造影 CT 及び造影 MRI を用いた乳癌センチネルリンパ節転移診断 元村和由 大阪府立成人病センター乳腺内分泌外科 要旨 乳癌において造影 CT によりセンチネルリンパ節(SN)を同定し、この SN について磁性体造影剤(Superparamagnetic iron oxide, SPIO)を用いた MRI により転移診断が可能か検討した。その結果、N0 乳癌 102 例について、SN 転移診断 の感度 84%、特異度 91%、正診率 89%が得られた。造影 CT 及び磁性体造影剤 SPIO を用いた MRI により正確に SN 転 移診断を行うことができ、SN 転移陰性例に SN 生検をも省略可能である。 キーワード 乳癌 センチネルリンパ節生検 転移診断 はじめに 乳癌においてセンチネルリンパ節(SN)により腋窩リンパ節転移状況を正確に推定しうることが明かとなった 1)2)。一 方、これまで超音波装置、CT、MRI 等の画像による腋窩リンパ節転移診断が試みられてきたが、良好な成績は得られて いない。最近、前立腺癌等の固形癌で、磁性体造影剤を用いた MRI による所属リンパ節転移診断の優れた成績が報告され ている 3)。一方、造影 CT によりセンチネルリンパ節 (SN)を鮮明に描出することが可能となっている 4)。そこで、乳癌に おいて造影 CT により SN を同定し、この SN について磁性体造影剤(Superparamagnetic iron oxide, SPIO)を用いた MRI により転移診断が可能か検討した。 方法 まず CT 造影剤の局所注射により、SN を同定した。次に同じ部位に SPIO を局所注射し、CT で同定した SN に相当す る MRI 画像上のリンパ節について、SPIO の取り込みの有無により転移診断を行った。SN に SPIO の取り込みがあれば 信号低下が見られ、転移陰性と診断した。SN 全体或いは部分的に取り込みがなく、信号低下が見られない場合、転移陽 性と診断した。SN 生検は色素とラジオコロイドを併用して行った。MRI の結果と、SN 生検における病理診断結果を比 較した。 結果 N0 乳癌 102 例が登録された。CT により描出された SN の平均個数は 1.1 個(分布、1-3 個)。永久標本で SN 転移陽性 と診断された 25 例中 21 例が SPIO 造影 MRI により転移陽性と診断し得た。永久標本で転移陰性と診断された 77 例中 70 例が SPIO 造影 MRI により転移陽性と診断し得た。したがって SN 転移診断の感度 84%、特異度 91%、正診率 89%で あった。転移陰性と診断し、実際転移を有したのは 5% (4/74)と低率であった。転移を検出できなかった 4 例はいずれも微 小転移例で、macrometastasis の 15 例は全て検出できた。CT および MRI による副作用は見られなかった。 考察 本試験において、微小転移の 40%が検出不能であったのに対し、マクロ転移 15 例全例で検出可能であった。SPIO の 過量、あるいは濃度が高いために小さな転移病巣を検出できなかった可能性がある。一方で、微小転移の臨床的意義につ いては議論がある。微小転移と転移陰性例では予後に変わりがないという説と、微小転移では予後が悪いという説がある。 今後、病理学的に詳細な検討を行って微小転移を積極的に検出すべきかどうかについて明らかにする必要がある。偽陽性 例の多くは、リンパ節内に存在する脂肪組織を転移病巣と見誤ったものと思われた。 最近、前立腺癌等の固形癌で、磁性体造影剤 ultrasmall superparamagnetic iron oxide(USPIO)全身投与を用いた MRI による所属リンパ節転移診断の優れた成績が報告されている。メタアナリシスによれば、USPIO を用いた転移診断 の成績は、様々な悪性腫瘍において従来の転移診断法のものを凌駕するとされる。しかし、USPIO を用いた転移診断では、 様々な問題点が指摘されている。その一つは、USPIO を全身投与することで、全身のリンパ節に USPIO が取り込まれ、 したがって多くのリンパ節について、転移評価が必要になることである。またどのリンパ節を転移評価対象にするかも問 題である。さらに USPIO 全身投与による副作用が報告されている。背部痛、搔痒感、頭痛、蕁麻疹が主なものであるが、 アナフィラキシ―ショックなどの重篤な副作用も出現する。 SPIO は USPIO と構造が同じで、粒子径は 50-100nm である。現在、肝腫瘍診断に広く用いられている。SPIO の全身 投与では、これまでに重篤な副作用は報告されていない。さらに我々はこれを局所投与しており、全身的な合併症の出現 はわずかであると考えられる。 今回、我々は SN 同定に造影 CT を用いた。これまで行われてきた SN 生検では、用いる RI や色素は、SN の次にある リンパ節にも流入すると考えられるが、SN とこれらリンパ節の区別ができないため、全て摘出せざるを得なかった。造 影 CT を用いると、リンパ管が造影されるために、SN とこれらリンパ節の区別が可能となる。その結果、転移評価を少数 の SN に限ることができる。 結論 造影 CT 及び磁性体造影剤 SPIO を用いた MRI により正確に SN 転移診断を行うことができ、SN 転移陰性例に SN 生 検をも省略可能である。 文献 1)Motomura K, Inaji H, Komoike Y, et al. Sentinel node biopsy in breast cancer patients with clinically negative lymph-nodes. Breast Cancer 6:259-262, 1999. 2) Giuliano AE, et al:Lymphatic mapping and sentinel lymphadenectomy for breast cancer. Ann Surg 220:391-401,1994. 3) Harisinghani MG,et al. Noninvasive detection of clinically occult lymph-node metastases in prostate cancer. N Engl J Med 348:2491-9,2003. 4) Tangoku A, et al: Sentinel lymph node biopsy using computed tomography- lymphography in patients with breast cancer. Surgery 135(3):258-65, 2004
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