関節液マーカーによる変形性股関節症における 軟骨破壊の診断

◆研究助成金による研究成果報告 1◆
平成 7年 度
関節液 マーカー による変形性股関節症 における
軟骨破壊 の診 断
防衛 医科大学校整形外科
山
[伊 丹 ]で は研 究報告 をこれか ら行 っていた
田
治
基
近年 関節 液や血液、尿 な どの体液 中に存在
だ きます。これは一 昨年 の研 究 ですが 、最初
し、関節 の諸病態 を反映す る分 子 の測定 が行
に防衛医科大学校 の整形外科 の 山田治基先 生
われてお り、これ らは関節 マ ー カー と総称 さ
れてお ります。代 表的 な関節 マー カー には軟
にお願 いいた します。
[山
田」報告 を始 め るにあた りま して、本研究
に助成 をい ただ きま した財 団法 人 日本股 関節
骨 の病態 を反映す る軟骨 マー カー と関節炎症
を反映す る関節 炎 マー カー に大別 され ます。
さらに軟骨 マ ー カーは コン ドロ イチ ン 6-
研究振興財 団理事長伊丹康 人先生 に心 よ り感
硫酸 、4-硫 酸 の よ うな軟骨 マ トリックスが
謝 申 し上 げ ます。
分解 され た 断片 な ど、 そ の 分 解 を反 映 す る
マ ー カー と、Ⅱ型 プ ロコ ラー ゲ ン Cペ プチ ド
は じめ に
の よ うに マ トリ ックス 合 成 を反 映 す る マ ー
変形性股 関節症 (以 下 、変股症 )の 診 断 に
は単純 X線 、関節造影 をは じめ とす る画像診
カー に分 かれ ます。
断が多用 されて きま した。変股症 は軟骨 の破
壊 を初発病変 とす る疾患 ですが 、この軟骨病
壊 に関与す るイ ンターロイキ ン 1な どの炎症
性 サ イ トカイ ン、マ トリックス分解 を直接行
変 を詳細 に知 る手法 として最近 で は関節鏡 や
MRIも 行 われて い ますが、いず れ も侵襲性
う各種 の 蛋 自分 解 酵 素 、 及 びそ の イ ン ヒビ
ター な どが 考 え られてお ります (図 1)。
一 方、関節 炎 マ ー カー は軟骨 な どの組織破
や解像度 の点 で 問題 が あ る とい え ます。
軟骨 マ トリックスの分解 マーカー
われわれは まず軟骨の分解 を反映す るマー
カー として 関節液 中の コ ン ドロ イチ ン 4,6
代表的関節マー カー
解 成
分 合
-硫 酸濃度 を測 定 しま した。コ ン ドロ イチ ン
コンドロイチン6磯織 C6S).タ ラタン磯餞
pCOL
露型プロコラーゲンCベ プチド〈
m‐
C)
サイ トカイン
1、 ‐
6、 ‐
8
インターロイキン‐
蛋自分解酵緊
マ トリックスメタロプロテアーゼ
2、 -3
(MMP)‐ 1、 ‐
インヒビター
TIMP‐ 1.-2
図
1
硫酸 はプ ロテオグ リカ ンの コア蛋 白 に結合 し
て い るグ リコサ ミノグ リカ ンで あ り、正常軟
骨 で は 6-硫 酸 が主体 ですが、変性軟骨 で は
4-硫 酸 の割合が増加 す る とされ て い ます。
この コン ドロ イチ ン硫酸 はその陰性荷電 によ
り大 きな保水性 を有 し、軟骨 の粘弾性 に大 き
く貢献 して い る物 質 であ ります。
今 回手術 、また は造影時 に関節 液 の採取 が
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れ らを 日整会 X線 判定基準 に よ り初期 、進行
そ こで コン ドロイチ ン 6-硫 酸 と 4-硫 酸
の比率 を とってみ ます と、年齢 との負 の相 関
期 、末期 の 3群 に分 け ま した。当然病期 の進
が一層 強 く認 め られ ま した。や は り加齢 に よ
行 に よ り平均 年令 が上 昇 してお ります。
関節液 は コン ドロ イチナ ーゼABC,ACⅡ
る軟骨 中の正常 マ トリックスの割合 の減少 を
可能であ りま した50例 を対 象 と しま した。こ
で消化 した後 、高速 液体 クロマ トグラフ イー
(HPLC)に よ り不飽和 三糖 を測 定 しま した。
示 して い る と解釈 して い ます。一般 に関節 液
中のマー カー につい ては関節液 に よる希釈や
クリアラ ンス に よる影響 を受 けやす い とい う
問題 があ ります。 6-硫 酸 ,4-硫 酸両者 の
比 を とることによって この 問題がある程度解
決 され る と考 えてお ります。
C6S1C4S anrl Diiease Stage
Radiologi.nl Disease Stage
図2
B4
図 2は 全症例 の コン ドロイチ ン 6-硫 酸濃
度 と年齢 との相 関 を示 した ものです。年齢が
