製薬用水の製造管理 製薬用水の製造管理 ― GMPの正しい理解のために― │ 監修 佐々木次雄 岡田敏史 の正しい理解のために︱ G M P 監修 佐々木次雄 岡田敏史 WHO-GMP5番外編_表紙_初.indd 1 プロセスシアンプロセスマゼンタ プロセスシアン プロセスマゼンタプロセスイエロー プロセスイエロープロセスブラック プロセスブラック 2014/09/18 18:59 WHO good manufacturing practices: water for pharmaceutical use 製薬用水に対する WHO 管理基準 製薬用水の製造管理 ― GMP の正しい理解のために ― 本書は下記の WHO Technical Report Series を WHO の許可を得て翻訳したものである。 ―WHO good manufacturing practices: water for pharmaceutical use. WHO Technical Report Series, No. 970, Annex 2, 2012. Copyright Ⓒ 2012 World Health Organization All rights reserved. No part of this publication may be reproduced or transmitted in any form or by any means, electoronic or mechanical, including photocopying, recording, or any information storage and retrieval system, without permission in writing from the publisher. なお,翻訳の内容について,WHO は責任を負わない。 本書は WHO Technical Report Series を忠実に訳すよう努めているが,もし日本語訳の内容に疑義が 生じた場合は,WHO Technical Report Series 原著を参照すること。 Japanese language edition Ⓒ 2014 by Jiho, Inc. なお,本書 19 ページ以降の解説は本書のための特別寄稿で,日本の読者向けの書き下ろしである。 本書の記載内容に関連して生じたいかなる問題についても,WHO はその責任を負わない。 The Japanese edition : ISBN978-4-8407-4646-5 監修者 佐々木次雄(ささき つぐお) 岡田 敏史(おかだ さとし) 特別寄稿者(執筆順) 佐々木次雄(ささき つぐお) 岡田 敏史(おかだ さとし) 村上大吉郎(むらかみ だいきちろう) 金子 静知(かねこ しずとも) 関本 一真(せきもと かずま) 発刊にあたって WHO は,2010 ~ 2014 年に興味深い多くの GMP 関連基準を発出してきた。これらの中から わが国の製薬企業にとって重要と思われるものを選び,その翻訳版及び解説記事,ならびに関 連資料の提供を目的に,WHO-GMP シリーズとして発刊を続けてきた。 WHO-GMP シリーズ 1) QC ラボ/微生物ラボ管理基準 2) 技術移転管理基準/医薬品の物流管理基準(GDP) 3) 無菌医薬品 GMP 4) ケミカルハザード/バイオセーフティ このたび,以下の翻訳版と解説資料を提供する。 ◦ WHO Technical Report Series, No. 970, Annex 2, 2012:WHO good manufacturing practices: water for pharmaceutical use. (製薬用水に関する WHO-GMP) 製薬用水は,医薬品の重要な出発原料でありながら,その製造法及び品質管理規格に関して は,日米欧薬局方間において違いがみられる。例えば日本では,超ろ過法による注射用水の製 造を認めてきたが,欧州薬局方(EP)では蒸留法しか認めていない。しかし,2011 年 3 月, EDQM 主催「製薬用水に関するワークショップ」での議論の末,EP も蒸留法以外の製法も認 める方向にある。 現在は解散した日本薬局方「製薬用水委員会」で長らく活動してきた佐々木と岡田が日本に おける製薬用水に関する歴史的経緯を振り返りつつ,本書の監修に当たった。本書が医薬品の 製造及び品質管理業務に携わっておられる関係各位に活用され,お役に立つことを願っている。 