金融サービスにおける国際標準化の動向 ― ISO 20022を中心に ― 2016年5月11日 日本銀行 金融研究所 ISO/TC68 国内委員会事務局 紅林 孝彰 ※本資料の内容や意見は、報告者個人に属し、日本銀行や金融研究所の正式見解を示すものではありません。 Agenda 1. ISO/TC68と国内委員会 2. ISO 20022を巡る動向 3. ISO 12812(モバイル金融サービス) 4. ISO 17442(LEI)とISO 20275(Entity Legal Form) 5. 最後に ISO/TC68 国内委員会事務局 1 ISO/TC68 国際標準化機構(International Organization for Standardization:ISO)は、 1947年設立の非政府組織(本部:ジュネーブ)。 分野毎に専門委員会(Technical Committee)が設置されている。このうち、 金融サービス分野専門委員会(TC68)について、日本銀行金融研究所が国 内委員会事務局として活動。 ―― TC68の下には、3つの分科委員会(Sub Committee)が設置されている。 主な国際規格 国内事務局 ・金融業務用通信メッセージ(ISO20022) ・取引主体識別子(LEI)(ISO 17442) 日本銀行 SC2 (セキュリティ) ・PIN(個人識別番号)管理とセキュリティ ・金融サービスにおける公開鍵証明書の管理 ・情報セキュリティガイドライン 日本銀行 SC4 (証券業務) ・証券取引用通信メッセージ(ISO15022) ・証券識別コード(ISIN) ・事業体識別コード(IBEI) 日本証券業協会 SC7 (コア銀行業務) ・通貨コード ・企業識別コード(BIC) ・銀行口座コード(IBAN) 日本銀行 TC68 2 ISO/TC68 国内委員会 3 ISO/TC68 国内委員会 (事務局の活動) 国際標準化を巡る動向をフォローし、メンバーに情報還元。 ―― 年に2回、定例会合を開催。 ―― このほか、ISO20022についての勉強会や国内委員会ホームページを通じて、 関連規格に関する国内関係者の理解深耕を図っている。 国内エキスパートと緊密に意見交換を行いながら、国際規格の開発に係る わが国としての意見を集約。それらが採用されるよう、会議や投票を通じて 国際的な働きかけを実施。 ―― 2015年度の投票案件:45件。 ISO/TC68国内委員会ホームページ: http://www.imes.boj.or.jp/iso/ 4 Agenda 1. ISO/TC68と国内委員会 2. ISO 20022を巡る動向 3. ISO 12812(モバイル金融サービス) 4. ISO 17442(LEI)とISO 20275(Entity Legal Form) 5. 最後に ISO/TC68 国内委員会事務局 5 ISO 20022を巡る動向 ISO 20022は、金融通信メッセージの国際規格。 日銀ネット、ほふりシステム、全銀システム、Target 2 Securitiesなど、さまざまな金融市場インフラで採用されている。 ISO 20022を巡る国際的な動き 利用用途の拡大 - Regulatory Reporting - Card Payments - Web Payments Harmonization - Real Time Payments - ASEAN+3 Cross-Boarder CSD-RTGS Linkage 6 ISO/TC68 国内委員会事務局 Regulatory Reporting ISO 20022メッセージを中央銀行や金融当局への報告目的 で利用する動きが欧州を中心に高まりつつある。 Business Justification 目的 提案国 提案年 Authorities Financial Investigation 警察や税務当局への捜査情報の提供 フィンランド 2011年 Invoice Tax Report 税務報告 フィンランド 2012年 Cross-border Transactions Currency Control Reporting 居住者⇔非居住者間のクロスボーダー取 引(全通貨が対象)の中央銀行への報告 ロシア 2015年 Money Market Statistical Reporting 中央銀行による短期金融市場取引データ の収集 ユーロ圏 (ECB等) 2015年 Financial instruments and transactions regulatory reporting 金融商品市場指令II/規制(MiFID II/MiFIR)および欧州市場インフラ規制 (EMIR)に基づく取引等の報告 EU圏 (ESMA) 2016年 ISO/TC68 国内委員会事務局 7 Regulatory Reporting (ISO/TC68の対応) 金融当局・中央銀行とのコンタクト・ポイントであるTC68/Standard Advisory Groupの役割拡大。 ESMAによるBJ提出を機に、デリバティブに関するメッセージの評価を行うグ ループを新設。 ISO 20022メッセージの登録手続全般に 関する最終的な意思決定を行う。 ISO 20022 Registration Management Group Technical Support Group Payments SEG Securities SEG Derivatives SEG Trade Services SEG Foreign Exchange SEG 8 Cards & Related Retail Financial Services SEG Card Payments アクワイアラ‐イシュア間のISO 20022電文:ATICA(Acquirer to Issuer Card Messages)ver.1を公表(2016年2月)。 