な質において意義のある改良となっ
た。同じ遺伝子は種の粉のメチオニン含有量が 30%以上にまで増えているキャノーラ(ア
ブラナ)でも発現する57。しかしながらブラジルナッツは一部の敏感な個体にとってアレ
ルギーの原因になるため、開発者たちは 2Sタンパク質のアレルギーを引き起こす可能性に
ついて調査した。大豆から得られる発現した 2Sタンパク質について、RAST抑制検査と免
疫に使う 8 つのブラジルナッツに敏感な個体の血清から得られた免疫グロブリンE(IgE)
に対するテストが行われた58。8 つの血清のうち 7 つは 2Sタンパク質を見抜き、ブラジル
ナッツが重大なアレルギー要因物質を持っているであろうということを示唆したため、
1992 年のFDAの方針 59に従って生の食品に使われているのか加工された食品に使われて
いるのかラベルを貼ることが必要とされるようになった。この制限を考慮して、この製品
の開発は中止された。
B、 米のタンパク質
一部の日本人の子供は彼らが消費する米に含まれる 16-kDaグロブリンたんぱく質が原
因となるアトピー性皮膚炎(AD)にかかる。このタンパク質は熱に強く、消化器官のタン
パク質分解酵素に抵抗する。酵素治療によってアレルギー要因が殲滅できるとしても、こ
の方法で減アレルギー要因の米を作るコストは度外視になってしまう。日本の科学者たち
はアレルギー要因のタンパク質が減らされた変異種の製作を手がけた。科学突然変異原に
よって米の種の処理に従事していたNishio氏とIida氏 60によっていくつかのこのような変
異体が分離された。農学的に良質なある変異体はアレルギー要因のタンパク質の量が約
50%まで減らされた。しかしながら、アレルギー要因の量の追跡だけをした別の 2 つのほ
とんど繁殖力がなく、それゆえ農業においてほとんど使えなかった。Izumi氏ら61はアレル
ギー要因を特徴づけ、それを暗号化している遺伝子を配列した。Matsuda氏ら62はアンチ
センスRNAを導入することで米の中の 16kDaアレルギー要因タンパク質の量の意義のあ
るほど減少させることに成功したという報告をした。この重要なアレルギー要因をさらに
減少させたり除去したりしようとするさらに進んだ研究も進行中である。似たようなアン
チセンスアプローチもピーナッツや大豆、ブラジルナッツなどの食用作物の別のアレルギ
ー要因タンパク質のレベルを減少させるために使われるであろう。
C、 小麦の内胚乳のタンパク質
ヨーロッパ人の 8000 人に 1 人から 16 人に影響するグルテンに敏感な腸疾病である小児
脂肪便症の発生に何度も気づいてきた。小児脂肪便症を持った人々は小麦や小麦粉から作
られる製品を食べることを避けなくてはならない。IgEを媒介としたアレルギー反応では
ないが、小児脂肪便症は害のあるグリアジンタンパク質への反応の欠如している小麦の変
種を育てることによって理論上は緩和できる。これらのタンパク質はサイズが 10kDaから
50kDaにまたがる比較的小さい分子である。最近の情報63ではいくつかの分子は受身的で、
繰り返されるヌクレオチド配列を運んだり分割したりするということが証明された。米の
アレルギー要因の制御は比較的単純であり、変異工学や遺伝工学のアプローチを描写する
のに役に立つ。小麦の場合、状況はもっと複雑である。単一のゲノムを持つ米と違って、
小麦は原型をなす 3 つのゲノムからなるallohexaploidである。このことは発育上の小道や
新陳代謝の小道に対する遺伝子の 3 つのセットは遺伝子制御においては余分であるという
ことを意味している。また、害のある分子も分割された繰り返しアミノ酸配列を運ぶ。こ
れらのものが腸疾病の原因であるとしたら、敏感な個体に対するそれらの衝撃を著しく減
らすといったそれらを変える仕事は不可能でないとしても難しいであろう。しかしながら、
比較的大きい分子量のグルテニンとともにグリアジンは小麦粉の焼き質を決定するので、
一般の小麦の内胚乳のタンパク質の構成や構造、分子生物学について相当な数の研究がな
されている64。
D、 組み換えオイルとでんぷん
とうもろこしや大豆、ひまわりから取れる植物油は多くの国で人間の食事の大切な構成
要素を代表しており、食事での動物性の脂の摂取量を減らすために消費者が捜し求めてき
た重要物としての地位を獲得した。油の構成はさまざまな種の遺伝的なものに影響される
のと同様にクライマックスの状態にも影響される。従来のブリーディングと選別を通して
オイルプロフィールはかなり変更されてきた。低エルシン酸のアブラナ油、そうでなけれ
ばキャノーラ油として知られる油を産出するために、野生のBrassica napusに含まれてい
るエルシン酸のレベルは 50%以上から 5%以下にまで減らされてきた65。キャノーラ油は
油の元となるすべての作物から取れる飽和脂肪酸うちでそのレベルが最も低いため、キャ
ノーラ油は健康的な油であるという評判が確立した。ひまわり種は油をドレッシングやサ
ラダオイルにするのに非常にぴったりなものとする高度不飽和脂肪酸であるリノレン酸を
高い濃度でもっているものが選別されてきた。また別のひまわり種では、揚げ物に対する
油の質を改良するオレイン酸を高い濃度で持つように育てられた66。熱処理された植物油
はタンパク質をほとんどもしくはまったく含まず、アレルギー反応を引き起こしそうにな
い。限られた数の課題についての研究は大豆やピーナッツやひまわりにアレルギーのある
ものが病的な影響なしに大豆やピーナッツやひまわりの油を食することができるというこ
とを証明した67-69。
もっと最近では、カリフォルニア月桂樹(Umbellaria californica)から取れた 12:0ACP
チオエスターゼ遺伝子が高ラウリン酸オイルを作る配列を作り出すために導入された。菓
子類においてと同様、コーヒーwhitenerや泡立てるトッピングにおいても高いラウリン酸
をもつキャノーラ油は熱帯性の油に置き換えることができる。FDAとの協議の後、1995
年にラウリン酸キャノーラの最初の作物が育てられ収穫された71。遺伝子工学を通じて作
り変えられたそのほかのオイルプロフィール(たとえば、高いオレイン性のキャノーラや
高ステアリン酸かつ低ポリステアリン酸の大豆など)も 1990 年代の後半には市場に出る
だろう71。
植物作物の質の面を向上もしくは組み換えの例はほかにも非常にたくさんある。でんぷ
んの含有量やでんぷんの構造を組み換えにおいてかなりの数の研究と成功が報告された。
ジャガイモやその他の作物においてすべての量のでんぷんがジャガイモの塊茎にある
Escherichia coli ADPグルコースピロホスホリラーゼを選択的に発現することによってか
なり増やされた72。でんぷんはアミロースと呼ばれるグルコースの線型のポリマーとアミ
ロペクチンと呼ばれるグルコースの枝分かれ型のポリマーの組み合わせによって典型的に
構成される。顆粒結合でんぷんシンターゼの量を抑えた形質変換ジャガイモではアミロー
スのないでんぷんが作られる73。でんぷんの新陳代謝でのそのほかの酵素のレベルや活性
を修正することによって枝分かれの程度を変えることができる。新しいでんぷんをはっき
りと修正したりデザインしたりする能力は濃縮剤や大きくする手段、カロリーの源、安定
剤としての食べ物の使用性を高める。でんぷんはアレルギー反応の要因とならないし、組
み換えられた酵素はすでに食べ物の中に存在しているので、これらの利用は重大なアレル
ギーの心配を増やさないであろう。
12、 一致する遺伝子変化
植物の形質転換の結果が予測されたり予定されたりする変化は描写したり確かめたり
することができるが、別のランダムの変化は予測不可能な影響を持つという懸念がある。
DNA の合体の場所や受容体のゲノムに導入される外からの DNA のコピーの数をコントロ
ールすることはできない。それゆえ、従来のブリーディングで使われた選択のアプローチ
に似ている方法において最も精力的で最も新しい特徴を表現するものを選択するために初
代の形質転換細胞を作ることは数多く作ることはいつものことである。もしも合体した
DNA が存在している遺伝子の暗号化配列を粉砕するとしたら、再生の後で結果としてで
きる作物の適合性において望ましくない結果になり、フィールドスクリーニングの間に拒
絶反応が起こる原因となるだろう。外からの遺伝子が合体する場所は近隣の遺伝子の発現
に影響を与え、それらの遺伝子を黙らしたり、黙っている遺伝子を発現させたりする。そ
してこのこともまたこれらの配列を捨てようとする植物の適合性に影響を与えるかもしれ
ない。
どちらの種類の結果でも形質転換食用作物のタンパク質のバランスと構成を変え、その
安全性についての疑問を浮上させうる。しかしながら従来の品種改良でタンパク質の変種
を導き出す自然なプロセスがある。これらのことにはいわゆるジャンピング遺伝子と呼ば
れるトランスポゾンの挿入による変異と同様に、ゲノムの混合、染色体の破損と再結合の
ための置換、全体の染色体の損失や増加を含んでいる13。これらの重大な遺伝子的な混乱
にもかかわらず、従来の品種改良には安全な製品を育ててきたという長い歴史がある。性
的交配や形質転換によって発達してきた新しい植物種は更なるブリーディングによるいく
つもの世代と土壌での機能をテストすることによる見極めとを経てきた。このことはそれ
らが最終的な使用者や加工者にとっての価値を持ち有害な特徴を持たないということを確
立した。産業によって植物の形質転換種の安全性に向けられた広範囲に及ぶ科学的調査に
よると、このような植物はFDAによる機関の 協議プロセス の下で考慮すべき課題とな
っている58。このメカニズムの下では、植物の形質転換種に消費者の健康に対する安全性
への疑問がないということの科学にもとづく保障をする機会が産業にある。
プラントバイオテクノロジーの最初の生産物が作られたときからかなりのデータベー
スが蓄積されてきた(表 4)。形質転換作物から得られた食物やえさの生産物の構成が伝統
的に育てられてきた類似物の構成と同等であるということを示している。最近の WHO の
講習会で Fuchs 氏らによって 5 つの作物と 6 つの生産物を含む 20 の独立的に形質転換さ
れた配列についての構成のデータが提出された。450 以上のこれらの植物の構成が分析さ
れた後で意味のない違いが観察された。これらの結果は遺伝子工学による新しい特性の導
入で、マーケティングに対する特別な配列を選択するために使用された従来の品種改良の
方法と組み合わせたものは、従来の品種改良から得られた生産物と同等の食品生産物を作
るということを証明した。
13、 まとめ
プラントブリーダーたちは食品供給物の安全性を維持する一方でかなりの作物の質と
収穫量とを改良することに大変成功した。この成功は選択された特徴を決定する生化学の
メカニズムに対する理解がほとんどなくても成し遂げられた。交配がなされるたびに数千
の遺伝子のうちの数十がまったく無作為に混ぜられ再構築された。交配するための血統を
選んだり、より好ましい子孫を認識したり、望ましい特徴が欠けていたり望ましくない特
性を持っていたりする血統を排除することにブリーダーの技能があった。
組み換え DNA 技術の到来によって、ブリーダーは遺伝子が入手できる生物材料の幅を
広げただけでなく、それらの遺伝子が暗号化するタンパク質の性質や作用と同様にゲノム
組織や遺伝子構造に対する新しい識見も手に入れた。こういった知識は新しい作物種の遺
伝構造を作り変えることにおけるこの上なく優れた特性を与えてくれる。たとえば害虫に
対する抵抗力は、商業的に受け入れられる無視に対する抵抗力のラインを回復させるため
に交配しスクリーニングする世代のよって除去されなくてはならないもので、特徴付けら
れておらず潜在的に毒性のあるタンパク質を暗号化する野生の同類種から得られた数千の
望まない遺伝子を導入する変わりに、単一のよく特徴付けられた遺伝子を加えることによ
って成し遂げられた。この技術はアレルギーの原因となる食物の個々の構成要素を確認し
たりそれらを食べ物から移動したり変化させたりするユニークな機会も与えてくれ、その
ため食べ物を安全に消費できるのである。
遺伝子工学を通して得られた多くの商業的生産物は環境と食べ物安全性の懸念に焦点
を置いた規制するプロセスを通して承認された。栽培者や生産者、消費者にとってこれら
の生産物は今利用できる、もしくはまもなく利用できるようになるだろう。そして、それ
らのことはより少ない科学的な入力によって作られる、栄養的な構成と質とを改良してき
た食べ物やえさを作るだろう。
第 5 章 アレルゲン性食物
Susan L. Hefle, Julie A. Nordlee, and Steve L. Taylor
Food Allergy Research and Resource Program, Department of Food Science, University
of Nebraska, Lincoln, Nebraska
Ⅰ.序論
食物中の多くの蛋白質の中での少ない割合であるが、実質的に全ての食物アレルゲンは、
蛋白質である。蛋白質を含むどの食物も、一部の人においてはアレルギー反応を引き起こ
す可能性を持っている1。しかしながら、少数の食物、もしくは、食物グループが他の食
物より頻繁な程度でアレルギーを引き起こすということが知られている。国連食糧農業機
関 (FAO)によって後援された食物アレルギーに関する 1995 年協議会で、国際的な専門家グ
ループは、ピーナッツ、大豆、甲殻類、魚、牛乳、卵、ナッツ、及び、小麦が最も一般的
なアレルギー食物であることを確認した2。これらの食物は、重大な食物アレルギー反応
の少なくとも 90%以上の原因となる。一部の新鮮な果実や野菜に対するアレルギーもある
程度一般的であるが、そのアレルゲンは加工、調理に対して不安定である傾向があり、症
状は穏やかで主に口咽頭の部分に制限される3。特定の食物に対するアレルギー反応の発
症率は、その食品が食べられる頻度、及び食事に取り入れられる主な年齢に応じて国によ
り異なる。例えば、ピーナッツは、他のほとんどの国よりも米国でより頻繁に食物アレル
ギーを引き起こしている。米国人は、より頻繁にピーナッツを食べ、そして、ピーナッツ
バターを若い頃の子供の食事に取り入れている。日本人は、他の食文化より日本の食事に
おいて大豆、米の 2 つの食物を摂る頻度が多く、おそらくこれらのアレルギーを多く経験
する2。スカンジナビア人は、同様の理由のためにタラアレルギー4の高い発生率を持って
いる。
表1は、医学文献の徹底的な調査から集められた最も一般的なアレルゲン性食物、及び、
食物グループのリストを示したものである。非常に多くの調査が、医学文献全体の引用と
する為に行なわれた。引用はそれらの食物のアレルゲン性を実証する最も適切な研究を反
映している。このような折り紙つきの研究は、比較的多人数の患者を使い、そして、二重
盲検プラセボ対照食物負荷試験(DBPCFC)のような最も客観的な診断基準を使う。アレルゲ
ン性食物グループ内の個々の食物の一部は、公に評価されたアレルギー反応がほんの少し
みられただけであった。例えば、おそらくあまり頻繁に消費されないので、幾つかのナッ
ツ、ピスタチオやマカダミアのアレルギー反応はめったに報告されない。
表1
一般的なアレルゲン性食物及び食物グループ
食物
甲殻類
参考文献
26、39、45、46、51、143、145、156、199、253
(エビ、ロブスター、カニ)
卵
23、26、27、35、36、67、101、172、173、199、
200、201、202、203
魚
1、35、36、78、84、86、101、126、128、161、198、
199、200、201、202、253
乳
23、26、27、35、36、79、101、172、173、175、
198、199、200、201、202、203、211
ピーナッツ
17、25、26、27、35、101、117、198、199、200、
201、202、203、254、255
ダイズ
17、23、25、27、101、198、199、200、201、202、
203、255
ナッツ
3、 5、 7、 8、 13、 14、 16、 18、 26、 27、 30、 62、
63、 65、 77、 93、 94、 102、 103、 141、 155、 165、
173、181、190、204、214、237
コムギ
4、11、12、26、35、36、51、101、117、 120、198、
199、200、201、202、203
注記:この表は、Agricola (1972 年から 1994 年 7 月まで)、及び、Medline (1966 年か
ら 1994 年 7 月まで)データベースの文献検索により編集された。
表 2 は、あまり一般的でないアレルゲン性食物のリストを提示する。この表にリストさ
れたいくつかの食物は、生命にかかわる重いアレルギー反応を引き起こすために提示され
た。引用は、これらの特徴的な食物がアレルギー性であることを示す研究または報告であ
る。このリスト上の特徴的な食物成分がなくても、その食物はアレルギー性がないことを
意味しないかもしれない。しかし、多分そのアレルギー性が実証されなかったことを示す
ものだろう。逆に、表中の特定の食物が存在することは、それが食物アレルギーの原因と
してひとつ以上のレポートに提示されたことを示すが、アレルギー食物として優勢である
とは示唆しない。
表 2 に示される各食物のアレルギー性を確定するために使われる情報の品質には明らか
にかなりの差異が存在する。提示されるデータは、非常に客観的な二重盲検プラセボ対照
食物負荷試験(DBPCFC)から主として臨床経験に基づく逸話的なレポートにまで及ぶ。食物
のアレルギー反応によって引き起こされると広く認められていない論争となるような症状
の経験に基づくか、あるいは、臨床のデータがただ物議を醸す診断の技術に基づいていた
ならば、レポートは、要約に含めなかった。表 2 が徴候に関する情報、患者の年齢、及び、
これらのレポートで提示された診断データを提示する。
症状は、個々の患者の間でそしてまた異なる研究(患者のグループ)の間で全く大きく変
化している。本当に個々の患者は、影響する食物の摂取量のような要因に応じて変化する
症状を示す。確かに、いくつかの症状は、他のものより重症である。アナフィラキシー、
喘息、及び、喉頭の浮腫は、潜在的に重篤である。いくつかの食物は、むずむずするよう
ないわゆる喉頭のアレルギーシンドローム、蕁麻疹、及び、めったには起きない新鮮な果
実を摂取した後の口咽頭部分における穏やかな症状などである3。
DBPCFC(二重盲検プラセボ対照食物負荷試験)は、食物の摂取とアレルギー反応の間で
因果関係を決定する最も客観的な診断のアプローチであると言える5。他のタイプの研究、
シングルブラインド、オープン試験もまた有効である。しかし、DBPCFCよりはあまり客観
的ではない。負荷試験は、食物の摂取と感受性のある個人における症状の発症間の原因、
そして、因果関係を明らかにする。しかしながら、それらは、病気の基にあるアレルギー
のメカニズムは明らかにしない。
同じく表 2 は、病気に対してlgEが介在するアレルギーメカニズムの証拠を示す皮膚テ
スト、免疫試験、及び、ヒスタミン遊離試験に関する情報も提示する。しかしながら、擬
陽性とより少ない割合だが擬陰性が生じるので、これらのテストだけでは因果関係を確立
するには不十分である6。
表2 発症頻度の少ないアレルゲン性食物と食物群a
食物
アワビ
アカシアガム
症状
年齢
(リスト表末尾参照)
期間
AE, CO, DY, FL ,PR(試験中)
摂取試験
皮膚テスト
RAST
他の試験
参考文献
19
1+
0+
PH 1+(試験後)
51
16-42
5+
7+
I
39
1+
196
TT, U, W
39
1+
252
オールスパイス
CD, DM, EX, PM
11-87
26+
166
アマランサス
A, AE, BR, H, U
アマランサス染料
1+
1+
147
AE or UC
Single;2+
148
AS
Double;0+
245
AE, UC
Open;5+
150
アニス
48
1+
88
IB 1+
46+
AE, DY
26
Open;1+
23+
213
1+
214
IB 1+
アナトー
AE, UC
AE, UC
8-72
AS, AE, H, PR, U
62
129
231
Open; 15+
150
Single; 10+
106
169
リンゴ
AE, CJ, I(hands), RN
8+
20+
4-18
AE, I(oral, Palms)
I(eyes, nasal), LE, W
48
AE, BR, D, H, RN, U, V
>10
5
18+
20
157+
55
39+
83
1+
Double;2+
6-41
88
9+
117
54+("Apple")
121
32+(Granny Smith)
34+(Sturmer)
Aspergillius niger
アボカド
ペルーバルサム
AE, I(oral)
10-61
36+
32+
D, DI, H, N, V
13
1+
0+
A, AE, AS
25
1+
1+
AE
28
1+
AE, DY, PR(palms), U(with exercise)
12
Open; 1+
HA, N, V
28
Open; 1+
HA
50
AS
27
PK 1+
187
237
247
1+
9
92
92
Open; 1+
92
AC, BR, U
1+
42
1+
125
BR
1+
EX(hands)
1+(patch)
116
1+(patch)
132
6+(patch)
222
AE, AS, D, U, V
24-62
EX
バナナ
1+
177
AE, D, I(throat), U, V, W
Open; 9+
5-75
232
6+
6
CU, GI, RC
Double; 1+
26
AC, BR, U
30
1+
A, AE, I(mouth), D, RN, S, U
17-32
3+
AE
28
1+
A, AE, DY, U
53, 56
2+
2+
72
A, U
67
1+
1+
125
A, AE, I(throat), U, V, W
15
1+
1+
PK 1+
126
AE, LV, PP, RN, W
56
1+
1+
IB 1+
155
AE, I(oral)
10-61
AE
44
AE, LV
28, 30
2+
2+
A, AE, DY, U
32
1+
1+
I(pharyngeal), RN
33
Open; 1+
Open; 1+
ヒヨコマメ
エンドウマメ
66
177
1+
158
HR 2+
3+
101
AE, PR, VC(with exercise)
16
1+
1+
AS
20-22
2+
0
A, AE, W
39
1+
AS, CO, DY, RN
20
1+
Double; 0+
20
I(eyes), U
42
AC, AD, AS, N, RN, V
0.33-24
217
BC 1-
12
73
78
1+
BC 1+
9+
1+
Double; 1+
239
53
8+
AD, AS, RN
190
205
Double; 1+
AS, GI, U
豆類
63
2+
3+
10
HR 2+
EL 1+
オオムギ
A, EX, W
0+
42
140
17
1+
HR 1+
140
1+
180
7+
202
I(eyes, nasal), RN, S
インゲンマメ
46
1+
23
1+
BC 1+; HR 1+
1+
113
リママメ
H, LE, W
インゲンマメ(ピントー)
A, AE, U
37
1+
AE, U
22
1+
DY, H, LE, W
3-27
2+
AD, CU, GI, RC
0.5-25
Double; 9+
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
Double; 2+
18+
202
AD, CU, GI, RC
0.75-24
Double; 0+
4+
35
もやし
牛肉
Double; 0+
182
13+
17
1+
HR 1+
78
HR 1+
229
199
200
加熱
CMA
Double; 3+
246
半加熱
CMA
Double; 3+
246
ビール
ベータカロチン
I(facial), U
AE, UC
ブロッコリー
ソバ
A, I(throat), TP, U
1+
8-72
Single; 10+
A, AE, DY
106
21
1+
38
1+
A
キャベツ
227
21
1+
1+
21
1+
EL 1+, IB 1+
1+
1+
キャラウエイ
カルダモン
AD, GP, RN
1-47
CD, DM, EX, PM
11-87
ニンジン
4-18
AE
I, TS, W
48
31+
Single; 1+
48
162
21
178
5+
167
4+
166
150+
55
20+
83
1+
1+
88
2+
2+
90
LE, OAS
19-20
2+
I, SW
24
1+
228
34
1+
115
AE, BR, D, H, N, RN, U, V
>10
Double; 3+
6-41
9+
EL 2+
1+
121
IB 1+
129
A, RCJ, U
41
1+
1+
159
AE, I(oral)
10-61
13+
6+
177
11-50
28+
250
1+
250
10+(patch)
132
52
1+(patch)
54
39
1+(patch)
209
21
1+
21
child
1+
178
AE
50
1+
19
C, H, TN, U
55
1+
68
I, LE, TN, W
48
A, GI, LE, OAS
19-53
4+
EL 4+
105
A, AE, U
18-55
14+
PK 2+
114
AE, P
22
A
桂皮
OI, PU(lips), ST
カリフラワー
セロリ
117
46+
BR, LE
桂皮油
105
Open; 1+
1+
88
1+
BR, LE
124
IB 1+
129
A, AE, RC, U
14-49
20+
17+
183
A, AE, RCJ, U
14-49
9+
9+
184
A, H
AE, DY, H, LE, U
66
34
Open; 1+
1+
193
70+
213
1+
214
A, EX, U
AE, DY, H, LE, U
7+
23
Open; 1+
230
1+
214
36+
36+
IB 21+
224
A
50
1+
1+
234
A, AE, AC, RN, U
27-53
70+
70+
251
AC, AE, U
28
1+
1+
103
AC, AE, DI, I, PR, U, W, WE
20-39
3+
115
23
1+
210
31+
250
(with exercise)
AE, H, PR(with exercise)
根用セロリ
生
27-53
66+
251
加熱
27-53
25+
251
25+
250
セロリ塩
カモミール(茶)
A, CO, I(skin), V
8
1+
PK 1+; EL 1+
216
チェリー
AE, I(oral)
10-61
13+
鶏肉
CU, GI, RC
0.25-19
Double; 2+
AD, CU, GI, RC
0.75-19
Double; 1+
4+
35
AD, AP, D, N, S, V, W
0.6-19
Double; 1+
1+
36
A, EX
2.5
Open; 1+
AD, EX
4
Open; 1+
177
26
1+
47
47
3+
91
A, DY, U
29
AD, AP, CU, D, N, RN, S, V
1.3-19
Double; 2+
AD, CU, GI, RC, W
0.5-25
Double; 6+
AD
チョコレート
Double; 2+
1+
HR 1+
6+
189
198
200
1+
2+
201
D
0.11
Open; 1+
235
DY, H, LE, W
3-27
Double; 2+
199
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
Double; 3+
AE
39
CO, FL, HA, NS, U, V
17-58
AD
ココア
1+
19+
1+
202
1+
238
Double; 5+
3+
56
Open; 0+
0+
60
18+
69
AC, I(throat, nasal), P, S, U, V, W
4-20
AE, BR, D, H, RN, U, V
>10
Double; 2+
17+
117
AE, N, S, U, W
4-60
Double; 3+
3+
142
AP, CU, D, N, RN , S, V, W
1.33-19
Double; 1+
0+
198
AS, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
4+
202
Double; 4+
0+
0+
HR 1+
256
CU, GI, RN
0.75-19
Double; 0+
1+
35
AE, AS, D, DM, RN
1-80
Open; 14+
12+
168
AD, CU, GI, RC
1.33-19
Double; 10+
13+
198
DY, H, LE, W
3-27
Double; 42+
AD
199
Double; 15+
11+
12+
201
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
Double; 44+
55+
202
AD, AS, RN
3-18
Double; 45+
59+
203
AD, CU, GI, RC, W
0.5-25
Double; 106+
200
メチルシナモン
6+ (patch)
152
ベンジルシナモン
11+ (patch)
152
シナミックアセテート
3+ (patch)
132
シナモン酸
26+ (patch)
152
1+ (patch)
54
3+ (patch)
116
15+ (patch)
132
14+ (patch)
152
117+ (patch)
166
シナモン葉オイル
1+ (patch)
132
シナモンオイル
2+ (patch)
132
1+ (patch)
123
BU, G, OD
3+ (patch)
151
EX(hands), CD
2+ (patch)
116
29+ (patch)
152
1+ (patch)
38
シナミックアルデヒド
ST
52
EX(hands), CD
シナモン
CD
ST
22
シナミルアルコール
シトロール
DM
二枚貝類
A, AE, FL, PR, U(with exercise)
52
Double; 1+
143
1+
180
AC, CJ, N, U
33
クローブ
CD, DM, EX, PM
11-87
36+
166
クローブオイル
OI, PU(lips), ST
39
1+ (patch)
209
14+
71
1+
212
1+
24
ココナッツ
コーヒー(インスタント)
コリアンダー
FC, OI
47
A, SW, U, W
14
48
Double; 1+
1+
1+
1+
88
AD, GP, RN
29+
5+
167
26+
19+
213
AS, EX
12+
HR 9+
230
4+
IB 4+
231
コーン(メイズ参照)
綿実
AE, BR, D, H, N, U, V
9-79
Double; 2+
A
キューリ
ピクルス
6+
15
1+
134
AE, I, OE, U
29
1+
1+
133
A
58
1+
1+
176
AE, I(lips, tongue, throat)
12-71
A, GI, LE, OAS
19-53
AE, BR, D, H, RN, U, V
>10
PR
1.5
3+
Double; 0+
11-87
Single; 3+
A, AE, GI, Tn, U
Double; 1+
57
フェンネル
1+
88
11+
213
6+
1+
ディル
エタノール
105
1+
EX, U
イカ
EL 3+
117
24+
CD, DM, EX, PM
59
32+
ヒメウイキョウ
カレー
IB 43+
166
12+
HR 9+
230
4+
IB 4+
231
1+
208
1+
115
PU
60
Open; 1+
0+
2
U
28
Open; 1+
0+
112
AE,I(oral)
10-61
Open; 4+
177
28+
24+
213
A, AE, U(with exercise)
19
1+
亜麻仁
AE, H, U
43
Open; 1+
1+
ニンニク
D, FL, N, OA, W
30
Double; 1+
1+
1+
BC 1+
130
ゼラチン
AD, U
32
1+
1+
IB 1+
240
ショウガ
CD, DM, EX, PM
11-87
7+
3+
ブドウ
赤ブドウ
A, CO, FL, NS, PR(with exercise)
15
1+
A, U, W(with exercise)
24
0+
A, EX
4
192
214
166
13+
213
1+
IB 1+
231
0+
PH 1+(after exercise)
51
33
Open; 1+
グレープフルーツの種
グアバ
0+
47
2+
188
I(pharyngeal), RN
33
D, DY, U
35
1+
0+
128
野生
16-78
10+
7+
89
ナタネ
16-78
10+
6+
89
タンポポ
16-78
17+
14+
89
AP, D, V
24
1+
1+
29
A
50
1+
1+
19
A, BR, D
11
AE, DY, H, LE, U
23
蜂蜜
ヒマワリ
ロイヤルゼリー
ホップ
カラヤガム
キウイ
EL 1+; IB 1+
239
34
Open; 1+
1+
214
1+(erythema only)
252
A, AE, I(eyes, throat)
26
1+
61
OAS
32
1+
205
I(ears, eyes)
53
1+
PK 1-
64
AE, D, PS
10+
10+
74
OPP
12+
0+
74
OAS, PR, U, V
26
1+
1+
1+
76
A
3+
3+
104
30
AD, AE
26
AE, GP, I(tongue), U
20
レモン
DM
レタス
A, AE, U
Open; 1+
1+
233
3+
236
1+
Open; 1+
1+
258
52
1+(patch)
38
20
1+
192
2+
2+
90
1+
186
I(OM), WH
43
1+
DM
52
1+(patch)
カサガイ
A, AE, CH, U
3-27
5+
ヒラマメ
DY, V
10
1+
AS
20-22
2+
0+
1+
1+
CO, DY, RN
AS, RN
ルピナス
メース(ナツメグ)
コーン
5
Open; 1+
EX
CU, GI, RC
38
5+
Double; 0+
73
HR 1+, BC 1+
140
BC 1+
139
HR 1+
182
1+
1+
5+
4+
87
1+
1+
87
12+
0.75-19
157
70
20
46
AE, U
237
1+
A
ライム
75
U
B, CL, PR
Eruca sative
EL 1+, HR 1-
2+
HR 8+
230
35
AE
1+
95
PK 9+
AD, AP, N, RN, V
0.33-24
A
0.71
7+
Open; 1+
96
202
0+
47
コーンシロップ
PK 3+
96
コーンマルトース
PK 4+
96
コーン転化糖
U
GF シュガー(コーン)
30
Open; 1+
30
Open; 1+
171
1+
異性化糖(コーン)
U
30
1+
D-psicose(コーン)
U
30
1+
HR 1+
171
171
HR 1+
170
麦芽
I(facial), U
1+
227
メープルシロップ
ER, PR, U
1+
18
マンゴ
メロン
スイカ
アワ
マッシュルーム
Ramaria flave
AC, AE, SW(face), U
28
2+
2+
103
A, AE, W
24
43
A, I(eyes), I(mouth), PR, RC
32
195
A, DY, ER, U
32
1+
AE, D, I(throat), N, U, V
5-75
6+
AE, I(oral)
10-61
3+
0+
149
6
0+
177
AD, DY, LE, OAS, U
OAS
14-67
A, AE
25
AE, H, LE, U
31
A(1)
1+
Open; 1+
1+
1+
EL 6+, IB 6+
58
HR 1+
179
214
1+
118
シイタケ
Mycoprotein("Quom")
ER, F
41
DM
15-76
0
218
163
D, V
2+
2+
221
1+
39
ムール貝
16-42
2+
マスタード
21
1+
21
10+
HR 4+, EL 4+
80
39
1+
115
EX
40
1+
146
A, AE, RC
17
1+
1+
154
A, AE, N, RC
14
1+
1+
154
AD, GP, RN
1-47
29+
5+
167
SW(glottis), U
Child
1+
1+
178
AE, H, LE
43
A, AE, U
25
1+
248
黒
Child
1+
178
白
Child
1+
178
シード
Open; 1+
1+
A, AE, U
214
7+
HR 2+
52
HR 1+
135
AE, AS, DY, I(nasal), S, U
31
1+
1+
AE, AS, I(scalp, genitais), U, V
32
1+
1+
135
ナツメグ
3+
1+, 14+ Flower
213
オーツ
3+
2+
53
0+
95
AE, U
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
7+
202
AS, GI, U
オレンジ
マンダリン
オレンジジュース
9+
DM
52
AE, BR, D, H, RN, U, V
>10
AE, I(oral)
10-61
A, AE, DY, I, U
49
A, AE, AS, GI, LE, N, RC, U, V
25-61
I(pharyngeal), RN
33
AC, AE, DY, N, U
33
Double; 6+
217
1+(patch)
38
21+
117
11+
3+
177
249
Open; 0+(juice)
0+(juice)
PK 1+(seed)
Open; 3+(seed)
3+(seed)
257
2+(seed)
188
EL 1+, IB 1+
0+
AE, FL, PR, U(with exercise)
1+
16-42
パパイン
AE, E, DY, I, W
31
AP, CJ, D, U
1+
Double; 5+
5+
キモパパイン
パプリカ
CD, DM, EX, PM
11-87
パセリ
エンドウマメ
39
PK 1+
22+
137
5+
138
6+
197
4+
AD, GP, RN
188
143
2+
Single; 1+
239
78
PK 20+
牡蠣
257
166
6+
167
I(nasal, eye), LE, TS, W
48
1+
88
A, AE, U
18-55
12+
114
18+
17
AD, AS, RN
Double; 2+
0.25-19
DY, V
10
Double; 5+
26
1+
70
AS
20-22
2+
2+
20
1+
1+
AE, AS, D, DM, RN
1-80
42+
AE, I(oral)
10-61
5+
AC, AD, AS, N, RN, V
0.33-24
19+
202
39
1+
98
Chickling
モモ
AE, AS, GI, RN, U
30
AC, U
28
AE, BR, D, H, RN, U, V
>10
CU, OAS
16-27
AE, U
ピーナッツオイル
洋なし
14
1+
Open; 6+, Double; 43+
Double; 0+
HR 1+
139
168
4+
69+
DY, N
73
177
HR 58+
3
1+
42
1+
103
65+
117
25+(flesh)
127
22+(skin)
127
1+
0+
8+
8+
128
IB 3+
220
EL 1+
239
A, I(pharyngeal)
33
A, AE, D, GI, U(with exercise)
24
AD, AE(with peanuts)
0.5
Open; 1+
AE, AS, D, H, LE, N, V(with peanuts)
17-45
Double; 0+
0+
AD, AE, ER(with peanuts oil)
0.5
Open; 1+
1+
1+
153
AD(with peanuts oil)
0.33
Open; 1+
1+
1+
153
EX(with peanuts oil)
"infant"
Open; 1+
1+
85
AE, I(oral)
10-61
6+
177
I(hands), OI, SW(hands)
24
1+ raw; 0+ cooked
228
1+
33
153
219
胡椒
トウガラシ
AD, GP, RN
48
1+
1-47
20+
7+
167
11+
16+
213
レッドペッパー
ホワイトペッパー
CD, DM, EX, PM
11-87
4+
EX
AD, GP, RN
パイナップル
1-47
5-70
プラム
A, EX
4
Open; 1+
ザクロ
AE, TS
85
Double; 1+
AE, RC, U, V
豚肉
HR 2+
230
4+
3+
167
5+
15+
213
107
47
0
0
20
1+
1+
31
AE, AS
27
1+
1+
110
A, AD, AE, AS, D, P, U, V
11-33
5+
5+
237
AD, CU, GI, RC
0.75-19
Double; 0+
AD, DY, H, LE, W
3-27
Double; 1+
AD, AP, CU, D, N, RN, S, V
1.33-19
Double; 0+
AD, CU, GI, RC
AD, AP, AS, N, RN, V
ジャガイモ
166
12+
A, D, I, V
ケシの実
88
AE, DY, W
AE
3+
0.33-24
Double; 2+
97
35
199
7+
198
Double; 3+
AE, RN
A, AE, AS, H, S, U, V
HR 1-
200
32+
202
24+
5
11
1+
4-18
139+
17
1+
2+
1+
HR 1+; PK 1+; IB 1+
40
55
HR 1+
78