本書作成にご協力をいただきました特別寄稿者各位,ならびにじほう社の編集担当者(関口 美紀子氏ならびに橋都なほみ氏)には深謝申し上げます。 平成 26 年 9 月 監修者を代表して 佐々木 次雄 製薬用水の製造管理 ― GMP の正しい理解のために ― 目 次 WHO technical report series 製薬用水に対する WHO 管理基準(訳)… ………………………………… 1 製薬用水に対する WHO 管理基準 解説 ………………………………… 19 1.WHO 要件と日本の要件 2.注射用水の製法を巡って―日欧小史 3.製薬用水に関する理化学的及び生物学的試験法 4.日米欧薬局方における製薬用水各条(モノグラフ) 5.製薬用水製造設備の維持管理 6.Milli-Q 水を用いての医薬品製造 7.製薬用水中の生菌数の迅速測定法―生物粒子計数器 目次 3 世界保健機関 WHO Technical Report Series, No. 970, Annex 2, 2012 WHO good manufacturing practices: water for pharmaceutical use1 製薬用水に対するWHO管理基準 目次 1.序論 1.1 本文書の範囲 1.2 製薬用水の要件と使用に関する背景 1.3 適用されるガイダンス 2.製薬用水システムの一般的原則 3.水質規格 3.1 一般的事項 3.2 飲料用水 3.3 バルク精製水 3.4 バルク高度精製水 3.5 バルク注射用水 3.6 その他のグレード水 4.製造工程及び製剤化における特定の水の使用 5.水精製システム 5.1 一般的考察 5.2 飲料用水の製造 5.3 精製水の製造 5.4 高度精製水の製造 5.5 注射用水の製造 6.貯水及び配水システム 6.1 一般的事項 6.2 製薬用水システムと直接接触する素材 6.3 製薬用水システムの消毒及びバイオバーデン管理 6.4 貯水タンクの要件 6.5 配水用配管の要件 7.運転操作上の留意点 7.1 製薬用水システムの始動と試運転 7.2 適格性の確認 1 本文書は以前,WHO Technical Report Series, No. 929, Annex 3, 2005 で発表された,製薬用水に対する WHO 管理基準 の改訂である。 4 翻訳 製薬用水に対するWHO管理基準 7.3 システムの継続的モニタリング 7.4 製薬用水システムのメンテナンス 7.5 システムの再評価 8.製薬用水システムの点検 参考文献 1.序論 1.1 本文書の範囲 1.1.1 本文書のガイダンスは,現時点における製薬用水の規格に関する情報を提供し,有効成分(APIs: active pharmaceutical ingredients)ないし製剤の製造などの使用目的に応じた水質に関するガイダン ス,そして製薬用水システムのデザイン・設置・運転操作に関する GMP 上のガイダンスを提供するこ とを目的としている。この文書では,重点を製薬用水に置いているが,その規格及び手順が応用できる 場合,これらガイドラインを他業種あるいは特殊用途に適用することも可能である。 註 :この文書は,患者に投与する薬剤調製のための水,あるいは薬局における処方成分混合のための少量の水 は対象としていない。 1.1.2 本文書に規定する製薬用水についての GMP ガイダンスは,WHO が発行している医薬品のため の一般的 GMP ガイダンス(WHO Expert Committee on Specifications for Pharmaceutical Preparations. No. 37 report. Geneva, WHO, 2003 [WHO Technical Report Series, No. 908] , Annex 4)を補足するこ とを目的としている。 1.1.3 本文書では,バルク水を使用,製造,貯水,配水するため,薬局方や業界向けガイダンスのよ うな現在利用できる水質規格にも言及する。ただし,混乱を避けるため,本文書中にそれらを再掲載は しない。 1.1.4 本文書中のガイダンスは,企業が検討している適用目的に応じ,ガイダンス全体又は一部を採 用することができる。 1.1.5 薬局方の規格との間にわずかな差異が存在する場合,製造者は,各国規制当局へ申請する販売 許可要件に基づき,いずれかを選択することになる。 