Ver.1は、“proof of concept”(テストや実装は行われていない)として 公表。 既存の国際標準として広く利用されているISO 8583に代わるものとし て、開発作業を継続。 ―― 既存システムに与える影響が大きく、セキュリティやISO 8583との整合 性について慎重な検討が必要。 2016年末までにVer.2を公表することを目指している。 ISO/TC68 国内委員会事務局 9 Web Payments World Wide Web Consortium (W3C※)は、 Web payments に関する検討を行うグループを立ち上げ(2014年10月)。 ―― 2015年4月にTC68/SC7とのリエゾンを構築。 ※ World Wide Webで使用される各種技術の標準化を推進するために設立された非営利の標準化団体であり、HTMLや XMLなど多数の標準化を行っている。 Web Paymentsで利用するAPIの標準化の中でISO 20022レ ポジトリに登録されているビジネス・モデル等の活用の可能性 を模索。 欧州の金融業界では、APIの標準化に向けた議論が進展。 ―― モバイル決済等を活用するFinTechの動きに加え、英国のオープン・ バンキング、欧州の資金決済サービス指令の改正(PSD2)が背景。 ISO 20022 RMGも、W3Cとの連携についての議論を開始。 ISO/TC68 国内委員会事務局 10 Real Time Payments 24 時間・365 日稼動即時振込システムを構築する動きが、各 国内からクロスボーダーに広がりつつある。 ISO 20022RMGは、即時リテール決済に用いるメッセージの共 通化を図るWGを設置。 pacs.002※1とpacs.008※2に関して、即時リテール決済に用い る際のメッセージ利用ガイド※3を作成。 ―― ①ISO 20022のレポジトリに登録されているコードの利用、②使用す る項目の限定により、メッセージのサイズを抑制することを推奨。 ※1 資金決済に関する指図の受付状況に関する通知。 ※2 顧客送金指図。 ※3 Message Usage Guide。ISO 20022では、メッセージ定義書(Message Definition Report: MDR)とは別に、必要に応じ てMUGを登録管理機関(RA)に登録可能。 ISO/TC68 国内委員会事務局 11 Real Time Payments WGでは他の関連メッセージについても即時リテール決済用の利 用ガイドを作成中。 ISO/TC68 国内委員会事務局 12 Cross-Boarder CSD-RTGS Linkage ASEAN+3域内のクロスボーダー資金・証券決済インフラの構 築ではISO 20022メッセージを採用予定。 13 (出典) “Progress Report on Establishing a Regional Settlement Intermediary and Next Steps,” Asian Development Bank, May 2015. “ISO 20022 Meet the Market” 2015年12月のISO 20022RMG会合の際、日本銀行にて開催。 各国におけるISO 20022を巡る動向を紹介。 ―― プレゼン資料は、ISO/TC68国内委員会のウェブサイトに掲載。 こうした場での情報共有や国際的な協力関係の下でISO 20022の導入や 活用に関する検討を進めていくことの重要性を確認。 14 Agenda 1. ISO/TC68と国内委員会 2. ISO 20022を巡る動向 3. ISO 12812(モバイル金融サービス) 4. ISO 17442(LEI)とISO 20275(Entity Legal Form) 5. 最後に ISO/TC68 国内委員会事務局 15 ISO 12812(モバイル金融サービス) 標準化に向けた検討が進められており、間もなく国際投票が開 始される予定。 名称 文書※ ISO12812-1 General framework IS ISO12812-2 Security and data protection for mobile financial services TS ISO12812-3 Financial application lifecycle management TS ISO12812-4 Mobile payments-to-persons TS ISO12812-5 Mobile Payments to Businesses TS ※ International Standard(国際規格):国際的な標準化機関によって採択された、公に利用可能な規格。 Technical Specification: (技術仕様書):対象のものがまだ開発中であるか、または他の理由からISの発行に関する合意が将来 的には可能性としても、直ちに得られない場合に発行する文書。 16 ISO/TC68 国内委員会事務局 ISO 12812(モバイル金融サービス) 欧州での動き ERPB※は、ユーロ建ての①P2Pのモバイル・ペイメント、②カードおよびモ バイルを用いた非接触近接型決済の標準化に向けた検討を進めている。 ※ Euro Retail Payments Board :2013年12月に欧州中央銀行理事会により設置。供給側(銀行等)と需要側(企業、 消費者団体等)の双方で構成。リテールペイメントに係る具体的な推進方針の検討を行う。 決済サービス指令(Payment Service Directives)の改正(PSD2)により、 欧州監督機構(European Banking Authority)に対し、電子決済にかかる ガイドラインや規制上の技術基準を定めることが求められている。 