83
サイリュウム
RN, S, TP
24
1+
AE, OAS
10-61
7+
AE, AS, U
21
1+
CU, GI, LE, NS
0.5-25
Double; 4+
AP, D, N, NS, RN, S, V, W
1.33-19
Double; 1+
DY, H, LE, W
3-27
Double; 1+
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
Double; 2+
GI, U
1-16
EX
0.71
A, I(eyes), V
43
A, AC, CO, D, H. I(eyes), N, V, W
27-73
A, AE, CO, I(mouth), V
43
A, AE, TC, U
60
AS, RN
28
1+
194
40
1+
146
ナタネ
コメ
177
PK 1+
2+
198
7+
202
12+
IB 5+; HR 8+
Open; 1+
241
47
1+
10
18+
IB 20+
1+
A, AC, AE, DY, PR
21
GI, NS
55
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
8+
AS, EX
5-21
6+
D, FL, V
2
102
111
1+
HR 1+
Single; 1+
122
28
1+
Open; 1+
185
199
0.75
1+ raw; 1+ cooked 1+ raw; 0+ cooked
1+
HR 1+
78
HR 1+, IB 1+
160
202
6+
1+
AD, AS
25
3+
164
200
A, D, V
QE
PK 1+
207
IB1+, PK 1+
215
HR 17+, IB 32+
223
226
D, V
0.5
Open; 1+
235
DM
ライムギ
CU, GI, RC
0.25-19
1.25-19
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
クロレラタンパク質
Double; 1+
53
2+
198
8+
202
10+
217
2+
8+
237
AE, PR, VC(with exercise)
16
1+
0+
12
A, AE, B, FL, I(general), RD, TN, U, W
30
1+
99
A, AE, D, E, N, U, V
20-38
5+
108
A, AE, H, PP, U
31-72
3+
136
AE
45
1+
237
AS
6-17
5+
1+
244
D, N, V
Open; 7+
0+
206
D, N, V
Open; 2+
0+
206
18-63
Double; 0+
20
CU, GI, RC
イカ(生)
イチゴ
3+
12-46
ホウレンソウ
イカ(ゆで)
243
AS, DM, RN
AE, AP, LE, RC, RN, U, W(with soybeans)
カボチャ
10+
26
AS, GI, U
ゴマ
242
Double; 1+
3+
AD, AP, CU, D, N, RN, S, V, W
4+
0.25-19
1+
16-42
AC, AD, AS, N, RN, V
0.33-2
37
1+
HR 1-
Double; 1+
16-42
AE, AS, CJ, D, N, U, V
0+
Double; 0+
49
26
0+
1+
7+
7+
1+
BC 1+
39
39
202
I(pharyngeal), RN
サトウダイコン
ヒマワリの種
33
20
1+
1+
EL 1+
239
HR 1-
49
AE,BR, D, H, RN, U, V
>10
Double; 25+
52+
117
A, AE, DY, N, PR, U, V, W
29-37
Double; 0+ (oil)
2+
2+
A, AE, GP, I(lips)
11-58
3+
3+
AE, H, LE
34
Open; 1+
1+
214
13
Open; 0+
(with exercise)
1+
141
PK 1+ (seed)
82
174
ヒマワリ油
A, AE, DY, N, PR, U, V, W(with sunflowe
seeds)
29-37
Double; 0+ (oil)
2+
2+
PK 1+ (seed)
82
フダンソウ
AS, RCJ
20
Open; 1+
1+
1+
HR 1+
49
I(eyes, nasal), RN, S
46
1+
1+
BC 1+; HR 1+
182
AC, AE, DY, N, U
33
1+
78
2+
188
9+
22
7+
83
18+
117
1+
144
タンジェリンオレンジ
タンジェリンの種
トマト
AE, AS, DM, U
12-45
DM, I(lips)
AE, BR, D, H, RN, U, V
>10
Double; 2+
EX, U
AE, I(oral)
10-61
12+
AD, AP, AS, N, RN, V
0.33-24
5+
DM, I(throat, lips)
トラガカントガム
4+
A(with exercise)
20-39
AS, U
33
5+
177
202
9+
50
2+
Open; 1+
1+
115
PK 1+
32
AE, AP, DY, PR
35
I
39
七面鳥
CU, GI, RC
0.25-19
1+
44
1+
196
1+ (erythema only)
252
Double; 1+
26
カブ
1+
178
バニリン
3+
166
8+ (patch)
152
0+
81
1+ (patch)
191
ビタミンA
AD, V
0.75
ビタミンE
DM
21
ワイン
PU
60
A, AE, U
31
イースト
U
Saccharomyces cervisae
ズッキーニ
2
1+
0+
PK 1-
41
100
AE, U
34
Open; 1+ (wine)
1+
112
U
33
Open; 1+ (wine)
1+
112
AS, EX, RN
6-51
39+
119
AE, NS, PR, U
15-66
7+
131
AS
15
1+
225
28+
109
12-71
a
Open; 1+
Double; 5+
AD, EX
(出芽酵母)
Double; 1+
EL 62+
この表は、Agricola(1972∼1994 7月)とMediline(1966∼1994 7月)のデータベースの文献検索により編集された。
59
省略記号
A、アナフィラキシー; AC、腹部の痙攣; AD、アトピー性皮膚炎; AE、血管性浮腫; AP、腹痛; AS、喘息; B、口または唇の焼け; BC、気管支試験; BR、気
管支痙攣; BU、頬の潰瘍化; C、寒気; CD、接触皮膚炎; CH、窒息; CJ、結膜炎; CL、疝痛; CMA、牛乳アレルギー; CO、咳; CU、皮膚の痛み;(バナナ参
照)
CY、チアノーゼ; D、下痢; DI、目まい; DM、皮膚炎; DS、嚥下困難; DY、呼吸困難; E、浮腫; EL、酵素標識免疫吸着法(ELISA); ER、紅斑;
EX、湿疹; F、発熱; FC、鼓腸; FL、紅潮; G、歯肉口内炎; GI、胃腸の症状; GP、胃の苦痛; H、低血圧; HA、頭痛; HR、ヒスタミン遊離分析; I、かゆ
み; IB、イムノブロット; LE、喉頭の浮腫; LV、失語; M、偏頭痛; N、吐き気; NS、鼻の症状; OA、職業喘息; OAS、口腔アレルギー症候群;
OD、口腔
内 皮 膚 炎 ; OE 、 口 腔 内浮 腫 ; OI 、口 腔 内 刺 激; OM 、 口 腔内 粘 膜 ; OPP 、 口 咽 頭 の 掻 痒 症 ; P 、 眼 瞼 ( ま ぶ た ) ; Ph 、 プ ラ ズ マ ヒ ス タ ミ ン ; PK 、
Prausnitz-Kustnerテスト; PM、汗疱; PP、咽頭の掻痒症; PR、掻痒; PS、咽頭の膨張; PU、紫斑症; QE、Quinckeの浮腫;(米参照)
RAST、放射性アレ
ルゲン吸着試験; RC、呼吸の苦情; RCJ、鼻結膜炎; RD、呼吸の苦痛; RN、鼻炎; S、くしゃみ;ST、口内炎; SW、膨張; T、高トリプターゼ ; TC、頻脈;
TN、舌膨張; TP、咽頭痛; TS、喉膨張; U、蕁麻疹; UC、慢性的蕁麻疹; V、嘔吐; VC、管の崩壊; W、喘鳴; WE、脱力感; WH、膨疹;
第 6 章 食物アレルゲンの原則と特徴
Steve L. Taylor and Samuel B. Lehrer
Food Allergy Research and Resource Program, Department of Food Science and
Technology, University of Nebraska, Lincoln, Nebraska; Department of Medicine,
Tulane University, New Orleans, Louisiana
Ⅰ. 序論
A. 食物アレルゲン研究の難しさ
食物アレルギーについて不明な点が残っている。食品によって引き起こされる、頻繁で重
篤な様々な症状は議論の余地があり、食物アレルギーの正確な定義は未だ確立されていな
い。多くの食物誘発性過敏症が、長年起こり続けている。多くの食物アレルゲンの標的臓器
は充分知られておらず、患者によって異なる。一部の食品は非常に類似している他の食品に
比べ、一般的にアレルギー反応をより多く引き起こす。食物アレルギーにおいて重要である
免疫グロブリンE(IgE)抗体に加え、その他のメカニズムがあるかどうか未だ解明されて
いない。多くの食物アレルゲン抽出物を皮膚テストで用いることや、IgE抗体の決定は充分
に特性化や標準化がされていないので、食物アレルギーの診断は、未だ困難である。食物に
対する副作用の診断のゴールデンスタンダードである二重盲検プラセボ対照食物負荷試験
(DBPCFC)でさえ、用いた食品素材の活性や負荷試験の状況と同程度の正確さでしか
ない(Even the gold standard for the diagnosis of adverse reactions to foods, the
double-blind placebo-controlled food challenge (DBPCFC), is only as accurate as the
activity of the food material used and the circumstances of the challenge test.)1, 2。
食物アレルゲンとは何か?いくつかの免疫学的メカニズムは、食物アレルギーにおける
病理生理学的メカニズムと関係する。しかしながら、全てではないにしても、ほとんどの
場合、即時性過敏症型の食物誘導性アレルギー反応にはIgE介在性の反応が関わると考え
られている2。食物アレルゲンは、即時性過敏症を引き起こす、肥満細胞や好塩基球からのメ
ディエーター放出を惹起するIgE抗体産生を誘導し、かつ、それらのIgE抗体と反応する食
物成分として定義されている。これは、摂取される食物アレルゲンだけでなく、食品の浮遊
アレルゲン(aeroallergens)や接触食物アレルゲンも含む非常に広義の定義である。
古典的な免疫化学的方法と最近発達してきた組み換えDNA技術の応用により、アレルゲ
ンの構造や、アレルゲン決定基の同定について重要な知識が得られた3, 4。アレルゲン構造
に関する我々の知識は、主としてアレルゲンのクローニングと配列決定により、急速に増加
を続けるだろう。これらの方法は臨床使用のための大量のアレルゲン性素材の供給もする
だろう3-5。
B. 食物アレルゲンの特殊な負荷試験
ほとんどの食物アレルゲンは環境中に存在する他のアレルゲンと類似しているが、その
他のアレルゲンと幾分異なる多くの独特な特徴がある。第 1 には暴露である。明らかに食
物アレルゲンの主要な暴露は、主に摂取した食物をエネルギーや細胞増殖のため吸収処理
する消化管を介する。
この臓器は、ほとんどの分子構造を変化させる様々な加水分解酵素、酸、胆汁塩を含む独
特の暴露環境である6。しかしながら、一部の食物タンパク質は、免疫学的活性が残存してお
り、上皮を通過し、循環系に入り、全身に分布する7-14。食物消化に影響したり、未変化アレ
ルゲンを吸収する因子は明確にする必要がある。さらに、消化されたアレルゲンは摂取し
た構造と異なる可能性があるので、アレルゲン同定に必要な因果関係の確立が複雑になる。
消化管関連リンパ系組織(GALT)は莫大な量の栄養物抗原に反応しないが、有害な外
来物質に迅速に反応しなければならないという点で独特である。GALTはパイエル板と虫
垂、粘膜固有層のリンパ球や形質細胞、上皮内のリンパ球、腸間膜リンパ節から成る15。
GALTは我々が免疫反応に関する大半の情報を得ている脾臓やリンパ節内の末梢リンパ系
組織と異なる反応をする可能性がある。そのような環境において食物アレルゲンは通常の
抗原と比較して異なる性質を持つ可能性がある。
食物の暴露は接触(皮膚)や吸収(肺)といった他の経路を介しても生じる。このこと
は食品産業労働者における職業性反応として記述されている16。吸入による食物アレルギ
ー反応と消化管を介したアレルギー反応の関係や、反応を引き起こすアレルゲンの類似性
かつ/または相違性は研究の必要がある。食物アレルギーの病因と関連した吸入アレルゲ
ンと摂取アレルゲンの関係の確立や、規制のための検出限界を確立する観点から重要な、
感作を惹起する閾値といった食物アレルゲンについて他の重要な要素の確定も必要である
17。
C. 食品の複雑性
食品は様々なアレルゲン性および非アレルゲン性成分を含む複雑な混合物である。食品
中のアレルゲンを同定、精製、特性化することは大きな挑戦である。ほとんどの既知食物
アレルゲンは水溶性溶媒に溶解する;不溶アレルゲン成分についての情報は基本的にない。
上述のように消化過程も食物アレルゲンに影響しうる。実際に GALT と相互作用する食物
アレルゲンの性質は摂取した食品の形状とはかなり異なる。
いくつかの食物アレルゲンは微量でも主要なアレルゲンかもしれない。そのような微量
アレルゲンの精製や特性化は特に困難である。一部のアレルギーの消費者では、非常に強
い感受性のため、微量な混入でさえ、有害な量でアレルゲンが存在する可能性がある。こ
の状況は特定の食品のアレルギー性に関して誤った結論を導きやすい。
近縁の食品の間でも、系統的な関係が特にない無縁もしくは遠縁な素材や食品の間でも、
有意なアレルギー交叉反応性が報告されている18,19。マメ科植物19,20や甲殻類19は同じ科で
交叉する食品例である。しかしながらこれらの食品群の一つが交叉反応するというだけの
事実は、これらの反応が必ずしも臨床的に有意義であることを意味するわけではない。甲
殻類は臨床的に重要な交叉アレルゲン性を示すが21,22、マメ科植物の交叉反応性は臨床的
に重要でない23。これらの所見は食物アレルゲン反応性に対する理解をさらに複雑にして
いる。
患者の反応性に関してアレルゲンを系統立てるために、よりよくアレルゲンを記述する
以下の分類、体系が展開されてきた。他のアレルゲンと比較し、患者の大部分が反応する
アレルゲンは メジャーアレルゲン と記述され、また少数の患者が反応する(第 7 章参
照)ものは
マイナーアレルゲン
と記述される。常にではないが一般に、メジャーアレ
ルゲンはアレルゲン抽出物中に存在する主な成分である傾向がある。これらの素材と反応
する患者数や、生物学的反応の強さに基づき、メジャーアレルゲンを定義する試みもいく
つかされている25-27。一般にメジャーアレルゲンが最大の関心を払われるが、時には感作
された患者で重篤な反応を起こすマイナーアレルゲンも無視できない(第 7 章参照)。
一部の抽出物は、同じような物理的、化学的、免疫化学的構造を持っているが、わずか
に等電点が異なるアレルゲンを含有し24、アイソアレルゲン(isoallergens)という用語は
同じ原料から単離された分子に用いられている。このようなアレルゲンに観察されるわず
かな差異は、分子の糖部分の軽度な差異(グリコシル化の程度)やタンパク質のアミド化
の程度、遺伝的多様性に起因する28。
Ⅱ. 食物アレルゲンの性質
A. 一般的なアレルゲン性食物タンパク質の特徴
食品は様々な異なるタンパク質を含有するが、アレルゲンとして知られているものは少
数のみである。ダイズやピーナッツのような植物性食物において、アレルゲン性タンパク
質の多くは、一部の食物に多量に存在する貯蔵タンパク質であり29-31、アレルゲン性の可
能性は特定のタンパク質が暴露する程度と相関すると結論させる可能性がある。しかしな
がら、少量しか存在しないタンパク質もメジャーアレルゲンとして働く。例えば、タラの
メジャーアレルゲンであるGad c 1 は特に顕著なタンパク質ではない32。また、牛肉、豚肉、
鶏肉中のアクチンやミオシンといった多くの主要タンパク質にはアレルゲン性がない。暴
露量は決定的な因子であるようだが、タンパク質の免疫原性がより重要である。
宿主起源分子は通常免疫系に認識されないため、全ての抗原と同様に有意な免疫反応を
刺激するには食物アレルゲンは宿主に対して外来の分子でなければならない。ほどんどの
食物アレルゲンは食品加工や調理、消化過程に抵抗性のある高度に安定な分子である33。
しかしながら、りんごや新鮮な果物や野菜に存在する不安定なアレルゲンといった例外も
存在する34,35。一般にそのような不安定なアレルゲンは分解後アレルゲン活性を失うため、
口腔粘膜に限定された反応を起こす。反対に、消化によるアレルギー反応を誘発するよう
な新規エピトープの放出や露出による抗原の変化の可能性があるが、よく研究されていな
い。
従来、粘膜透過性は食物アレルギーの重要な要因と考えられてきた。多くの食物タンパ
ク質が消化管の粘膜を通過し、健常者ですら、免疫応答を引き起こす13,36。しかしながら、
健常者と食物アレルギー患者とのアレルゲンの粘膜吸収の差異はあまり研究されていな
い;消化管透過性の現象と食物アレルギーの関係も解明されていない。これは巨大な分子
がより容易に消化管上皮を通過し、アレルギー感作を誘発する、消化管バリアの成熟する
前の乳児には重大な問題である6。
最後に、摂取される食物タンパク質の性質がある。飲食物の一般的な構成要素であるい
くつかの食物は全くアレルギー性がない。例えばタンパク質を多く含む牛肉や豚肉はアメ
リカ人の食事において重要な食物である。しかしながら、牛肉や豚肉は、主要なアレルゲ
ン性食品である魚介類に比べ、一般に食物アレルギーを引き起こさない。牛肉や豚肉もエ
ビのメジャーアレルゲンとして同定されている筋タンパク質のトロポミオシンを含むので、
特に興味深い37-40。ニワトリとエビのトロポミオシンはかなり(60%)のアミノ酸配列相
同性を持つが、アレルギー反応性は随分異なる。牛肉、豚肉、鶏肉に存在するトロポミオ
シンはアレルゲンではないが、エビのトロポミオシンと他の甲殻類におそらく存在するで
あろうトロポミオシンは非常に強力なアレルゲンである。分子のアレルゲン性に寄与する
又はアレルゲン性を減少させる、構造の差異はさらなる研究の重要な課題である。
B. アレルゲン性食物タンパク質の生化学的および免疫化学的な特徴
全てのアレルゲンは、脱顆粒を起こすために、肥満細胞表面上のIgE分子を架橋できな
ければならないため、分子の大きさを必要とする。従って、これらのアレルゲンは、メデ
ィ エ ー タ ー の 放 出 を 誘 発 す る た め 、 少 な く と も 2 つ の IgE 抗 体 反 応 部 位 ( IgE
antibody-reactive sites)(B細胞エピトープ)を持たなければならない。しかしながら、
21 アミノ酸から成る有毒ペプチドであるメリチン41のような 1 価アレルゲンでもマウスに
おいて好塩基球や肥満細胞からのヒスタミン遊離やアナフィラキシーを誘発することが知
られている。これらの分子は好塩基球/肥満細胞表面上のIgE抗体と結合する能力を持つ。
メリチンはIgEに結合して凝集するか、又は凝集してIgEに結合し、1 価のアレルゲンから
アレルギー反応を引き起こすことが可能なポリリガンドに変化する。メリチンは又、巨大
分子に結合することでハプテンとして働き、続いてIgE架橋を引き起こすような複合体と
して働くが、アレルギー病においてin vivoでこのようなことが起こり、アレルギー反応に
おける実質的な要因であるかどうかは未だ確定されていない。
ほとんどの既知食物アレルゲンは分子量が 10,000 から 70,000Daである19。より低分
子のものが免疫原性を持つ可能性はあるが、分子量 10,000Daがおそらくアレルギー応答
の下限である。上限はおそらくより大きな分子が粘膜吸収を制限されることによる19。し
かしながら、ピーナッツアレルゲンのAra h 1(分子量 63.5 kDa)やAra h 2(分子量 17kDa)
は42,43、天然では 200∼300kDaの大きさの巨大タンパク質重合体として存在する。そのよ
うな巨大分子がアレルゲンとして働くのか、もしくは消化過程で解離するのかは明白でな
い。ほとんどの食物アレルゲンは酸性の等電点を持つ糖タンパク質である。しかしながら、
これはほとんどの抗原の性質であり、必ずしも食物アレルゲン独自の性質ではない。アレ
ルゲンは全てタンパク質であるが、全てのタンパク質がアレルゲンとなる訳ではない。多
くのアレルゲンには少糖類付加といった翻訳後修飾がある。
いくつかの食物アレルゲンは生化学的構造が決定されている。(本号のRobert K. Bush
とSusan L. Hefleによる 「食物アレルゲン」参照)。様々なアレルゲン性タンパク質の生
化学的構造を比較した場合、アレルゲンを、特に食物アレルゲンを表すような一貫した普
遍的な構造パターンはみられない。アレルゲン性タンパク質の一次アミノ酸配列の比較で
は独自のもしくは典型的なパターンを示さなかった。α ヘリックスやβシート(beta
strand)、ループといったタンパク質の三次構造に特殊なパターンはみられなかった44。ア
レルゲンの一次構造を他のタンパク質と比較した場合、アミノ酸配列は環境中の多数のタ
ンパク質と類似性がある。全生物の進化の観点から、これは驚くべきことではないだろう
が、他のタンパク質と異なるような未発見のアレルゲン構造が未だ存在する可能性を示し
ている。
免疫系細胞や特異的抗体と相互作用する抗原アレルゲンの表面部位はエピトープと定義
される。T細胞と反応するエピトープはT細胞エピトープと呼ばれ45、抗体や抗体生産をす
るB細胞と反応するものはB細胞エピトープと呼ばれている44。
図 1 アレルゲンのエピトープ構造
エピトープは高次構造的なものも、直線状なものもある。高次構造的なエピトープはタ
ンパク質の 3 次構造か、タンパク質表面上のいくつかのアミノ酸配列によって決まる。直
線状のエピトープはタンパク質の一次アミノ酸配列により決まる。一般の意見は、T細胞
エピトープは直線状だが、B細胞エピトープは高次構造的というものである。しかしなが
ら、この法則には例外もある44。定義によれば、全てのB細胞エピトープは分子の外表面に
なければならない(図 1)。エピトープが共有結合した一連のアミノ酸からなる場合、連続
エピトープと呼ばれている。立体構造を介して 1 つのエピトープを形成する 2 つの異なる
アミノ酸配列から成るエピトープは不連続エピトープと呼ばれている。不連続エピトープ
の研究は技術的により厳しいため、一般的に連続エピトープに関してより多くの情報が入
手可能である。連続エピトープの最小のアミノ酸残基数は 8 であるが46、不連続の高次構
造的エピトープは 16 以上である44。
T細胞はもっぱらタンパク質分解により短いペプチドへ処理されたタンパク質抗原を認
識する。アレルゲンの抗原提示細胞(APC)による食作用の後にのみタンパク質抗原はT
細胞レセプター(TCR)によって認識される46。X線結晶解析による構造解析では、ペプ
チドはTCRのα1、およびα2ドメインのαヘリックス間の提示分子の割れ目に延ばされて
配置されている46。APCによる抗原処理は抗原のタンパク質分解消化および、APC表面の
HLAクラスⅡ分子のペプチド収容溝(peptide binding groove)でのペプチド断片の提示
から成る。そしてTCRは主要組織適合複合体(MHC)Ⅱ溝(groove)内のエピトープに
特異的に反応する。MHC分子から溶離したペプチドの化学分析は、それらが通常 8 から 9
アミノ酸残基長であることを確立した46。アレルゲンのT細胞エピトープの完全なレパート
リーの決定には、患者毎に異なる認識サイトの数と可変性(variability)のため、課題が山
積している。
食物アレルゲンのT細胞エピトープについての知識は花粉のような非食物起源のものか
ら主に推論されたものだが、食物アレルゲンは独自の特徴を持っている。食物アレルゲン
はGALTや全身の他のリンパ性細胞により認識される。これらの系のT細胞応答の免疫調節
機構ははっきり示されていない;したがって食物アレルゲンのT細胞エピトープには独自
の特徴がある可能性がある。T細胞エピトープは未梢血単核球中のT細胞や、天然のアレル
ゲンに感作された患者由来のT細胞クローンに反応を誘発する能力を基に、重複するペプ
チドの解析によって同定される可能性がある。しかしながら提供者の相当量の血液が必要
なため、これらのデータは材料の入手可能性により制限される。免疫治療の基礎として、
非応答性の誘発に基づいていたり、動物で確立した免疫応答がダウンレギュレーションさ
れるT細胞エピトープペプチドにかなりの関心がある47。T細胞反応性ペプチドによる免疫
治療は熱心に研究されている。
表1
5種アレルゲンのB細胞エピトープ配列
供給元
ブタクサ花粉
アレルゲン/アミノ酸残基
参考文献
TrpArgGluGluValArgAsnGluGluAlaTyr
47a
Amb a 3
53番目∼63番目
ダニ
アミノ酸配列
Der p 1
117番目∼133番目
ハチ毒
Api m 4
牛乳
ラクトグロブリン
エビ
トロポミオシン
20番目∼26番目
124番目∼134番目
153番目∼161番目
CysGlnlleProProAsnAlaAsnLyslleArg
GluAlaLeuAlaGln
47b
IleLysArgLysArgGlnGln
47c
ArgThrProGluValAspAspGluAlaLeuGlu
Ala
47d
PheLeuAlaGluGluAlaAspArgLys
39
表2
食物アレルゲンの連続および不連続B細胞エピトープ
供給元
卵
名称
試験抗体
連続エピトープ 不連続エピトープ 参考文献
Gal d 2
IgE + IgG
Gal d 4
IgG
β-ラクトグロブリン
IgE
1
α-ラクトアルブミン
IgE
1
小麦
アミラーゼインヒビター
IgE
5
47g
魚
Gad c 1
IgE + IgG
3
47e
エビ
Pen a 1
IgE
2
39
牛乳
7
47e
3
47f
47d
B細胞エピトープペプチドにはアミノ酸配列に独自な、または共通なパターンはみられ
ない(表 1)
。連続エピトープに特異的な抗体は不連続エピトープ特異的な抗体に比べ常に
親和性が低い44。抗体親和性の観点から見ると、ほとんどのアレルギー患者の産生する抗
体は不連続(高親和性)エピトープに特異的である44。この一般則が食物アレルゲンに適
用できるかは未だ不明である(表 2)。エピトープ内にはおよそ 8 から 16 のアミノ酸残基
が存在するが、各アミノ酸残基が等しく総結合エネルギーに寄与しているわけではない
44,46。
タンパク質抗原表面は潜在的な B 細胞エピトープでおおわれている;しかしながら、そ
れら全てが等しく反応するわけではない。実際、多くは認識されない。B 細胞エピトープ
を予測する方法は存在するが、全体として成功していない。例えば、極性と非極性のアミ
ノ酸残基の計算に基づくアルゴリズムは分子の表面に位置するアミノ酸残基の予測に用い
られている。しかしながら、ホストの応答が各個人が反応するエピトープを決定するので、
この情報は不完全である。
C. 栽培学的な考慮
栽培学的条件の結果として、食物中の個々のタンパク質の種類や量に変動が生じる可
能性がある。例えば、ダイズに含まれるグリシニン48やピーナッツに含まれるアラチン49は
栽培学的条件により影響を受ける。しかしながら、そのような条件が特定の食物のアレル
ゲン性に影響を与えるかを確認した研究はない。
食物の個々のタンパク質の種類や量も品種や栽培品種によって変わる可能性がある。
そのような条件が特定の食物のアレルゲン性に与える影響を確認する、非常に限定された
研究が行なわれた。アーモンドのIgE結合タンパク質は 3 大品種(ノンパレル(Nonpareil)、
ミッション(Mission)、カーメル(Carmel))で類似している50。フロランナー(Florunner)
とバージニア(Virginia)ピーナッツは阻害イムノアッセイでのピーナッツ特異的IgE結合
能がかなり等しい51。一部の新鮮なアボガドによるアレルギー患者は一般的な 2 品種のう
ち 1 種にのみ反応するが、ほとんどの患者は両品種に反応する52。パン屋喘息の主要職業
性アレルゲンである小麦の特異的な 27kDaのアルブミンの量はドイツで一般に使用され
ている小麦 7 栽培品種の間で異なっている53。
植物や動物の発生段階も特定のタンパク質やおそらくアレルゲンの性質や量に影響す
る。この場合もこの可能性についてわずかな研究しか行なわれていない。ダイズもやしは
阻害イムノアッセイでのダイズアレルギー患者IgE結合能はダイズ種子と同等である54。
D. アレルゲン性タンパク質の物理的および化学的特徴
食物アレルゲンは典型的な加工や前処理に抵抗性である傾向がある。これらのタンパ
ク質は加熱、酸処理、タンパク質分解、消化に比較的抵抗性である。しかしながら重要な
例外は存在する。これらの抵抗性の特徴は、遺伝子工学により未知のアレルゲン性の可能
性が移動もしくは発達した、特定のタンパク質の潜在的なアレルゲン性の評価に有用であ
る可能性があるが、試験の組み合わせがそのような評価の信頼性増加に用いられなければ
ならない。
1.
耐熱性
多くのアレルゲン性食物タンパク質は熱に耐性である。しかしながら、熱に不安定な食物
アレルゲンがいくつか同定されている。加熱はタンパク質の変性とIgEが結合する構造的
なエピトープの消失を促進する。熱変性に対し、いくつかの食物アレルゲンが耐性である
ことは、食物アレルゲンに関しては構造的なエピトープがIgE結合のために常に重要であ
るわけではないことを示唆している。牛乳タンパク質はこの件について最も広く研究され
ている。加熱処理はホエイタンパク質の抗原性を減少しうるが、カゼインの抗原性にはほと
んど影響しない55。しかしながら、ホエイタンパク質は高熱処理でアレルゲン性が一部保持
される55-57。β-ラクトグロブリンや牛血清アルブミン(BSA)のIgE結合能は、80∼100℃、
15 分間の加熱により減少する。対照的にα-ラクトアルブミンやカゼインのIgE結合能はわ
ずかな変化しか見られない57。一部の患者血清中のIgE抗体は 100℃、3 時間で高温加熱後
の牛乳タンパク質とさえ有意に反応する57。この牛乳アレルギー患者の熱処理牛乳タンパ
ク質に対する反応の不均一性は低アレルゲン化処理として加熱処理を使用することの難し
さを示している57。
その他のほとんどの食物アレルゲンも熱に耐性である。タラの主要アレルゲンである
Gad c 1 は、熱に対し耐性である58。えびの主要アレルゲンは熱に安定であり59-61、調理に用
いられる水から単離される60,
61。米のグルテリンやグロブリン画分のイムノアッセイによ
って評価されたIgE結合活性は、60℃、1 時間もしくは 100℃、2∼10 分間の加熱により 40
∼70%減少する62。ダイズの7S-および 11S-グロブリン分画はダイズ特異的IgEと結合す
るが、その結合活性は 80℃、30 分間の加熱により、消失はしないが減少させることが可能で
ある63。後に、Burksら30は非加熱ダイズと比較し、80℃、60 分間加熱したダイズタンパク
質 7Sおよび 11S画分を用いた試験で、ダイズアレルギー患者血清由来のIgE力価が減少す
ることを示した。この条件で、ダイズタンパク質のホエイ画分を用いた際にIgE力価に変化
は見られなかった。120℃、60 分間加熱後のダイズタンパク質の 3 つの画分を用いた試験
では、IgE力価にかなりの減少が見られた30。さらなる実験において、3 つの主要ダイズタン
パク質画分のIgE結合能は、37℃60 分、56℃60 分、100℃5 分、100℃20 分、100℃60 分の加
熱によりほとんど影響を受けなかった31。
同様の加熱条件により、ピーナッツ粗抽出液と 2 つのピーナッツ主要アレルゲンである
Ara h 1 およびAra h 2 は影響を受けなかった31。ピーナッツ主要アレルゲンの一つである
コンカナバリンA結合性糖タンパク質のIgE結合能は、最高 100℃、pH2.8∼10 のpH域に
渡って安定である64。非加熱のピーナッツは、高温で不安定なアレルゲンも含むようである
65。
エンドウ豆アルブミン画分のアレルゲン活性は加熱や煮沸の際に、完全に保持される66。
綿実のアレルゲンは非常に熱に安定である18。卵白の主要アレルゲンであるオボアルブミ
ンとオボムコイドは比較的熱に安定であり、調理した卵で免疫学的に検出が可能であるが、
コナルブミンは安定性が低い67。オボムコイドは 100℃、長時間加熱でも患者血清IgEとの
結合能が保持されるが、4℃で 12 日間保存した卵からのオボムコイドは新鮮な卵のものよ
り、100℃、長時間加熱に対し、わずかに安定性が低い68。ある研究において、オボアルブミン
の熱変性はアレルゲン性にほとんど影響しないが69、他の研究では熱変性オボアルブミン
は未変性のものと比較してIgEへの結合がかなり低い70。
一部の食物アレルゲンは熱変性に対し非常に感受性が高い。新鮮な果物と多くの野菜が
良い例である35。りんごに関しては、りんごの新鮮な抽出物での皮膚プリックテストは陽性
であったが、175℃、30 分間の加熱をした抽出物では陰性であった34。その他の食品も熱に
安定なアレルゲンと熱に不安定なアレルゲンを含んでいる;先に述べた通り、ピーナッツが
良い例である65。
食物アレルゲンは熱変性に耐性である傾向があるが、この性質はもちろん普遍ではない。
遺伝子技術により得られる特異的なタンパク質の潜在的なアレルゲン性の評価に熱変性を
使用することには問題がある。加熱処理されたタンパク質の免疫原性応答を誘導する能力
は IgE 反応系で評価すべきである。特異的タンパク質の、熱に対する他の生物学的活性の
安定度の評価から、熱に対する免疫原性またはアレルゲン性の安定度を予測することはで
きない。
2.
消化、タンパク質分解、加水分解に対する抵抗性
ほとんどの食物アレルゲンはタンパク質分解や加水分解に抵抗性である71。加熱処理は
タンパク質変性と高次構造的なエピトープの喪失をもたらすが、ポリペプチド鎖の酵素も
しくは酸による切断は高次構造的、および直線状(linear)エピトープの両方を破壊する可
能性がある。しかしながら、消化、タンパク質分解、加水分解に対する食物アレルゲンの安定
性情報量は比較的乏しい。
消化が食物タンパク質のアレルゲン性を増強することを示唆する研究は極めて少ない。
Haddad72らは一部の牛乳アレルギー患者血清IgEが、β-ラクトグロブリンのタンパク質消
化物に対して未消化のものに比べ強く反応することを報告した。Schwartzら73はペプシン
消化によりβ-ラクトグロブリンの結合能は減少しないと報告した。牛乳タンパク質の限定
的なタンパク質消化ではIgEとの結合能は減少しないが、徹底的な加水分解ではかなりア
レルゲン性が低下する74,75。トリプシンによるホエイタンパク質の加水分解は、モルモット
において感作能のみられない部分的加水分解物をもたらした76,
77。この加水分解物で調整
される市販幼児用調合乳は 20%未満の遊離アミノ酸、鎖長が 10∼15 アミノ酸までの検出
可能なペプチド、および少量(約 1%)の鎖長 27 アミノ酸の分子量 3000 までのタンパク質
が含有される78。これらの、牛乳特異的IgEが反応する可能性のあるタンパク質は、牛乳に感
作された乳児の間でこの調合乳による副作用が生じる根拠となり79,
80、一部の牛乳アレル
ギー患者血清と、これらのホエイ部分加水分解物への有意なIgE結合により実証された81。
ホエイタンパク質に対するペプシンとトリプシンの併用では加水分解の程度が増し、
IgEへの結合がみられなくなった82。ホエイタンパク質がBacillus lichenformis由来のアル
カリプロテアーゼにより加水分解され、生じたペプチドがゲルろ過により、分子量に従って
分離された83。分子量が 6kDa以上のペプチドはマウスに対して局所的な過敏反応を誘発す
るが、それより小さなペプチドでは誘発せず83、徹底的な加水分解はホエイタンパク質由来
のアレルゲン性ペプチドの除去に必要かもしれない。市販プロテアーゼ混合物によるホエ
イタンパク質の部分的加水分解により、加水分解の程度がそれぞれ 20.8%、12.4%の2種の
加水分解物を作成した84。これらの加水分解物はIgE結合がかなり減少したが、IgE反応性
は完全には破壊されなかった84。加水分解物の限外ろ過によりIgE結合活性の検出されない
加水分解ホエイろ過物が得られた84。
ヒトにおけるカゼインのアレルゲン性に対する消化や部分的加水分解の影響は調べられ
ていない。ウサギでは、分子量 3500∼5000 のカゼインペプチドは完全なタンパク質と同
程度の免疫原性を持つが、より小さなペプチドでは免疫原性が 1000 倍減少する85。カゼイ
ン部分加水分解物は免疫原性をある程度保持する傾向があるが、用いたタンパク質分解酵
素の特異性が、残留物の免疫原性に一部影響している86。徹底的なカゼインの加水分解は、
一般に低アレルゲン乳児用調合乳に使用されている、アレルゲン性が非常に低減した産物
をもたらす75, 87。これらカゼイン加水分解物の綿密な研究により、70%の遊離アミノ酸と鎖
長が 5∼8 アミノ酸までの検出可能なペプチドが含有されることが示された78。カゼイン加
水分解物へのIgE結合は一部の患者では認められる81。
その他の食物アレルゲンもタンパク質分解や消化に抵抗性を示す。タラのアレルゲンで
あるGad c 1 はタンパク質分解に抵抗性である;Gad c 1 の低分子のペプチド断片はIgEへ
の結合能を保持している88-90。しかしながら、トリプシン、ペプシン、サブチリシン、プロナ
ーゼによるタラアレルゲン抽出物の徹底的な分解によりIgE結合能は消失する。エラスタ
ーゼ(elastase)加水分解と、消化でのタンパク質分解のシミュレーションでは部分的なIgE
結合能の消失作用しかなかった91。同様に、卵白の主要アレルゲンであるオボムコイドやオ
ボアルブミンのIgE結合能も、タンパク質分解による影響を受けず、IgE結合能のあるペプ
チドフラグメントを単離するという結果であった69, 70, 92。
ダイズ抽出物のIgE結合能はトリプシン、キモトリプシン、腸管ペプチダーゼ混合物によ
る加水分解に続いてペプシンによる加水分解を受けると、IgE結合能が 1/10 に減少した31。
同様のタンパク質分解により、ピーナッツ抽出物のIgE結合能は 1/100 に減少した31。ダイ
ズタンパク質の徹底的な加水分解では、ウサギに対する免疫原性のない加水分解物が得ら
れた93。同様の結果が、モルモットにおいて加水分解コラーゲン/ダイズタンパク質で得ら
れた94。
IgE介在性の運動誘発性アナフィラキシー患者グループに対する小麦抽出物の皮膚テス
ト反応性は、トリプシン処理により破壊されたが、ペプシン処理では破壊されなかった95。
トリプシン加水分解とペプシン加水分解では生じるペプチドの分子量は類似している。し
かしながら、トリプシンによる部分的加水分解は小麦タンパク質のIgE結合エピトープを
破壊したが、ペプシンによる加水分解ではこれら同じエピトープに対して実質的に影響し
なかった95。低アレルゲン性の小麦粉は可溶化した小麦タンパク質をアクチナーゼ、コラゲ
ナーゼ、トランスグルタミナーゼ処理によって開発されてきた96。
綿実の主要アレルゲンはペプシン加水分解により影響されない97。アクチナーゼによる
加水分解により米アレルゲンが大きく不活化される可能性がある一方、パパインは米アレ
ルゲンのIgE結合活性を低減させた。ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、パンクレアチ
ンはこのアレルゲン活性に影響しなかった98。
タンパク質は臭化シアンのような特異的試薬又は、濃塩酸処理のような非特異的方法に
よる化学的な手段を介して加水分解される可能性がある。アレルゲンの化学修飾はこれら
タンパク質アレルゲン性低減のための別の方法を示しているかもしれない。オボムコイド
の臭化シアン切断処理はそのIgE結合活性に影響しなかった92, 99。しかしながら、この処理
はオボアルブミンのアレルゲン性を減少させた69, 99。尿素、塩酸(pH
3.0)、ジチオスレ
イトールによるオボアルブミンの変性は、IgE結合活性を減少させなかったが、水酸化ナト
リウム処理(pH
11.0)ではIgE結合活性が消失した70。
一部の食物アレルゲンはタンパク質分解や消化に対する感受性が高い。新鮮な果物は一
般に口腔アレルギー症候群(OAS)患者に症状を惹起する100,
101。一見、新鮮な果物のア
レルゲンは、胃腸管で容易に消化され、全身性に影響しない。しかしながらこの学説は綿
密に評価されてはいない。
ほとんどの食物アレルゲンは、消化、タンパク質分解、これ以外の加水分解に抵抗性で
ある。しかしながら、その研究結果は、実験で用いられた酵素的もしくは化学的処理の性
質や、加水分解物の免疫原性の評価方法の選択、それほどではないにせよ、評価する特定
の食物アレルゲンによって決まる。タンパク質の加水分解抵抗性評価は、特定のタンパク
質の潜在的なアレルゲン性に関して価値ある情報を提示する可能性があるが、厳密な試験
手順は確立されていない。タンパク質分解評価手順は、消化のタンパク質分解を模してい
て、単離したタンパク質や適切な食品基質(food matrix)内のタンパク質の試験を含むこ
とが理想的である。
動物モデルにおけるホエイ部分加水分解物の免疫原性評価の経験は、そのような動物モデ
ルから得られる結果の評価に細心の注意が取られることを決定づける。消化、タンパク質
分解、加水分解に対する、食物アレルゲンと食物タンパク質を比較した安定性のさらなる
研究データの進展は、特定のタンパク質の潜在的なアレルゲン性の評価を目的としたツー
ルの有用性を決定するのに強く望まれる。
3.