1.2 製薬用水の要件と使用に関する背景 1.2.1 水は,医薬品の製造,加工,製剤化工程で最も広く使用されている物質であり,原材料又は出 発材料でもある。化学的には,その極性と水素結合性ゆえの特異性があり,そのことは,様々な化合物 を溶解,吸収,吸着,懸濁できることを意味している。“様々な化合物” には,それ自体がハザード物質 であるものや,製造の目的物質と反応し,健康に害を及ぼす可能性のある物質も含まれる。 1.2.2 水の製造,貯蔵,配水工程を通して,微生物学的及び化学的品質を含む品質を管理することは 重大な関心事項である。他の製品や工程成分と違い,通常,水は配水システムから需要に応じて供給さ れ,使用前にバッチないしロットの出荷試験が行われることはない。よって,配水時において期待され る水質の保証が不可欠となる。さらに,微生物学的試験には培養のための時間を要するものもあり,そ の試験結果が水の使用に間に合わないことも起こり得る。 1.2.3 製薬用水の品質を微生物学的に管理することは,重要課題の一つである。微生物の中には水処 理設備の器材,貯水タンクあるいは配水システムの中で増殖するものも存在する。よって,製薬用水シ 製薬用水に対する WHO 管理基準 解 説 本ページ以降は,日本オリジナルの書き下ろしの内容です。 本書の記載内容に関連して生じたいかなる問題についても,WHO は責任を負いません。 解説目次 1.WHO 要件と日本の要件…………………………………………… 21 2.注射用水の製法を巡って―日欧小史…………………………… 31 3.製薬用水に関する理化学的及び生物学的試験法……………… 92 4.日米欧薬局方における製薬用水各条(モノグラフ)… ………… 117 5.製薬用水製造設備の維持管理…………………………………… 136 6.Milli-Q 水を用いての医薬品製造… ……………………………… 158 7.製薬用水中の生菌数の迅速測定法―生物粒子計数器………… 165 特別寄稿者(担当項目) 1. WHO 要件と日本の要件 2. 注射用水の製法を巡って―日欧小史 3. 製薬用水に関する理化学的及び生物学的試験法 4. 日米欧薬局方における製薬用水各条(モノグラフ) 佐々木次雄 GMP テクニカルアドバイザー,日本薬局方 元「製薬用水委員会」委員 岡田 敏史 大阪医薬品協会特別顧問,日本薬局方 元「製薬用水委員会」委員 5. 製薬用水製造設備の維持管理 村上大吉郎 株式会社大気社 環境システム事業部顧問 6. Milli - Q 水を用いての医薬品製造 金子 静知 メルク株式会社 メルクミリポア事業本部 7. 製薬用水中の生菌数の迅速測定法―生物粒子計数器 関本 一真 リオン株式会社 R&D センター 21 製薬用水に対するWHO管理基準 解説 1.WHO 要件と日本の要件 製薬用水に関する WHO-GMP(2012 年)要件と日本の要件の比較を示す。 ◦WHO Tech Rep Ser. No. 929 ( 2005 ), WHO-GMP: Water for Pharmaceutical Use. ◦WHO Tech Rep Ser. No. 970 ( 2012 ), WHO-GMP: Water for Pharmaceutical Use. ◦第十六改正日本薬局方参考情報「製薬用水の品質管理」 (平成 23 年 3 月) :日局 16 参考情報と表示 ◦無菌操作法による無菌医薬品の製造指針:A2 製薬用水(平成 23 年 4 月) :無菌操作法指針と表示 (1)原水および処理水の定期的モニタリング WHO No. 970 2.4 原水及び処理水は,化学的及び微生物学的モニタリング,及び必要に応じて,エンドトキ シン汚染の有無を定期的にモニタリングすること。水の精製,貯水及び配水システムについても その効率を監視すること。モニタリング,傾向分析,そしてとられた措置の全ての結果も記録と して保存すること。 日局 16 参考情報 日常的な管理項目としては,導電率及び有機体炭素(TOC)による品質管理が有用であり,定 期的管理項目としては,その使用目的によって,上記に加えていくつかの特定不純物,生菌数, エンドトキシン及び不溶性微粒子などを選択し,管理項目とする。これらの測定頻度は,水質の 安定性を考慮して決定する。 解説 水道水以外の原水を用いるときは,季節的な変動を含め原水の水質を把握すること。