こうした取組みの中でISO12812を参照したいとの思惑も… ISO/TC68 国内委員会事務局 17 Agenda 1. ISO/TC68と国内委員会 2. ISO 20022を巡る動向 3. ISO 12812(モバイル金融サービス) 4. ISO 17442(LEI)とISO 20275(Entity Legal Form) 5. 最後に ISO/TC68 国内委員会事務局 18 LEIとは 国際規格:ISO 17442で定義されている、金融取引主体を特定するための20 桁の識別子(Legal Entity Identifier)。 G20は、店頭デリバティブ取引の取引情報蓄積機関(TR)への報告で合意し ており、欧米ではLEIを付した取引報告が義務付けられている。 ―― 店頭デリバティブ取引に限らず、リスクの把握や決済の効率化等にも活用可能。 取得可能な主体に「自然人」は含まれない。 LEIと参照情報(下記)は公表されており、自由に利用することができる。 正式名称 (可能な場合には)登記所名と登記番号 本店所在地 登記上の所在地 LEI指定日 参照情報の最終更新日 失効日と失効理由(該当する場合) 承継会社(該当する場合) 法人形態(任意) 会社ステータス(有効または無効) LEIを管理するLOU 参照情報の次回更新予定日 ISO/TC68 国内委員会事務局 など 19 (参考)グローバルなLEIシステム グローバルなLEIシステム (Global LEI System: GLEIS) 規制監視委員会 (Regulatory Oversight Committee: ROC) 中央運用機関 (Central Operating Unit: COU) LEIの運営にかかる方針や基準を定める。 規制当局・中銀等で構成される、法人格の ない最高意思決定機関。 LEIの付番・管理が統一的な基準に沿って 行われるよう、各国のLOUを束ねる。 グローバルLEI財団 (Global LEI Foundation: GLEIF、スイス法に基づく財 団)が運営主体。 LEIの付番・管理を行う。 付番機関 (LOU*) 付番機関 (LOU) * Local Operating Unit 付番機関 (LOU) 運営主体は国により異なるが、法人登記機 関、証券取引所、証券振替機関が担う場合 が多い。 ― 日本では、日本取引所グループ/東 京証券取引所が付番機関。 ISO/TC68 国内委員会事務局 20 LEIを巡る動き LEIの有用性を高めるべく、参照情報の精緻化・拡充に向けた 作業が進められている。 (ISO/TC68) 法人形態(Entity Legal Form)の国際規格:ISO 20275を開発中。 ― 各国の法人形態のコード化(英数字4桁)や、その管理手続についての規格。 ― 標準化されたコードは、LEIの参照情報での利用に止まらず、金融サービス分野 で幅広く活用されることが期待されている。 (Global LEI System) LEI保有主体の親会社に関する情報を収集する枠組みを検討中。 ― 2016年末頃に情報収集が開始される予定。 ― これにより、金融取引主体間の関係をより把握しやくすくなることが期待される。 ISO/TC 68 国内委員会事務局 21 Agenda 1. ISO/TC68と国内委員会 2. ISO 20022を巡る動向 3. ISO 12812(モバイル金融サービス) 4. ISO 17442(LEI)とISO 20275(Entity Legal Form) 5. 最後に ISO/TC 68 国内委員会事務局 22 ISO 20022の可能性 金融サービス全般が対象 - 水平・垂直方向へのSTP化が可能。 特定のネットワークに依存しない 標準生成に向けた技術・方法論やメッセージの登録・管理方法 を規定 - メッセージのフォーマットを具体的に規定している訳ではない。 - ユーザーが業務プロセスをモデル化し、データの意味や相互 関係を整理・体系化することでメッセージ開発を行う。 XMLを利用 - タグを用いてデータの意味や相互関係を自由に設計可能。 - データの意味や相互関係をシステム間で容易に共有可能。 ISO/TC68 国内委員会事務局 23 Open Data 24 (出典)電子行政オープンデータ実務者会議 第1回データWG (2012年12月26日) 今後の展望 open data web payment mobile payment e-commerce SNS IOT 法人番号 LEI より多量・多様・リアルタイム のデータが利用可能に データが紐づけが容易に データを活用して新たな金融サービスを提供する 可能性は、ますます拡大 25 わが国における動き (金融審議会 決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告、2015年12月) 「セキュリティ等の観点からオープンAPI のあり方を検討するための作業部 会等を設置(平成28年度(2016 年度)中を目途に、報告をとりまとめ)。」 「我が国においても企業間送金についてXML電文への全面的移行を行うな ど、決済インフラの抜本的機能強化が必要であると考えられ、この観点から、 以下の行動プランの着実な実行が期待される。 • 平成30年(2018年)頃を目途に、全銀システムの加盟金融機関が参加する新し いシステム(「金融・ITネットワークシステム(仮称)」)を構築し、サービスを開始す るとともに、平成32年(2020年)までに、企業間の国内送金指図について、現行 の固定長電文を廃止し、XML電文に全面移行する。 • この新しいシステムにおいては、企業からのXML電文による国内送金指図の受 付機能を実装するとともに、最新の国際標準の先取的な採用(大量のタグ付き EDI情報の付加)を行う。(後略)」 ISO/TC68 国内委員会事務局 26 ご清聴ありがとうございました。 ISO/TC68国内委員会事務局 E-mail : [email protected] 27
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