溶解性
ほとんどの食物アレルゲンは水および/または塩類溶液に溶解するので、アルブミン(水
に可溶)やグロブリン(塩類溶液に可溶)のようなクラスに分類される102。しかしながら、
多くの食物タンパク質はこれら 2 つの溶解性カテゴリーに分類されるので、この特性はと
りわけ特徴付けるものとはならない。食物タンパク質はまた、アルコールに溶解するか(小
麦のグリアジンのようなプロラミン)、そうでないか(例えば小麦のグルテリン)だろう。
これら 2 つのカテゴリーのタンパク質はアレルゲンとして分類されることはあまりなかっ
た。しかしながら、タンパク質のこれら 2 つのカテゴリーはそのアレルゲン性の可能性に
ついてあまり調べられていなかった。時には、これらのタンパク質がIgEを介したアレルギ
ーに関係している。例えば、小麦グルテンに対するIgE抗体が、少数の小麦アレルギー患者
で確認されている103。さらに、小麦、ライ麦、大麦、オーツ麦の不耐症と関連した細胞性免疫
反応を伴うセリアック病は、ある種のグリアジンペプチドにより引き起こされる104。近年、
Gad c 1 を含む可溶性タンパク質が徹底的な洗浄によって除去されたタラすり身で、タラ
アレルゲンが確認された105。
4.
耐酸性
食物アレルゲンは通常、穏和な酸処理に対してかなり安定である33。一般的に食物アレ
ルゲンの胃酸の条件を模した酸濃度での酸処理はほとんど影響しない。このような酸性条
件で新鮮果物のアレルゲンが不安定性であることは、例外として既に記載されている。よ
り典型的な事例として、ピーナッツ主要アレルゲンの 1 つである 65kDaのコンカナバリン
A結合性糖タンパク質はpH 2.8 で安定である64。主要な卵白アレルゲンの 1 つであるオブ
アルブミンはpH 3.0 で安定である70。胃酸を模した条件下の免疫原性の消失の証明は、あ
るタンパク質の潜在的なアレルゲン性を評価するための補足的基準となる可能性がある。
食物アレルゲンの酸安定性の比較も限られた情報しかない。補足データ収集は考慮すべき
重要な課題である。
5.
アレルゲン性に関わるアミノ酸化学修飾の影響
IgEの結合するエプトープ内アミノ酸が修飾される可能性のある化学修飾は、アレルゲ
ン特異的IgEへの結合を減少させる。このアプローチはIgE結合エピトープ内のアミノ酸同
定に意義があるが、概して食品処理では実用的な価値があまりない。この戦略を用いた初
期の試みの 1 つとして、LeeとSehon106はポリエチレングリコール処理によりオボアルブ
ミンのIgE結合が減少することを観察した。Gad c 1 のリジン、チロシン、トリプトファン、
アルギニン側鎖の化学修飾や、このタンパク質に結合している 2 つのカルシウムイオンの
放出もIgE結合の有意な減少をもたらした107。Gad c 1 の重合は同様にアレルゲン活性の減
少をもたらした107,108。
その他のアプローチも特定の食物アレルゲンのIgE結合を減少させるが、これらは一般
則というよりも例外である。対照的に乳糖とβ−ラクトグロブリンの反応によって牛乳ア
レルギー患者における牛乳タンパク質の皮膚反応性が増加し109、特定の状況下で褐変反応
がアレルゲン性を増強する可能性を示している。
様々な食物タンパク質のアレルゲン性に対する化学修飾の影響は、非常に特異的である
ようであり、アレルゲンエピトープのアミノ酸配列と関連しているようである。遺伝子改
変タンパク質の潜在的アレルゲン性の普通的な評価にそのようなアプローチを用いること
は不可能であろう。
Ⅲ. 食物アレルゲンに対する加工の影響
A. 加熱処理
食物アレルゲンは一般的に熱やタンパク質分解酵素に耐性であるため、食品加工は様々
な食品のアレルゲン性の除去に特に有効ではない。いくつかの注目すべき例外が存在する。
例えば、新鮮な果物のアレルゲン性は果物の缶詰製造やジャムの製造で生じるであろう加
熱によりかなり容易に除去される101。スライスしたりんごのアレルゲン性は室温保存によ
り減少し34, 110-112、おそらく、一部のアレルゲンの変性し易さの別の指標が新鮮な果物にお
いて明らかになっただろう。しかしながら、新たに摘んだりんごのアレルゲンは、りんごが
スライスされていない場合、保存中に増加する112。さけに存在するアレルゲンは、さけアレ
ルギー患者が缶詰のさけに対し寛容であるという研究から、市販の缶詰に用いられる加熱
処理により破壊されるようである113。しかしながら、魚アレルギー患者がしばしば調理し
た魚でアレルギーを起こすことがあり、加熱処理の程度は重要な変数となる。
いくつかの職業性食物アレルゲンは熱に不安定である。未熟なコーヒー豆にはアレルゲ
ン性があるが、焙煎したコーヒー豆にはそれがなく、熱に不安定なアレルゲンの存在を示唆
している114。カカオ豆のアレルゲンはチョコレートに加工されることにより破壊されるが、
確実な加工操作は確認されていない115。カカオ豆は相当な熱処理を受けるため、熱変性と
同時におそらく化学修飾を受けているようである。
ほとんどのアレルゲン性食物は、製造や前処理での一般的な加熱処理時にそのアレルゲ
ン性を保持している。牛乳とその 2 つの主要タンパク質画分であるカゼインとホエイは過
酷な熱処理にさらされた場合でもアレルゲン性を保持している55, 116-119。これらの過酷な加
熱処理は牛乳の栄養学的な質に悪影響を及ぼす116。牛乳は報告によれば、濃縮、エバポレ
ーション、乾燥といった、一般的な加熱加工処理後にアレルゲン性を保持している119。
非加熱およびローストしたピーナッツは両方ともアレルゲン性があり、ピーナッツ特異
的IgEに結合する51, 65。ピーナッツバターやその他の様々なピーナッツ粉末を含む、ほとん
どの市販ピーナッツ加工製品はアレルゲン性を保持している51。非加熱およびローストし
たダイズも同様にIgE結合するタンパク質を含有している29。脱脂ダイズの酸・アルカリ抽
出により調整された、分離ダイズタンパク質は、IgEとの結合能は減少するが、アレルゲン
性が一部残存している29。その他のダイズ粉末、ダイズタンパク質濃縮物を含む、乾燥にも
さらされたダイズ製品は、IgEに結合するタンパク質のほとんどが保持されている29。茹で
た卵はIgEへの結合能を保持している68。
B. 酵素によるタンパク質分解
酵素によるタンパク質分解は、様々なアレルゲン性食品中のアレルゲン性の除去に必ず
しも効果的ではない。タンパク質分解の程度は非常に重要な変動要因であろうが、むしろ
徹底的なタンパク質分解がアレルゲン性食品タンパク質のアレルゲン性の完全除去に必要
だろう。監督官庁は一般に、徹底的および部分的な加水分解タンパク質を区別した規制を
していない。牛乳は最も研究された例である。Jostと共同研究者により報告された76,77よ
うに、ある乳児用調合乳がホエイタンパク質の部分加水分解を使って開発された120。いく
つかの研究ではこの製品が新生児に投与され、典型的な牛乳調合乳に比べ感作が少なかっ
たが121-123、その他の研究では差がみられなかった124,125。このホエイ部分加水分解物調合
乳は既に牛乳に感作された一部の乳児にアレルギー反応を誘発した79,80,126。アレルゲン性
タンパク質を構成アミノ酸にする完全な加水分解により、タンパク質へのIgE結合能が破
壊されることが予測される。実際、最も広く市販されている低アレルゲン性幼児用調合乳
は徹底的に加水分解されたカゼイン加水分解物に基づき調製されている。しかしながら、
カゼイン加水分解物調合乳に対してさえ、高度に感作された幼児でアレルギー反応を起こ
すことが時折報告されており126-128、そのような調合乳の加水分解率は 85%以上であるの
で、注目に値する93,129。Wahnら87は、カゼイン加水分解物調合乳は残在するアレルゲン活
性がほとんどないことを報告した。しかしながら、カゼイン加水分解物が免疫原性を示し
うる大きさのペプチド断片を含むことがある83,130。
調味料として販売されている徹底的に加水分解されたピーナッツタンパク質は、ピーナ
ッツ特異的なIgEに結合しなかった51。しかしながら、おそらく加水分解の程度がダイズア
レルゲンのIgE結合エピトープを破壊するのに不充分だったため、市販および酸加水分解
したダイズから作られた野菜タンパク質(HVP)はダイズアレルギー患者の血清IgEに結
合した54。真菌により加水分解された醤油、テンペ、豆腐、味噌といった発酵性ダイズ製
品もアレルゲン性を保持しているが、IgE結合活性のレベルは生のダイズ抽出物と比較し
て減少していた54。
低アレルゲン性小麦粉はアクチナーゼ、コラゲナーゼ、トランスグルタミナーゼによる
可溶性小麦タンパク質の処理を介して開発されてきた96。同様に低アレルゲン性米も、米
のタンパク質分解酵素処理を介して開発されてきた98。この調製は米アレルギー患者の治
療に極めて効果的だった131,132。ホエイタンパク質濃縮物からのβ−ラクトブロブリンの選
択的消化が、高静水圧下(1000∼3000 kg/cm2)でサーモリシンを用いて実施された。そ
の産物はβ−ラクトブロブリンを欠くが、α−ラクトアルブミンや他の一般的な牛乳アレ
ルゲンが豊富である133。
C. 油の抽出
加工中の全タンパク質またはアレルゲン性タンパク質のみの除去(removal)もしくは
排除(exclusion)は、食品アレルゲン性を明らかに除去するだろう。ピーナッツ、ダイズ、
ヒマワリ種子といった脂肪種子からの高温溶剤抽出法による食用油の抽出は、タンパク質
の全痕跡を除去する。これは結果としてアレルギー患者の摂取する油が安全となる134-136。
しかしながら、Porrasらはヨーロッパからのダイズ油のサンプルの全てではないが一部に
ダイズタンパク質を同定し137、油の抽出は常にはタンパク質もしくはアレルゲンを完全に
除去出来ない可能性を示した。ダイズタンパク質は一般的な食品成分であるダイズレシチ
ンのサンプル中にもしばしば検出された137。同様に牛乳由来の非タンパク質成分が微量の
牛乳アレルゲンを含む可能性がある。例えば乳糖はアレルゲン性夾雑物を含みうる138。
D. その他の加工
その他のアプローチはいくつかの食物アレルゲンのIgE結合を減弱するかもしれないが、
これらは一般則というよりも例外の傾向がある。りんごアレルゲンはフェノール性褐変
(phenolic browning)により不活化される110。凍結乾燥はいくつかの魚抽出物のアレル
ゲン性を減少させる可能性がある。魚アレルギー患者は調理した魚の非凍結乾燥物にオー
プン負荷試験(open challenges)では陽性を示したが、凍結乾燥物の二重盲検プラセボ対
照食物負荷試験(double-blind, placebo-controlled challenges)では陰性であった32。し
かしながら、凍結乾燥はかなりまれな食品加工操作であり、凍結乾燥した魚はほとんど市
販されていない。Gad c 1 はすり身の製造中に他の可溶性筋形質タンパク質と共にタラか
ら除かれるようである105(すり身はゼラチン状の性質のある魚がすり潰され、徹底的に洗
浄され調製される。)。しかしながら、他のタラ アレルゲンはすり身に残っており、この製
品は低アレルゲン性とはならない105。
食品製造に用いられるその他の加工の食物アレルゲン性に対する影響は評価されていな
い。均一化(homogenization)が牛乳タンパク質におけるアレルゲン性エピトープの効力
が増加されるという説があるが、均一化は牛乳のアレルゲン性に顕著に影響しない117。ほ
とんどのアレルゲン性食物タンパク質は食品加工や調整中にそのアレルゲン性を保持して
いるようである。
E. 食品の低アレルゲン化処理へのアプローチ
研究開発の関心がなかったため、低アレルゲン性食品の調整は遅々として進まなかった。
唯一広く商品化されている低アレルゲン食品は、調合乳に用いられる牛乳やダイズタンパ
ク質に対するアレルギーの進行した患者向けのいくつかの特殊調製粉乳である。これらの
低アレルゲン性特殊調製粉乳は徹底的に加水分解されたカゼインおよび/またはホエイを
基にしている。タンパク質様(proteinaceous)アレルゲンはアミノ酸や非常に小さなペプ
チドに加水分解されているので、これらの調合乳はほとんどの牛乳アレルギーの乳児によ
る摂取に対し比較的安全である。
ピーナッツ油のような、その他いくつかの食品は食品由来のアレルゲンが欠如している
ため、低アレルゲン性を特徴づけられる可能性がある。しかしながら、これらの製品はこ
の方法で市販されておらず、調製毎に再現よくアレルゲンがないことを証明せずにこのア
プローチをとることは賢明でないかもしれない。
Ⅳ. 用量反応関係
A. 感受性
特定のタンパク質にどの程度曝露されたら感作されるかはわからないが、IgE 介在性食
物アレルギーが既存する患者では極めて少量のアレルゲン性食物でもアレルギーが発現す
る。マスト細胞や好塩基球の膜表面における食物アレルゲンと IgE 抗体の相互作用により、
ヒスタミンやロイコトリエンなど、生物学的活性のあるアレルギー反応伝達物質が比較的
大量に放出される。少量のアレルゲンと IgE の相互作用でも臨床的に重大な有害反応が発
現することがある。万人に有害反応を誘発する食物アレルゲンの最小量を正確に算出する
ことはできない。なぜならアレルゲン性食物に対する耐性は食物によって異なるし、個々
人によっても異なるからである。
しかし、実際に発現したアレルギー反応を綿密に記録し、厳密な二重盲検対照方式によ
って行った食物負荷試験の結果を外挿すれば、各種アレルゲン性食物に対するほとんどの
人の最小耐量は推定できるものと思われる。アレルゲン性食物の入ったパッケージを開封
したり139、ピーナッツのカスが付着したカウンターやテーブルに接触したり140、調理中の
食物から出る蒸気を吸ったり141、アレルゲン性食物を摂取した人の唇にキスしたりするな
ど141、偶然の接触によってアレルギー反応が発現することが逸話的に報告されている。時
には極微量のアレルゲン性食物が混入していたために重度の反応が発現することもある。
例えば、魚を揚げた油で揚げたフレンチフライで魚アレルギーの患者に致死的な反応が発
現したことがある142。また、母乳しか与えていない乳児にピーナッツなどの食物に対する
食物アレルギーが発現しており、これはアレルゲン性食物を摂取した母親から出る母乳に
含まれる食物アレルゲンが原因だと思われる143-145。母乳によるアレルゲン性食物タンパク
質の曝露量はかなり低いはずである。しかし、この場合、ほとんどの乳児は感作されても
離乳期になってこのアレルゲンを大量に摂取するまで(アレルギー)反応は発現しない144。
こうした経験や逸話から過敏ならごく少量の食物アレルゲンでもアレルギー反応が発現す
ることがはっきりするが、最小耐量を推定することはできない。また、アレルギー反応の
重症度は曝露量に直接関係するようである。従って、ごく少量のアレルゲン性食物ならほ
とんどの場合重度の反応を誘発することはないと思われる。
患者が摂取したアレルゲン性食物を定量的に記録すれば実際に発現したアレルギー反応
から最小耐量を推定できる。SettipaneおよびSettipane146は、アレルギー患者では 1∼2g
のエビ、25mgのピーナッツによって有害反応が発現すると推定した。Gernら147はラベル
の成分表示には牛乳の記載がない食物製品によって重度の牛乳アレルギー反応が発現した
症例を調査した。原因のひとつとしてあげられたのはダイズを原料にした冷凍デザートで、
乳製品の加工と同じ設備を使用したために(牛乳成分が)混入したものであった。この場
合、一食に牛乳約 2.5mL分が含まれていた147。2.5mLの牛乳には約 80∼100mgの牛乳タ
ンパク質が含まれ、そのうち 80%はカゼイン、20%はホエイタンパク質である。そのほか、
天然香料として部分的に加水分解したカゼインを含むホットドッグが原因の場合もあった。
1 本のホットドッグに含まれるカゼインは牛乳約 0.3mL中のカゼイン量に相当しており147、
この 0.3mLの牛乳には約 10∼12mgの牛乳タンパク質が含まれる。Jonesら148はラズベリ
ーシャーベット製品によって発現した牛乳アレルギー反応を調査したが、これは加工工場
で同じ設備を共用したために牛乳が混入していた。この牛乳アレルギー小児の場合、牛乳
タンパク質を 0.52%含むシャーベットを摂取(量は不明)したために反応が発現した148。
また、ピーナッツバターを製造するのに使用した設備で加工したヒマワリバターが原因で
ピーナッツアレルギー患者にアレルギー反応が発現しており、この患者はピーナッツが約
1%混入したヒマワリバターをティースプーンにして 0.25 杯弱摂取していた149。Ymanら
150は、偶然または予期せずアレルゲン性食物を摂取してアレルギー反応が発現した過敏な
症例について報告している。その多くは少量のアレルゲン性食物が原因で、具体的には
0.04∼1.1%の牛乳が 9 件、0.003∼0.16%の卵が 3 件、0.3∼11.9%の小麦グルテンが 3 件、
0.5∼7.0%のダイズタンパク質が 3 件、0.2%のヘーゼルナットが 1 件であった。このうち
いくつかは曝露量に関する情報があった。牛乳アレルギー患者は成分表示されていなかっ
たカゼインを 0.06%含むソーセージを約 100g(60mgのカゼイン)摂取して致死的アナフ
ィラキシーが発現した150。また、ヘーゼルナットアレルギー患者は成分表示にされていな
かったヘーゼルナットを 0.2%含むチョコレート菓子製品を約 3∼6g(6∼12mgのヘーゼ
ルナット)摂取して喘息反応が発現した150。
最小耐量を最も正確に推定する方法は二重盲検食物負荷試験(DBPCFC)だと思われる。
これまでこうした負荷が行われるのは診断のためであって、最小耐量を算出するためでは
なかった。標準的なプロトコールでは、まず患者に症状が発現すると推定される量の半分
以下から開始する151。典型的な初期量としては 400∼500mgが多いが152、初期量の選択に
は常に医師の判断が大きく影響する。事実、生命を脅かすアナフィラキシー反応が発現し
たことのある患者には盲検食物負荷を実施しない医師がいる152。従って、非常に過敏な患
者はこうした最小耐量の推定の対象からは除外されていることがある。Atkinsら153は敏感
な患者は 100∼350mgの綿実粕タンパク質で有害反応が発現することを示している。
Sampson140はDBPCFCで一部のアレルギー小児は 50∼100mgのピーナッツタンパク質で
有害反応が発現することを示している。Oppenheimerら154はピーナッツアレルギーを軽減
する緊急免疫療法に関する先駆的な試験で、ピーナッツアレルギー患者は免疫療法の前に
30mg∼8g、平均 4gで有害反応が発現することを示しており、最小量は 30mgであった。
Oppenheimerら 154 は生命を脅かす症状が発現したことのある患者には脱脂ピーナッツ
1mgからDBPCFCを開始した。他のピーナッツアレルギー患者には脱脂ピーナッツ 100mg
から開始した。通常、DBPCFCの上限はアレルゲン性食物 8gである151。Oppenheimerら
154の試験で、単回最大量は
8gであったが、累積量は 15.8∼15.9gに達した。確かに、数グ
ラムのアレルゲン性食物を摂取しないと反応が発現しない食物アレルギー患者が多い。以
上の経験からはっきり言えることは、ごく少量の食物アレルゲンでもアレルギー反応を誘
発することがあるということである。敏感な患者ではミリグラム単位のアレルゲン性食物
でアレルギー反応が発現している。最小耐量を確実に正確に推定することはできないが、
既知のアレルゲン性タンパク質はなるべく摂取しないよう充分注意する。
B. 重症度は用量の関数
どの毒性反応もそうだが、アレルギー反応も用量反応関係を示し、その重症度は用量の
関数である。皮内皮膚テスト(ST)で見られる用量反応関係がまさにそれである。食物ア
レルギーの場合これを裏づける証拠はほとんど観察に基づくもので逸話的である。繰り返
しになるが、DBPCFC の経験から、いずれの患者も特定の時期に特定の閾値があり、そ
の閾値に満たなければ臨床的に重大な反応は発現しない。先述したように、この閾値がか
なり低い患者が多数いる。DBPCFC は有害反応が発現した最小の用量で中止する。ヒト
が対象なので、いくらコントロールされた方法でもそれ以上の用量でさらに重症な反応が
発現するのを確認するのは倫理的ではない。しかし、ほとんどの患者の場合、DBPCFC
で経験する反応はかなり軽症で、より大量のアレルゲン性食物を摂取したものと思われる
実際のアレルギー反応で発現する症状はより重症である。
C. 極微量曝露の源および発見
食物アレルギー反応を予防する第一の方法はその食物を避けた食事を摂ることである
141, 155。アレルギー患者は極微量のアレルゲン性食物を摂取しても有害反応が発現するの
で、
(アレルゲン性食物の)混入した食物が少量でもあればこの予防方法の成果は低減する。
外食施設や加工食品施設での多くの個人摂取量から極微量のアレルゲン性食物が求められ
るが、多くのこのような状況は逸話的に記述されているに過ぎない。156。
個人レベルで極微量のアレルゲン性食物を摂取してしまうケースとしては、食べる前に
アレルゲン性食物を除去しようとした場合、配膳器具や容器・調理用具を共用した場合、
用具・容器・カウンタートップに触れた場合、アレルゲン性食物を触った場合、アレルゲ
ン性食物を摂取した人の唇にキスした場合、アレルゲン性食物の入ったパッケージを開封
した場合、調理中のアレルゲン性食物から出る蒸気を吸った場合、母乳によって食物アレ
ルゲンが母から乳児に移行した場合などがあげられる。外食施設でアレルゲン性食物を摂
取してしまうのは主にラベルに記載がないことが原因である。アレルギー患者が頼るのは
給仕係や料理人がもたらす情報だが、得てして誤りがある。また、レストランで出される、
チリにピーナッツバターを使ったような創作的な料理では、予期せずアレルゲン性食物を
摂取してしまうことになる142。そうした場合、アレルギー患者は図らずもかなり大量のア
レルゲン性食物を摂取することがある。さらに、外食施設では配膳器具や容器・フライパ
ン・調理鍋を共用したり、2 種類以上の食物を同じ油で揚げたり、テーブルの横で調理さ
れている食物から出る蒸気を吸ったりするなどして、極微量のアレルゲン性食物を摂取し
てしまうことがある。また、食品加工施設でも他の食品が混入することがある。その場合、
包装された食品のラベルにはそうした混入があることは記載されていないことが多い。そ
うした混入が起こりやすい食品加工業界の慣習としては、加工設備を共用する、再加工(ひ
とつの製品の残りを別の製品に添加)する、天然香料やスターチなどの成分にアレルゲン
性タンパク質が含まれる、配合に誤りがある、異なる包装を使ったために表示が不適切で
ある、成分を切り替えたのにラベルを変更していない、などがあげられる。
こうしたケースは少なからず起こっていると思われるが、明らかにされているのはごく
わずかである。設備の共用による混入でアレルギー反応が発現した例がいくつかある147,
149, 157。ホットドッグの天然香料成分を酵母の自己分解物質から部分的に加水分解したカ
ゼインに切り替えたためにアレルギー反応が発現したケースもある147。Porrasら137は、レ
シチンや油などダイズを原料とする成分にダイズタンパク質が含まれることを発見してい
る。Ymanら150は、包装された食品に表示のないアレルゲン性成分が使用されたり、アイ
スクリームやパスタ、チョコレートの加工設備が共用されたり、スペルトパスタの表示が
小麦無添加になっていたり(スペルトは実際には小麦の一種)、組成が変更になったのに表
示が変更されていなかったり、香料や結合剤などの成分にアレルゲン性成分が含まれたり
しているスウェーデン国内の例を数多く実証している。時にはハウスダストに含まれれば
アレルゲン性が高いDermatophagoides farinaeダニがフリッターミックスに混入すると
いった、思いもよらないケースもある158。
免疫測定によって混入したアレルゲン性食物タンパク質残留物を検出することができる
33。
アレルゲン特異的IgE抗体が含まれるアレルギー患者の血清を使用するこの免疫測定は
かなり信頼性が高い137, 147-149, 159。この免疫測定では本当のアレルゲンを検出できるが、ア
レルギー患者の血清に頼っているためいつどこでも利用できるというものではない。動物
の抗血清やモノクローナル抗体を使った分析も成果を上げている150, 160, 161。こうした抗体
によって必ずしも特異的にアレルゲン性タンパク質を検出できるわけではないが、かなり
特異的に特定の食物タンパク質を検出できる。
V. 食物アレルゲンの試験および食物タンパク質のアレルゲン性
ヒトやヒトから採取したサンプルを使用する下記の in vitro および in vivo 試験は、既に
感作された患者に対するアレルゲン性しか調べられない。これらの試験によって新たなタ
ンパク質の感作能力を予測することはできない。まだ完全に開発されたわけではないが、
将来的にこうした評価の性能を改善するものとして期待できるのは動物モデルだけである。
A. In vitro 試験
1.
免疫測定および抑制免疫測定
放射免疫測定(RIA)法やRIA抑制法についてはYungingerおよびAdolphson162が詳述し
ている。RIA(図 2)ではその食物のエキスを適当な固相に吸着させる。その食物にアレ
ルギーを示す患者の血清をこの固相とインキュベートし、アレルゲン特異的IgE抗体を固
相のアレルゲンと結合させる。それから125Iで標識した抗ヒトIgEを使ってアレルゲンと結
合したIgE抗体を検出する。別の酵素免疫測定(ELISA)法では、酵素で標識した
固相に吸着させた抗原(例、臭化シアン活
性化セルロースに吸着させたピーナッツタ
ンパク質)
固相に吸着させたタンパク質に結合する抗
原特異的免疫グロブリン
標識抗ヒト IgE で検出される結合 IgE
図 2. 食物特異的 IgE 抗体の放射免疫測定(RIA)
抗ヒト IgE を使用する。これらの免疫測定は食物アレルギー患者の血清が入手できるかど
うかにかかっている。in vivo と異なり、患者が試験にたち合う必要はない。
抑制法でも免疫測定と全く同様にその食物のエキスを固相に結合させる。様々な濃度の
被検エキス(例、その食物を加工したもの)と食物アレルギー患者の血清を混合し、この
混合物と固相をインキュベートして、被検エキスのIgE結合能力を調べる。固相と被検エ
キスが競合的にIgEと結合する。125Iで標識した抗ヒトIgEを使って固相に結合したIgEを
測定する。固相に結合したIgE濃度と自由相すなわち被検エキスのタンパク質濃度をプロ
ットして抑制曲線を作成する。抑制免疫測定を利用して、混入した極微量のアレルゲン性
タンパク質残留物を検出したり147-149, 157, 159、加工がピーナッツやダイズを原料とする様々
な食品のアレルゲン性にどう影響しているかを評価したりしている51, 54。
2.
二次元免疫電気泳動および放射免疫電気泳動
CIEやCRIEによって食物に含まれる様々なアレルゲンが分離・検出されている74, 163, 164。
これらの方法にはいくつかの限界があり、ほとんどドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)に取って替わられているが、それでも一部のアレル
ゲンの検出には有用である。CIEやCRIEの一般的な方法についてはYungingerおよび
Adolphsonが詳述している162。SDS-PAGEに比べ、CIEやCRIEで使用するアガロースゲ
ルでは個々のタンパク質を識別しにくいことが大きな欠点である。
3.
SDS-PAGE およびイムノブロット
おそらくアレルゲンの分離・検出能力が最も高いのはSDS-PAGEと免疫ブロットを組み
合わせた方法である。この方法を使って多数の食物に含まれる様々なアレルゲンが同定さ
れている29, 43, 50, 60, 61。しかし、SDS-PAGEで発見された個々のIgE結合タンパク質の臨床
的重大性は明らかにされておらず、あまり重要でないアレルゲンの場合特にそうである
(「食物アレルゲン」を参照)。SDS-PAGEでは食物タンパク質エキスをSDSで処理して重
合体タンパク質を最も単純な単量体サブユニットに分解する165。それからPAGEを使って
これらのタンパク質を少しずつ異なる方法によって分離する。イムノブロットの方法につ
いては他で詳述している166,
167。分離したタンパク質を電気泳動によりニトロセルロース
に結合させ、その食物エキスに対するIgE抗体を含むヒト血清をこのニトロセルロースと
インキュベートする。酵素標識抗ヒトIgE抗体か放射標識抗ヒトIgE抗体のどちらか適当な
方を使い、それぞれ比色酵素反応、オートラジオグラフィによって、IgE結合タンパク質
を検出する。
B. In vivo 試験
1.
皮膚テスト
おそらく食物アレルギーも含めてアレルギーの診断に最もよく使われるのは皮膚プリッ
クテストである。通常、特定の食物の希釈エキス(1:10 または 1:20)を使って刺針/穿孔
法によって行う。抗原投与後 10∼30 分以内に穿孔部位に希釈用対照の膨疹より直径が
3mm以上大きい膨疹が発現したら陽性である。Bockら168が食物アレルギーを評価するた
めの正しい皮膚刺針テストの方法を解説している。特定のタンパク質のアレルゲン性を評
価する場合、通常、被検エキスは精製物質または半精製物質から調製する。皮膚テストの
信頼性を高めるには、アレルゲンエキスを標準化するのが望ましい(John A. Anderson著
「食物に対するアレルギー反応」を参照)。
2.
負荷試験
DBPCFCは食物有害反応の診断におけるゴールデンスタンダードだと考えられている
151。食物に対する有害反応の診断によく使われる(
「食物に対するアレルギー反応」を参
照)。食物タンパク質のアレルゲン性を調べるため、その食物に対して明らかにアレルギー
反応を示し、皮膚テストまたは免疫測定が陽性の患者を選ぶ。反応が重症の患者は除外す
る。
DBPCFCでは食物をそのままの形では使用しない。通常、何らかの方法で乾燥させてか
ら不透明で色つきのゼラチンカプセルに封入する151。多少の例外はあるものの、通常、1
個のカプセルに入れる乾燥品の量は 400∼500mgである。そのほか、Vivonexやミルクセ
ーキなど液状ビークルに加える場合もある。また、ハンバーガーやアップルソースなど別
の固形物に変えることもある151。どんなビークルを使うにしろ、もとの味が全くわからな
いようにする。カプセルは余分な食物を拭い取って粉末砂糖をまぶしつけ、均一に甘くす
ることが多い151。液状ビークルや固形ビークルでは、ビークルの味で被検物質の味をごま
かす。液状ビークルの場合、グレープやチョコレートなど強い香料が好まれやすい。
通常、DBPCFC は広い範囲の用量で行う。初期量は過去の最小誘発量の 1/2 を超えては
ならない。カプセル投与の場合、最大量は乾燥品にして 8g だが、液状ビークルや固形ビ
ークルを成人に投与する場合はもっと多い場合もある。
様々なプラセボがある151。当然ながら、液状ビークルや固形ビークルでは被検物質を加
えないビークルがプラセボとなる。プラセボカプセルには砂糖やそのほか代謝されやすい
成分が充填されていることが多い。オープン負荷や単盲検負荷よりDBPCFCの方がはるか
に優れている。オープン負荷はDBPCFCが陰性だった場合の追跡検査として位置づけるべ
きで、通常に摂取する状態で反応が発現しないことを確認する。
VI. 遺伝子組換え食品のアレルゲン性評価における試験方法の活用
A. In vitro 試験
1. 免疫測定および抑制免疫測定
遺伝子組換え食品の免疫測定では、新たに組み入れたまたは発現したタンパク質の精製
品があればそれを固相に直接吸着させる。遺伝子組換え食品のエキスを固相に吸着させて
もよい。この場合、実際に固相に吸着させたエキスに含まれる、新たに組み入れたまたは
発現したタンパク質の量を測定する必要がある。エキスを調製する場合、後で皮膚テスト
用エキスについて述べるように、新たに組み入れたまたは発現したタンパク質が抽出され
るようにする。固相に吸着させる新たに組み入れたまたは発現したタンパク質の濃度は、
ドナー食物を使った場合と同じようにするのが理想的である。
遺伝子組換え食品に含まれるアレルゲンを検出するには、患者を 1 ヶ所に集める必要の
ない免疫測定の方が皮膚テスト(第 VI 項 B. 1 を参照)より便利である。ドナー食物にあ
まりアレルゲン性がない場合特にこれは有利である。もちろん、血清は問題になっている
ドナー食物に対して明らかにアレルギー反応を示す患者から採取する。
免疫測定は遺伝子組換え食品のアレルゲン性を評価するのに有用だが、抑制免疫測定の
方が有用性はさらに高い。抑制免疫測定ではドナー食物のタンパク質エキスを固相に吸着
させる。遺伝子組換え食品からもエキスを調製するが、皮膚テスト用エキスについて述べ
る注意をすべて守って行う(第VI項B. 1 を参照)。様々な濃度のこの遺伝子組換え食品エ
キスとそのドナー食物に対してアレルギーである患者のヒト血清を混合した後に、固相と
ともにインキュベートする。固相に結合したドナー食物のアレルゲンと自由相にある遺伝
子組換え食品のアレルゲンが競合する。ここでもまた125Iで標識した抗ヒトIgEを使って固
相に結合したIgEを測定する。固相に結合したIgE(%)と自由相のタンパク質濃度をプロ
ットして抑制曲線を作成する。
栄養価を高めるためにダイズにコピーしたメチオニンが豊富なブラジルナッツのタンパ
ク質にアレルゲン性のあることが抑制免疫測定によって判明した169。
2. SDS-PAGE およびイムノブロット
SDS-PAGEとそれに続くイムノブロットを利用して、アレルゲン性であることが判明し
ているドナーから新たにタンパク質を加えた遺伝子組換え食品を分析することができる。
実験ではホスト植物を原料とする食品やドナーを原料とする食品と遺伝子組換え食品を比
較することができる。この 3 つの食品のIgE結合タンパク質を比較することによって、遺
伝子組換え食品にドナー由来のアレルゲンが含まれるかどうか判定することができる。
SDS-PAGEと免疫ブロットの組み合わせはかなり感度が高く、放射能標識した抗体とオー
トラジオグラフィを使用した場合特にそうである。従って、遺伝子組換え食品に発現した
アレルゲンがたとえかなり少量でも検出される可能性が高い。この方法によって、含硫ア
ミノ酸の欠乏を補正するためにダイズに導入したメチオニンが豊富なブラジルナッツのタ
ンパク質が、ブラジルナッツのタンパク質の中でIgE結合能力が最も高いことが判明した
169。
B. In vivo 試験
ヒトを対象に遺伝子組換え食品のアレルゲン性を評価する場合は、いくつかの倫理問題
を検討しなければならない。審査委員会(IRB)の承認を得る必要がある。
1.
皮膚テスト
ドナー物質がアレルゲン性食物を原料とする場合は、IgE 抗体の反応性を調べる皮膚テ
ストが遺伝子組換え食品のアレルゲン性を評価するのに有用である。どの評価でもドナー
食物物質に対して明らかにアレルギー反応を示す患者を特定しなければならない(Dean D.