また,水の 精製,貯水及び配水システムについては,導電率,有機体炭素(TOC),特定不純物,生菌数, エンドトキシン及び不溶性微粒子などを適切にモニタリングし,記録として保存すること。 (2)バルク精製水,バルク注射用水の原水 WHO No. 970 バルク精製水:要求される最低限の水質基準に適合する飲料用水から製造すること。 バルク高度精製水:要求される最低限の水質基準に適合する飲料用水から製造すること。 バルク注射用水:要求される最低限の水質基準に適合する飲料用水又は精製水から製造すること。 日局 16 精製水:本品は,イオン交換,蒸留,逆浸透又は限外ろ過などを単独あるいは組み合わせたシス テムにより,「常水」より製したものである。 注射用水:本品は, 「常水」にイオン交換,逆浸透等による適切な前処理を行った水又は「精製水」 の,蒸留又は超ろ過により製したものである。 EP 8.0 バルク精製水:本品は,規制当局によって設定されたヒトが消費することを目的とした水の規制 に適合する水から蒸留,イオン交換,逆浸透(RO),又は他の適切な方法で製したものである。 バルク注射用水:本品は,規制当局によって設定されたヒトが消費することを目的とした水の規 制に適合する水から,又は蒸留法によって精製した水から得られる。 USP 36 精製水:本品は,米国環境保全庁(EPA)の飲料水規制,又は EU や日本の飲料水規制,又は WHO の飲料水水質基準に関するガイドラインに適合する水から製したものである。 注射用水:本品は,蒸留法又は化学物質及び微生物を除去するのに蒸留法と同等以上の精製工程 で精製した水である。 解説 WHO,EP,USP ともに飲料水を原水としている。 日局では,「常水」を原水としている。「常水」とは,水道法第 4 条に基づく水質基準(平成 15 年厚生労働省令第 101 号)に適合する水であり,「常水」を井水,工業用水等から各施設におい 22 解説 1.WHO 要件と日本の要件 て製造する場合は,当該基準によるほか,純度試験として,アンモニウム限度規格に適合する水 としている。井水もしくは工業用水を原水に使用する場合は,バルク精製水製造の前段階で,水 道法に基づく水質基準に適合することを確認する必要がある。 (3)水道水を原水とした場合の水質管理 WHO No. 970 3.2.4 飲料用水については,その供給者が水質検査を行い,飲料水としての水質基準に適合し ていることを証明するのが一般的である。検査は,通常,原水供給源の水に対して行われる。 3.2.5 精製水処理システムへの供給水となる原水が飲料用水基準に適合することを保証するの は,製薬会社の責任である。水処理システムのなかには,最初に飲料用水基準をクリアし,引き 続いて精製水を製造する場合もある。その場合は,飲料用水基準をクリアするポイントを特定し, そのポイントで検査を実施すること。 5.2.3 原水の水質に影響する環境的変化,季節性変化,水量変化を把握するため,飲料用水の 水質を定期的にモニタリングすること。 5.2.8 通常,飲料用水システムは,“インダイレクト・インパクト・システム(直接的影響のな いシステム)” であり,その適切性を確認する必要はないと考えられている。 日局 16 原水である「常水」とは,水道法第 4 条に基づく水質基準(平成 15 年厚生労働省令第 101 号) に適合する水である。 解説 WHO 3.2.4 には「飲料用水については,その供給者が水質検査を行い,飲料水としての水質基準 に適合していることを証明するのが一般的である。検査は,通常,原水供給源の水に対して行わ れる。」,WHO 3.2.5 には「精製水処理システムへの供給水となる原水が飲料用水基準に適合する ことを保証するのは,製薬会社の責任である。」とある。 日本では,飲料用水(多くは水道水)の品質を保証するのは,水道事業者である。水道水の一般 使用者とは違い,GMP 上では水道水でも製薬用水の原水として,飲料用水質基準に適合してい ることを確認することを製薬会社に求めている。この場合,水道法第 4 条に基づく水質基準に示 されている試験の全てを行う必要は必ずしもない。水道水貯留槽の設置環境,維持管理状況等に より,適切な水質確認試験を実施するとよい。欧米の製薬会社では,水道水の品質成績を毎月, 水道事業者から取り寄せ(パソコン上で入手可能なところもある),5 ~ 10 項目の試験(目視, 濁度,pH,臭い,エンドトキシン,生菌数,TOC,ほか)を定期的に行っているところが多い。 