Metcalfe 他著「遺伝子組換え植物を原料とする食品のアレルゲン性評価」を参照)。
皮膚プリック試験に使用するためには、遺伝子組換え食品のエキスを調製しなければな
らない。生の食物と加工した食物を比較するのが有用な場合もあるが、たいていは生の食
物を使ってエキスを調製する。比較のためドナー食物や遺伝子組換えをしていないホスト
食物も調製して試験対象に加えることもある。通常、皮膚プリック試験に使用するエキス
は生の食物を粉砕し食塩水に加えて抽出する。その前に脂肪を取り除く食物もあるが、そ
れは脂肪が多すぎて抽出の妨げになる場合だけである。この食塩水エキスにはその食物に
含まれていた可溶性のアルブミンやグロブリンが含まれる。新たなタンパク質が食塩水に
溶けにくいことがわかっている場合は、他の抽出方法を考える。エキスの調製が不必要な
場合や賢明でない場合もたまにある。生の果物のエキスが極めて不安定であることは有名
である。この場合、生の果汁を皮膚に落としたり、皮膚表面に果物やその他の食物を置い
て針をその上から刺し皮膚に穿孔したりする方が望ましい。皮膚テスト用エキスに新たな
タンパク質が含まれるかどうか確認し、測定する。食塩水エキスの希釈度は必要に応じて
調整し、適切な濃度にする。食塩水エキスに含まれる新たなタンパク質が十分でない場合
は、何らかの濃縮法を検討する。さらに、食塩水エキスにおけるそのタンパク質の安定性
も調べる。タンパク質が不安定な場合は、試験ごとに新たなエキスを調製する。
2.
負荷試験
DBPCFC は、遺伝子組換え食品に導入された遺伝子物質をもともと含んでいた食物に
対して明らかにアレルギー反応を示す患者を対象に行う(「遺伝子組換え植物を原料とする
食品のアレルゲン性評価」を参照)。試験群の各患者のアレルギー状態は、有害反応の臨床
的既往歴があるかどうか、DBPCFC でもともとの食物に対して陽性かどうか、皮膚テス
トで陽性かどうか、特異的 IgE 抗体による免疫測定で陽性かどうか、に基づいて確認する。
DBPCFC の前にまず遺伝子組換え食品のエキスを使って ST(皮膚テスト)および免疫
測定を行う。皮膚テストでエキスに対して陽性だった場合、DBPCFC は特別に慎重に行
う。
DBPCFC 負荷に使用する食物は通常どおりに収穫・洗浄・加工する。負荷食物は通常
期待されるすべての成分を含んだものでなければならない。たとえば、小麦を評価する場
合、小麦粒は全粒小麦粉にする。
(試料となる)製品の形態は反応を誘発すると疑われる形
態でなければならない。油科種子の場合、ホールピーナッツだと油分が多く投与ビークル
に加えるのが難しければ、粗びき粉と油を別々に調べる。ほとんどの食物は使いやすいよ
う投与前に乾燥させるが、生の食物が必要な DBPCFC もある。たとえば、果物に対する
アレルギー反応は通常生の果物でしか起きないので、その場合被検物質としては生の果物
が最もふさわしい。推奨用量はどの DBPCFC も同じである。また、精製組換えタンパク
質を DBPCFC に使うこともあるが、ヒトへの負荷は IRB の承認が得られにくい。
遺伝子組換え食品の DBPCFC を実施する場合、プラセボは遺伝子を組み換えていない
品種からつくった食品である。このプラセボは、新しく導入されたタンパク質を除けば、
味、舌触り、組成とも遺伝子組換え食品と同じなので有用である。
C. 動物モデル
新たな動物モデルがあれば、遺伝子組換え植物を原料とする食物のアレルゲン性をどの
程度評価できるかを検討することもできる。そうした食物アレルギーの動物モデルは理論
的に満たさなければならない基準がいくつかある。第一に、被験動物はごく少数のアレル
ゲン性タンパク質に対しては著しいIgE抗体反応を示すが、通常曝露されるほとんどの食
物タンパク質には耐性でなければならない。第二に、アレルゲンへの曝露および負荷は経
口的に行われなければならない。第三に、このモデルは、食物によるアレルギー反応が、
GI反応、皮膚過敏症、呼吸器過敏症など、ヒトと同じ器官に過敏症が発現するものでなけ
ればならない。最後に、そうしたモデルは比較的誘発しやすく、同じ種なら場所が異なっ
ても期間をおいても常に再現性があるものでなければならない。残念ながらそうした動物
モデルは今のところなく、近い将来も見込めそうにはない。そのかわりになるものと言え
ば、非経口接種したアレルゲン+アジュバントに対してアレルゲン特異的IgE抗体を産生
する動物である170。こうしたモデルは食物アレルギーの研究やアレルゲン性の測定に有用
ではあるが、適切な食物アレルギーモデルではない。
残念ながら現時点では正確に食物タンパク質のアレルゲン性を予測したり食物によるア
レルギー反応を再現したりできる動物モデルはない。問題は、そうしたモデルは必然的に
基準が厳しく、その上、動物モデルだけでは複雑な問題に答えを出すのが難しいというこ
とである。さらに、動物モデルには必ずしもどのIgE抗体反応も同一ではないという問題
がある。マウスとラットではIgE抗体反応が異なるし171、同じマウスでも系統が異なれば
異なる172, 173。しかし、これはヒトで見られるIgE反応の多様性を反映しているわけで、必
ずしも欠点ではない。そのほか、実験動物の反応が常に一定ではないという問題もある。
Kemeny171は、自身の研究室で同じアレルゲン、同じ免疫方法を使っても動物のIgE反応
が 1 年前とは異なることを報告している。
マウス(最も研究が行われている)などの動物では、水酸化アルミニウム172や百日咳菌
173などのアジュバントを使用しなければはっきりしたIgE抗体反応を得るのが非常に難し
い。おそらく最も研究が行われているのは百日咳菌ワクチンであるが、この反応を引き起
こす成分の特徴はまだ十分にわかっていない。もっと最近のことだが、Kemenyはトウゴ
マ毒リシンを使ってIgE抗体反応を引き起こした。この物質を使って、IgE抗体反応の調節
にCD8+ T細胞が関与することを示した174。
動物モデルでもうひとつ考慮しなければならないのは、実験動物が経口摂取または胃内
投与したアレルゲンに反応する必要があるということである。残念ながら、この経路での、
特にアジュバントのないアレルゲンに対する動物の反応についてはほとんど情報がない。
長年、動物を使って食物誘発性アレルギー反応を調べる研究が数多く行われている。
Jarrett175は、経口的または注射によって抗原を投与したラットの反応を調べ、抗原によっ
てその後のアレルゲン曝露に対するIgE反応が増強するどころか軽減したことを報告して
いる。このラットは免疫調節機構によってIgE産生を抑制する能力を高度に備えている。
ByarsおよびFerraresi176は興味深いラットの腸アナフィラキシーモデルを開発した。感作
ラットにおける経口負荷による腸透過性の変化が、125Iで標識したBSAの取込みによって
測定されている。そのほか、感作マウス177やウサギ過免疫モデル178における腸アナフィラ
キシー反応を使って、処理牛乳のアレルゲン性が未処理牛乳に比べて低いかどうかが検討
されている。著者はこれらのモデルで有望な結果が得られたと報告しているが、これは他
の低アレルゲン性調合乳の評価報告とは異なる。
Bozelkaら179は経口または胃内投与により 2 種類の食物アレルゲン(ダイズおよびエビ)
でC3H/HeJマウスを免疫し食物アレルゲンモデルを作成しようと試みたが、めざましい成
果は得られなかった。ダイズ、エビとも腹腔内投与した場合はアレルゲンに対して特異的
なIgE抗体反応が発現したが、胃内投与した場合は百日咳菌アジュバントの併用に関わら
ずIgE抗体反応は発現しなかった。
食物アレルゲンのすべての動きを調べる動物モデルはない。タンパク質のIgE抗体反応
誘発能力を評価する動物モデルならある程度期待できるが、まだ今後の研究が必要である。
ヒトにおける特定の食物物質のアレルゲン性を予測するのに、動物モデルを過信してはな
らない。その悲惨な例として、ホエイの部分的加水分解によって低アレルゲン性の乳児用
調合乳を開発しようとした試みが挙げられる76。IgG抗体反応を測定するウサギ動物モデル
でこの製品の免疫原性が調べられた。このモデルでは免疫原性が低いと予測され、この製
品は低アレルゲン性乳児用調合乳として発売された。しかし、実際にはこのホエイの部分
加水分解産物にはかなりのアレルゲン性が残っており、牛乳アレルギーの乳児に与えると
アレルギー反応が発現した79, 80, 126。こうした動物モデルだけに基づいた研究の結果は慎重
に解釈しなければならない。
VII. 要約
通常、食物アレルゲンは消化、酸、熱処理に耐えるタンパク質である。しかし、いくつ
か例外もある。既に感作された患者ではかなり少量(ミリグラム単位)の食物アレルゲン
でアレルギー反応が発現する。アレルゲン性であることがわかっている食物源に由来する
特定タンパク質のアレルゲン性は明らかにすることができるが、アレルゲン性が不明の食
物源に由来するタンパク質のアレルゲン性は評価が難しい。
第 7 章 食物アレルゲン
Robert K. Bush and Susan L. Hefle
Williams S. Middleton V.A. Hospital and Department of Medicine and Food Research
Institute, University of Wisconsin, Madison, Wisconsin; Food Allergy Research and
Resource Program, University of Nebraska, Lincoln, Nebraska
I. 序論
この論説では、一般的なアレルゲン性食物と、希なアレルゲン性食物、加えて同定された
アレルゲン性タンパク質の生化学を概論する。種々の食品とアレルゲン性タンパク質のア
レルゲン性を立証する技術(手法)が活用されている。しばしば、特にアナフィラキシー
症状を伴う場合、経口誘発は行われていなかった。むしろ、問題のアレルゲン性物質は、
皮膚テストの陽性結果か、特異的イムノグロブリン(IgE)抗体を用いた in vitro アッセイ
の証明に基づいた推論の上でアレルギーに関係しているとされてきた。
A. アレルゲン命名法
遺伝子組換え技術の急進展に応じて、アレルゲン命名法体系が採用された。この体系は
最近Kingらにより詳細が述べられた1。アレルゲンはその基原の分類学的名称に基づいて示
される。
(分類学上の)属の最初の 3 文字が使われ、更に(分類学上の)種の最初の文字と
アラビア数字が使われる。この数字はアレルゲンの同定された順序によってアレルゲンに
割り当てられ、通常同じ文字は近接の種の相同のアレルゲンに用いられる。例えば、ブラ
ウンシュリンプ(Penaeus aztecus)に関して記述された最初のアレルゲンはPen a 1 と示
され、ショウナンエビ(Penaeus indicus)から得られる相同的なタンパク質はPen i 1 と示
される。
67%以上のアミノ酸配列相同性を持つアレルゲングループは、イソアレルゲンと呼ばれる。
イソアレルゲン各々は、変異型と呼ばれる近似した配列からなる多様な形態を持つ。この
命名法体系は、アミノ酸配列か糖修飾の程度が互いにわずかに異なる多形的形態の記述を
可能にする。その上、この命名法体系はアレルゲン遺伝子、メッセンジャーRNA(mRNA)、
cDNA、更にアレルゲン性に関与した遺伝子組換え体や合成ペプチドの記述規則も定めてい
る1。この命名法体系で、いくつかの主要な食物アレルゲンを示した例を表1に示した。
表1
同定された主要食物アレルゲン
アレルゲン供給源
Arachis hypogea
(ピーナッツ)
Bertholletia excelsa
(ブラジルナッツ)
Brassica juncea
(オリエンタルマスタ
ア レ ル ゲ ン
分子量
(系統名および原名)
(kDa)
配列データa
参考文献b
Ara h 1
63.5
C
138
Ber e 1 ; 2S アルブミン
12
C
194
Bra j 1 ; 2S アルブミン
14
C
349
Gad c 1 ; アレルゲン M
12
C
69
Gal d 1 ; オボムコイド
Gal d 2 ; オボアルブミン
Gal d 3 ; オボトランスフェ
28
C
31
44
C
35
78
C
37
Gal d 4 ; リゾチーム
14
C
42
Gly m 1
34
P
174
Pen a 1 ; トロポミオシン
36
P
5
Pen i 1 ; トロポミオシン
34
P
92
Met e 1; トロポミオシン
34
C
94
Sin a 1 ; 2S アルブミン
14
C
268
ード)
Gadus callarias
(タラ)
Gallus domesticus
(ニワトリ――卵)
リン
Glycine max
(ダイズ)
Penaeus aztecus
(ブラウンシュリン
プ)
Penaeus indicus
(ショウナンエビ)
Metapenaeus enis
(ヨシエビ)
Sinapis alba
(イエローマスター
ド)
a
アミノ酸配列は直接、もしくはcDNA配列からの推測で得られた。
b
参考文献は部分的(P)、もしくは完全な(C)配列が入手可能なものを参照している。
加えて、研究者達は、慣例上アレルゲンを主要なものと、主要でないものとに分類して
いる。主要なアレルゲンは通常、そのアレルギー患者の 50%以上がそれに対して特異的に
結合するIgEを持っているタンパク質と定義される1,2。主要なアレルゲンの例として、ピー
ナッツのAra h 13、卵のオボアルブミン、オボムコイド、オボトランスフェリン4、エビの
Pen a 1 があげられる5。非主要アレルゲンの重要性が討議されている。非主要アレルゲン
は、実験上の人為結果であるか、又は、IgE結合できる主要アレルゲンに似た構造を含む可
能性があるが、ヒスタミン遊離を誘発するのに必要な高次構造は持たない可能性がある。
例えば、ある研究において、ピーナッツアレルギー患者が、他の多くのマメ科植物のタン
パク質と結合するIgEを産生し、結果として皮膚テストとRASTで陽性であったことが示さ
れている。しかしながら、この様な交叉反応性の臨床症状は希であり、その患者達はピー
ナッツと、おそらく他の 1 種のマメ科の食物とアレルギー性を示したにすぎない6。一方、
アレルゲンをサブユニットまで分離し、同定できる方法において、非主要アレルゲンは、
実際にはより大きな主要アレルゲンの一部分であることが判明した。それ故、非主要アレ
ルゲンは各個人にて重大な反応が起こる可能性を持っている。
主要アレルゲンは、しばしば食物中に大量に含まれることがある。Ara h 1 はピーナッツ
貯蔵タンパク質の一部分である7。しかしながら、このことは通常のケースとは限らない。
例えば主要タラアレルゲンのGad c 1 はタラの総タンパク質の小画分を構成するけれども、
やはり主要アレルゲンである8。
Ⅱ.
一般的な動物由来のアレルゲン性食物
A. 牛乳
世界中で多くの人間が多量の牛乳(Bostaurus)を消費している。牛乳により仲介された
IgE感受性は、最も一般的な食物アレルギーの1つである。世界中の幼児、子供の牛乳アレ
ルギーの全般的な罹患率は、生後3ヶ年において約 2.5%と推定される9-11。しばしば、症状
は生後3ヶ月以内に始まるが、多くの子供は3歳までに感受性を失う。成人における牛乳
アレルギーは尋常でない。このアレルギーはしばしば子供で嘔吐や下痢などの症状により
明らかになるが、約 1/3∼1/2 の子供は、アトピー性皮膚炎(AD)、蕁麻疹、血管浮腫、紅
斑性発疹などの皮膚症状を経験している。
牛乳は、多数のタンパク質から構成されている。今までに2つの主要なタンパク質類が
確認されている。1つは総タンパク質の 80%を占めるカゼイン、もう1つは同 20%を占め
るホエイタンパク質である。カゼインは、生のスキムミルクを酸処理(pH4.6、20℃)後、
沈殿するリンタンパク質であり、一方ホエイタンパク質はカゼイン沈殿後の上清に残存す
る12。特定の乳タンパク質の命名法には、タンパク質のファミリーを同定するクラス名の先
頭に下付け文字付き/下付け文字なしのギリシャ文字を利用する。タンパク質の遺伝的変
異型は、クラス名の後に上付き文字付き/上付き文字なしの大文字のアラビア文字で表示す
る。翻訳後修飾はその順に追記される。多くの乳タンパク質はヘテロジェネアスである12。
主要なタンパク質類の特性を表2に示した。
表2
主要牛乳タンパク質
タンパク質
濃度(g/l)
カゼイン
24∼28
α-カゼイン
15∼19
12∼15
3∼4
9∼11
3∼4
1∼2
αS1
αS2
β-カゼイン
κ-カゼイン
γ-カゼイン
ホエイタンパク質
β-ラクトグロブリン
α-ラクトアルブミン
プロテオース-ペプト
総タンパク質
に占める割合
分子量(kDa)
23.6∼25.2
34
8
25
9
23.9
19
11.5∼20.5
5∼7
2∼4
1∼1.5
9
4
0.6∼1.8
4
0.1∼0.4
0.6∼1.0
1
2
18.2
14.1
血液タンパク質
アルブミン
イムノグロブリン
67
160∼200
Yunginger199を変更
1.
主要アレルゲン
多くの乳タンパク質が、ヒトに対してアレルギー性や免疫性を示すことが確認されてき
た。多くの患者が、複数の乳タンパク質に対してアレルギー性を示すことが、皮膚テスト
反応性や経口テストにより確認される。しばしば、牛乳に対してアレルギー性を示す人達
は、ヤギや羊の乳に対するIgE抗体を血清中に持っていることが知られている13,14。カゼイ
ンやβ-ラクトグロブリンは、牛乳中の主要なアレルゲンである10,14,15。牛乳のタンパク質も
しくはタンパク質ファミリーにアレルギー性を示す人々の割合は、反応を定義する方法に
より変動する。経口テストによると、β-ラクトグロブリンは同量のカゼインよりも強い反
応性を示す14,16。皮膚テストを実施した時、カゼイン(63%)はβ-ラクトグロブリン(62%)
より、わずかに優勢であった10。採用した方法により他よりも反応性に富むタンパク質の一
群が個々の研究において散見されるが、一般的な見解では牛乳に対するアレルギー反応の
主原因はカゼインとβ-ラクトグロブリンである。
カゼイン
カゼインは化学的に類縁のタンパク質ファミリーである。個々のカゼインタンパク質への
反応性の頻度は、体系的に評価されたことが無い。α-s1-カゼインは少なくとも5つの遺伝
的変異体を持つ。α-s1-カゼインはマウスに対する連続型エピトープを持った分子量 23kDa
のリン酸タンパク質である17。α-s1-カゼインのアミノ酸配列は解読されている12,18。α-へ
リックスセグメントにより結合した疎水性、親水性ドメインの構造が、明らかになってい
る12。α-s2-カゼインの翻訳後リン酸化の程度は多様である。4つの遺伝的変異体が同定さ
れている12。β-カゼインは、7つの遺伝的変異体を持つ1つの主要コンポーネントと、主
要コンポーネントのタンパク質分解フラグメントである8つの非主要コンポーネントから
成っている。β-カゼインの主要コンポーネントの分子量は 23,980 である12, 18。モデル研究
によると、β-カゼインはC末に分散した疎水性な側鎖と、親水性のN末を伴った中央表面構
造を持っている。κ-カゼインは、2つの遺伝的変異体から成る。κ-カゼインは、105∼106
番目のアミノ酸の間でレニン(キモシン)により2つのドメインに分解される。この疎水
性ドメイン(パラ-κ-カゼイン)は可溶性でないが、極性のあるドメイン(マクロペプチド)は
非常に可溶性である12。
β -ラクトグロブリン
ホエイタンパク質は、乳タンパク質の約 20%を構成する。ホエイタンパク質の多くはβラクトグロブリンであり、それはリポカリンファミリーに属する分子量 18kDaのタンパク
質である。β-ラクトグロブリンには、少なくとも6つの遺伝的変異体がある。β-ラクトグ
ロブリンの一次構造は解読されている12,18。β-ラクトグロブリンの全てのDNA配列が報告
されており、羊のβ-ラクトグロブリンと 91%相同性があると示されている19。
2.
非主要アレルゲン
多少ながら、ホエイタンパク質のα-ラクトアルブミンとウシ血清アルブミン(BSA)とも、
牛乳アレルギーに関連している16。
α -ラクトアルブミン
α-ラクトアルブミンは、2 つの遺伝的変異体から成り、その分子量は約 14 kDaである。
α-ラクトアルブミンはクローン化され、そして塩基配列が解読されている20。アミノ酸の
一次構造が決定されている12,18。2つの遺伝的変異体はわずか1アミノ酸配列しか違わない。
シークエンス解析によると、リゾチームとの相同性が認められた。明らかにこのタンパク
質は、グルコースをラクトース(主要な牛乳の糖)に変換するガラクトースの転位を促進
する。有意な数の牛乳アレルギー患者において、α-ラクトアルブミンは皮膚テスト、経口
テストで陽性を示す14。
BSA
BSAは、乳中に検出され、そしてウシ血清アルブミンと同じ特性を示す。一部の牛乳アレ
ルギー患者において、BSAは皮膚テストと経口テストともに陽性を示す16。BSAは、乳タン
パク質の約 1%を占める、分子量 67kDaのヘテロジェネアスなタンパク質である。
その他のタンパク質
他の乳成分は時々アレルゲン性を示す。これらは、全乳タンパク質の 2%以内からなるイ
ムノグロブリン(Ig)、β2-マイクログロブリン、トランスフェリン、ラクトフェリン14、オ
キシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、およびカタラーゼである21。メイラード反応生成
物(ラクトース・タンパク質結合物)は、時々アレルゲンとして作用するかもしれない。
ある研究で、β-ラクトグロブリン・ラクトース結合体が、ネイティブなβ-ラクトグロブリ
ンより皮内皮膚テストで 10∼100 倍の効力を示した14。
3.
構造−エピトープ
カゼインは重要なアレルゲンであるが、それらがヒトのT細胞またはB細胞に関与できる
とのデータは無い。α-s1-カゼインでは、マウスT細胞、B細胞エピトープが連続型エピトー
プであると確認された17。α-s1-カゼインが臨床アレルギー症状を伴う幼児と小児からのIgE
と最も作用しやすいカゼインのサブユニットであるため15、人体におけるα-s1-カゼインの
エピトープを注視することは有益と思われる。Baldo21は、IgEブロッティング研究におい
て、κ-カゼインから得られるグリコマクロペプチド(アミノ酸残基 106∼167)と、アミノ
酸残基 99∼167 を包含するポリペプチドフラグメントがほとんどの血清と反応することを
発見した;後者のペプチドはさらに反応性が高いことが明らかになり、アミノ酸配列 99∼
105 の内にIgEエピトープが存在するかもしれない可能性が示された。
4.
用量反応性
感作(IgE抗体産生)や臨床症状の誘導に必要な乳タンパク質の正確な量は知られていな
い。加工食品中の微量な乳タンパク質は、敏感な人に対して症状を誘導するかもしれない22。
一部の乳児は、母乳保育にもかかわらず、牛乳アレルギーになるかもしれない。母乳中の
β-ラクトグロブリンのレベルはベースレベル、0.0∼3.5μg/l(少なくとも 24 時間牛乳摂取
を禁止した後)から、400mlの牛乳を摂取後の 0.01∼2.34μg/lまで上昇する23。これは、あ
る状況における感作源を説明するかもしれない。β-ラクトグロブリンが全てのサンプルに
おいて検出されるとは限らないので、それは唯一の説明でないかもしれない。BSAのよう
な完全なタンパク質も、これらタンパク質を摂取したヒトの末梢血中で検出された24。
B. 卵
ニワトリ(Gallus domesticus )の卵は、広く人間により消費されている。米国、欧州の子供
に起こる即時型食物アレルギー反応の内、最も頻繁に起こる一つに、卵アレルギーがある25。
しばしば、卵感受性は4∼5歳、遅くとも10歳までに消失するが、1/3の人は6歳以上
で臨床上の感受性が持続する25。様々な鳥のタンパク質間に広い交叉反応が認められるが、
ニワトリの卵はアヒルの卵よりわずかにアレルギー性が高い26。卵白(アルブミン)は卵黄
よりアレルギー性が高い。卵白タンパク質は広く研究されており、ほとんどが精製されア
ミノ酸配列も解読されている。
卵は 56∼61%の卵白と、27∼32%の卵黄から成っている。卵白は約 87∼89%の水分と 9
∼11%のタンパク質から成り、一方卵黄は 50%の水分と 32∼35%の脂質および 16%のタ
ンパク質を含んでいる27。卵白中の主なタンパク質はオボアルブミンで、タンパク質の 54%
を占めている。卵白中のその他の主なタンパク質は、オボトランスフェリン(12%)、オボ
ムコイド(11%)、オボムチン(3.5%)、およびリゾチーム(3.4%)である。これらのタン
パク質に加えて、様々なタンパク質の存在が明らかになっている。オボムチンは2つのサ
ブユニット(180、400kDa)から成る複合糖タンパク質である。オボインヒビターは分子
量 44kDaのタンパク質であり、アミノ酸配列が明らかにされており、cDNAクローニング
により遺伝子配列も得られている28。オボフラボプロテインは、卵白、卵黄両者に認められ、
そしてリボフラビン結合タンパク質として知られている。アビジンは、卵白タンパク質の
0.5%を構成している。このタンパク質は分子量 66∼69kDaからなるヘテロジェネアスな糖
タンパク質の四量体であり、ビオチン結合タンパク質として働いている。その他のタンパ
ク質として、オボマクログロブリン、G2、G3グロブリン(よく特徴が分かっていない)、お
よびシスタチン、システインプロテアーゼインヒビターが知られている。卵白タンパク質
の特徴を表3に要約した。
卵黄は、超遠心分離法により2画分に分離される。沈降画分は微粒画分と呼ばれ、60%
のタンパク質と 35%の脂質を含んでいる。他方の画分、透明な上清の溶液は血漿(プラズ
マ)画分と呼ばれ、18%のタンパク質と 80%の脂質を含んでいる27。顆粒画分にはリポビ
テリン(高密度リポタンパク質)、ホスビチンおよび低密度リポタンパク質が含まれる。こ
の卵黄中の低密度リポタンパク質の分子量は、3∼10×106Daと、卵白中の低密度リポタン
パク質(160∼190kDa)に比べはるかに大きい。ホスビチンは全卵黄タンパク質中の 16%を
構成し、鉄キャリア分子である29,30。卵黄タンパク質の特徴を表4に要約した。
1.
主要アレルゲン
オボムコイド
オボムコイド(Gal d 1)は分子量 28kDaの糖タンパク質であり、そのpIは 4.1 であり、トリ
プシンインヒビター活性を示す。このオボムコイドは、ほかの卵白タンパク質には認めら
れるトリプトファンを含まない。オボムコイドのアミノ酸数は 186 である31。3つの縦列ド
メインがあり、各々膵臓分泌トリプシンインヒビターと相同性があり、また夫々ネイティ
ブな球状タンパク質としてふるまっている。予測による二次構造は、いくつかのα-へリッ
クス構造とβ-構造であり、タンパク質の多形性が存在する。同じくオボムコイドも、いく
つかの研究により、主要なアレルゲンであると証明された。例えば1つの研究において、
卵感受性患者の血清サンプル 68 中 48 検体が放射免疫電気泳動法(CRIE)でオボムコイドと
陽性交叉し32、一方同様な研究において、卵感受性患者の血清サンプル 34 中 21 検体が
RAST(radioallergosorbent test:放射性アレルゲン吸着試験)陽性かつ、CRIEにてオボム
コイドと陽性交叉した33。しかしながら、Bernhisel-Broadbentら34は、商業的に精製され
たオボアルブミンを用いて主要な卵アレルゲンとして間違った概念が導かれたことを示し
た(何故ならば、オボムコイドに 1%未満の商業用オボアルブミン標品が混入していたこと
が明らかになったため)
。この研究において、卵アレルギーを持つ 18 人の子供による皮膚
テスト(ST)とRASTとの結果により、オボムコイドが精製されたオボアルブミンより強力な
アレルゲンであることが明らかとなった。
表3
卵白タンパク質の特徴
タンパク質
総タンパク質
分子量(kDa)
pI
糖質部分
54
45
4.5
Y
12∼13
77.7
6.0
Y
11
1.5∼3.5
3.4∼3.5
28
0.23∼8.3×106
14.3
4.1
4.5∼5.0
10.7
Y
Y
N
4.0
4.0
0.1∼1.5
49
49
49
5.5
5.8
5.1
Y
Y
Y
0.5∼1.0
24.4
0.8
32
4.0
Y
0.5
0.76∼0.9×106
4.5∼4.7
Y
0.05
0.05
12.7
68.3
5.1
10
N
Y
に占める割合
アレルゲン
オボアルブミン
オ ボ ト ラ ンス フ ェ リ
ン
オボムコイド
オボムチン
リゾチーム
アレルゲン性未確認
G2 グロブリン
G3 グロブリン
オボインヒビター
オ ボ グ リ コプ ロ テ イ
ン
オ ボ フ ラ ボプ ロ テ イ
ン
オ ボ マ ク ログ ロ ブ リ
ン
シスタチン
アビジン
Li-Chan、Naka51より変更
表4
卵黄主要タンパク質の特徴
総タンパク質に占める割合
タンパク質
顆粒
血漿
分子量(kDa)
顆粒
リポビラリン
ホスビチン
低密度リポタンパク
質
70
16
400
160∼190
12
−
血漿
低密度リポタンパク
質
リベチン
Yunginger199より変更
64
3∼10×106
14
45∼150
オボアルブミン
オボアブルミン(Gal d 2)はpI4.5、分子量 43∼45kDaである、リン酸糖タンパク質の単量
体である。385 個のアミノ酸配列が解読されている35。精製したオボアルブミンは3つの変
異体を持ち、それらはA1、A2およびA3と呼ばれ、それぞれ1分子ごとに2、1、および0
個のリン酸基を持っている。リン酸化の程度が低い程、変性に対する感受性が強まる。オ
ボアルブミンのmRNA塩基配列が報告されている36。
いくつかの研究によりオボアルブミンが主要なアレルゲンであることが証明されている。
例えば、ある研究において、卵感受性患者 68 人中 68 人の血清がオボアルブミンに対して
CRIEにて陽性を示し32、一方類似の研究において33、34 人中 34 人の血清がオボアルブミ
ンに対してRASTおよびCRIEにて陽性を示した。
オボトランスフェリン(コンアルブミン)
オボトランスフェリン(Gal d 3)の分子量は 77kDa、pIは 6.0 である。オボトランスフェ
リンの 686 個のアミノ酸配列は直接解読され37、さらに間接的にmRNA塩基配列からも推
定された38。オボトランスフェリンは抗菌活性と鉄結合能を持っている。オボトランスフェ
リンもいくつかの研究において主要な卵アレルゲンとして認められている。例えば、ある
研究では、卵感受性患者の血清 68 中 35 検体がオボトランスフェリンに対してCRIE陽性と
なり32、一方類似の研究では卵アレルギー患者の血清 34 中 20 検体が、オボトランスフェリ
ンに対してRAST、CRIE陽性を示した33。
アポビテリン(Apovitellins)
卵黄の低密度リポタンパク質画分から得られるアポタンパク質は、一部の卵感受性患者
にとっては主要なアレルゲンである。アポビテリンⅠは卵感受性患者の血清を利用した
RAST研究において、主要なアレルゲンであることが示されている39, 40。アポビテリンⅥは、
Walshら40のRAST研究において、主要なアレルゲンであることが明らかにされた。Anetら
39はアポビテリンⅢ、Ⅴ、および
Ⅵが、彼らの研究に協力した人々においては非主要アレ
ルゲンであることを発見した。
2.
非主要アレルゲン
リゾチーム
リゾチーム(Gal d 4)はpI10.7 で分子量 14.3kDaのタンパク質である。129 個のアミノ酸
配列が解読されている41。リゾチームは4つのSS結合によりクロスリンクされた一本鎖ポ
リペプチドである。
この一本鎖はN末から最初の 40 残基がコンパクトな球状ドメインを形成するよう自ら折り
たたまれている42。分解活性部位の一部分を形成する第二の親水性ドメイン(アミノ酸配列
40∼85)がある。リゾチームのmRNAはエクソンと隣接したイントロンとともに同定され
ている43。卵アレルギーにおけるリゾチームの役割は、明確でない。MillerとCampbell44は、
ST(皮膚テスト)によりリゾチームが主要なアレルゲンであることを見出していたが、
Langeland32は卵アレルギー患者の血清 68 検体いずれもリゾチームとCRIEにおいて陰性
であることを明らかにした。Anetら39は、卵感受性患者の血清 9 中 4 検体がリゾチームと
RASTにて陽性であったことを明らかにした。
オボムチン
Walshら40は卵アレルギー被験者の血清を利用したRAST研究でオボムチンが非主要アレ
ルゲンであることを明らかにした。
3.
構造ーエピトープ
ホスビチン
Walshら40は卵アレルギー被験者の血清を利用したRAST分析により、ホスビチンも非主
要アレルゲンであると結論した。
オボアルブミンのT細胞、B細胞エピトープを決定する際、いくつかの進歩が得られた。
Shinodaら45は、卵タンパク質に感受性を持つアトピー性皮膚炎の子供でのT細胞増殖応答
を調査した。この増殖細胞集団は、CD4+ CD45 RA+ T細胞と思われた。この増殖応答の原
因であるエピトープは調査されなかった。しかしながら、オボアルブミンから調製された
合成ペプチドにより、ヒトIgE抗体によって認識される配列がウサギのT細胞を刺激するこ
とが明らかにされた46。そのペプチドはアミノ酸配列 323∼339 から成る。Renzら47は、呼
吸経路経由で暴露されたBalb/cマウスにおける即時的アレルギーの発生において、これと同
じ配列の重要性を明らかにした。オボアルブミン反応性のT細胞クローンは確立された48。
これらの細胞株はインターロイキン 4 (IL-4)を分泌するCD4+細胞株のように思われ、これ
らの細胞がT-helper 2 cell type (TH2)であると思われた。
オボアブルブミンのB細胞エピトープは、更に明確に解明された。Johnsen とElsayed46は、
IgEが、アミノ酸配列 323∼339 のペプチドと結合すると論証した。Kahlertら49は、商業的
なオボアルブミン標品のBrCN分解により、IgEが配列 41∼172 および 301∼385 のペプチ
ドと結合すると論証した。オボトランスフェリン(Gal d 3)の研究から得られたデータは、
7つの連続したエピトープを示している50。オボムコイドは顕著な糖質を含んだドメインを
持っている51。糖質部分がIgE結合エピトープとして作用するか疑わしいが、IgEはグリコ
シル化されていないドメインでなくグリコシル化されたドメインと結合する52。リゾチーム
IgG結合エピトープは研究されており、3つの不連続性エピトープが確認されている53(表
5)。リゾチームとウシラクトアルブミンとが、約 43%の配列同一性を持っていることは注
目すべきことである52。
卵白タンパク質と卵黄アポビテリンⅡのDNA配列における相同性が報告されている54。
卵黄と卵白が、いくつかのIgEエピトープの相同性を持つ可能性がある。面白いことに、Anet
ら39は、RAST阻害研究において、卵黄と卵白との間でいくつかの交叉を見出している。
免疫応答を誘発するために必要な卵タンパク質の量に関しては、あまり知られていない。
オボアルブミンは、容易に分解されない。おそらく、抗原抗体複合体を保持している濾胞
性樹状細胞により、持続して体内でメモリーB細胞を刺激するかもしれないと仮定されるが
34、この理論は証明されていない。
表5
リゾチームの 3 不連続エピトープのアミノ酸配列
エピトープ D1.3
アミノ酸残基
18∼27
116∼129
D-N-Y-R-G-Y-S-L-G-N
K-G-T-D-V-Q-a-w-l-r-g-c-r-L
エピトープ HEL-5
アミノ酸残基
41∼53
67∼70
84
Q-a-T-N-R-T-D-G-s-t-d-Y
G-R-T-P
L
15∼21
63
73∼75
89∼102
H-G-l-d-n-Y-R
W
R-w-L
T-a-s-v-N-c-a-K-K-l-v-S-D-G
エ ピ ト ー プ
HEL-10
アミノ酸残基
注記:小文字で示したアミノ酸残基は抗体結合サイトと接触しない
Daviesら53から変更
C. 魚
魚の消費や(魚を)調理した時発生する蒸気を吸入することは、IgE 仲介反応の原因とな
る。
特定の魚種に対するIgE仲介反応の罹患率に関する報告は無く、多くの研究において、タラ
若しくは一般的に「魚」のみに言及している。しかしながら、魚は、最もアレルギーに関
係する食物の1つであり、致命的なアナフィラキシー反応の原因とみなされている55。魚ア
レルギーの真なる罹患率は知られていないが、魚過敏症の発症は魚の消費が平均以上の
国々で多い。例えば、タラアレルギーは、スカンジナビア諸国において最も一般的な食物
アレルギーである可能性がある56。
多くの食用魚は硬骨魚類に属している。この類に属していないサメは軟骨魚類である(サ
メ科)。米国で最も消費される魚はわずかな魚種にしか属さず、それらはイワシ科(サケ、
マス、白マス、スメルト、カワカマス、ニシン、イワシ、アンチョビー、シャド、ニシン
およびエールワイフ)、パーチ科(バス、パーチ、シイラ、フエダイ、グルーパー、オレン
ジラッフィー、ベニマス、カサゴ、サバ、メカジキ、およびマグロ)
、タラ科(タラ、ポラ
ク、ハッドク、およびヘイク)、カレイ科(ヒラメ、オヒョウ、およびシタビラメ)および
コイ科(コイ、およびナマズ)である57。
1.
主要アレルゲン
Gad c 1
食物アレルゲンの最も広範囲な分析は、Aas とElsayedおよび同僚らにより行われ、その
研究の成果は主要なタラアレルゲン(Gad c 1:従来のアレルゲンM)の精製と分類であっ
た。Gad c 1 は、主要なタラアレルゲンでありパルブアルブミンと知られている筋組織タン
パク質に属する8ことが、いくつかの研究により実証されてきた58-60。パルブアルブミンは、
細胞内外のカルシウム流動をコントロールし、唯一両生類と魚類の筋肉において見出され
ている。異なった魚種にて構造的に関係するパルブアルブミンの存在は、魚アレルギーの
人々の交叉反応を説明すると思われる。何故ならば、Gad c 1 はヘイク、コイ、カワカマス
およびコダラの類似タンパク質と 34%の相同性を持つためである8。新鮮なシロタラ筋組織
中のGad c 1 の割合は、0.05%∼0.1%である。
2.
非主要アレルゲン
Ag-17-cod
CRIE研究は、Gad c 1 と異なった非主要タラアレルゲンの存在を示しているが58,61、それ
らの特性は明らかでない。これら非主要アレルゲンの1つはAg-17-codと称され、タラアレ
ルギー被験者の血清中 8 中2検体が、このアレルゲンとIgE結合することが証明された58。
タラアレルギーの人々の約 10%がタラ血清に見られるある特定のタンパク質と反応すると
も報告されたが、そのタンパク質のみに反応する人はいなかった62。
硫酸プロタミン
ヘパリン拮抗剤として広く使われている低分子量タンパク質は、サケおよびサケ科とニ
シン科(ニシン、イワシ、マス)に属した同類魚種の精子のタンパク質である63。ある研究
は魚アレルギー患者の血清中に抗硫酸プロタミンIgEが存在することを明らかにした。この
被験者は硫酸プロタミンに対する皮膚テストにも陽性を示した64。しかしながら別の研究で
は、2人の魚アレルギー被験者において、サケと硫酸プロタミン間でIgE交叉反応が認めら
れなかった65。いくつかの魚過敏症者に関する報告において硫酸プロタミンがアレルゲンで
あると認められたが66、ある研究では 16 人の魚アレルギー被験者への硫酸プロタミン投与
によって、何ら有害な反応が起こらなかったことが示された67。従って、硫酸プロタミンは
めったに過敏症を持った人々に対してアレルゲン性を示さないと結論できた。
すり身 63kDa タンパク質
Mataらは68、SDS-PAGEですり身より 63.5kDaの単一バンドを得た(すり身:1種もし
くは数種類の小魚をミンスし、充分に洗浄したもの)。RASTを用い、彼らは魚アレルギー
患者の血清 6 中 6 検体が、すり身に対してわずかな陽性反応を示したが、皮膚プリックテ
ストでは6人中 2 人しか陽性を示さなかったことを示した。更に多くの研究が終了するま
で、このアレルゲンの重要性に関して結論に達することはない。
3.
構造−エピトープ
a.
Gad c 1
Gad c 1 は分子量 12,328Daの酸性タンパク質(pI 4.75)であり、113 個のアミノ酸と1つ
のグルコース分子から成る69。パルブアルブミンの様に、Gad c 1 の3次構造は3つのドメ
イン(AB、CDおよびEF)から成っている。CD、EFドメインは、それぞれ1つのカルシ
ウムイオンサイトを配置しているが、ABドメインには、この特性が無い(図 1)。
図 1 Gad c 1 分子。カルシウムはループCDとループEFに結合しているのに対し、ル
ープABはこの特性を欠いている。フラグメントTM1 は 1∼75 番目のアミノ酸配
列を持つ;
フラグメントTM2 は 76∼113 番目のアミノ酸配列を持つ。
(Elsayed、Apold70よ
り変更)
Gad c 1 は、少なくとも5つのIgE結合サイトを含んでいる70。Gad c 1 の 75 番目のアル
ギニンは、3次構造において主要な役割を果たしているが、このアルギニンを修飾しても
IgE反応性は変化しない71。このアルギニン残基をトリプシンで分解すると、2つのアレル
ゲン性フラグメントが生じ(TM1 とTM2)、これらは同様に皮膚プリックテスト、Prausnitz
Kustner(受動感作)テストおよびRAST阻害研究において活性を示した72。TM1 は 1∼75
番目のアミノ酸から成り、AB、CDドメインを含んでいる。酸性な 59∼62 番目のアミノ酸
はCDドメインのカルシウムイオンと結合している8。Gad c 1 に存在する1つのグルコース
分子は、18 番目のシステインに位置している73。糖質を除いたTM1 のアレルギー活性が、
TM2 と同じだったため、この糖質部分はアレルギー活性に関係していないらしい72。フラ
グメントTM2 は 76∼113 番目のアミノ酸から成り、EFドメインを含み、90∼101 番目の
アミノ酸はEFドメインのカルシウムイオン結合部分を構成している74。フラグメントTM2
もトリプトファン残基 1 つを含むが、これはアレルゲン性とは関係ないように思われる75。
更に、TM1 のトリプシン加水分解物は、皮膚テストとPrausnitz-Kustnerテストにおいて
33∼44 番目のアミノ酸がアレルゲン性を持つために重要であることを示した76。TM2 のト
リプシン加水分解研究において、88∼96 番目のアミノ酸領域は、部分的にアレルゲン性の
原因であることを示した77。
合 成 ペ プ チ ド を 用 い た 研 究 は 、 49 ∼ 64 番 目 の ア ミ ノ 酸 領 域 が 2 つ の 反 復 配 列
(Asp-Glu-Asp-Lys とAsp-Glu-Leu-Lys)をとっていると証明した。49∼64 番目のアミノ
酸 領 域 が Gad c 1 ( 68 % ) と 比 べ 、 比 較 的 高 い RAST 抑 制 ( 39 % ) を 示 し 、 か つ
Prausnitz-Kustnerテストで陽性を示すため、これら2つのテトラペプチドは互いに抗体結
合にとって重要と思われる。57∼64 番目のアミノ酸領域はアレルギー活性を示さなかった
78。次の論文によると、41∼64
番目のアミノ酸領域に3つの相同的なテトラペプチドが含
まれており、24 アミノ酸の断片中、6アミノ酸の間を空けて3つのサイトが繰り返されて
いることが示された。この領域の一連の合成ペプチドは、全てのペプチドはRAST阻害と
Prausnitz-Kustnerテストで陽性を示す最小限の2つのテトラペプチドを含むので、少なく
とも2つのテトラペプチドが抗体との反応に必要であることを示した79。IgE結合能力は、
(抗原認識部位間の)アミノ酸の立体構造と配列ともに依存しない。
合成ペプチド研究は、EFドメインの 88∼103 番目のアミノ酸がCDドメインと 37.5%の
アミノ酸配列の相同性があることも示したが、最終的に 41∼64 番目のアミノ酸領域の抗体
結合の原因となるテトラペプチドを位置付ける主要部位を欠落している。しかしながら、
この残基はin vivo (Prausnitz-Kustnerテスト)とin vitro (RAST阻害テスト)両方のテ
ストで、IgEと特異的に結合した80。従って、88∼103 番目のアミノ酸領域は阻害可能だが、
アレルギー反応を誘導できない一価の結合能を有していると思われる。
ABドメインはカルシウムと結合しないが、それでもCD、EFドメインと 30%を超えるア
ミノ酸配列相同性を有し、13∼32 番目のアミノ酸から成っている。この領域の合成ペプチ
ドは、ABドメインがPrausnitz-KustnerとRAST阻害分析にて、2 価で機能していることを
示している。それは、RAST阻害においてGad c 1 と比較して 6:1 の比率において等モル
濃度にて反応する81。
13∼32 番目のアミノ酸領域および 49∼64 番目のアミノ酸領域は、アレルギー反応を誘
導する2価の決定因子を有している。Gad c 1 の中では、アミノ酸配列の繰り返しが豊富で
ある8。35∼41 番目のアミノ酸領域と 67∼73 番目のアミノ酸領域は、7アミノ酸のうち 5
アミノ酸が一致しており(Leu-X-Ala-Phe-X-Ala-Asp)、これがIgE結合サイトの連続と思
われる。65∼83 番目のアミノ酸領域が、CD、EGドメイン間に見出された。同様な部分が
ABドメインとCDドメインとを結合させ、33∼44 番目のアミノ酸領域を含んでいる。これ
ら2つの部分は高い相同性を持つ71。このこととTM1、TM2 間の高い免疫交叉反応性の全
てが、IgE結合サイトがポリペプチド鎖に沿って反復して分布していることを示している。
b. 硫酸プロタミン
サケのプロタミンであるサルミン AI のアミノ酸配列は、
10
20
30
H-P-R-R-R-R-S-S-S-R-P-V-R-R-R-R-R-P-R-V-S-R-R-R-R-R-R-G-G-R-R-R-R-OH.である63。
ニジマスのプロタミンであるイリジン(iridine)IaはサルミンAIと異なり、19 番目にアル
ギニンが追加されている(下線で示した)。
魚アレルギーの人達にアレルギー反応を誘導するにあたる魚の総量に関する情報は充分
無いが、タラアレルギー患者が精製したGad c 1 1mg以内を混入した 50gのミートボールに
反応したと報告されている59。O’Neilら82は二重盲検偽薬コントロール食物試験(DBPCFC)
により、ナマズ 1g以下、他科の魚(タラ、フエダイ)4g以下が、魚感受性のある人々のア
レルギー反応を誘導することを明らかにしている。陽性反応は、未調理段階で2オンス(約
56g)の魚を使ったDBPCFCで得られた83。別の研究では、8gの乾燥魚の摂取後一時間以上
後に、反応が誘導されたと報告している84。しかしながら、これら最後の2つの研究におい
ては、魚に対するアナフィラキシー症歴をもつ被験者において行われていない。
D. 甲殻類
通常、米国において少なくとも 30 種の可食性甲殻類が消費されている。小エビ、中型エ
ビ、カニ、ロブスターおよびザリガニを含む甲殻類ファミリー(筋足動物門、甲殻網)は、
食物過敏症の一般的な原因である85。罹患率は知られていないが、研究者達は米国において
250,000 人以上の人が甲殻類に対するアレルギー反応を発症する可能性があると推定して
いる86。魚の様に、定期的に消費量が増す地域にて、甲殻類に対するアレルギーの発症率は
高くなると予想される。
1. エビ:主要アレルゲン
a. 抗原Ⅰおよび抗原Ⅱ
エビは甲殻類アレルゲンで最も研究されている。Hoffmanら87は、エビのアレルゲンに関
して部分的に特徴を決定した最初の人々である。2つのアレルゲン性タンパク質が生のエ
ビの身と殻の抽出物から見出され、それらは抗原ⅠおよびⅡと称された。11人のエビ感
受性被験者の研究において、彼らの血清中11中7検体が抗原Ⅰと結合した。生のエビと
殻の抽出物に極微量の抗原Ⅰが見出されるが、それは分子量 21kDaの2つの非共有結合ポ
リペプチド鎖から成る熱に不安定なタンパク質と考えられる。ゲルろ過により精製すると、
抗原Ⅰの分子量は 45kDaで、二量体であると推定された。抗原ⅠのpIは 4.75∼5 で、189
個のアミノ酸と、0.5%の糖質から成る。抗原Ⅱ(ボイルしたエビから容易に単離される)
は、熱に安定な分子量 38kDa、pI5.4∼5.8 の糖タンパク質であり、341 個のアミノ酸から
成り、4%の糖質を含んでいる。11例のエビアレルギー患者血清の全てにおいて抗原Ⅱが
IgEと結合したため、抗原Ⅱはこの研究の被験者にとって主要なアレルゲンと思われる。
RAST阻害率は、抗原Ⅱと調理済みエビとの間で 0.98 の相関係数であった。このアレルゲ
ンは皮膚テストで実施されず、2 価結合能は評価されなかった。アミノ酸の構成や免疫学的
研究により、抗原ⅠとⅡとは関連していないと見なされた。
b. SA-I および SA-Ⅱ
Nagpalら88は、ボイルしたエビから単離した2つのアレルゲン性ポリペプチドについて
述べている。アレルゲンSA-Iの分子量は 8.2kDaで、それ以上の解析は行われていない。2
番目のアレルゲン、SA-Ⅱは 301 個のアミノ酸から成るり、分子量は 34kDaで、Hoffman
らにより単離された抗原Ⅰに似ていると思われるが87、糖質を含まないと報告されている。
Nagpalらは、SA-IとSA-Ⅱのアレルゲン性エピトープの 54%が相同性を示しており、SA-I
はSA-Ⅱの分解物であるかもしれないと述べた。これを考察に取り込むと、ボイルしたエビ
の粗抽出物の全IgE結合活性に対して、SA-Iは約 33%、SA-Ⅱは約 56%寄与していることに
なる。この著者は、残りのIgE結合活性(11%)は、以下で結論されるtRNAアレルゲンに含ま
れることを示している。これらのアレルゲンは皮膚テストにより評価されなかった。
c. Pen a 1 と Pen i 1
Daulら5,89,90は主要なアレルゲン、Pen a 1 をボイルしたブラウンシュリンプ(P. aztecus)
から単離し、その配列がショウジョウバエのトロポミオシンと類似していると報告してい
る。Pen a 1 は分子量 36kDaであり、調理済みエビの煮汁91と肉から容易に単離され、SAⅡに類似している88。Pen a 1 は、調理済みエビの粗抽出物中の可溶性タンパク質の 20%を
構成し、エビ感受性患者プール血清と全エビ肉抽出物とのRAST反応を75%まで阻害した。
このアレルゲンは、エビ感受性個体の血清 34 中 28 検体(82%)中のIgEと結合した。
Pen a 1 は 312 個のアミノ酸と 2.9%の糖質から成り、pIは 5.2 である。Pen a 1 は、別種
のエビ(P. indicus)から単離されたPen i 1 と関連している92。
Pen a 1 のエンドプロテアーゼLys-C研究は、21 個のアミノ酸から成るペプチドのタンパ
ク質配列と様々な種のトロポミオシンとの著しい相同性(60∼85%)を示し、Pen a 1
がエビのトロポミオシンであるという結論と一致する5。最大の相同性はショウジョウバエ
トロポミオシンと 129∼149 番目のアミノ酸の領域で(72∼87%)で生じており、様々な哺乳
動物種とでは 60∼62%である。ショウジョウバエのトロポミオシンとで見られる高い相同
性は、エビと昆虫間の系統的な関係を示すことで解釈できる。21 個のアミノ酸から成るペ
プチドのアミノ酸配列は、V-L-E-N-R-S-L-S-D-E-E-R-M-D-A-L-E-N-Q-L-Kである。
Shantiら92も、Pen i 1 のトリプシン分解物の配列がショウジョウバエトロポミオシンと
類似しており、エビトロポミオシンから得られた2つのトリプシン処理に由来するペプチ
ドは、エビ特異的IgEと結合したと報告している。これらは 50∼66 番目のアミノ酸領域と
153 ∼ 161 番 目 の ア ミ ノ 酸 領 域 に あ る : 50 ∼ 66 の ア ミ ノ 酸 配 列 は
M-Q-Q-L-E-N-D-L-D-Q-V-Q-E-S-L-L-Kであり、153∼161 はF-L-A-E-E-A-D-R-Kである。
50∼66 と 153∼161 両ペプチドともSA-Ⅱ特異的IgEのエビトロポミオシンとの結合を阻害
し、両ペプチドとも 100 pmol/mlで阻害が 50%に達している。他のトリプシン処理に由来
するペプチド(一部分子量 2kDa未満)も、より弱い程度のIgE結合阻害であったが、現在
のところ、これらのペプチドはマイナーなIgE結合成分であるかもしれない。
種々の脊椎動物から得られるトロポミオシンの対応した領域も、50∼66の領域にて
多少の交叉反応性を示したが、153∼161の領域において哺乳動物種のトロポミオシンと
著しいアレルゲン性交叉反応性を示した:ニワトリ、ウサギおよびヒトトロポミオシンに
て7/9アミノ酸、ラットトロポミオシンにて6/9アミノ酸。ショウジョウバエトロポミオ
シンは、153∼161 番目のアミノ酸領域にて SA-Ⅱと同一であった。多くのトロポミオシン
が、155∼161 番目のアミノ酸領域にて相同性を持っている。
著者(Shanti95)らは、他のトロポミオシンとエビのトロポミオシン間での 153 番目(Leu)
と 154 番目(Ala)における相同性の欠落は、おそらくそれらがIgE結合にとって重要であろ
うことを示している。
エビアレルゲンである Pen a 1、抗原Ⅱおよび SA-Ⅱのアミノ酸組成は類似している(表
6)。
更に、このことはこれら3つのアレルゲンが同じタンパク質、エビトロポミオシンである
ことを示しており、抗原Ⅱと Pen a 1 は両者とも糖質を含む。
表6
エビアレルゲン Pen a 1、抗原Ⅱ、Sa-Ⅱのアミノ酸組成
Pen a 1
抗原Ⅱ
SA-Ⅱ
分子量 (kDa)
36
38
34
アラニン
33
31
21
アルギニン
26
19
30
アスパラギン酸
40
58
39
システイン
ND
2
3
グルタミン酸
80
61
75
グリシン
10
20
6
ヒスチジン
1
4
3
イソロイシン
35
30
30
ロイシン
6
12
6
リジン
26
27
27
メチオニン
8
9
6
フェニルアラニ
4
9
6
プロリン
2
6
3
セリン
14
15
12
スレオニン
12
12
9
トリプトファン
ND
ND
4
チロシン
4
7
6
バリン
13
19
15
計
312
341
301
ン
Daulら5より変更
d. Met e 1
Leungら94は、ヨシエビ、Metapenaeus enisのcDNAライブラリーから組換えエビアレル
ゲンを作製した。281 個のアミノ酸をから成るこのアレルゲンは、アミノ酸組成において
Pen a 1 とPen i 1 と似ており、SDS-PAGEで分子量が 34kDaであった。イムノブロット研
究において、この組換えアレルゲンは、この研究でのエビに対するアナフィラキシー反応
の病歴を持つ8人全ての血清IgEと結合した。Leungら94は、エビトロポミオシンとして、
分子量 34kDaのアレルゲンを同定した他の研究グループを確認した。彼らは組換えエビア
レルゲンMet e 1 が、Shantiらが示した 50∼60 番目のアミノ酸領域と同一のIgE結合配列
を持つことを見いだし、そしてもう一方の 153∼161 番目のアミノ酸領域と類似した短い
IgE結合配列F-L-A-E-E-A-D-R-Kも見いだした。
2.
エビ:非主要アレルゲン
a. 転移 RNA
ボイルしたエビ(P. indicus)の非主要アレルゲン性tRNA部分が記述されている95。この「精
製された」RNAアレルゲンは、アミノ酸として 11%の乾燥重量を有する。酵素処理後、84%
のアミノ酸が消失したが、アレルゲン性は残存していた。約 1μgのエビRNAは、固相エビ
RNA
RASTで 89%の阻害を起こしていた。しかしながら、Nagpalら95は、彼らの研究に
おいて1人の患者の血清しか用いないので、正常な臨床的反応性を反映していない可能性
があると結論した。RNAは完全にアミノ酸残基を欠いていないため、このアレルゲン性は
RNAに結合したタンパク質やペプチドによる可能性がありうる。このRNAアレルゲンは皮
膚テストで分析されず、RNAアレルゲンの2価結合能は評価されなかった。このことは依
然としてIgE反応の誘導に関係した食物中の核酸について文書化された唯一の例のままで
ある。
b. 用量反応性
Daulら96は、エビ過敏症の 30 人の被験者の内、全7回の二重盲検試験にて、6人の被験
者が陽性に反応したことを見いだした。4件の陽性反応は、エビ4当量の摂取で起こり(エ
ビ1当量は約 8mg、言い換えると標準的な 4gの中型エビから得られるタンパク質抽出物の
量)、そして3件の陽性反応はエビ16当量の摂取により起こった。たった1∼2gのエビ
で、感受性が高い人々にアナフィラキシー反応を誘発できるようである97。
口咽頭の掻痒や時折自覚される咽頭の腫脹は、陽性他覚症状を誘発する量より少量のエ
ビによる誘発試験で陽性であった人のほとんどと関連がある96。即時的I型エビ過敏症反応
と一致する病歴を持った被験者のあるグループでは、アトピー性疾患の患者のみ摂取後の
アナフィラキシーが報告され、30人の非アトピー性患者では、唯一の症状として全身性
掻痒が報告されている98。
3.
カニ
ズワイガニが職業環境におけるアレルギー性感作の原因であることが示されている99,100。
熱に不安定および熱に安定なアレルゲンが、ズワイガニ抽出物に見られるが、ズワイガニ
特異的IgEは、生よりボイルしたズワイガニの方に良く結合した100。
カニの煮汁と調理済みカニ肉の抽出物を SDS-PAGE にかけると、最も顕著なバンドは 37
∼42kDa であった。それら SDS-PAGE で分離されたタンパク質のイムノブロットでは、ズ
ワイガニアレルギー患者血清の大部分で、分子量37∼42kDa のバンドへの IgE 結合が
みられる。ただし放射性免疫染色によって14kDa もしくはその近傍のバンドもみられた
(Hefle、Bush、Cartier、Malo、Lehrer の私信)。
4.
ロブスター
交叉免疫電気泳動法(CIE)で、明瞭なイセエビの沈降素が患者IgE結合活性によって消
失することが、14の甲殻類感受性血清を用いたCRIEにより示された101。13の甲殻類ア
レルギー患者血清が、これらの沈降素とCRIEにて反応する。4つのIgE結合沈降素を含む
イセエビ抽出物;抗原8(10血清に陽性)と抗原13(5血清に陽性)は、主要なアレ
ルゲンであり、最も放射性免疫染色される。抗原3と抗原6は、それぞれ8血清,2血清
において弱く放射性免疫染色された。
5.
ザリガニ
上述の研究にて、沈降素は甲殻類特異的IgE結合活性に対しても評価された101。6つのザ
リガニ抗原が、CRIEによる放射性免疫染色にて陽性であった。抗原11は主要アレルギー
コンポーネット(9血清で陽性);抗原12(同様に9血清で陽性)も主要アレルゲンの可
能性があるが、抗原11の沈降線(arc)の下にあったため、共沈の人為的結果であった可
能性がある。抗原6(1血清で陽性)、抗原8(6血清で陽性)、抗原10(2血清で陽性)
、
そして抗原13(7血清で陽性)は、異なる程度で放射性免疫染色された。
Ⅲ. 一般的な植物由来のアレルゲン性食物
A. ピーナッツ
ピーナッツはマメ科の一年生植物で、南アメリカ原産である。米国では数種類のピーナ
ッツが栽培されているが、最もよく栽培されているのはバージニア、スペイン、及びサウ
スイーストランナーの 3 品種である。バージニア種のピーナッツは粒をそのまま食べたり
菓子類に使うのが主な用途である。サウスイーストランナー種は主としてピーナッツ油や
ピーナッツバターの製造に用いられる102。米国で生産されるピーナッツの大半(63%)は
ピーナッツバターの製造に使用される103。子供達は幼少の頃からピーナッツを摂取し成分
に曝露されているが、通常ピーナッツバターとして摂取している。ピーナッツは人気のあ
る食品ではあるが、同時に最も一般的なアレルギー食品としても知られている。ピーナッ
ツアレルギー反応は突発性で重症であることが多く、子供が成長するにつれて発症しなく
なるというのは稀である。
ピーナッツのタンパク質は慣習的にアルブミン(水溶性)とグロブリン(食塩水可溶性)
に分類されてきた。貯蔵タンパク質の大半はグロブリンで、全タンパク質の 87%を占める104。
年々、ピーナッツのタンパク質は更に細かく分画され、アルブミン、アラキン、及びコン
アラキン又はノンアラキンに分類されるようになった105-109。グロブリンは 2 種類の主要な
タンパク質アラキン及びコンアラキンより成るが、これらはそれぞれレグミン及びビシリ
ンに相当する。前者は主にα‐アラキン及びα‐コンアラキンとして知られる高分子量グ
ロブリンを成分とする106。
アラキンとコンアラキンは種々のイオン強度及びpHで容易に解離、会合するため、個々
の成分を正確に分別するのが難しい110-112。加えて、アラキンとコンアラキンはアミノ酸組
成も電気泳動の移動度も似ており、このことから構造が類似していることが示唆される。
アラキン、コンアラキンとも中性糖及びアミノ糖を含んだ糖タンパク質である108,113。ピー
ナッツの分子多型性を免疫化学的分析及び電気泳動による分析で検討した結果では、ピー
ナッツの品種間で差異があることが判ったが114,115、野生型品種の多くは栽培品種に比べて
アラキン含量が遥かに低い。殆ど全ての遺伝型で 45 kDaのポリペプチドが見出されている
が116、アラキンの 36 kDaサブユニットは特定の栽培品種のみに見出される117。
アラキン
自然の状態ではアラキンは少なくとも分子量 600 kDaで存在するが、容易に 340∼360
アラキンはSDS-PAGE119,120、
kDaの2量体及び約 170∼180 kDaの単量体に解離する118,119。
で測定した分子量が 19∼42 kDa、 pIが 5.8∼8.3119の範囲に亘る約 6 個のサブユニットを
含んでいる。このグロブリンの炭水化物含量は 0.3∼0.6%である108,113,120。
201 個のアミノ酸残基から成るアラキンのサブユニットが単離されている121。塩基性アミ
ノ酸がその構造の大部分を占めているが、明瞭な塩基性線状領域は無い。
コンアラキン
JohnsonとNaismith111は、コンアラキンが更に超遠心で 2Sと 8.4Sの 2 つの分画に分け
られることを示した。その後、これらはそれぞれコンアラキンI及びコンアラキンII(又は
α‐コンアラキン)と名づけられた。コンアラキンI(分子量 142 kDa)はピーナッツの総
タンパク質の 30%近くを占めているが122、詳しい研究は殆どなされていない。コンアラキ
ンIIは分子量が 290 kDa109であり、ピーナッツの総タンパク質の 15∼25%を占めている122。
コンアラキンIIのサブユニットについては 6 個から 8 個まで異なる報告がある109,111,123,124。
BashaとCherry125はSDS-PAGEを用いて、コンアラキンIIが分子量 84、46、34、31、26
及び 23 kDaの 7 個のサブユニットに解離することを見出した。ShettyとRao124は 64 kDa
の主なサブユニット 1 個と 60、32 及び 21 kDaの少量のサブユニットを認めた。コンアラ
キンIIは炭水化物を含まず、pIは 3.9 である124。
1.
ピーナッツのアレルゲン
複数のピーナッツアレルゲンが報告されている3,126-132が、いずれも充分な同定や特性の
検討はまだされていない。アレルゲン性を有するピーナッツタンパク質の数が多いことが
問題の一つであり、研究者の報告によればその数は 20 を超える126,129,130。Barnettら126は
生のピーナッツ及び炒ったピーナッツの粗抽出物中にIgEと結合する 16 個及び 7 個のバン
ドをそれぞれ認めた。Bushら129は 2 次元PAGEを用いて、生のピーナッツの抽出物中にIgE
と結合する 11 個のタンパク質を見出した。RAST阻害126,127,131及びIgEの酵素結合免疫吸着
測定法(ELISA)128を用いた研究から、1 種類のタンパク質がピーナッツの全てのアレル
ゲン性の原因となっているわけではないことが明らかになった。アレルギーに関係するピ
ーナッツの成分はタンパク質又は糖タンパク質である。皮膚テスト及びDBPCFC (二重盲
検偽薬対照食物負荷試験)の研究より、ピーナッツ油にはアレルゲン性がないことが判っ
ている133。
Barnettら126はピーナッツに感受性の患者の血清を用いて、RAST及びCRIE(交叉放射
性免疫電気泳動法)で種々のピーナッツ成分のアレルゲン性を検討し、ピーナッツのアレ
ルゲン性はアラキン及びコンアラキン画分の両方に亘って広がっていることを認めた。
Taylorら132はアラキン及びコンアラキン画分がアレルゲン性を有することをRAST阻害ア
ッセイで認めた。
HeinerとNeucere134はRAST法を用いて、ピーナッツの子葉、胚軸及びその他の部位の抽
出物を含む種々のピーナッツ標品についてアレルゲン性を検討し、子葉、芯(胚軸組織)
及び種皮がアレルゲン性を有することを認めた。種皮や芯は加工の際に取り除かれること
が多いので、おそらく殆どの人にとっては子葉(仁)が主なアレルゲンであろう。芯はサ
ポニンを含むため苦味があり、種皮はカテコールタンニン及び関連化合物を含んでいて好
ましくない色が製品につくため除かれるわけである135。
a. 主要アレルゲン
ピーナッツ-1
Sachsら131は「ピーナッツ-1」と呼称するピーナッツアレルゲンを単離し部分精製した。
SDS-PAGE分析によりピーナッツ-1 は分子量 20 及び 30 kDaの 2 個の主なバンドを含むこ
とが判った。これら以外にも数個の微量なバンドがあり、それらの分子量は 20 及び 30 kDa
より大きいものも小さいものもあると報告されているが同定はなされていない。薄層等電
点電気泳動によれば、ピーナッツ-1 のpIは 5.25∼5.75 であった。著者等は、ピーナッツ-1
は異なるサブユニットからなり最も多量に含まれている酸性糖タンパク質の1つであるが、
これがピーナッツの唯一のアレルゲン成分ではない、と結論している。
コンカナバリン A 反応性糖タンパク質(CARG)
GleesonとJermyn136は生のピーナッツからのCARGの単離を最初に記載している。単離
されたタンパク質の分子量は 69 kDaであり、炭水化物を 12%含んでいる。その後Barnett
とHowden127が分子量 65 kDaのピーナッツCARGアレルゲンを同定し精製した。RAST阻
害試験で得られた結果から、著者等はCARGを主要なアレルゲンの1つとして位置づけた。
この実験で、ピーナッツに感受性のある患者の血清サンプルの約 50%の頻度でIgEがこの
タンパク質に結合したからである。CARGはピーナッツの総タンパク質の約 1%を占め136、
pIは 4.6、炭水化物 2.4%を含み、100℃以上及びpH 2.8∼10.0 の範囲で安定である。CARG
の炭水化物部分を除去するとアレルゲン活性が若干減少するが完全には無くならない127。
Meier-Davisら130は炒ったピーナッツの粗抽出物をSDS-PAGE及びイムノブロッティング
にかけ、主要アレルゲンと見られる分子量 15、20、及び 66 kDaの 3 本のIgE結合バンドを
同定したが、これらのバンドについてこれ以上の特徴の検討は行っていない。
Ara h 1
Burksら3はピーナッツに感受性のAD(アトピー性皮膚炎)患者の血清を用いてイムノブ
ロッティング及びELISA法により分子量 63.5 kDaの糖タンパク質のピーナッツアレルゲン
を同定した。このアレルゲンAra h 1 のpIは 4.55 であった。CARGとAra h 1 とは多分同一
タンパク質と思われるが、Ara h 1 はコンカナバリンAには結合しない。
Ara h 2
これより後の報告で、Burksら128はもう一つのピーナッツアレルゲンAra h 2 を精製し同
定している。このタンパク質はSDS-PAGEで分子量が 17 kDa、pIは 5.2 である。上記のピ
ーナッツアレルゲンの物理化学的特性の一覧表を表7に示す。
2.
構造−エピトープ
Ara h 1 はクローニングされアミノ酸配列が推定されている137。このタンパク質は複数の
IgE結合エピトープを有しており138、また種子貯蔵タンパク質ビシリンと有意な配列相同性
を有する7。
表7
単離されたピーナッツアレルゲンの特徴
名称
分子量(k
pI
糖質部分
参考文献
Da)
Ara h 1
Ara h 2
63.5
4.55
あり
3
17
5.2
あり
128
CARG
65
4.6
あり
127
ピーナッツ-1
20
5.25∼5.75
あり
131
30
3.
用量反応性
メイヨー・クリニックの研究チームは、ピーナッツによるアナフィラキシーショックで
16 ヶ月の期間中に 4 件の死亡があったと報告している55。この報告や他の報告130,140では犠
牲者はピーナッツタンパク質を含む食品であることを知らずに食べている。Yungingerら55
は、彼等が検討したケースでは摂取したピーナッツの量は多分ミリグラムないしグラムの
オーダーであろうと指摘している。DBPCFCによる検討で、50∼100 mgのピーナッツタン
パク質が何人かの子供にアレルギー症状を惹起することが示されている141。しかし、アナ
フィラキシーを惹起する恐れがあるため急性反応に感受性の患者に対する経口投与は行っ
ていない。急速な減感作療法によるピーナッツアレルギー治療の研究において
Oppenheimerら142は 30∼8 gのピーナッツ(平均約 4 g)を二重盲検で投与してピーナッ
ツ感受性の患者にアレルギー反応が起こるのを認めた。
B. ダイズ
ダイズグロブリンはダイズの主要タンパク質である。食塩水可溶性のダイズタンパク質
画分をpH 4.5 に調節するとグロブリンが沈殿し、後に乳清(6∼8%のタンパク質を含む)
が残る143。この乳清画分はヘマグルチニン、トリプシンインヒビター、及びウレアーゼを
含んでおり144、これらの分子の大きさは 1S∼6Sである145。
グロブリンは超遠心で 2S、7S、11S、及び 15S画分に分離するため、これはダイズタン
パク質の種々の成分を分類するのに用いられてきた146。これらのタンパク質の研究に用い
られる分析法が多岐に亘っているため、Catsimpoolasら147は以下のシステムを提案してい
る。即ちダイズトリプシン・インヒビター以外の 2S成分をα-コングリシニンと呼び、Robert
とBriggs148によって単離された 7S成分をβ-コングリシニン(ビシリン)と呼ぶことにしよ
う、というものである。グリシニンとβ-コングリシニンがダイズのタンパク質画分の 70∼
80%を構成している149,150。KoshiyamaとIguchi151の方法で単離した 7S成分はγ-コングリ
シニン、11S成分はグリシニンと呼ばれる。15S成分は主にグリシニンの多量体より成って
いる152。
α-コングリシニン(2S)
α-コングリシニンはダイズの主要な画分の一つである。2S画分は分子量 18.2 及び 32.6
kDaの熱に安定な成分を有しているが、同時にトリプシンインヒビター及びチトクロムCの
活性をも有している144。VaintraubとShutov153は 2S画分が 2.8Sと 2.3Sの 2 つの成分に分
離できることを見出した。2.8S成分はPAGEで 36 kDaのバンドとなり、pIは 4.4 であった。
ダイズのトリプシンインヒビター活性はボーマン-バーク型インヒビター(6∼10 kDa)、ク
ニッツ型インヒビター(KSTI、20∼25 kDa)も含め、全て 2S画分に含まれていると考え
られた154。しかし、後になって、これらの活性はインヒビターがグロブリン単離の際に共
沈したことによるものであることが判明した155。
β-コングリシニン(7S)
この糖タンパク質は溶液中、及びおそらく種子の中でも 3 量体及び/又は 6 量体として存
在する154。単量体の分子量は 150∼170 kDa、2 量体の分子量は約 370 kDaである。pIは
4.9 と測定されている。β-コングリシニンはα、α 、及びβで表される3つのサブユニッ
トから構成され、サブユニットの組み合わせにより少なくとも7種類の異なる形状(B0∼
B6)がある156,157。α及びα
分子量は 42
サブユニットの分子量は 54 kDaであり、βサブユニットの
kDa154である。これら
3 種類のサブユニットは全て 4.5%の炭水化物を含有す
る156。Satoら158は分子量 16 及び 26 kDaの 2 種類のサブユニットから成る「塩基性」7Sグ
ロブリン(pI=9.1∼9.3)を記載しており、還元剤非存在下SDS-PAGEで未変性分子は 42 kDa
のバンドを与える。16 及び 26 kDaのポリペプチドのpIは各々6.5∼7.0、及び 7.7∼7.9 であ
った。Coatesら159は臭化シアン処理後の主要なサブユニットの電気泳動上の挙動を検討し
た。α
サブユニットは 47、19.5 及び 15.5 kDaの主要なバンドより成っていた。47 及び
19.5 kDaのバンドは糖タンパク質であった。αサブユニットは 54 及び 19.5 kDaの主要な
バンドから成り、共にグリコシル基が付加されていた。βサブユニットはメチオニン残基
を含まないためバンドは観察されなかった。β
サブユニットは 4 個の断片を生じたが、
それらの分子量については記載されていない。この研究ではクローニングされたαサブユ
ニットのcDNA配列から推定したアミノ酸配列についても記載されている。
γ-コングリシニン(7S)
γ-コングリシニンはダイズタンパク質の 7S画分であり、これは分子量 154∼177 kDaの
糖タンパク質で160-162、pIは 5.4 である160。ある報告によれば、γ-コングリシニンは 22 kDa
のサブユニット 9 個を有しているが163、別の研究者はサブユニットは 38 kDaの糖タンパク
質と 32 kDaの単純ペプチドであると報告している164。Yamauchiら162はγ-コングリシニン
はいずれも 50 kDaの 3 個のサブユニットを有していると報告している。この研究では、架
橋したサブユニットはSDS-PAGEで 54.4 kDaの単量体、109 kDaの 2 量体、及び 154 kDa
の 3 量体であった。
グリシニン(11S)
グロブリンの中の 11S画分、即ちグリシニン(レグミン)は最もよく研究されている。そ
の分子量は 320∼360 kDaで、10∼45 kDaの範囲に及ぶ 12 個のサブユニットより成る165。
酸性のサブユニットの分子量は 37∼45 kDa、塩基性サブユニットは 20 kDaである166,167。
ただしNielsenら168はサブユニットは 54.3∼63.7 kDaと測定している。酸性サブユニット
A1∼A4、及び塩基性サブユニットB1∼B4はグリシニン分子中に等モルずつ存在する169。酸
性サブユニット間では若干の配列の相同性があり、抗原決定基も同じであることから、保
存された配列であることが示唆される170。塩基性サブユニット同士も互いにかなりの配列
相同性を有するが、酸性サブユニットとは明確に異なる171。未変性のグリシニンの中では
サブユニットは 2 個の同一の六角形の中に積み重なって詰め込まれており、シリンダー状
になっている165。グリシニンのサブユニットの一つはアミノ酸配列が解明されている167。
1.