井水や工業用水を原水としている場合には,前処理後,製薬用水システムの適切なポイントで水 道法第 4 条に基づく水質基準に適合していることを確認する必要がある。 (4)警報基準値と処置基準値の設定 WHO No. 970 3.3.1 バルク精製水は,処置基準値(アクションレベル)と警報基準値(アラートレベル)が 適切に設定された化学的・微生物学的純度に関する薬局方規格に適合すること。 3.5.3 バルク注射用水は,処置基準値と警報基準値が適切に設定された化学的・微生物学的純 度(エンドトキシンを含む)に関する薬局方規格に適合すること。 日局 16 参考情報 4.3 警報基準値(アラートレベル)と処置基準値(アクションレベル) 製薬用水システムにおいては,その設計仕様内で運転を行うとき,要求される品質の水が連続的 に製造されていることを確認するために,微生物学的及び理化学的モニタリングを行う。得られ たモニタリングデータを,警報基準値,処置基準値,その他のプロセスの管理値及び目的とする 製薬用水の規格限度値と比較すること,並びに管理図に時系列的にプロットして傾向分析を行う ことなどにより,システムの運転状況を把握することができる。 このように,警報基準値及び処置基準値は,適否の判定基準を示すものではなく,製造システム のプロセス制御のために使用されるものである。 解説 製薬用水システムにおいては,その設計仕様内で運転を行うとき,要求される品質の水が連続的 に製造されていることを確認するために,理化学的及び微生物学的基準(エンドトキシンを含む) に対して適切な処置基準値と警報基準値を設定し,モニタリングすること。日局参考情報では, 「警 報基準値の設定は,過去の傾向分析による実測値の「平均値+ 2σ」又は「処置基準値の 70%(生 菌数は 50%)」のうち,通例,低い方の値を採用する。」とある。 5.4 その他の設備(subsystem) 147 ,単効用蒸留器(中),蒸気発生器(右)の例 図 5.8 多重効用型蒸留器(左) [野村マイクロ・サイエンス社技術資料より] 胴部側入口 管側出口 管側入口 胴部側出口 図 5.9 多管円筒式二重管板熱交換器の例 表 5.5 紫外線の種類と特徴 波長 特徴 280 nm 未満 C波 自然界に存在せず,UV ランプなどによる人工光線で,水の腐敗防止や殺菌用に利用され る 280 ~ 320 nm B波 日焼けによる火傷をもたらすが,生体内でのビタミン D 合成に役立つ 320 ~ 380 nm A波 シミやそばかすの原因となり,皮膚の弾力を奪い,皺やたるみの原因となる 製薬用水の配管内に設置される紫外線ランプは,C 波の 254 nm と 185 nm の 2 種類が利用され,用 途により使い分けられる。その強力な殺菌作用は,紫外光が微生物の細胞(特に核)に照射されること により,細胞内で光化学反応が起き,細胞分裂が阻止されることによる。 配管系内の殺菌や有機物分解のために,配管中に UV ランプを設置することは有効であるが,その能 力には限界があることをよく理解した上で使用すべきである。設計上の留意点を以下に示す。 ①目的が有機物分解のときは 185 nm の波長の UV ランプで照射する。 ②目的が殺菌のときは 254 nm の波長のランプで照射する。その殺菌効果は,照射部位の近傍に限 定される。殺菌効率は,温度,流速,照射強度,及び対象とする微生物の種類などにより変化す る。通常,常温での殺菌効率は 90% 程度であり,微生物は完全には死滅しない。 ③微生物の殺菌を目的とするときの UV ランプの設置位置は,循環ループ内のユースポイントより 前の位置とする。 ④有機物の分解を目的として UV ランプを使用するときは,負荷を下げるため RO 膜で前処理する。 水が長期間使用されず,高温循環が繰り返されると,有機物の分解により導電率が上昇し,水質 5.4 その他の設備(subsystem) 149 図 5.10 ス テンレス SUS316 製渦巻き形ケーシン グ(左),インペラー(右)の例 図 5.11 立型多段渦巻ステンレス SUS316L 製ポンプの例 [グルンドフォスポンプ社より] 一般的にはステンレス鋼製遠心ポンプが多用されるが,揚程,吐出能力,水接触面粗度(表面の平滑 度),シール性などの諸要件に合致し,水の最大及び最小瞬間消費量,水質グレード,水槽・配管装置 からユースポイントまでのライン構成,配管系と設定最小線速度などを勘案してポンプ選定をする必要 がある。 