ダイズアレルゲン
ダイズは複数のアレルゲンを含んでいる。Shibasakiら144はダイズにアレルギーのアトピ
ー性皮膚炎患者 3 人と喘息患者 1 人から採取した血清を用い、ダイズグロブリン画分 11S、
7S、及び 2SをRAST及びRAST阻害で検討した。特異的なIgE反応性とかなりの程度の交叉
反応が全ての画分で認められた。2S画分が全ての画分の間でRAST阻害活性が最も強く、更
にRAST試験で 50μgの 2Sサブユニットが他の画分のIgE結合を 90%阻害した。各画分を
80℃で 30 分加熱したところ、2S画分の阻害活性は促進され、一方他の画分の活性は未変性
グロブリンの 39∼75%に低下した。
しかし 2S画分の活性も 80℃以上の温度では低下した。
ダイズに対するDBPCFCが陽性であるアトピー性皮膚炎患者 8 人から採取した血清を用
いた試験では、7S画分に対する特異的IgE及び 11S画分に対するIgGが有意なレベルで存在
することが認められた172。殆どの抗原がIgEに結合したが、中でも 7S画分が最も強いアレ
ルゲン性を有するようであった。イムノブロットのIgE結合パターンは一定せず、これはど
れか単一のダイズ画分がIgEに特に多量結合するわけではないことを示唆している。殆どの
血清サンプルで、特定のIgE抗体が 7S及び 11S両方の画分に結合することが認められた。IgE
との結合は 7S画分のα、α 、及びβサブユニット、及び 11S画分のA及びB画分で認めら
れた。
Ogawaらによるもう一つの研究では173、殆どのIgE結合バンドは 7S画分のタンパク質成
分に帰属された。ただし結合はホエイ及び 2S由来のバンドでも認められた。SDS-PAGEで
16 種のダイズタンパク質が検出され、その分子量は 14∼70 kDaであった。アトピー性皮
膚炎患者 10 人より採取した血清でイムノブロッティングしたところ、IgE結合バンドが 7S
画分に認められた。11S画分では結合バンドは殆ど認められなかった。したがってこの研究
では、11S画分はダイズに感受性のあるアトピー性皮膚炎患者では重要ではなかった。ただ
しこれらの患者のダイズに対する過敏性反応はDBPCFCでは証明されなかった。7S画分の
IgE結合バンドは 40∼70 kDaの範囲で生じ、主要な結合は微量画分である 30 kDa画分で認
められた。この 30 kDaのバンドはGly m 1 と命名されている。この 30 kDaのバンドは 2S、
11S、及びホエイ画分では認められなかった。11S画分の酸性サブユニットに対する特異的
IgE結合が観察された。7S画分では、主要なIgE結合バンドが 10 本検出され、これにはβコングリシニンのα-及びβ-サブユニットが含まれていた。IgEは 2S画分にも結合した。
Ogawaら173は、20 kDaのバンドはKSTIであろうと示唆しているが、IgE反応性バンドはこ
の画分の 17 及び 15 kDaにも生じている。著者等によれば、これらのデータは 7Sと他の画
分との間にアレルゲン性の交叉反応性が無いことを示すという。しかし、2S画分の 20 kDa
のバンドとホエイの 18∼21 kDaのバンドの間に交叉反応が認められる。この研究では他の
研究とは異なり、11S画分はダイズの総貯蔵タンパク質の大部分を占めているにも拘わらず
他の画分よりもアレルゲン性が低い。
a. 主要アレルゲン
Gly m 1
Gly m 1 はOgawaら173が分子量 30 kDaのタンパク質として記載した 7Sグロブリン画分
の微量成分である。この研究で被験者の 65%がGly m 1 に対する特異的IgEを有していた。
しかしこれらの被験者はダイズに対する重症の反応やアナフィラキシーを経験したことの
ないアトピー性皮膚炎患者である。以後に発表された論文で同じ研究グループ174は、未変
性のアレルゲンの分子量をゲル浸透クロマトグラフィーで調べ、300 kDa以上であることを
見出した。2 次元電気泳動による検討で単量体は分子量 32 kDa、pIは 4.5 であった。Gly m
1 のN末の 15 個のアミノ酸残基は、ダイズ種子の 34 kDaの油体関連タンパク質(別名ダイ
ズ液胞タンパク質P34)の配列と同じである。加えて、34 kDaの油体関連タンパク質はGly
m 1 に対して作成された抗血清及びモノクローナル抗体にイムノブロッティングで強く結
合した。ミヤギシロ(宮城白)品種のダイズにおける 34 kDaの油体関連タンパク質の含量
は、ダイズ種子の油脂含量によって異なるものの、種子の子葉の総タンパク質の約 5%を占
めていると推定されている175。Gly m 1 が 7S画分の微量成分としてのみ存在するのは、脱
脂ダイズから粗 7Sグロブリン画分を調製する際に大部分のこのアレルゲンが除去されてし
まった結果かもしれない。
b. 非主要アレルゲン
68 kDa アレルゲン
Ogawaら176はダイズにアレルギーを示すアトピー性皮膚炎患者の血清由来のIgEの 25%
以上が 7Sグロブリン画分の 68 kDaタンパク質をイムノブロッティングで認識することを
見出した。このタンパク質はβ-コングリシニンのα-サブユニットであり、pIは 5.0∼5.2
である。この血清は、α-サブユニットを認識したが、α
-サブユニットやβ-サブユニッ
トはα-サブユニットと高度の相同性を有しているにも拘わらず、認識しなかった。
KSTI
職業上KSTIを取り扱っていてダイズアレルギーに罹患している女性がいたことがヒント
となって、アレルギー性タンパク質としてのKSTIの研究が行われた177。この患者はKSTI
及びダイズ全体に対する皮膚テストとRASTが陽性であり、他のトリプシンインヒビターや
ピーナッツ抽出物ではIgE反応性は認められなかった。ダイズに対するRAST反応はKSTI
で完全に阻害された。この研究で用いられたダイズアレルギー患者から採血した他の2つ
の血清はいずれもKSTIに対するRASTが陰性で、また1つだけがダイズに対するRASTが陽
性であった。KSTIはダイズ抽出物に対するIgE結合を阻害できなかった。したがって、KSTI
は比較的重要性の低いアレルゲンと考えられる。KSTIには栄養摂取を妨げる作用があり、
この作用を下げるためにKSTIを低濃度にしか含まない、あるいは全く含まないダイズ品種
がつくられている178。KSTIのアミノ酸配列は解明されている179,180。このインヒビターは
181 個のアミノ酸残基から成る。この研究グループはまたインヒビターに配列変異体がある
ことを見出した。変異体は分子の 9 つの部位が異なっており、各部位でアミノ酸 1 個だけ
が置換されていた。KSTIの分子量は 20 kDaである。Brandonら181はKSTIが少なくとも 2
ヶ所の異なる抗原部位を有しており、そのうちの1つは変性条件下でも保持されることを
見出した。この抗原部位はしたがって線状の形をとっている可能性がある。
S-Ⅱ(20 kDa タンパク質)
Herianら182はダイズ由来の分子量 20 kDaのIgE結合タンパク質について記載し、これを
S-Ⅱと命名した。ダイズアレルギーを示す被検者から採血した 2 つの血清サンプルが 20
kDaのバンドとのIgE結合を示した。精製したKSTIではIgE結合は観察されなかった。ダイ
ズを炒ると 20 kDaアレルゲンへのIgE結合が増強されるようであった。予備試験によれば、
S-Ⅱはグリシニンの塩基性サブユニットではない。ダイズにアレルギーを有する被験者から
採血した血清サンプルの1つが 14 kDaのバンドのみへの結合を示した。ダイズとピーナッ
ツの両方にアレルギーを有する患者の血清が 50∼70 kDaの範囲にある数本のバンドとIgE
結合を示したが、これらのバンドはβ‐コングリシニンサブユニットと思われる。生のダ
イズのIgE結合に品種差による相違は観察されなかった。IgE結合タンパク質についてこれ
以上の特性検討はなされていない。
2.
構造−エピトープ
グリシニン
グリシニンのサブユニットの抗原性及びアレルゲン性をELISAで調べた研究183,184で、グ
リシニンに対して作成したウサギの抗血清に全ての酸性鎖が同じように反応した。塩基性
サブユニットには反応性はなかった。Nielsenら168は、これらのサブユニットが反応しない
のは結合部位が分子の内側に位置しているからであろうと想定した。ダイズにアレルギー
を有する 10 人の成人から採取した血清を用いたIgG-ELISAで、6 個の血清サンプルはグリ
シニンと優先的にIgG結合反応を示したが、単一のサブユニットに特異的な血清は無かった。
IgE結合試験で、4 個の血清がサブユニットA4 と最も強いIgE結合を示したが、他の 4 個の
血清は未変性のグリシニンと最も強いIgE結合を示した。1 個の血清はグリシニンとのIgE
反応を示さなかったが、サブユニットとは有意な結合を示した。特異的なIgGは未変性のグ
リシニン分子に対して結合し、一方IgEの結合はサブユニットに向けられている。著者等は、
IgE形成には何らかの抗原のプロセシング(加工)が必要である可能性を反映して、IgEの
標的は更に断片化された画分に向けられているのではないかと示唆している。しかし、IgE
結合はサブユニットでは 80%しか阻害されない。したがってグリシニンのアレルゲン性の
全てがサブユニットによるものではない。グリシニンの抗原性はβ‐コングリシニンより
もコンフォーメーション依存性が強い185。
Gly m 1
Gly m 1 のN末端配列とアミノ酸組成はダイズ種子の 34 kDaの油体関連タンパク質のも
のと同じであり、またパパイン様チオールプロテイナーゼと相同性が高い186。興味深いこ
とに、Gly m 1 はチリダニの主要アレルゲンDer p 1 と 30%の相同性を有しており、Der p 1
もまたチオールプロテアーゼである174。Gly m 1 のN末端配列は
10
K-K-M-K-K-E-Q-Y-S-C-D-H-P-P-A
であり、これは 34 kDa の油体関連ダイズタンパク質の N 末端から最初の 15 アミノ酸残基
の配列と同じである。
68 kDa アレルゲン
ダイズの 68 kDa副アレルゲン中のIgE結合部位はアミノ酸配列 232∼383 の中に位置し
ていると判定された。ダイズにアレルギーを有する患者の血清中のIgEはβ‐コングリシニ
ンのαサブユニットを認識したが、α
−及びβ‐サブユニットはα‐サブユニットと高
い相同性を有するにも拘わらずこれらを認識しなかった。α‐サブユニットとα
−サブ
ユニットとは 90%以上の相同性を有している187。α‐サブユニット上のIgE結合部位であ
ろうと予想されている残基 232∼383 はα −サブユニットの残基 258∼417 に対応する188。
したがって、これら 2 個のサブユニット間の構造上の差異がダイズにアレルギーを示すこ
の特定患者集団におけるアレルゲン性の違いの原因なのか否かをより詳細な検討によって
決定する必要がある。
3.
用量反応性
アレルギー反応を惹起するに必要なダイズタンパク質の閾値についての情報は殆ど無い。
アトピー性皮膚炎の小児患者について二重盲検の誘発試験が行われているが、ダイズに対
する感受性は極めて高いというほどではない。Jamesら189はアトピー性皮膚炎患者におい
て、250∼500 mgのダイズが反応を誘発できることを見出した。しかし、ダイズは患者に
よっては重症の反応を惹き起こすことがあり、現にダイズで栄養強化したソーセージ入り
のピザを食べて死亡した子供がいる190。ごく普通に出回っているアレルゲン性食品すべて
にいえることだが、感受性の高い人にアレルギーを誘発させるのに必要な、食品の最小量
は不明である。
C. ナッツ類
1.
アーモンド
Bargmanら191はアーモンドにアレルギーを示す患者 7 人から採取した血清を用いて、イ
ムノブロッティング法によりアーモンドの抽出物中のIgE結合タンパク質を検出した。2個
の主要なアレルゲンが同定された。その1つは 70 kDaの熱に不安定なタンパク質であり、
もう1つは 45∼50 kDaの、熱に安定なタンパク質であった。分子量 38∼70 kDaに亘る多
数のタンパク質がIgEと結合した。
2.
ブラジルナッツ
ブラジルナッツは人によって全身性アナフィラキシーを惹き起こす。Arshadら192はブラ
ジルナッツにアレルギーのある患者の血清を用い、イムノブロッティングによるアレルゲ
ン検出法により、数種のアレルゲン性画分を認めた。ブラジルナッツの主要なアレルゲン
Ber e 1 はメチオニンを高含量に含む 2Sタンパク質であり193、2 個のサブユニットより成る。
このタンパク質の 9 kDaサブユニットは 77 個のアミノ酸を含む。3 kDaのサブユニットに
ついても報告されている。Ber e 1 のcDNA配列は解明されている194。Ber e 1 はトウゴマ及
びナタネの高メチオニンタンパク質とそれぞれ 44%及び 21%の相同性を有している。
3.
ヘーゼルナッツ
ヘーゼルナッツのアレルギーはヨーロッパの樹木花粉アレルギー患者で特に顕著に見ら
れる(第VII項F参照)。Hirschwehrら195は、カバノキの花粉にアレルギーのある患者のう
ちヘーゼルナッツで有害反応が起こったと報告してきた 25 人から血清を採取し、これを用
いてIgEが 17 kDaのヘーゼル花粉主要アレルゲンであるCor a 1(100%)及び 14 kDaのヘ
ーゼル花粉タンパクであるプロフィリン(16%)に結合することを見出した。更にIgEはヘ
ーゼルナッツ抽出物のこれらとほぼ同じ分子量(18 kDaと 14 kDa)の画分と結合した。こ
のことはCor a 1 および 14 kDaのヘーゼルプロフィリンと類似のタンパク質がヘーゼルナ
ッツでも発現されている可能性を示唆する。対照的に、樹木花粉にはアレルギーを示すが
ヘーゼルナッツに対する過敏症の前歴のない患者 18 人の血清では、そのうち 4 人(22%)
の血清のみがヘーゼルナッツ抽出物の 18 kDaタンパク質へのIgE結合を示し、またヘーゼ
ルナッツプロフィリンに対するIgEの反応性を示したものはなかった。イムノブロッティン
グによる阻害実験で、18 kDaタンパク質のIgE結合性はヘーゼル花粉の主要アレルゲンであ
るCor a 1、Bet v 1(カバノキの花粉の主要アレルゲン)195及びBet v 2 (カバノキの花粉の
プロフィリン)196のIgE結合性と類似していることが示された。しかしこのタンパク質は未
だ配列決定がなされていない。
4.
ピスタチオ
ピスタチオはカシューやマンゴーと同じ科(ウルシ科)に属し、34 kDaの顕著な活性の
IgE結合タンパク質を含んでいる197。他のアレルゲンは分子量 41∼60 kDaである。ピーナ
ッツ、クルミ、及びヒマワリの種と若干の交叉反応性が認められている。
D. コムギ
米国ではコムギは主要な食料である。穀類について最もアレルギーの訴えが多いのは、
埃っぽい環境に曝されることによる職業性喘息である198(第VI項参照)。コムギに含まれる
タンパク質は水溶性アルブミン、食塩水に可溶性のグロブリン、70%アルコール水溶液に
可溶性のプロラミン、及び酸・アルカリ可溶性のグルテリンである199。
Hoffman200はコムギを摂食して喘息に罹った被験者 1 人から採った血清を用いて、コム
ギのグロブリン及びアルブミン画分がRASTで活性が最も強いことを認めた。Suttonら201も
コムギに対して高いRASTスコアを示す小児 20 人の血清を用いて、最も高いIgE活性はグ
ロブリン画分にあることをRASTによる検討で観察した。
食事依存性運動誘発アナフィラキシー(F-EIA)の患者 6 人において、運動をする 30 分
前にコムギを摂取するとその後アナフィラキシーが発生し、また全員がコムギ抽出物に対
する即時皮膚テストで陽性反応を示した202。これらの患者の多くはコムギのトリプシン及
びペプシン消化物に対しても陽性の皮膚反応を示した。著者等は、消化によって「ネオ抗
原」即ち新規のアレルゲンが生成したのではないかと想定している。しかしこれらの患者
は未変性のタンパク質に反応しているわけであるから、完全な状態のタンパク質からポリ
ペプチドがはずれてきたに過ぎないという解釈がより正しいように思われる。
Ⅳ. 発症頻度の少ない動物由来のアレルゲン性食物
A. 軟体動物
軟体動物門はムラサキイガイ、ハマグリ、ザルガイ、カキ、ホタテガイ等の斧足綱(二
枚貝)
;アワビ、ホラガイ、カサガイ、カタツムリ、エゾバイ等の腹足綱;そしてタコやイ
カ等の頭足綱から構成されている。軟体動物のアレルゲンは IgE 関与の反応を引き起こす
ことが知られているが、十分な研究はなされていない。
1.
カキ(二枚貝)
カキは感受性のある被験者に有害反応を引き起こすことがよく知られている207。Lehrer
とMcCants207は 6 人のカキアレルギーの被験者(カキ摂取後に消化管にのみ症状が現れ
る)で、皮膚テストとRASTはカキ感受性と相関しないことを認めた207。
2.
イカ(頭足綱)
イカは感受性のある被験者が摂取または料理の蒸気を吸入した後にIgE関与の反応を引
き起こす。ある研究では7人のイカアレルギーの患者全員が皮膚テストにおいてゆでたイ
カの抽出物と市販の各種甲殻類の抽出物に対して強い陽性反応を示すことが報告されてい
る。さらに、イカアレルギーの人の血清はゆでたイカの抽出物に対する特異的IgE免疫測
定法において陽性であった205。
3.
カサガイ/アワビ(腹足綱)
カサガイやアワビの摂取によるアナフィラキシー反応が報告されている。感受性のある
被験者は皮膚テストやRASTで貝殻を有する軟体動物の抽出物に対して陽性であった
204,208。ある研究では、カサガイアレルギーの被験者は調理されたカサガイの抽出物に対し
て皮膚テストや好塩基球のヒスタミン遊離試験で陽性となったが、生のカサガイ抽出物に
対しては反応しなかった204。イムノブロッティングによって、カサガイの主要なIgE結合
タンパク質の分子量は 38 と 80kDaであると考えられているが、これ以上の特性検討はな
されていない209。
4.
カタツムリ(腹足綱)
カタツムリに対してアレルギーを有する 10 人の被験者を対象とする研究で(内 8 人が
気管支の症状を経験しており、6 人は皮膚と消化管に症状を示すことが報告されている)、
被験者全員がカタツムリの抽出物に対して好塩基球のヒスタミン遊離試験と皮膚テストで
陽性反応を示したが、頭足綱と二枚貝は有害反応を引き起こすことなく摂取できた206。
別の研究では203、アトピーの被験者 70 人の内、61%が皮膚テストでゆでたカタツムリ
の抽出物に対して陽性であり、19%がカタツムリの抗原に対してRAST反応性を示した。
15%の被験者ではカタツムリの摂取による喘息症状が報告された。ゆでたカタツムリの抽
出物のSDS-PAGEとイムノブロッティングから分子量が 12∼66kDaの範囲にIgEに結合
する6つの異なるタンパク質が存在することが判った。皮膚テストとRASTが陽性の被験
者は 1μgのカタツムリ抽出物で好塩基球のヒスタミン遊離試験が陽性となった。これらの
被験者では、カサガイヘモシアニンは好塩基球のヒスタミン遊離試験で交叉反応を引き起
こさなかった。特異的IgE結合が 66kDaバンド(10 人中 2 人)、24kDaバンド(10 人中 9
人)、15kDaバンド(10 人中 3 人)および 12kDaバンド(10 人中 6 人)に認められた;
しかし、これらのバンドの特性はこれ以上検討されていない。
V.
発症頻度の少ない植物由来のアレルゲン性食物
A.ソバ
ソバは、雑草のタデ科グループに属し、穀類との関係はない。ソバの摂取は、消化器症
状、蕁麻疹、血管浮腫、およびアナフィラキシーと関連付けられている210。職業上ソバ
に暴露されている人達では、職業病としてのアレルギー反応を起こすことが知られている
211,212
。ソバを摂取するとアナフィラキシー症状を繰り返し発症する患者の血清を用い
たイムノブロッティングによると、IgE結合成分として分子量 9∼40kDaの 4 つのバンド
が認められ、それら全てが糖タンパク質であった213。Yanoら214は、ソバに対して高い
RASTスコアを示す患者の血清から、IgEを結合した分子量 8∼9kDaの 3 つのタンパク質
を見出した。そのタンパク質の 1 つはトリプシンインヒビターであった。
B.
ハウチワマメ(ハウチワマメの種子)(Lupinus albus)
ハウチワマメは、マメ科に属する。ハウチワマメは、世界的に栽培されているエンドウ
に似た植物で、主として飼料として使用されたり、耕地の養分のために215土中にすき埋
め込まれたりしている。しかし、このマメ科植物はまた、人が食べる食物としての用途と
しても、何年もの間評価されている。
HefleとBush216は、ピーナッツアレルギーの小児がハウチワマメを含むパスタ製品に
対してアレルギー反応を示したと報告した。彼らはさらに、皮膚テストと、ピーナッツア
レルギーの大人 6 名のIgEを用いてin vitroでのハウチワマメタンパク質のバインディング
分析を実施した。ハウチワマメのIgE結合タンパク質は、SDS-PAGEにおいて 21kDaおよ
び 35∼55kDaの分子量をもち、熱安定性があった。6 名の患者血清の内、3 つの血清はこ
の 21kDaのバンドに弱く結合しただけであったが、この 21kDaのバンドは、他の 3 名の
血清においては主要なIgE結合タンパク質のようであった。ハウチワマメ抽出物を用いた
皮膚テストで陽性反応を経験した患者はまた、青エンドウに対して有害な反応を示したこ
とがあると語った216。
C. エンドウ
エンドウはマメ科植物に属するが、エンドウに対するアレルギー過敏反応の頻度は、ピ
ーナッツやダイズに比べるとかなり少ない。しかし、このことは恐らく、ヒトが食事とし
てエンドウタンパク質をどれくらい摂取するかに関係しているかもしれない。食事の中に
エンドウやハウチワマメといったマメ科植物のタンパク質の添加量が増加していたならば、
エンドウアレルギーの罹患率は増大したであろう。
栽培変種や分画方法にもよる217が、グロブリン画分が総種子タンパク質の 75∼80%を
占め、アルブミン画分はその残りの大部分を構成している。青エンドウマメ( Pisum
sativum L.) leguminは約 256kDaで、20kDa及び 40kDaをサブユニットとする6
組で構成されている。それぞれのサブユニットは、60kDaのポリペプチド鎖で構成されて
いる218。青エンドウvicilinは、50kDaのサブユニットを構成成分とする三量体である21
9,220
。一方、convicilin と呼ばれるvicilin様のエンドウタンパク質は、71kDaの 4 つの
単量体より構成されている221。
粗精製のエンドウ抽出物とエンドウアルブミンは、皮膚テストで陽性を示した。しかし、
主要なエンドウグロブリンのlegnum
(11S)
とvicilin (7S)は、10 人の青エンド
ウ過敏症患者について行われた調査研究の皮膚テストで、陽性反応を引き起こさなかった
222
。そのアルブミン画分は、加熱されたり、煮沸されたりしても、そのアレルギー活性
をすべて保有していた。
「PMA-L」と称された 53kDaの主要なエンドウアルブミンは、約 25kDaの2つのサブ
ユニットから構成されていた。もう一つの成分である「PMA-S」は、48kDaの分子量があ
り、2つの 24kDaのサブユニットを構成成分としていた。PMA-Lと PMA-Sは、どちらも
発芽の間にほとんど低分子化しなかった。このことは、これらが種子貯蔵タンパク質では
ないことを示唆している223。24 または 25kDaのサブユニットをもつホモダイマーで、
「Psa MA」 (P.sativum主要アルブミン) と称されたエンドウアルブミンに関するそ
の後の研究は、「Psa LA」の発見とそのアミノ酸配列の解明をもたらしている。Psa L
Aは、54 アミノ酸残基から成る低分子量アルブミン成分(11kDa)である。このタンパク
質は、ほぼ間違いなく 6kDaのポリペプチドの二量体であり224、プロテアーゼインヒビ
ター活性を有していない。Psa LAは、Ochterlony法またはイムノブロッティング法によ
る評価において、エンドウの貯蔵タンパク質であるPsa MA、またはエンドウレクチンに
対する抗体に反応しなかった。SDS−PAGEにおいて約 1.8kDaの分子量をもち、30%
の炭水化物を含む青エンドウアレルゲンが透析物から精製された225が、それ以上の性質
は明らかにされなかった。
D. オオバコ種子
オオバコ種子の粘液片はPlantago属に属する植物の種子の殻から得られる。それは 1500
年代より下剤として大量に使われており、職業病として発症するアレルギーであることが
よく知られている226,227。オオバコ種子は、高コレステロール血症患者の血清コレステ
ロールレベルを下げるのに有効である228と判明した以後、穀物食品に添加されるように
なった。オオバコ種子が強化された穀物製品の摂取は、重篤なアナフィラキシー反応を引
き起こした229。アレルギー症状を示した人達の大部分は作業中の暴露によって感作され
たが、一部の人達の感作はそのようなルートによるものではなかった。吸入あるいは摂取
のいずれかのルートで感作された 20 人の患者は、20∼36kDaの分子量範囲にある6つの
オオバコタンパク質に反応するIgEを有していた229。これらのIgE結合タンパク質の
性質を明らかにするための研究は、それ以上なされなかった。
E. コメ
コメ(Oryza sativa)は、世界人口の約 1/2 をまかなう主食である。日本では、コメは
IgE依存メカニズムを介して頻繁にAD(アトピー性皮膚炎)を増悪させている。2つの米
タンパク質画分、すなわちグルテリンとグロブリンに関する1つのレポートがある。それ
によると、これらタンパク質は、RASTにより示されているように230コメアレルギー患
者血清の特異的IgEに反応する。主要なコメアレルゲンは、微妙な違いがあるアルブミン
タンパク質群から成っており、それらは分子量が 14∼16kDa、pIが6∼817で、多重遺
伝子ファミリーにコードされている 231 。その主要なコメアレルゲンをコードしている
cDNAのヌクレオチド配列が明らかにされている232。それは、162 アミノ酸残基をコー
ドする 486 ヌクレオチド配列である。生合成されるタンパク質は約 14.7kDaの分子量を有
する。明らかにされたそのアミノ酸配列は、オオムギ トリプシンインヒビター(20%)と
コムギ α-アミラーゼインヒビター(40%)232とそれぞれ相同性を有する。アレルギー
を起こすコメタンパク質は、熱安定性があり、タンパク質分解抵抗性がある。この1つの
タンパク質が多くのアレルギー反応の原因となっているので、化学変異を導入し、系統種
の選択を行うことによって低アレルギー米233を創出し、コメアレルギーを減少させよう
という試みがなされている。2 番目のアプローチは、そのコメで生合成されるアレルゲン
性タンパク質の量を減らすアンチセンス遺伝子を作るために、その遺伝子のヌクレオチド
配列を利用する方法である。Watanabe234は、コメのアレルゲン性を減少させるために、
プロアテーゼ処理工程を導入した。これは多少成功したが、必要な酵素量は膨大であった。
F.
リンゴ
新鮮なリンゴは特定の地域で経口アレルギー症候群(OAS)の原因となり得る。この
リンゴアレルギーはヨーロッパにおいてよく見られる(本号のSusan L. Hefleら、
「アレル
ゲン性食物」参照)。ヨーロッパでは、リンゴは一般的なアレルギー食品として認識されて
いる。Ebnerら235は、17∼18kDaのリンゴ抗原とカバ花粉のBet v 1が同一の抗体認識
部位を有していることを示した。彼らはさらに、カバ花粉から調製したRNAがリンゴか
ら調製した約 800bpのRNAと類似の配列をしていることを示した。Viethsら236はイム
ノブロット法によりリンゴの 18kDaのタンパク質にアレルゲン性があるとし、また、13、
30、50kDaのタンパク質にアレルゲン性があることを明らかにした。彼らはリンゴの
18kDaのタンパク質濃度について数品種を比較し、ゴールデンデリシャスとグラニース
ミスが特に高濃度であることを確かめた。グロスターおよびジャンバには18kDaタン
パク質は少なかった。Viethsら237は、18kDaタンパク質のN末端26残基のアミノ酸
配列を調べ、カバ花粉のBet v 1抗原と62%の相同性があることを明らかにした。1
8kDaタンパク質は病気への耐性と関係があるようである。Hsiehら238は花粉アレルギ
ー患者34人の血清をイムノブロットにより調べたところ、37.5%のヒトに18kDaの
タンパク質に結合するIgEが検出され、75%のヒトに 31kDaのタンパク質に結合する
IgEが検出された。また、12、14、16、38、50kDa(SDS-PAGE)のタン
パク質に結合するIgEも検出された。18kDaおよび31kDaのタンパク質のN末
端アミノ酸配列に、Bet v 1や他の様々な植物の疾病抵抗性タンパク質と約50%の相
同性が見られた238。Viethsら236は、保存中に18kDa抗原が増加することを発見したが、
これが果実の熟成そのものによるのかどうかは解っていない。そのため、この抗原タンパ
ク質の増加は疾病抵抗性に関係する因子によって引き起こされているのではないかと考え
られている238。
G.キャベツ
キャベツ(Brassica oleracea)はアブラナ科の植物である。ゲル濾過技術により、20∼
67kDaの複数のアレルゲン性画分が分離されている239。
H. セロリ
セロリはヨモギ花粉アレルギーやカバ花粉アレルギーの患者にとってOASの原因とな
ることが報告されている(第VII項F参照)。セロリはときに重篤な症状を引き起こすこと
もある。Valloierら240は、セロリから15kDaの原因タンパク質を同定している。それ
はSDS−PAGEで2本のバンドを示すヘテロ2量体タンパク質である。セロリアレル
ギーの患者から採取したIgEは、カバおよびヨモギの花粉にも結合することが示されて
いる240、241。リンゴと同様に、セロリアレルギーはヨーロッパの一般的なアレルギーであ
る(本号のSusan L. Hefleら、「アレルゲン性食物」参照)。
I.チョコレート
チョコレートにアレルギー反応を示す人が多くいることが報告されているが、そのアレ
ルギー反応は再現できない場合が多い。実際に感作がDBPCFCによって確認された例
がいくつかある。しかし、皮膚テストでは陽性と出る場合が多い242、243。チョコレートの
場合、皮膚テストでは誤った判定をすることが多いため、皮膚テストは臨床上のテストと
して避けるべきである。チョコレートがIgEに結合するアレルゲンとして働くのかどう
かは定かでないため、原因抗原を同定する仕事はこれまで行われていない。
J. メロン
スイカ、カンタロープ、ハネーデュ−メロン、バナナは、ときとしてブタクサ花粉症の
人にOASを引き起こす。場合によってはより重篤な症状を起こし得る。Enbergら244はp
H4∼6での等電点分画法により、スイカ抽出物からタンパク質を分離し、ニトロセルロ
ース膜に固定後、スイカに反応した人の血清を用いてIgEが結合するか調べたが、一定
したIgEの結合は認められなかった。しかし、Jordan-Wagnerら245はSDS−PAGE
およびイムノブロッティングにより、スイカに反応する患者から調製したIgEに結合す
る15kDaのタンパク質をスイカから見出した。そのタンパク質はセロリ、キュウリ、
ニンジンに見られる類似のタンパク質と交叉性があったが、それ以上のことは解っていな
い。
K.パパイン
パパインはパパイヤから調製されるタンパク質分解酵素である。パパインは肉の軟化剤
やビールの清澄化助剤、あるいは生化学や免疫化学、薬品の工業における試薬として用い
られる。パパインが職業病喘息の原因となることを示唆する報告がいくつかある246、247。
何名かの人達はパパイヤ248、あるいは肉の軟化剤249としてパパイヤを食べることによって、
あるいは椎間板ヘルニア248を治療するために使用したキモパパインの注射によって感受
性が増していた。皮膚テスト、RAST、経口負荷試験で陽性であったため、この酵素に
対するIgE抗体の関与する感作が成立していることを確認できた。
L. モモ
モモは、OAS程度からアナフィラキシーに至るまで、様々な程度のアレルギー反応の
原因となり得る250。イムノブロッティングによるモモタンパク質の分析報告がいくつかあ
るが、結果はそれぞれ異なる。Wadeeら251は、モモ抽出物中にナシやリンゴにはない30
kDaのアレルゲンタンパク質を検出した。Taylorら252は41、67および72kDaの
アレルゲン性のあるタンパク質もしくは糖タンパク質をモモ果肉から得た。Lleonartら253
は、モモにアレルギー反応を示す人から採取したIgEに結合する8∼10kDa程度の
タンパク質複合体がモモの皮中にあることを示した。Pastorelloら250はスモモ類のいくつ
か(アプリコット、チェリー、モモ、プラム)に共通して見られる13kDaのアレルゲ
ンタンパク質を同定した。彼らはモモ、チェリー中にそれぞれ14kDaと30kDaの
アレルゲンを発見した。現在のまでに、モモ中のIgE結合タンパク質の精製やアミノ酸
配列の決定はなされていない。
M.ジャガイモ
ジャガイモに感作するケースは非常に珍しい。ジャガイモに感作した人の血清を用いた
イムノブロッティングでは、生のジャガイモ中の16∼65kDa(pI4.6∼5.2)の複
数のタンパク質に結合するIgEがあることが示されている254、255。カバ花粉アレルギー
の人の中には、生のジャガイモを食べると口にかゆみを生じる人がいる。通常そういう人
たちは調理したジャガイモであれば問題ない。理論的に推定されるアレルゲンはポルフィ
リンであろう(第Ⅶ項F参照)。
N.トマト
トマト(Lycopersicon esculentum)はナス科の植物である。Bleuminkら256は、イオン
交換クロマトグラフィーによりトマトのタンパク質を分画し、アレルゲン性を示す糖タン
パク質の画分を得た。しかし、アレルゲンは他にも多くの画分にわたって散見された。ア
レルゲン性はトマト果実の熟し程度に依存するようであった。皮膚テストでの反応は、室
温で14日間保存した赤く熟れたトマトが最も高かった。アレルゲン性画分は、タンパク
質と還元糖とが熟成中に非酵素的褐変反応(メイラード反応)を起こすことによって生成
したのであろうと推測された。
O.種々の食物アレルゲン
5.
綿実
綿実(Gossypium 種)の油とタンパク質は、食物として利用されることがある。綿実
は、ゴシポールと呼ばれる有毒性の色素のために、伝統的な育種技術によってゴシポール
フリー種が樹立されるまで、ヒトの食物源としての利用が制限された257。この技術のおか
げで、綿実のタンパク質と油とが食品として利用可能となった。綿実タンパク質や綿実粉
を含むサプリメント、キャンディー、あるいはパンを食したことによるアナフィラキシー
反応がこれまでに報告されている258-260。このアレルゲンは 2Sタンパク質のようである。
このタンパク質は水溶性のアルブミンである。
6.
ゴマ実
ゴマ実(Sesam indicum)は東インドのゴマ科のハーブである。ゴマ実から得られる種
子と油はアナフィラキシーを起こす261。超遠心分離とイムノブロッティングを用いると、
ゴマ実のアレルゲンは 8∼64kDaの多様なアレルゲンより構成されていることがわかった
199, 262。イムノブロッティングとRAST抑制試験により、ゴマ実とヘーゼルナット、ライ、
キウイ、そしてポピーの実を含む様々な食品の間で交叉反応するバンドが同定されている
263。
7.
ポピー実
ポピー実は全身性の反応を時折示す。交叉反応性以外で、ポピー実のアレルゲン成分に
関する研究はほとんどなされていない。
8.
スパイス
セロリやアニス種子、フェンネル、コリアンダー、クミンなどを含むセリ科のいくつか
の種は、セロリにアレルギー反応を示す人、とりわけヨモギの花粉およびカバ花粉に反応
する人において陽性の皮膚反応を誘発する265(第Ⅶ項F参照)。ヨモギ花粉とコリアンダー
の間の交叉反応性がRAST抑制試験により確認されている266。Helbinらは267、生のニンジ
ンとセリ科のスパイス、アニス、クミン、そしてコリアンダーの間に交叉反応性をいくつ
か見出した。このグループによるイムノブロッティングの研究でも、アニスの 17, 21,そし
て 23kDaのタンパク質がIgEに結合性を示すことが明らかとなった。一方、クミンでは
17kDaのタンパク質でのみIgE結合性が示された。
9.
マスタード
イエローマスタード(Sinapis alba)とオリエンタルマスタード(Brassica juncea)はア
ブラナ科に属する。これらアレルゲンは両方ともクローニングされている。Sin a 1 はイエ
ローマスタード種子から得られる 2Sのアルブミンであり、イエローマスタードの主要なア
レルゲンである。Sin a 1 はジスルフィドで結合された二つのポリペプチド鎖からなる貯蔵
タンパクで、それぞれのポリペプチド鎖は39残基および88残基のアミノ酸からなって
いる268。両ポリペプチド鎖のアミノ酸配列はこれまでに明らかになっている。また、この
タンパク質はナタネやヒマタネ、そしてブラジルナッツからも同定されている268。更なる
研究により、Sin a 1 のIgEへの結合様式は構造的なものであることが示唆されている。両
ポリペプチド鎖を還元カルボキシアミドメチル化すると、このタンパク質のIgEへの結合
が実質的に減少したからである。チロシン残基をニトロ化するだけでも、特異IgEの結合
性は低下した。このチロシン残基は88アミノ酸鎖の60番目に位置している。この領域
に結合するマウスのモノクロナール抗体を使用しても、IgE結合性は50%にまで低下し
た。チロシンの果たすこの役割は、タラのアレルゲンであるGad c 1 のIgEへの結合性に類
似している268。
N末端とC末端の両方をコードするオリゴ鎖プライマーを用いたポリメーラーゼ連鎖反
応(PCR)を用いて、Sin a 1 アレルゲンの遺伝的解析がさらに研究された。遺伝子の多型を
示す二つのヌクレオチド配列が同定された。2SタンパクはNapinファミリーに属しており、
イントロンのない遺伝子によってコードされ、ポリペプチドの前駆体として合成される。
合成されたペプチドは特殊な成熟プロテアーゼによりプロセシングを受け、成熟タンパク
質の二つの鎖となる269。
オリエンタルマスタードの種子の主要なアレルゲンであるBra j 1 がこれまでに同定さ
れている270。イエローマスタードが主にヨーロッパで使用されているのに対し、オリエン
タルマスタードは合衆国と日本でより一般的に使用されている。食卓に出るマスタードは、
しばしば両種の種子を粉状にした混合物からなっている。Bra j 1 のアレルゲンはわずかに
非定型性を示し、免疫学的にはイエローマスタードの主要なアレルゲンであるSin a 1 と交
叉する。Bra j 1 は 16 と 16.4kDaの間にある。16kDaのタンパク質と 16.4kDaのタンパク
質は、いずれもαへリックス構造を有している。αへリックスはタンパク質分解酵素、あ
るいは熱による分解に対して抵抗性を示す。また、両タンパク質はグルタミン含量が高い
貯蔵タンパク質である。類似のタンパク質がキャベツやカブから同定されている。なお、
キャベツとカブは同じ科に属する。
Ⅵ.
吸入性アレルゲンとしての食物
食餌性タンパク質の摂取により消化管を介して感作が成立するという様式は、食物アレ
ルギー反応の主要因である。しかしながら、特に食品工場における職業特有の抗原による
曝露が起こるケースや、食品とアレルゲン性が交叉する様々な花粉に感作した結果として、
呼吸器系を介した感作が成立することがある。食物アレルゲンはハウスダストに取り込ま
れ、空気を介して運ばれることになるかもしれないという仮説も存在する271。
アレルゲンの中には、職業性喘息を引き起こすものがある。乳タンパクが職業性喘息に
発展することを示す症例がこれまでに2例報告されている。一つの症例では、粉乳の吸入
によって鼻の症状と喘鳴が誘発された272。その患者はまた、 乳製品を摂取すると口腔内
に痒疹や焼灼感も経験した。反応したタンパク質はナトリウムカゼイネートと同定された。
もう一人の患者はBernaolaら273が報告したもので、患者はα−ラクトアルブミンの曝露に
よって職業性喘息を発症した。
卵タンパク質が「bird-egg syndrome」に関連していることが知られている。この症候
群にかかった人は、トリの血清抗原に曝露された後、一般的に呼吸器系を介して感作され
る。その結果、彼らはニワトリの卵黄を摂取することで反応するようになる。この症候群
は、はじめに成人で見出された274が、小児の症例報告275もある。この反応に関わるアレル
ゲンは、α−リベチンという 70kDaの血清アルブミンである。このタンパク質はニワトリ
の卵黄にも存在する276。
van Toorenenbergenら277は、トリ抗原に曝露された際に、卵黄中の 60kDaのタンパク
質がアレルゲンとして働くことを見出した。それとは対照的に、トリの曝露がなく、摂取
することにより卵アレルギーを発症する子供は、35kDaのタンパク質に反応した。これら
卵黄タンパク質の更なる特性化研究は行われなかった。
マメ類や他の植物から発生する有機物粉末は呼吸器系を介して感作する。ダイズ粉の吸
入が多数の吸入性喘息の原因となっていると言われている278。ダイズ粉による喘息に関連
するダイズ タンパク質を評価すると、14.9∼54.5kDaの範囲にある9種類のタンパク質が
同定された279。ダイズ レシチンはまた、感受性の高い人において職業性喘息を発症した280。
流行といえるような喘息の集団発症は、空気で運ばれたダイズ タンパク質(スペイン・バ
ルセロナ)281やヒマの種282-284が原因とされている。生のサヤインゲンを調理する主婦に
職業性喘息が起こる原因としてサヤインゲンが挙げられている285。コーヒー豆の加工業者
に起こる職業性喘息は、緑のコーヒー豆の粉末が原因であるといわれている286。
魚類や甲殻類は職業性の反応、特に魚介類加工業での職業性反応に深く関わっていると
い わ れ て い る 287 。 ノ ル ウ ェ ー ロ ブ ス タ ー ( Nephrops norvegicus ) や キ ン グ ク ラ ブ
(Paralithodes camshaticus)、あるいはスノークラブ(Chinoecetes opilio)やヤリイカ204
や他の魚介類由来のタンパク質が空中に浮遊し、吸入されることで、様々な職業性喘息が
発症すると言われている。感作は、工程中で発生する蒸気を通じてタンパク質を吸入する
ために起こると信じられている。
製パン業者の喘息はパン製造工場従業員に見られる。コムギ、ライムギ、オオムギの粉
のタンパク質が最も共通したアレルゲンとして知られている。これら穀類の粉から種々の
タンパクが精製され288、コムギとオオムギの粉からアレルゲンがクローニングされている
289。Blandsらの報告290によれば、調査した
163 名の製パン業従業員のうち 53%がコムギ
粉に、25%がライムギ粉に、そして 23%がそれら両方にアレルギー反応を示した。最も高
い皮膚反応性は水溶性画分によって誘導された。交叉免疫電気泳動法(CIE)により 40
の抗原画分が同定された。それら画分の中には、タンパク分解酵素による分解を生じたた
めに、部分的に相同性を有するものが含まれているかもしれないことがわかった。Franken
ら291は、IgEが 14kDaタンパク質に結合することをイムノブロッティングで示した。類似
のタンパク質がライムギ粉に見つかった。しかし、ライムギのIgE結合性はコムギよりも
低かった。Pfeilら292は、イムノブロッティングを用いた研究により、47、 17、15kDaの
3つの主要なコムギアレルゲンを見出した。Gomezら293は、イムノブロッティングを用い
ることにより、製パン業者の喘息に関わる主要なアレルゲンをコムギの内胚乳から見出し、
それらがトリプシンやα−アミラーゼのインヒビターファミリーに属するものであると同
定した。ある種のコムギから見出されるいくつかのトリプシンやα−アミラーゼのインヒ
ビター( Triticum duram Desf cv Agathe294, T. aestivum L. genomes AABBDD cv
Chinese Spring295, T. turgidurm L. genomes AABB cv Senatoree-Caplelli295, T.
aestivum cv Timgalen296)について、分子のクローニングとDNA配列が報告されている。
Armentiaら288は、コムギとオオムギの粉から、α−アミラーゼ/トリプシンインヒビタ
ーの一連のファミリーを形成している 11 種類のタンパク質を精製した。アレルゲンのほ
とんどはアルブミンとグロブリンの画分から見つかった。その後、代表的なアレルゲンが
同定され、それらにはコムギからは単量体が、オオムギからは二量体が含まれている。
Menaら289は、オオムギの内胚乳から 14.5kDaのタンパク質である主要なアレルゲンをク
ローニングした。これは、穀類から得られるα−アミラーゼ/トリプシンインヒビターの多
遺伝子ファミリーに含まれるグリコシル化された単量体である。アミノ酸配列はおそらく、
132残基を含むと考えられている。5アミノ酸の連続的なIgE結合性エピトープがコム
ギのアミラーゼインヒビターから同定されている50。
Ⅶ.交叉反応
A.牛乳
牛乳アレルギーの人は、しばしばヤギやヒツジの乳に対する血清IgE抗体を持っている
13,14,21。ほとんどの場合、それはDBPCFCでは確認されない。しかしヤギ乳を飲んだ牛乳
アレルギーの小児の 10 人に9人は、牛乳により引き起こされる症状と同様の反応を示す
(H.A. Sampsonからの私信)。
B.魚類
魚種におけるアレルギー交叉反応の程度は、個人によって大きく異なる297。異なる魚種
による魚アレルギー患者の反応を評価する試みが、いくつかの研究でなされている。de
Mortinoと共同研究者達298は、20 人のタラアレルギーの子供に 17 種類の異なる魚種の皮
膚テストを行った。ほとんどの子供(85%)はウナギ抽出物で反応を示したが、両親の話で
はこれらの子供達はいずれもウナギは食べたことがないとしていた。Pascualら299は、魚
類に過敏に反応する 79 人の子供を対象として、シタビラメ、ヒラメの一種 (whiff)、カレ
イの一種 (witch)、ヘイク、タラ、およびビンナガマグロに対する皮膚テスト反応を行っ
た。これらの患者はすべて、これら6種類の魚と反応を示した。この試験結果は、皮膚テ
ストだけでは魚種に対する臨床交叉反応を適正に診断できないことを示している。
DBPCFCおよび他の試験を用いた検査56,298では、魚アレルギーの小児はすべての魚種に
決まった反応を示さないことがわかった。Bernhisel-Broadbentら83は、DBPCFCに対す
る様々な反応を認めた。すなわち、経口誘発試験では、7人の患者はただ1種類の魚と、
1人の患者は2種類の魚と、2人の患者は3種類の魚と反応した。11 人の患者のうち8人
では、皮膚テストした 10 種類の魚すべてに対して陽性を示した。残りの3人は、皮膚テ
ストした少なくとも2種類の魚種に対して陽性反応を示した。しかしある研究60では、9
人の魚アレルギー患者のうち1人だけが、経口誘発試験において、皮膚テストでは反応し
た魚に対して反応しなかった。
魚抽出物のin vitroにおける交叉反応はまた、SDS-PAGEおよびイムノブロッティング
によっても調べられている。ある研究83では、生および加工した9種類の魚の抽出物を調
べた。生および加工したマグロを除くすべての抽出物は、タラの主要な抗原であるGad c 1
と類似すると思われるSDS-PAGE上の 13kDaの位置にある顕著なバンドを含んでいた。魚
アレルギー患者の血清を用いたイムノブロッティングの結果から、IgEが最も著明に結合
するタンパク質はこの 13kDaのバンドであることが示された。マグロにはこの 13kDaの
タンパク質が存在しないようであった。このことは、マグロがほかの種の魚と強く交叉反
応しない理由を説明しているかもしれない。
患者血清を用いたイムノブロッティングはさらに、経口誘発試験で臨床的に過敏な反応
を示さなかった魚の抽出物と結合することを示した。阻害ELISA法による評価では、特異
的IgE結合の 50%を阻害するために必要とされる魚抽出物の濃度は、臨床的にアレルギー
症状を示す魚でもそうではない魚でもほぼ同じであった83。
阻害RASTによる研究において、魚種間の交叉反応性が様々であることが示されている。
RAST研究では、マグロまたはビンナガマグロは最も弱い阻害作用を示し298,300、皮膚テス
トでもほとんど反応を示さない299。Helblingら300は、マグロ抽出物がマスRASTでは 45%、
サバRASTではわずか 26%しか阻害しないことを見出した。Gad c 1 を用いて ヘイク、
whiff (ヒラメの一種)、シタビラメ、witch (カレイの一種)および、ビンナガマグロに対す
る阻害RASTを実施したところ、パルブアルブミンがタラのアレルゲンとして重要である
にもかかわらず、他のタラの仲間(gadiform)やヘイクでは重要でなく、さらに他の魚種
では一層重要でないことが観察された299。
Helblingら300は、魚に対して有害な反応を示した経歴を有する多くの人は、甲殻類、主
にエビに対しても有害な反応を示すことを見出した。しかし、魚の抽出物(サケ、カタク
チイワシ、マグロ、マス、pollock(タラの一種)およびサバ)は、エビRASTにおいて阻
害活性を示さないことが明らかとなったことから、その患者達は複合的な食物アレルギー
であったとも考えられる。
C.甲殻類および軟体動物
10. 甲殻類
多様な甲殻類に対してIgE過敏性を示したことがあるという病歴がたびたび報告されて
いる。エビアレルギーの人は、甲殻類のほかの種に反応する。彼らは他の甲殻類に対して、
皮膚テストおよびRASTで陽性を示す98,301。阻害RAST解析および、他の免疫化学分析手
法を用いた研究によって、エビと他の甲殻類には共通した抗原性/アレルゲン性反応部位の
あることが示されている101,302,303。Halmepuroら101は、交叉免疫電気泳動分析において、
ザリガニから抽出した6つのIgE結合性沈降抗原のうち5つがイセエビ、ショウナンエビ、
ワタリガニ抽出物の沈降抗原と部分的に免疫学的相同性を有していること、そして4つの
イセエビIgE結合沈降抗原のうち3つがザリガニ、ショウナンエビ、ワタリガニ抽出物と
部分的に免疫学的相同性を有していることを見出した。さらに、エビ、ワタリガニおよび
ザリガニの抽出物はすべて、Pen a 1
RASTも同じ程度阻害する5。Pen a 1 特異的モノク
ロナール抗体と同様にPen a 1 反応IgEもザリガニ、ワタリガニおよびイセエビに存在する
36kDaタンパク質を検出する93ことから、おそらく共通のIgE結合部位が存在するのであろ
う。特有で、しかも綱で共有されるアレルゲンに反応するIgEの存在は、一人の患者が一
つ、または多くの甲殻類の仲間に臨床的な過敏反応を示す理由を説明しているかもしれな
い。
11. 軟体動物
軟体動物は甲殻類に比べてアレルゲン性は非常に弱いが、カキおよび甲殻類抽出物の交
叉反応研究は、阻害RAST研究をもとに、いくつかの共通な抗原性/アレルギー性反応部位
の存在を示した。エビ、ワタリガニ、イセエビおよびザリガニは、いずれもカキと高い交
叉反応性を示した207。
ある研究でも、イカアレルギー患者がエビを食べた後、症状を示した。その患者達はま
た、ゆでたイカの抽出物およびあらゆる市販の甲殻類抽出物に対して強い皮膚テスト陽性
反応を示した。特異IgE結合阻害研究は、エビ、ロブスター、カニ、カキ抽出物とゆでた
イカの抽出物と交叉反応を示した205。しかし、交叉反応は、イカとタコ(ほかの頭足動物)
との間ではなく、さらに、イカとアオヤギ、ムラサキガイ、および他の軟体動物との間に
もなかった。
カサガイに過敏に反応する患者を対象としたある研究では、何の症状もなくイカ、アサ
リなどの二枚貝、ザルガイ、タコ、カタツムリ、カキ、エビ、ロブスターおよびザリガニ
を食べることができた204。ラパスガイ、アワビ、そしてカサガイのヘモシアニンの間での
交叉アレルギー反応のあることが、カサガイに反応する患者の血清を用いた生カサガイ
RASTで証明された208。
12. 海産食物/昆虫の交叉反応
発生学的な系統維持が起こっているかもしれないことから、甲殻類と軟体動物は、節足
動物のいくつかの種とアレルギー決定部位を共有しているかもしれない。共有されている
アレルギー決定部位の存在が、エビの主要抗原とショウジョウバエ (Drosophila)抗原との
間で示されている。Pen a 1 とPen i 1は、ショウジョウバエのトロポミオシンと同様に、
アミノ酸配列の 86∼87%の相同性を有している5, 92。ユスリカ(刺さない型)にアレルギ
ーな患者は、甲殻類に対する皮膚テストにおいてもたびたび陽性を示す。ユスリカ抽出物
はエビRASTを阻害する。また逆も同様である304。しかし、他の研究者達は、この試験方
法を用いて低い交叉反応性を報告している305。
Wittemanら306は、チリダニ (Dermatophagoides pteronyssinus )抽出物に対して反応
するモノクロナール抗体がエビ抗原、おそらくPen a 1 に交叉反応することを示した。そ
して、チリダニ、カ、およびゴキブリ抽出物とも反応を示することを示した。Witteman
らは、トロポミオシンがエビアレルギー患者に見られるダニ、エビおよび昆虫との交叉反
応に関わっていると結論している。最近Akiら307は、31 名のダニアレルギー患者の主要な
アレルゲンとなっているダニ(Dermatophagoides farinae)タンパク質の組換えタンパク質
をクローニングした。cDNAフラグメントから明らかになった理論的アミノ酸配列は、シ
ョウジョウバエ トロポミオシンと 76%の相同性を持ち、精製した天然型ダニ トロポミオ
シンの一部であるアミノ酸配列フラグメントと完全に一致した。明らかとなったアミノ酸
配列は、エビ トロポミオシンの2つのIgE結合部位(エビの 50∼66 残基、161∼163 残基)
と全く同じアミノ酸を、それぞれ 17 個のうち 11 個と9個のうち6個有していた。この新
しい抗原はダニ トロポミオシンであると結論された。いくつかのカタツムリ反応性血清試
料 は 、 ダ ニ 結 合 性 IgE 陽 性 を 示 す 。 そ し て 、 カ タ ツ ム リ RAST の 阻 害 が ダ ニ
(Dermatophagoides)抽出物に見られた(14∼66%阻害)203。ほかの腹足動物、カサガイ
に対する特異IgE結合は、ダニ(D.pteronyssinus)により有意に阻害された205。しかし、
これと同じ研究グループ204は、ダニ(D.pteronyssinus)またはゴキブリ抽出物によるイ
カ特異IgEの有意な阻害はないと報告した。
無脊椎動物のヘモグロビン(エリスロクロリン)分子がトビケラと軟体動物の交叉反応に
関わっている308。それはユスリカに反応するヒトにとって可能性の高いアレルゲンである。
ある研究において、トビケラの幼虫に過敏に反応する患者の血清は、軟体動物およびハチ
毒からの抽出物中の分子量がよく似た成分と反応した308。
D.マメ類
マメ科植物間において、in vitroでのアレルゲン性の幅広い交叉反応が報告されている。
たとえば、Barnettら309は、RAST研究において、マメ類に敏感な患者由来血清の 25%が
ピーナッツ、サヤエンドウ、ダイズ、 ヒヨコマメの抽出物と強く反応することを認めた。
Bernhisel-Broadbentら 310は、イムノブロティングとドットブロティング法を用いて、
ピーナッツ、ダイズ、エンドウ、そしてリママメについて、マメ類過敏症患者の 62 名中
57 名に広範なin vitro交叉アレルゲン性を見出した。しかし、同じ研究者達による以前の
研究では、臨床結果とin vitroでの結果はマメ科植物間におけるアレルゲン性の交叉反応性
評価において相関しなかった。すなわち、皮膚テスト陽性患者の 59%が経口誘発試験で陽
性であり、そしてわずか 2.8%のみが 2 種類以上のマメ類の経口誘発試験で陽性であった。
経口誘発試験陽性のうち、ピーナッツ過敏症は 31%を占め、ダイズは 23%、エンドウは
5%を占めた。青エンドウとリママメは、経口誘発試験で陰性反応を示した。
それぞれのマメ タンパク質が、相互のサブユニットや分解産物として、あるいは翻訳後
の糖鎖付加が分子量に及ぼす影響の結果としてどのように相互に関与しているかについて
は分かっていない。また、臨床反応や in vitro 反応を引き起こすこれらのマメ類間におい
て交叉反応性を示すアミノ酸配列やエピトープも分かっていない。
上述した研究報告は、IgE抗体が関連している食物中のタンパク質と交叉反応を示し、
皮膚テスト陽性反応やRAST陽性反応を示すにも関わらず、臨床症状で交叉反応が現れる
のは極めてまれであることを示している。しかし、ピーナッツ アレルギー患者らは、春巻
きの具としてよく使用されるtaugeh(発芽した小粒青豆)に対してIgE抗体を介した重篤な
反応を起こすことがある。ピーナッツ過敏症の子供がルピナスを配合したパスタに反応し
たという症例が最近報告された216。ルピナスの抽出物に対して皮膚テスト陽性反応を経
験した患者らは青豆に対しても反応した経験を持つことも報告された。したがって、一種
類のマメに臨床的に過敏であるからといって、文献的には、殆どの場合、食事から摂る全
てのマメ類を制限する必要はないと思われる。これらは個人ベースで評価すべきことであ
る。
E.穀類
分子研究技術の発展により、穀類タンパク質の交叉反応の研究が増加した。パン類製造
業者の喘息の主要アレルゲンは、α-アミラーゼインヒビタータンパク質群のひとつとして
同定された。オオムギ由来のα-アミラーゼインヒビターとコムギ由来のα-アミラーゼイ
ンヒビターは、アミノ酸配列の 37%が同一である294。明らかにされたコメのα-アミラ
ーゼ/トリプシンインヒビターとコムギのα-アミラーゼ/トリプシンインヒビター間のアミ
ノ酸配列の相同性は 40%であり、コメとオオムギ間の相同性は 20%である232。14kDa
のコムギα-アミラーゼインヒビターに対するモノクロナール抗体は、ライムギ291におけ
る同様の成分も認識し、エピトープが同一であることを示唆している。Frankenら312は、
コムギの主要アレルゲンとしてα-アミラーゼインヒビターの重要性を確認した。最近、穀
類に対するIgE抗体の交叉反応の程度と臨床上の感受性について報告があった313。コム
ギアレルギーの小児の約 25%が他の穀類(オオムギ、オートムギ、ライムギ)に反応した
313
。
F.木の実、野菜、果物、花粉アレルギー
樹木花粉アレルギー(カバ、ハンノキ、ハシバミ、カバノキ、オーク)の患者が木の実、
果物、野菜に対する不耐症を経験する報告は非常に多い314 - 318。北欧において、カバ花粉
症患者の 70%がこれらの食物に対して不耐症である。一方、カバ花粉にアレルギーでない
患者では、19%が食物に対して不耐症である314。キウイのような植物学上関係していな
い果物に対する反応の報告があるが、リンゴ314,319やヘーゼルナッツ(ハシバミの実)
315,319
が最も共通した原因物質である。牧草または雑草アレルギーのある患者は、しば
しばニンジン、セロリ、ジャガイモ、そしてある種のスパイスに感受性を示し266,321,
322
、ブタクサアレルギー患者の多くは、ヒョウタン科の果物やヒョウタン科でないバナ
ナに対して不耐症であると報告244,323されている。これらの交叉反応の多くはOASの症
状を示すが、患者の中には全身症状を示す例もある324。これらの交叉反応を示すアレル
ゲンは調理により不活化されるが、木の実と交叉反応を示すアレルゲンは熱に安定である。
T 細胞エピトープマッピングが、カバ、ヘーゼルナッツ、そしてハンノキ花粉について
研究されている。しかし、過敏反応を誘発する特異的なアミノ酸配列は同定されていない。
樹木花粉への暴露は、同様のアミノ酸配列から成る様々な食物タンパク質に対するエピト
ープを認識する IgE 抗体価の増加を誘導しうる。最初の感作原は花粉であって、食物では
ない。
13. Bet v 1
Bet v 1 は、主要なカバ花粉アレルゲンであり、カバ花粉―食物間の交叉反応にとって
最も重要なアレルゲンである。それは、17kDaの細胞質内にあるタンパク質で、そのcDNA
配列
315
が双子葉植物326においてよく保存されており、病原体感染327した幾つかの
高等植物の体細胞組織で誘導される一連のmRNAと相同性を有する。
Ebnerら235は、イムノブロット技術を用いて、カバ花粉症患者 83 名のうち 81 名の血
清がBet v 1 とリンゴ(2 本のバンド)に対してIgE抗体の結合性を示すことを見出した。
これらのリンゴアレルゲンに対するIgE抗体の結合は、血清をBet v 1 と予め反応させてお
くことにより完全に阻害された。さらに、カバ花粉とリンゴのアレルゲンをコードする核
酸は、ノーザンブロット235においてクロスハイブリダイゼーションを示した。他の研究
者たちは、他の植物における疾病抵抗性遺伝子238に加えて、18kDaと 31kDaのリンゴ
アレルゲンがBet v 1 と約 50%の相同性を有することを見出した。また、イムノブロット
において、18kDaアレルゲンに対するヘーゼルナッツアレルギー患者のIgEの結合が予め
血清を組み換え体のBet v 1195と反応させることにより阻害されることから、18kDaのヘ
ーゼルナッツアレルゲンが、Bet v 1 と類似するIgE結合部位を有することも示された。
カバ花粉アレルギー患者 43 名の果物に対する不耐症歴の研究において、2つの集団
が見出された。すなわち、血清がカバ花粉と果物中の 20kDa に反応する集団と、血清が
カバ花粉、果物、牧草花粉、ジャガイモ中の 18kDa に反応する集団である。RAST 阻害
試験とイムノブロット解析により、カバ花粉と果物、特にリンゴ、サクランボ、モモ、ナ
シのアレルゲン間には抗原類似性があることが判明した。これらはバラ科に属する果物で
ある。
Bet v 1 の生物学的特性は、未だに不明である。カバ花粉症患者血清を用いて全オー
プンリーディングフレームをコードするcDNAだけは発現ライブラリーのスクリーニング
により分離することができたので、B細胞エピトープは存在すると考えられる328。
14. プロフィリン( Bet v 2)
プロフィリンは、カバ花粉−果物過敏症に関与しているが、他の食物329との交叉反
応において、より広い役割も担っている。プロフィリンは、植物学上関連づけられる種に
存在するその他の主要アレルゲンと異なり、花粉症患者のIgE抗体の約 20%がこのアレル
ゲンと結合する330ので、アレルギ−症状にとって重要な交叉過敏症アレルゲンである。
Bet v 2 は、分子量 14kDaのプロフィリンとして同定されたカバ花粉タンパク質で、様々
な果物や野菜に交叉反応するアレルゲンとしても同定されている329。プロフィリンは、
ほとんど全ての真核細胞で見出され、高度に保存されているごくありふれたタンパク質で、
アクチンの重合を制御する。それらは、様々な花粉から単離されている。
花粉プロフィリンは、多くの食物と交叉反応を示すようである。Ebnerら324はイム
ノブロットで、予めカバ花粉症患者血清を組換え体Bet v 2 と反応させておくと、ナシ、
セロリ、ニンジン、ジャガイモのタンパク質に対するIgE抗体の交叉反応が減少すること
を見出している。Vallierら241は、63 名のヨモギ アレルギー患者の内、18 名がヨモギの
15kDaタンパク質および 14kDaと 16kDaの2つのカバ花粉タンパク質に対する特異的
IgE抗体を有していることを示した。
セロリRAST陽性患者 36 名のうち18名が、約 15kDa
の2つのセロリ タンパク質と結合する特異的IgE抗体を持っていた。これら 18 名の患者
血清は、ヨモギの 15kDaタンパク質と 14kDaと 16kDaのカバ花粉タンパク質にも反応し
た。その後の研究で、同じ研究者たちは 15kDaのセロリ アレルゲンを精製し、それと血
清を予め反応させておくと、ヨモギおよびカバ花粉中の 15kDaのアレルゲンとのIgE抗体
の結合が阻害されることを示した。さらに、3 名のBet v 2 アレルギー患者から得たIgE抗
体は、精製した 15kDaのセロリ アレルゲンと結合し、この結合が組み換え体Bet v 2 と予
め反応させることにより阻害された。
生のメープルシロップは、樹木花粉過敏症患者の舌の血管浮腫を誘発した331。熱に
不安定なアレルゲン、おそらくプロフィリンがこの反応の原因物質であると理論的に考え
られた。
15. 交叉反応を示す糖鎖部位
Bet v 1 やプロフィリン以外にも、糖タンパク質上の糖鎖構造が花粉−野菜交叉反応
に関与しているが、それらの臨床診断は疑わしい321,332。
G.ラテックスと食物間の交叉反応
ラテックスに対するIgE抗体を介したアレルギーの過去 10 年間おける増加に伴い、ラ
テックスと様々な食物との交叉反応が報告されている。Blancoら333は、ラテックス過敏
症患者 25 名を調べ、7 名がアボガド、4 名がクリ、5 名がバナナ、2 名がキウイ、2 名が
パパイヤ、そして 2 名がイチジクに対して全身反応を経験したことがあると報告した。
RAST阻害分析では、ラテックスとアボガド、クリ、バナナ間の交叉反応が認められた。
したがって、ラテックスは、植物学上関係しない他の果物と抗原決定部位を共有している
ことが示された。パパイヤ、イチジク、キウイはRAST阻害分析ではラテックスと弱い親
和性を示した。
Anibarroら334は、クリの経口投与に反応するラテックスアレルギー患者では、特徴
として蕁麻疹と血管浮腫が見られると報告した。この患者血清を用いたイムノブロッティ
ングでは、14kDaのバンドに対する強いIgE結合が認められ、いくつかの 25∼30kDa付近
のバンドに対する弱いIgE結合が、同じ分子量の範囲にあるラテックスタンパク質に対す
るIgE結合に加えて認められた。もう一つの研究では、10 名のラテックスアレルギー患者
の内 7 名がアボガドに対してアナフィラキシーを経験していた。これらの患者達は、バナ
ナ、クリ、キウイ、パパイヤに対してもアレルギー症状を示した。RAST阻害試験は、ア
ボガド、ラテックス、クリ、バナナ間の共通エピトープの存在を示唆した335。ラテック
スアレルギーの患者はまた、バナナとクリによるアナフィラキシーを示したことがある33
5
。上述した交叉反応に加えて、ラテックスの交叉反応はセロリ、パッションフルーツ、
モモとの間にも認められている337。
Ⅷ 遺伝子組換えアレルゲンおよび食品技術に対する関係
A. 序論:遺伝子組換えアレルゲンの利点と欠点
1983 年以降のアレルゲン構造に関する知識の劇的増加は、主に組換えDNA技術の成功
した応用に起因する。分子的技術は様々なアレルゲンタンパク質からB細胞エピトープ、T
細胞エピトープばかりでなく抗原の一次構造を決定する助けとなった338。これらの技術は、
研究や臨床利用のためのアレルゲン性素材のため信頼性のある供給源の開発に革命をもた
らす効果をもたらす。
現在、バッチ間一貫性があり、信頼性、再現性のあるアレルゲン供給源が生産可能であ
り、安定して大量に利用でき、目覚しい功績となっている339。これは診断や免疫治療のた
めにアレルゲン性抽出物が改良されるという結果となるはずである。遺伝子組換えアレル
ゲンは非常に高純度で生産することができ、他のアレルゲンや非アレルゲン性の材料を含
む可能性のある天然の供給源による抽出物よりも勝っている。遺伝子組換えアレルゲンの
更なる利点は、現行のアレルギー抽出物の品質を改良するために天然の抽出物に添加され
ることだろう340。しかしながら、この方法は診断目的のために与えられた供給源からクロ
ーニングされた少数(2∼4 種)の遺伝子組換えアレルゲンでしか用いられていない。
しかしながら、おそらくバイオテクノロジーの最大の価値は、ハチ毒のような限られた
量の天然産物に含まれるアレルゲンの代わりに用いられる遺伝子組換えアレルゲンを提供
することだろう。遺伝子組換えアレルゲンはアレルゲンの規格化や組織的な研究、T細胞、
B細胞エピトープ同定のためのよいツールとなるだろう。このような研究はアレルギー性
疾患の治療における免疫療法的なアプローチに新しい概念をもたらすこともありうる。組
換えDNA技術はアレルゲン間の交叉反応性分析にも有用であろう。このような技術は多く
の花粉アレルゲンが種内、種間および遺伝子間の可変性と交叉反応性を持つことを示して
いる341。
遺伝子組換えアレルゲンの潜在的な欠点は天然相当物より IgE 結合性が低い可能性があ
ることである。また、多くのアレルゲン性抽出物は複数のアレルゲンを含むので、実質的
な供給源は、特定の食物において必要とあれば全ての遺伝子組換えアレルゲンが必要とな
るかもしれない。最終的に安全性と有効性は主要な関心事であり、人の使用前に考慮され
ねばならない問題である。
B. 遺伝子組換えアレルゲンの必要条件
生産される遺伝子組換えアレルゲンの主要な目標は、天然の相当物と遜色ないことであ
る。In vivoで用いられる遺伝子組換えアレルゲンは以下の性質について充分に分析される
べきである: タンパク質純度は遺伝子組換えタンパク質の世界保健機構(WHO)文書の
記載として明確にされている342。遺伝子組換えアレルゲンは動物モデル系によって毒性が
ないことが示されなければならない(本号のTaylorとLehrerによる「食物アレルゲンの原
則と特徴」参照)。これらの分子は安定でなければならず、半減期はアレルゲンの規格化に
通常用いられるin vitroアッセイで評価されなければならない。
多くのアレルゲンは酵素やレクチンといった本来の生理活性を持っているので、それら
に相当する組換え体も同様の活性を持つ可能性がある。毒性のような望ましくない特性が
ある場合、その特性は除去しなければならないだろう。特定部位の突然変異誘発は、この
目的を達成するために用いることができる。最終的に、遺伝子組換えアレルゲンが天然の
相当物と同様のIgE結合活性を持つことは重要である340。
C. 分子的にクローニングされたアレルゲン
多数のアレルゲンが過去数年でクローニングされた。重点は吸入アレルゲンに向けられ
た(Stewart 343、Scheiner 344のレビュー参照)。アレルゲンの中で最初にクローニングさ
れたのは主要チリダニアレルゲンであるDer p 1 である345。クローンはウサギ抗血清とオ
リゴヌクレオチドプローブにより検出された。しかしながら、用いた発現系では、発現タ
ンパク質とIgEの結合を容易に示すことはできなかった。このことは立体構造についての
翻訳後のイベントが必要であることを示唆している。他の発現系では遺伝子組換えアレル
ゲンが関連クローンの同定のため、IgE結合を用いて検出できることが示された。
多数の花粉抗原を含む、多くの非食物吸入アレルゲンが同定された346。カバ花粉アレル
ゲンとヘーゼルナッツのような食物やプロフィリンとの配列相同性は第Ⅶ項Fで検討され
た。幾つかのブタクサ花粉アレルゲンもクローニングされている。PCRに基づいた技術の
利用により、主要ネコアレルゲンであるFel d 1 をコードする遺伝子全長が同定された。こ
れらの研究から得られた情報から、
Fel d 1 分子内のT細胞エピトープが同定された。現在、
これらのアミノ酸配列に基づく合成ペプチドは、ネコアレルギー患者におけるアレルギー
反応を緩和する免疫療法について審査段階にある。カビのアレルゲンもアルテルナリア属
やアスペルギルス属からクローニングされている。アスペルギルス属タンパク質は、アレ
ルギー患者における皮膚プリックテストで陽性となる数少ない遺伝子組換えアレルゲンの
1つである347。有針昆虫の毒タンパク質の分子クローニングも報告されている。これらの
タンパク質の一部と植物由来のタンパク質の配列相同性や、ゴキブリのアレルゲンと食物
タンパク質の配列相同性が検討されている。
遺伝子組換え食物アレルゲンも生産されている。ピーナッツアレルゲンの1つである
Ara h 2 は遺伝子組換え技術で生産されている348。コメ種子由来の主要アレルゲン性タン
パク質をコードしている遺伝子が報告されている231,
232。幾つかのcDNAとゲノムクロー
ンが調製された。これらの配列分析によりオオムギのトリプシンインヒビターとコムギの
α-アミラーゼインヒビターで相同性を推測されるアミノ酸配列が明らかにされた。精製さ
れた 16kDaの主要コメアレルゲンのアミノ酸配列に基づくオリゴヌクレオチドプローブ
によりクローンが検出された。しかしながら、分子生物学的にクローニングされたタンパ
ク質とヒト血清IgEとの結合能を調べた研究はない。Gonzalez de la Penaら269はイエロー
マスタード種子由来の主要アレルゲン(Sin a I)のクローニングと発現について報告した。
クローニングは非縮重オリゴプライマー(nondegenerate oligo primers)と成熟タンパ
ク質のN末およびC末をコードする部分を用いたPCRで行われた。核酸配列分析により、
アレルゲンの複数のアイソフォームの存在が示唆される遺伝的多型性が示された。しかし
ながら、IgE結合試験は行われなかった。
現在までクローニングおよび配列決定されたアレルゲンのリストは、この号の Dean D.