「サニタリーポンプ」は,衛生面に特に気を遣う製薬工場施設で多用されており,ポンプ内部の洗浄 性が高く,異物混入リスクも低い。一般的にサニタリー仕様では,ほとんどがステンレス SUS316 又は SUS316L 製のものである(図 5.10)。 高度な衛生管理を必要とする製薬用水の分野では,設計要件や材質・表面処理の安全基準がより厳し いサニタリーポンプが必要となる。特に,配水,精製処理,ろ過,CIP(定置洗浄)などの工程におい ては,高効率かつ高い信頼性を有するサニタリーポンプが使用されている。図 5.11 に一例を示すが, これは縦型であり,設置スペースが小さいために,配管系の空間が狭く,複雑な構成になっている場合 に好まれる。 4)計測機器類 日局 16 参考情報「製薬用水の品質管理」では,理化学的な水質監視(モニタリング)として,導電 率及び有機体炭素(TOC)によるモニタリングを求めている。その他,製薬用水製造システムの配管 系には pH 計,圧力計,温度計,流量計などが利用されており,以下これらの計測機器類について簡単 に解説する。 なお,製薬用水設備に設置される計器類,検出器などは,液溜り部やデッドセクションがないダイヤ 7.6 まとめ 171 3,000 70 蛍光粒子数[個/10 mL] 50 2,000 40 1,500 30 1,000 20 500 100 0 生菌数[CFU/10 mL] 60 2,500 10 5/27 5/30 6/2 6/5 6/8 6/11 6/14 6/17 6/20 6/23 6/26 6/29 VPC(蛍光粒子数) 7/2 7/5 7/8 0 培養法(R2A カンテン培地) 70 70 60 60 50 50 40 40 30 30 20 20 10 10 0 5/27 5/30 6/2 6/5 6/8 6/11 6/14 6/17 6/20 6/23 6/26 6/29 VPC(蛍光粒子数) 7/2 7/5 7/8 生菌数[CFU/10 mL] 蛍光粒子数[個/10 mL] 図 7.10 VPC 及び培養法による配管の微生物モニタリング 0 培養法(R2A カンテン培地) 図 7.11 VPC 及び培養法による配管の微生物モニタリング(縦軸スケール拡大) 7.6 まとめ VPC は,細菌数のリアルタイムな計測が可能な装置であり,計測結果の再現性が非常に高いことから, 測定者の技量や経験値のレベルを原因とする測定結果のばらつきを回避することができる。 過去,VPC の検出感度の確認を目的に,菌種が明らかで単一の菌種のみ懸濁している試料を用いて, その菌種をよく培養できる培地を用いた培養法による生菌数と,VPC による蛍光粒子数の比較を行っ た。その結果,VPC と培養法との間に良好な相関関係が確認され,VPC は培養法と同等もしくはそれ 以上の感度を有していることが確認されている3)。加えて,前述のように,R2A カンテン培地による培 製薬用水の製造管理 ―GMP の正しい理解のために― 定価 本体 6,000 円(税別) 平成 26 年 9 月 20 日 発 行 さ さ き つぐ お おか だ さと し 監 修 佐々木 次雄 岡田 敏史 発行人 武田 正一郎 発行所 株式会社 じ 101−8421 東京都千代田区猿楽町 1−5−15(猿楽町 SS ビル) 電話 編集 03 −3233−6361 販売 03 −3233−6333 振替 00190−0−900481 <大阪支局> 541−0044 大阪市中央区伏見町 2−1−1(三井住友銀行高麗橋ビル) 電話 06 −6231−7061 ほ う ©2014 Printed in Japan 組版・印刷 図書印刷(株) 本書の複写にかかる複製,上映,譲渡,公衆送信(送信可能化を含む)の各権利は 株式会社じほうが管理の委託を受けています。 <(社)出版者著作権管理機構 委託出版物> 本書の無断複写は著作権法上での例外を除き禁じられています。 複写される場合は,そのつど事前に, (社)出版者著作権管理機構(電話 03−3513−6969, FAX 03−3513−6979,e-mail:[email protected])の許諾を得てください。 万一落丁,乱丁の場合は,お取替えいたします。 ISBN 978−4−8407−4646−5
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