Metcalfe らによる「遺伝子組換え作物に由来する食物のアレルゲンの可能性評価」に示さ
れている(表 1、2 参照)。このリストは疑いなく経時的に増大し、非常に貴重なアレルゲ
ン情報を提供し、アレルギー疾患の新療法の開発が促進されるだろう。
謝辞
著者らはこの論説に対する Samuel B. Lehrer 博士の貢献に謝意を表する。
第8章
遺伝子組換え作物より作られた食品のアレルギー性に
関する評価
1. 序論
遺伝子組換え技術による改良品種は、経済上最も重要な穀物を含めてすでに 60 種以上
にのぼり、その数は増え続けている(第4章「食品蛋白質の遺伝子改変」表2参照)。こ
れらの作物に導入された特性は、防虫、成熟遅延、ウィルス抵抗性、改良澱粉、除草剤耐
性、改良オイル、病害抵抗性、雄性不稔等である(第4章)。今後4∼5年の間に 20 種
以上の遺伝子組み換え作物を利用した製品が市場化されるものと予想される(第4章表
3)。
市場導入に先立ち、これらの製品のそれぞれに食品、飼料、環境の視点から安全性評価
が行われる。この章では食品の安全性評価の一つとして、遺伝子組換え作物を利用した食
品の潜在的アレルゲン性評価に関する代表的な意見と、科学的な評価手法について述べる。
遺伝子組み換え穀物に導入される特性の大部分は、わずか2∼3の新規タンパク質が発現
した結果生じる。また、逆にある遺伝子の働きを止めるための遺伝子を導入して目的の形
質を得る場合もあり(アンチセンス、コ・サプレッションなど)この場合作物中に導入さ
れるのはマーカータンパク質のみである。一般的にこれらのタンパク質の発現量はわずか
であり、その植物体の全タンパク質に占める割合も少ない。対照的に、ある一つの植物体
では数万種類の蛋白質が発現し、そのいくつかは高濃度に存在する(第4章)。その膨大
な多様性にも拘わらず、アレルギーを引き起こすタンパク質はそのうちの1−2%にも満
たない(第2章)。食品アレルギー患者はたいていの場合、ほんの数種の食品に含まれて
いるわずか 2、3種類の特定のタンパク質に対しアレルギーを起こすのである。
世界で報告されている食品アレルギーの 90%以上は、8種の食品(群)、つまりピー
ナッツ、大豆、木の実、ミルク、卵、魚、甲殻類、小麦によって引き起こされている(第
5 章「アレルギー食品」表 1)。この表は、FAOの後援で最近開催された、食品アレル
ギーに関する専門家会議での議論をもとに作成されたものである。報告されている食品に
対する免疫反応事例の大多数はイムノグロブリンE(IgE)仲介型の過敏性反応で、これ
は急性で過激な反応をおこして生命の危険があるため一般的な関心も高い。ほかにも食品
タンパクが誘発する過敏性反応は存在するが(第2章「食品に対するアレルギー反応」)、
免疫反応を誘発するタンパク質の導入の有無を知るには IgE 仲介型の免疫反応を調べるの
が最も確実であり、したがって本章ではほかの免疫反応については特に考慮していない。
たとえば、グルテン過敏性腸症(セリアック症)はある種の食物のグルテンに感受性が高
い人にみられる臨床学的に特異な症例であるが、本章では特に取り上げないし、逆に本章
で述べる評価手法はセリアック病の場合には適当でない。
遺伝子組換え作物を用いた食品の潜在的アレルゲン性評価法としては、多面的な分析を通
じて評価を行う方法を提案する。ここで検討されるのは、遺伝子の由来、既知アレルゲン
とのアミノ酸配列の比較、in vitro および in vivo での免疫学的分析、さらに物理化学
的特性についての評価である。
判断樹(図 1)にしたがって適切な対応を選びながら、慎重に段階を踏んで作業を進め
ていけば、合理的に潜在的アレルゲン性の評価を行うことができる。これらを総合的に評
価することにより、新品種の作物に由来する食品について、既存の同等品以上にアレルギ
ーを懸念しなくてよいことが保証される。万一アレルゲンが導入された場合、その食品は
適切な表示がなされ、したがって感受性の高い消費者はその製品を避けることができる。
以下判断樹アプローチについて、適当に例を挙げながら説明する。
2.導入遺伝子の素材
米国食品医薬品局(FDA)は食物アレルゲンが遺伝子と共に導入される可能性を検討
すべきと考え、「新しい植物種に由来する食品」に関する政策の中で次のように述べてい
る。「(アレルゲン性を持つ素材から遺伝子を得た場合)FDAでは、生産者は慎重を期
して、導入蛋白質がアレルゲンであるとまず仮定すべきであると考える。適当な in
vitro あるいは in vivo でのアレルギー試験によって、潜在的に感受性の高い人々(例え
ば、その蛋白質が通常見いだされる食品に対して感受性の高い人々など)が新品種を用い
た食品にアレルギーを起こすかどうかを調べることができるだろう。」さらにFDAは以
下のように述べている。「既知の、あるいは予期されるアレルゲンを新規に含んでいる食
品には、その可能性を消費者に知らせる表示が必要かもしれない。」その表示にはその遺
伝子が由来した素材を明示すべきである * 。
潜在的アレルゲン性を評価する上で、その遺伝子が何から得られたのかは非常に重要な
パラメーターとなる。それが既知アレルゲンを持つ素材であればアレルゲン蛋白質をコー
ドしている遺伝子が導入されていないか確認する必要性が生じ、導入されている場合は表
示が義務づけられる。
既知のアレルギー素材から導入した遺伝子のコードしている蛋白質が新しい植物種を利
用した食品の成分の中に発現している場合、それがアレルゲンでないことを確認するため
のデータが必要である。ただしその遺伝子が、本来の生物の中では通常ヒトが消化系や呼
吸系を通じた暴露を受けない部位に発現しているものならば(例えば大豆の根やピーナッ
ツの葉など)、その遺伝子がアレルギー素材に由来していることを考慮する必要はない。
また、既知のアレルゲンが導入されてもそれが通常食品として消費されない部位に限定的
に発現している場合には、遺伝子の発現と蛋白質産物の蓄積が植物の非可食部位に限られ
ているということを証明できればアレルギーの危険性がないと結論してよい。
導入遺伝子の素材の評価では次の 3 つを区別することが重要である。:a)一般的なア
レルギー食品。b)非一般的なアレルギー食品とその他(食品以外)の既知のアレルゲン
素材。c)アレルギー歴のない素材。本章では「一般的なアレルギー食品」を前述した8
つの食品(群)と定義する。(これらは第5章「アレルギー食品」表1にも載せた。)こ
れまで報告されている食物アレルギーの 90%以上はこれらの食品が原因であり、後述す
る評価方法に必要な患者血清などの臨床試験用試料が入手できる可能性も高い。しかし他
の食品群、例えば魚や木の実のある特定の種(めかじきやブラジルナッツなど)などでは
事情が違うと思われる。第5章 表2に一般的ではないアレルギー食品を示したが、これ
らの臨床試験用試料の入手は、花粉、かび、毛、毒など食品以外のアレルギー素材同様、
あまり容易ではないと思われる。
一般的、非一般的アレルギー食品(群)はともに、主要アレルゲンと非主要アレルゲン
の両方を含んでいる。主要アレルゲンと非主要アレルゲンは、ある特定の食品に対する臨
床反応にそのアレルゲンがどのくらいの頻度で関与したかによって分類される。主要アレ
ルゲンとは、皮膚テスト(ST)または固相イムノアッセイにおいて、ある物質に感受性
の高い人の 50%以上が反応するものと定義される。ここでいう「感受性が高い」とは、
症状の記録や検査の結果に、典型的な即時型過敏反応の徴候もしくは症状がみられること
を指す。アレルゲンに関する関心の大部分は、一般的・非一般的アレルギー食品(群)と
もに主要アレルゲンに集中している。なぜなら、例えばピーナッツ感受性のすべての患者
はピーナッツの一方あるいは両方の主要アレルゲンに反応するが、非主要アレルゲンにつ
いてはその臨床上の重要性がほとんどわかっていないからである。
*
以前からFDAでは、ある食品と食品添加物が一部の消費者に与えうるリスクは回避可能
であるという認識を持っている。こうした場合FDAでは一貫して、感受性の高い人々が
アレルギーを起こしうる食品・原料が含まれている旨を企業が自主表示するのに一任して
きた。例えば、亜硫酸剤(21 C. F. R. § 101.100 (a) (4))やD&C黄色5号(21 C.
F. R. § 74.705 (d) (2))のような着色剤などがその例である。またその他の例では、
食品の天然成分の1つであるグルテンがある。FDAでは利用されているグルテンが、と
うもろこしグルテン(21 C. F. R. § 184.1321)か小麦グルテンか(21 C. F. R. §
184.1322)区別することを要求している。なぜなら、セリアック病患者は小麦由来のグル
テンを摂取した場合は必ず腸の不調を起こすが、とうもろこし由来のグルテンは問題なく
食べることができるからである。それぞれの場合において、表示により必要な情報を開示
して消費者にその原材料に関する警告を与えれば、消費者はそれらに暴露される危険を回
避することができる。このように食品の表示を利用すれば、大多数の人々には安全な食品
が一部の人々に与えるリスクをなくすことができる。ここで特記すべき点は、FDAが表
示義務を課すのは、科学が理論的にアレルギーの危険性が実在することを立証した場合に
限られるということある。
こうした状況において、製品表示による情報開示が信頼できる健全な社会的メカニズム
であり、消費者が食品を賢く選ぶことを可能にする効果と価値のある方法であることが証
明されてきた。表示は、科学的根拠のある方法に従って行われれば、消費者への情報提
供・指示・警告がその目的にかなった役割を果たすことができる。
FDAはまた、食品表示情報に対する消費者の理解と利用なしにはこうした目的が達成
され得ないことも認識している。そのため同局では表示内容を、表示対象食品・原材料の
特定と質に関して本質的な情報だけに限定している。
表示情報の実際の正当性を慎重に検討する試みは、法的・科学的な必要性に加え、バイ
オテクノロジーによる植物を用いた製品に表示をしようとする場合に必ず伴うであろう非
常に現実的な問題の数々に対応するためにも必要である。ほとんどの消費者にとって、こ
れらの製品は代替のきく穀物製品である。市場でこれらバイオテクノロジーに基づく商品
と伝統的育種技術に基づく商品とを区別することは、収穫・輸送・貯蔵・加工の点で、コ
スト的にも手間の面でも非常に非現実的である。そのうえ、製品のあるタイプのものを他
のものと区別する決定的手法が開発される見込みがない。
3. 既知アレルゲン蛋白質とのアミノ酸配列の類似性
食品の潜在的アレルゲン性の評価はいかなる素材から遺伝子を導入した場合でも、導入
蛋白質のアミノ酸配列を既知アレルゲンと比較することから始められる。アレルゲンとな
る素材には、ある種の植物や動物に由来する食品が含まれ(第5章 表1、表2)、さら
に花粉・かびの胞子・昆虫の毒や糞・動物の毛や尿のような、非食品アレルゲンも考慮す
る必要がある。これらの蛋白質に対する感受性が経口、経皮、あるいは呼吸系を通じた暴
露によりすでに高まっていれば、遺伝子組換えによりそれらを導入した食品を摂取した場
合やはり反応を起こす可能性があるからである。呼吸系や皮膚を通じて感作するアレルゲ
ンの多くは環境中や胃腸内では不安定であり、それらを経口摂取しても感作されることは
ないように思われる。しかし、経口性アレルギー症候群(OAS)のように、口腔内の限
られた暴露であっても局所的に症状が引き起こされうることを示唆する例も知られている。
酵素から細胞骨格の調節因子まで、生体内でのアレルゲン蛋白質の機能は多様であり、
それをもとにアレルゲン性の予測をすることはできない。したがって食品アレルゲンを含
め、多くの主なアレルギー素材のアレルゲンについて、これまで分子生物学的な特徴解析
が行われている(6章「食品アレルゲンの原則と特徴」参照)。いくつかのアレルゲンの
重要な IgE 、T細胞、B細胞エピトープは既にマッピングされている。アトピーの免疫
学的な発症メカニズムは、疾病によるものではない反応の場合とは異なると思われるがま
だはっきりわかっていない。しかしながらマッピング研究によって、T細胞のエピトープ
ではペプチドの長さがアミノ酸残基数8−12 の場合が結合に最適であり、B細胞エピト
ープではそれより幾分長いらしいことがわかってきた。
こうした知見から、免疫学的な同一性があるためには少なくとも連続する8つのアミノ
酸が一致する事が必要であると考えられ、これに基づき導入蛋白質と既知のアレルゲンの
アミノ酸配列の比較テストを行うことが可能になる。ただしここでいう同一性のレベルは、
生物学的な意味で関連性(相同性)のある蛋白質の場合の類似性に比べて、はるかに低い。
アミノ酸配列の比較基準は、今後の研究でアレルゲンの構造に関する理解が進むにつれて
変化し、さらに優れたものになっていくと思われる。今のところ、エピトープのアミノ酸
配列がわかっているアレルゲンは全体から見ればほんのわずかにすぎず、特に食品アレル
ゲンについてはほとんど知られていない。しかし、現段階ではアレルゲンエピトープの包
括的なデータはなく、既知アレルゲン自体についても配列の同一性の確認がなされていな
いことを考えれば、今回提案した方法は妥当である。むしろここで確認しておくべき事は
同一性が存在する可能性の有無であり、アミノ酸配列中どこにも連続する8アミノ酸残基
の一致がみられなければ、導入蛋白質が既知アレルゲンと共通の直鎖状エピトープを持つ
可能性がほとんどないということになる。
生物学的相同性の高い別種の花粉で、アレルゲンのエピトープにまったく同じアミノ酸
配列が保存されているのが時折観察される。アレルゲン間で IgE の交叉反応が起こる理
由はこれによって説明できる。さらに保存性の高いアミノ酸が、合成や部位特異的な突然
変異によって置換された場合に IgE の結合性が低下することからも、エピトープのアミノ
酸配列の重要性が示唆される。
しかし明らかにこの方法には限界がある。なぜならば、アレルゲンの三次構造に依存し
て立体的に構造化されるような、一次配列上は不連続なエピトープ(第7章「食品アレル
ゲン」)は認識できないからである。例えば、患者の血清中の IgE とカバの木の花粉ア
レルゲン Bet v 3 の結合は、カルシウムによる立体構造変化に依存する。Bet v 3 にはカ
ルシウムと結合するEFハンド構造があり、おそらく、カルシウムの存在下で構造を変化
させることによって立体エピトープの認識が可能になったのだと思われる。またこの方法
によって同定されるアミノ酸配列が、単に一次構造の保存性が高いだけで蛋白質のアレル
ゲン性とは関係がないという場合も考えられる。以上のことからこの方法は、潜在的アレ
ルゲン性を決定するためではなく、その可能性を示唆する指標として用いられるべきであ
る。上記の試験基準に従い、FASTA や同様のコンピュータープログラムを使って公的な領
域遺伝学のデータベース(GenBank, EMBL, PIR 及び SwissProt)に登録されているアレ
ルゲンのアミノ酸配列を検索し、遺伝子改変植物にそれと一致する配列がないかの確認を
行う。アレルゲン蛋白質のアミノ酸配列を入手して検索する場合、情報を適切に検索する
にはその検索方法が非常に重要である。
アレルゲン
といったキーワードをもとにアレ
ルゲンのリストを探すだけの検索では、関連する全ての食物アレルゲンを検索することが
できず、また、アレルゲンでない蛋白質を検索してしまう可鉢もある。例えば、カゼイン、
β—ラクトグロブリン、オボムコイドのような多くの食物アレルゲンは、
アレルゲン
というキーワードでは検索されてこない。このデータベースは、食物アレルゲンだけでな
くすべてのアレルゲン蛋白質のアミノ酸配列を含有すべきである。表1と表2は、今まで
報告されているアミノ酸配列に関する最もわかりやすいリストである。食物アレルゲン
(表1)と非食物アレルゲン(表2)を包括しており、使いやすいように受入番号が付与
されている。これらの表は 1995 年5月に作られたもので、さらに新しいアレルゲン蛋白
質のアミノ酸や塩基配列が報告されたときには、常にそれらが追加されるようになってい
る。
このアレルゲンの配列のデータベース(または他の同様なデータベース)を用いて、い
くつかの遺伝子組換植物で発現された蛋白質について検索した結果を表 3 に示す。これら
の蛋白質には何ら有意な同一性はみられず、したがって、これらの導入蛋白質は、いづれ
も既知のアレルゲン蛋白質と同じ一次配列を持つ IgE エピトープを持たないことが結論さ
れた。
判断樹では、導入遺伝子の素材に続いてアミノ酸配列の相同性分析を行った結果に問題が
ない場合、別の評価にさらに進むことになる(図1)。
4.一般的なアレルギー食品由来の遺伝子を有する食品
通常にアレルゲン性を示す食物由来の遺伝子を有する食品は、アミノ酸配列解析から得
られる情報には関係なく、アレルゲン性の免疫学的な解析にかけるべきである。そして
in vitro アッセイと in vivo アッセイの両方が用いられるべきである。これらのアッセ
イには、RAST法、RAST阻害法[31,32]、ELISA法[33]が含まれる。
免疫ブロッティングの結果が陽性の場合は、RASTやELISAは不要であろうが、陰
性の場合は、検出感度を上げるためにRASTまたはELISAが必要であろう。RAS
TやELISAを用いると、確実なアレルギー患者から5検体の正常血清を試験すること
によって、97%信頼度のデータが得られる。
RASTとELISAアッセイ(各々の詳細については6章で述べる)には、その遺伝
子が由来する食物に対してアレルギー性を示すことが確認されている個体から得られた血
清のIgE画分を使用する。血清供与者は、二重盲検でプラセボコントロールの食品チャ
レンジテスト(DBPCFC)で陽性である事を含め、厳重な臨床的基準に合致する[31、
34]かまたは、重篤な、IgEに媒介される全身性反応の納得性のある経歴を持たなけれ
ばならない[35]。納得性のある経歴には、一回の抗原刺激に伴う、医学的治療を要する
ような即時過敏反応の存在と、それが医師の記録に載っているという事実が必要であろう。
これらの in vitro アッセイの一つまたはそれ以上から得られたデータは、導入された遺
伝子がアレルゲンをコードしているかどうかについての強力な証拠となる。少なくとも5
人の、確かな血清供与者を、個別に試験しなければならない。この in vitro テストの結
果、97%の信頼限界外で陽性の結果がでた場合は、その遺伝子産物を含む食品すべてにつ
いて、FDAの指導[6]により、移入された遺伝子の起源を示しておかなければならな
い(図—8.1)。
もしその in vitro テストの結果が陰性であったり、はっきりしなかったり、非特異的
な交叉反応の疑いがある場合は、それ以上アレルゲン性の有無を追求するために皮膚プリ
ックテスト[31]を行うべきである。皮膚テストのタイプや抽出物の品質を確保する必要
性またそれらのテストに用いられる基準についての詳細説明は重要であり、6章で述べら
れている。少なくとも5人の、問題となっているもとの食品に対する皮膚テストが陽性で
あり、かつ、感受性に関して説得力のある経歴を持つ患者が試験されねばならない。この
in vitro テストで陽性の結果が出た場合は、 in vitro テストで陽性の場合と同様に、
移入された遺伝子の起源を明示しておくことが必要となる(図—8.1)。
in vitro テストにおいても、皮膚プリックテスト(刺傷または刺孔)においても、とも
に陽性の結果が得られなかった場合は、最終テストとして、問題となる食品に感受性の患
者を使い、コントロールされた臨床的条件下で、二重盲検プラセボコントロールテスト
(DBPCFC)を実施することになるであろう。このようなタイプの評価に対する倫理的
配慮としては、テスト被験者における、アナフィラキシーショック誘発の可能性や、適切
な臨床的安全性のデータや手続きが得られるか否かのような要因が含まれるが、そのよう
な要因のみに限定されるものではない。すべてとはいわないまでも、DBPCFCを実施
しているほとんどの研究機関では、すべてのDBPCFCを倫理的配慮の観点から検閲す
る研究機関検閲委員会(IRBs)を有している。これには、被験者にとって、そのテス
トを行うリスクが、該当する感受性についての通常の評価を行う際に起こりうるリスク以
上にならないか否かの判断も含まれている。被験者に対するリスクを最小限に抑えるため
に、 in vitro アッセイと皮膚テストによるデータをあらかじめ得ておくことが、DBP
CFC試験を要求するために前もって必要である。第6章に、想定投与量や事前の注意を
含む、DBPCFCを行うための詳細が述べられている。DBPCFCで試験された最低
14人の感受性個体の中で、一人の感受性患者に陽性反応が認められた場合には、その蛋
白質を含む作物由来の食品について、移入遺伝子の起源を明示しておかねばならない。
これら三段階の評価のいずれにおいても陽性反応が見られなかった場合は、この、通常
にアレルゲン性を示す食品から得られた遺伝子は、アレルゲン蛋白質をコードしていない
ことが結論される。
この評価方法の有効性を示す例としては、動物の餌用大豆粉の含硫アミノ酸含量を高く
して、品種を改良する目的で大豆に導入されたブラジルナッツの2S 貯蔵蛋白質の例が
挙げられる。ブラジルナッツの2S蛋白質は大豆中で発現し、その組換え大豆の種子蛋白
質全体の中で、かなりの比率を占めていた[39, 40]。ブラジルナッツは、少数の感受性
個体において、アナフィラキシー反応を引き起こす事が知られている[41, 42]。ブラジ
ルナッツ由来のアレルゲン蛋白質が大豆に移入されているかどうかを評価するためにRA
ST法が免疫ブロッティングと組み合わせて使用された[40, 43]。9人のブラジルナッ
ツに感受性の個体のうち、8人の血清がRAST法で陽性を示した。この結果は、ブラジ
ルナッツから得られた遺伝子が、ブラジルナッツの主たるアレルゲンをコードしている事
を示していた。もし、万が一、この遺伝子を含む大豆製品が販売されるようなことがあっ
た場合は、この大豆品種由来の大豆製品を含むすべての食品には、
の蛋白質を含んでいる
ブラジルナッツ由来
旨を、明示しなければならないであろう。この例は、遺伝子の組
換えによる既知のアレルゲン蛋白質の移入を同定する手段として、 in vitro アッセイを
使用することの価値と有効性を示している。
5.一般的でないアレルギー食品またはアレルゲンを持つことが知られるその他の素材に
由来する遺伝子を導入された食品
一般的でないアレルギー食品またはアレルゲンを持つことが知られるその他の素材に由
来する遺伝子を導入された食品の場合、アミノ酸配列の分析とは別に、起こりうるアレル
ギーの可能性について免疫学的分析を行うべきである。分析方法としては in vitro アッ
セイが適当である。検査は、それに関するアレルギーを起こした記録のあるアレルギー患
者の血清が入手しやすい場合、14 人分以上の血清を用いることが望ましいが(ブタクサ
の場合など)、それが難しい場合は可能な限り多数の血清を入手して分析を行う(トウモ
ロコシなど)。入手できる血清が5人分未満の場合は、規制を担当する適当な公的機関の
助言を受けるべきである。またその場合、物理化学的性質についての検討も併せて行う必
要がある(詳細は後述)。FDA ガイドラインでは、免疫学的分析でわずかでも陽性と判断
されたものがあれば(信頼度 95%以上)、その蛋白質を含む食品には全て導入遺伝子に
ついての表示を付すべきであり(図1)、一方、最低5人以上の血清を用いた検査ですべ
ての結果が陰性であれば表示の必要はないとしている。
アレルギー食品としてあまり知られていない食物やアレルゲンを持つことが知られるそ
の他の素材から導入された遺伝子生産物を評価するとき、固相イムノアッセイが5人未満
の血清でしか行われず、かつその全てが陰性の場合には、その蛋白質についての物理化学
的分析を行う必要がある。方法としては、導入蛋白質を既知のアレルゲン蛋白質と物理化
学的・生物学的に比較することでその潜在的アレルゲン性を予見する方法が採られている。
しかしこの方法は、アレルギー性を持つ素材から由来する既知のアレルゲンを同定するに
は有効であるが、これだけで遺伝子生産物の潜在的アレルギーの可能性を決定することは
できないように思われる。
食品蛋白質がアレルゲンとなる前提として、消化器系内で安定なことがあげられる。
(例えばヒト消化系において、蛋白質分解酵素の影響を受け難く、酸性環境下でも安定で
ある。)またほとんどの場合、特殊な食品に用いられる加工処理(熱変性に対する耐性)
に対しても相対的に耐性が高いことも重要である。たとえばピーナッツや大豆のアレルゲ
ンがピーナッツバターや黄粉に加工される工程を経てもそのアレルゲン性を失わないこと
などがその一例であり、導入蛋白質の潜在的アレルゲン性の評価においては、そうした易
消化性や加工処理中の安定性についても検討しておく必要がある。なお例外として、口腔
内アレルギー症候群(OAS)で消化器系での安定性が低い蛋白質がアレルゲンとなるケー
スがあるが、この場合全身的なアレルギー症状に至ることは少ない。
また、このほかのアレルゲン蛋白質の特徴として、分子量 10-70kDa のものが多いこと
や、グリコシル化されている場合が多いことも挙げられるが、これらの性質は非アレルゲ
ン蛋白質にも該当することが多く、またアレルゲン蛋白質でもその例外となることが少な
くないため、判断樹による評価においてはこれらの項目は採用していない。
A.易消化性
アレルギーが起こったということは、まずアレルゲンが腸管粘膜に到達し、そこを通り
抜けたということである。もともと蛋白質そのものは腸管粘膜から体内の循環系に侵入す
ることができる[48]。酵素分解されにくく消化管内で安定な蛋白質ほど腸管粘膜に到達
する可能性が大きいことは明白であり、まだ直接試験されていないものも多いが、実際多
くのアレルゲンが蛋白質分解酵素に対し耐性を示すことが知られている(「食品アレルゲ
ンの条件と特徴」の章を参照)。
植物への導入蛋白質を一般に知られる多数のアレルゲン[58]と比較するには、アメリ
カ薬局方[57]の記載と同様、哺乳類消化器系の胃−腸モデルが用いられている。これら
は、動物[61]・植物性[59,60]蛋白質や食品添加物[62]の消化性の検討の際にも用
いられており、牛乳のアレルゲン[63,64]の安定性試験にもこれと類似したモデルが使
用されている。
一般的なアレルゲンについてその易消化性を検討した研究結果の一例を表 4 に示す。こ
れらのアレルゲンは例外なく胃−腸消化器系(GI)モデルによる試験[58]で高い安定性
を示し、アレルゲン自体もしくは蛋白質分解されたその断片は人工胃液中で最低 2 分間以
上安定して存在した。また、主要なアレルゲンの多くは 1 時間以上安定であった。
安定性に関する同様のデータは、相対的な安定性に関する評価はまったく同じではないが
、他の研究からも報告されている[65,66]。これらアレルゲン蛋白質と比較すると、非
アレルゲン性蛋白質は同じ条件下で速やかに分解される。表 4 に示された 8 種類の非アレ
ルゲン性蛋白質は初めのわずか 15 秒で分解されてしまっている。
蛋白質が速やかに分解されればされるほどそれが腸管粘膜から吸収される可能性は小さ
くなる、つまりそれがアレルギーを引き起こす可能性も少なくなるはずである。ヒトの消
化器系に、蛋白質が腸管粘膜に到達する前にそれを除去するしくみが備わっていることか
ら考えて、人工消化器系モデルはアレルゲン性評価の有効な手段であるといえる。
B.加工処理に対する安定性
種々の加工処理に対する安定性もまた、導入蛋白質のアレルゲン性を評価する上で重要
である。加工後も素材のアレルゲン性を保持しているピーナッツや大豆製品の例から、食
品アレルゲンは、加工食品にも含まれるようなものは特に、加工に対して安定である傾向
があることが予想される(「食品アレルゲンの条件と特徴」の章を参照)。この点につい
ての検討は、遺伝子を導入した作物がトマト・柑橘類・レタスなど生食用である場合には
不要であるが、大豆・小麦・コメなど、消費者の口に入るまでに何段階かの加工工程を経
るような場合はそのアレルゲンの加工安定性を考慮するための適当な試験が実施されるべ
きである。ただし、ヒトが消費する最終製品に蛋白質が含まれていない場合は消費者が著
しくその導入蛋白質に暴露されることがないため、アレルギー発症の可能性は大幅に低減
されるか除去される(油脂や炭水化物など)。被験者数が限定された食品の摂取実験で、
大豆・ピーナッツ・ひまわりなどを含む数種の作物から搾取した油をそのアレルギー患者
に与えてもアレルギー反応は見られなかったという報告があるが、加熱処理された植物油
中に含まれる蛋白質量は極めて微量もしくは無視できる量であるため、この結果は驚くに
あたらない。
導入蛋白質が、一般的でないアレルギー食品またはアレルゲンを持つことが知られるそ
の他の素材に由来する場合、それが消化器系内で非常に不安定である、もしくは加工処理
によって大幅に分解・除去されるならば(その作物が全て加工される場合)、導入遺伝子
についての表示は必要でない。しかし加工および(または)消化に対し耐性がある場合は、
規制を担当する適当な公的機関の助言を受けるべきである。
6.アレルギーの症例が知られていない素材から遺伝子を導入した食品
アレルギーの症例が知られていない素材から遺伝子を導入した場合、3章で述べた通り、
その導入蛋白質と既知アレルゲンのアミノ酸配列について比較を行う。もしあるアレルゲ
ンとの相同性が高く、そのアレルゲンに対するアレルギー患者の血清が入手可能ならば、
導入蛋白質についての固相イムノアッセイによる免疫学的評価を行うべきである。その手
順は、前章「一般的でないアレルギー食品またはアレルゲンを持つことが知られるその他
の素材に由来する遺伝子を導入された食品」で述べた方法と同様である。
一方、著しいアミノ酸相同性が認められなければ、V.A.章および B 章で記述したように、
易消化性と安定性についての評価を行う。この場合、導入蛋白質が速やかに分解または加
工過程で除去されるならば食品に導入された遺伝子についての表示は必要ではない。例え
ば表3はさまざまな遺伝子組換え作物に導入された 9 種類の蛋白質のアミノ酸配列である
が、これらはいづれも既知アレルゲンとの相同性がなく、前述した易消化性についても速
やかに分解されることが確認されている(表4)。こうしたデータに基づき、これらの蛋
白質が導入された商品は導入遺伝子に関する表示がされずに市場に出ることになるだろう。
7.その他の検討事項
A. 導入蛋白質が食品中に占める割合
食品アレルゲンはしばしばその食品における主要蛋白質として存在し、全蛋白質量の
180%を占める場合が多い。一般的なアレルギー食品の場合は特にその傾向が強く、表 4 に
示すように、牛乳、大豆、ピーナッツなどはアレルゲン含有量の多い食品の例として挙げ
られる。このことから、ある蛋白質がその食品中で全蛋白質量の 1%を超えるレベルで発
現している場合には、やはりアレルゲン性評価を行う必要があると考えるべきだろう。表
4 に示したアレルゲン蛋白質の多くは全蛋白質量に占める割合が 1%未満であるが、それ
と比べて市場導入を目的として開発された遺伝子組換え作物(表 3)の場合、その導入蛋
白質が未加工製品に占める割合は湿重量で.0001%以下から 0.03%で、これは総蛋白質量の
0.01%以下から 0.4%にすぎないため、この点に関する心配はないといえる。
B. 宿主
ある食品にアレルギーを起こす消費者は、その遺伝子組換え体を利用した食品も同じよ
うに避けると予想されるが(大豆、ピーナッツなど)、これまでその食品にアレルギーを
起こさなかった人でも、その作物の固有アレルゲンが不注意な遺伝子操作により顕著に増
加すればアレルギーを起こすようになる可能性がある。したがって、遺伝子組換えで宿主
となる作物にアレルゲンが含まれていることが知られている場合、そのアレルギー患者の
血清が入手可能ならば、組換え体を利用した食品についてその宿主に含まれていたアレル
ゲン量が自然に生じる固体差のレベルを超えて増加していないことを確認すべきである。
ただし、大豆など一般的なアレルギー食品が宿主となる場合はその確認が不要である場合
も考えられる。というのは、遺伝子操作により改変される性質は限定的であるべきであり、
例えば、大豆にアンチセンス遺伝子を導入してその主要アレルゲンの発現を抑制した組換
え体の場合には、大豆が元々持つすべてのアレルゲンについてそれぞれ発現レベルを確認
する必要があるが、導入された遺伝子が大豆のアレルゲンの発現に影響を与えるという根
拠がないのならば、アレルゲン発現量について確認を行う必要はないからである。
宿主となる作物が元々持つ蛋白質の分析が求められる場合、分析手法としてはイムノブ
ロッティングまたは ELISA 法(もしくはその両方)が考えられるが[86]、これはアレル
ギーを起こした記録のない、または症例が限られていて試験用の血清が入手できない食品
の場合には適用できないという問題がある。
C. 動物を用いたモデル系
動物を用いたモデル系による実験ではアレルギーのメカニズムを理解するうえで重要な
情報を得ることができるが、ある特定の蛋白質が人間に対してアレルゲン性を持つかどう
かを評価できるには至っていない。動物モデルの例としては次のようなものがある。
1.遺伝子組換で改変されたアレルゲン蛋白
質に対する、IgE 抗体の反応を評価するた
めのマウスモデル[87]
2.IgE 感作型即時性アレルギーのラットモデ
ル[88]
3.即時性アレルギーのモルモットモデル
[89∼91]
4.喘息および食餌制アレルギーのドッグモ
デル[92,93]
5.免疫療法に利用できるペプチドエピトー
プ[24]と免疫予防学的手法[94]を開
発するためのマウスモデル
動物モデルは、アレルギーについての基本的な疑問やメカニズムを研究する手がかりと
なるため、あるアレルギーが発症した場合にその免疫学的なメカニズムを生物学的または
分子学的に解明する研究に用いられてきた[95,96]。しかしこうしたモデルにより導入
蛋白質の潜在的アレルゲン性を予測できた例はなく、現段階でこれらのモデルを人間に当
てはめることはできない。アレルギー反応は非常に多様である。アレルゲンの種類によっ
て、また、実験に用いた動物の種類やその種の違いによって、さらには同じ動物を用いて
も時期が異なれば違う反応が起こる[95,96]。このことから、人間のアレルギー発症性
を予測できるような信頼性の高い動物モデル系を開発する事がいかに困難かがわかる。
ブラジルナッツの2Sグロブリン蛋白質のアレルゲン性を動物モデルで予測できなかっ
たのはその一例である。この実験では2Sグロブリンをある条件下でマウスに経口投与し
てその皮膚の即時性アレルゲン性を評価したところ、そのマウスの系統では IgE の反応
が起こらなかったため、報告書では「この遺伝子を他の作物に導入すれば、栄養学的な質
の改善が期待できる」と結論されている。ただしこうした例は、現在の動物モデルを更に
改良することでアレルゲン性をできる系が開発される可能性があることを否定するもので
はない。
8. 国内および国際的なコンセンサス
本稿での提言は、これまで提案されている提言に矛盾するものではなく、むしろそれら
をさらに進めたものだといえる。これまでの主な団体の動きとしては、FDA が 1992 年に
"Food Policy"文書のなかでアレルゲン性評価のためのガイダンスを提案し、EPA も 1994
年 11 月に害虫抵抗性植物に関するガイドラインのドラフトの中でいくつかのガイダンス
を提言している。また、FDA,EPA,USDA は遺伝子組換作物のアレルゲン性評価に特に焦点
を合わせたシンポジウムを 1994 年 4 月に共催している。最近では OECD と WHO が共催の形
でワークショップを行い、そこでもアレルゲン性評価のためのガイダンスが提案された。
9. 今後の展望
遺伝子組換技術は、これまで述べたような問題がある一方、ある種の食品についてはそ
の固有アレルゲン蛋白質のレベルを低減させる有力な手段ともなり得る。例えばアンチセ
ンス遺伝子(蛋白質合成に必要な塩基配列と逆の配列を持つ遺伝子)を導入して、ある遺
伝子の発現を抑制することにより、ある特定の蛋白質含有量だけ著しく低減させることが
可能である。「フレーバーセーバー」トマトは、この方法でトマトの軟化を引き起こす酵
素(ポリガラクチュロナーゼ)の生成を阻害し、日持ち性を向上させたものである。また
コメでも、これと同じ手法で最も重要なアレルゲン蛋白を著しく低減させることが行われ
ている。多田らは 16kDa のアレルゲン蛋白質をコメからクローニングしてそのアンチセ
ンス遺伝子を導入し、組換え体から収穫されたコメの多くでその蛋白質の含有量が著しく
減少したと報告している。しかしながらこの蛋白質は完全に除去されたわけではなく、現
在更にこのアレルゲン蛋白質レベルを低減させるべく研究が進められている。
この手法により、アレルゲンを持つことが知られている他の作物でも同様にそのアレル
ゲン蛋白質を選択的に低減または除去する事は可能である。しかしこの手法の問題点とし
て、ピーナッツや大豆などのように複数のアレルゲン蛋白質を持つ作物の場合その応用が
複雑になってしまうこと、また、アレルゲン蛋白質が植物体の中で構造的・機能的に重要
な役割を果たしているような場合、それを除去することによって植物体が何らかのダメー
ジを受けてしまうことが考えられる。
10. 将来的な研究の課題
アレルゲン性評価手法の開発は、食品アレルゲンに関する物理化学的・免疫学的・生化
学的知識が蓄積されて初めて可能になる。評価の正否は、アッセイ法の有効性(例えば擬
似消化モデルを用いた系)、免疫学的試験用サンプルの有無(アレルギー食品に含まれる
蛋白質の評価を行うのに必要なアレルギー患者の血清)、新たに特定されたアレルゲンに
ついての情報の有無(たとえばアレルゲン蛋白質のアミノ酸配列情報が漸次更新されるデ
ータベース)に左右される。また、有効な動物モデルがあることが望まれる場合もあるか
もしれない。
既存のデータベースを拡充していくうえで、新たに特定されたアレルゲン蛋白質のアミ
ノ酸配列と塩基配列(もしくはそのいづれか)のデータは特に食品の場合は貴重な情報で
あり、同様に主要な B 細胞、T 細胞のエピトープのマッピング情報も重要である。
また、本稿の提案する物理化学的・生物学的データを、遺伝子組換えで導入される蛋白
質を含むアレルゲン/非アレルゲン蛋白の双方について広範に収集することは、ディシジ
ョンツリー評価で用いられる基準の有効性を確立する一助となるだろう。
更に、これまで述べてきた評価手法に関する研究は、血清バンクの充実によってより助長
されると考えられる。
今後われわれは、免疫学的疾病が発病する分子学的レベルでの機構(どうしてある食品
の蛋白質がアレルゲンになるのか)や、抗原に対し感受性が高くなる原因とアレルギー反
応が誘引される要件について、更に理解を深めていく必要がある。そうした研究は、遺伝
子工学によって作られる食品の潜在的アレルゲン性評価手法の確立を促進するだけでなく、
アレルギーの発症に対処したり未然に防ぐための新たな手法を開発する基盤ともなるだろ
う。
11. まとめ
本稿は、科学的根拠に基づいて、植物体への遺伝子導入に関連した潜在的アレルゲン性
評価のための判断樹評価手法を提案する。
この手法では導入遺伝子の供給体に注目し、それを次の一般的な3つのカテゴリーに分類
している。「一般的なアレルギー食品」「一般的ではないアレルギー食品、または非食品
でアレルゲン性の知られているもの」「これまでにアレルギー症例の報告されていないも
の」遺伝子組換え作物に由来する食品にその遺伝子の供給体を表示すべきかどうかについ
ては、導入された蛋白質について、アミノ酸配列に関する既知アレルゲンとの相同性の程
度や in vitro または in vivo(もしくはその両方)でのイムノアッセイの結果を、主要
な物理化学的性質と併せて検討したうえで勧告がなされることになる。
最終的に遺伝子組換え作物に由来する食品の安全性は、アレルゲン性評価作業を通じて
得られるすべてのデータを比較考量して保証される。遺伝子改変により作出された新しい
作物は、これまで論じた種々の評価により、交配による育種で何十年もかかって改良され
た従来の作物と同じ信頼性を獲得した上で、市場に導入されるべきである。