次 に X線 上 の病期 とマ ー カー との関係 を示
高 くなるにつ れて コン ドロ イチ ン 6-硫 酸濃
しま した。図 4は 各病期 の コ ン ドロ イチ ン 6
度 は有意 に低 下す るこ とが 明 らかです。この
-硫 酸 と 4-硫 酸 の比率 を示 します。病期 の
年齢 による 6-硫 酸 の低下 は加齢 による軟骨
進行 に よ り、有意 な比 の低下 が認 め られ ま し
量 の減少 、または変性 の進行 に よる軟骨 マ ト
た。 各病 期 の 患 者 年齢 には差 が あ ります の
リックスの割合 の減少 を反映 してい る と考 え
で 、統計 には年齢 を共役 因子 と した共分 散分
てい ます。
析 を もちい ま したが 、年齢 の 因子 を差 し引 い
一 方 、コン ドロ イチ ン 4-硫 酸 につ い て は
年齢 との 有 意 な相 関 は認 め られ ませ んで し
て も病期 との 関係 は有意性 を維 持 してお りま
した。なお 、病期 との有意 な相 関 は 6-硫 酸
,
4-硫 酸単独 で は認 め られず 、両者 の比 率 の
た。
みが有用 なマー カーであるこ とを示 してお り
ます。
′コ ︶o一´︶ ︶一● ●●●名
軟骨の炎症マーカー
次 に関節 炎 マー カー に移 ります。変股症 に
おける軟骨 の破壊 は滑膜 や軟骨細胞 か ら産生
された各種 の蛋 自分解酵素 に よつて起 こる と
考 え られてお ります。蛋 自分解酵素 の 中で も
従来 コラゲナ ーゼ と呼 ばれてい た金属系 の プ
ロテ ア ー ゼの役 割 が重 要視 されてお ります。
″
これ らは現 在 で はMatnx metallopЮ tcinasc、 略
MP-9濃
してMMPと 総称 されてお ります。
したが、や は り末期変股症 で有意 に高 値 を示
表
度 は股関節液 で は全 体的 に低値 で
しま した。病期 の 進行 に よ り蛋 自分解酵 素 に
よるマ トリックス破壊活性 が上昇 して い る と
1
考 えて い ます。
一 方MMP-3お
ン
ア
グ雅 リリ
Hiフ
,り 。 イ
;ノ晃
努リア,ゲ
ン
よびMMP-8の
股 関節
液 中濃度 を示 します 。 ttO Aの デ ー タ と違
い 、予想 に反 して股 関節 液 を使 用 した実験 で
はMMP-3と
病期 の 間 に有意 な相 関 は認 め
られ ませ んで した。MMP-8は 好 中球 コ ラ
ゲナ ー ゼ とも呼 ばれ るMMPで あ り、軟骨細
胞 での産生 も報告 されて い ますが、病期 との
現在 まで に変形性 関節症 の軟骨破壊 に関与
す る とされて い るMMPは 表 1に 示 す よ うな
ものが あ ります。MMP-1お よび13は コ ラ
グナ ーゼ であ り、軟骨 マ トリックスの主 要 な
構成 要素 で あ るII型 コ ラー ダ ンを主 とす るマ
トリックス を特異 的 に分 解 します。 MMP―
2お よび 9は ゼ ラチナ ーゼ と呼 ばれ 、コ ラー
ゲ ンが コラゲナ ーゼ に よ り分解 した後 に熱変
性 して生 じるゼ ラチ ンを分解 します。 MMP
-3は ス トロモ ライシ ンと も呼 ばれ 、軟骨粘
弾性 の もとであ るプ ロテオグ リカ ンの分解 に
関与す る と考 え られてお ります。
明 らかな関係 はあ りませ んで した。
これ らのMMPは 単独 で マ トリックス破壊
に働 くので はな くて、複雑 な Enzymc cascade
を構成 して い る と考 え られて い ます。今 回の
検討 では病期 との有意 な関係 を示 しませ んで
したが、MMP-3は
他 の MMP-1、
9
8、
な どの活性化作用 を有 し、このcascadeの 中心
に存在 す る と考 え られて い ます。またMMP
-2の 活性化 には新 しく発見 された膜型 のM
MT― MMPが 関与す る とされてい ま
MP、
す。
ただ し、実際 の OAに お いて どの よ うな酵
素が作用 してマ トリックス破壊 が起 こってい
るのか は まだ議 論 の余地があ ります。た とえ
OAの 病期別MMP■21-9濃 度
ば プ ロテ オ グ リカ ンの分解 に際 して は従 来 、
主役 を果 たす と考 え られて きたMMP-3は コ
ア蛋 自の うちの ア ミノ酸配列 341番 目 と342
番 目を分解 しますが、OAの 関節 液 中で の実
際 の コア蛋 白断片 を検討 した結果、別 の部位
で切 られて い る こ とが 報告 され てお ります。
麟
織 初露
違行 露
末期
"口
郷建
初鶏
違綺用
"節
図 5
図 5は 股 関節液 中のMMP-2お よびMMP
-9の 濃度 をサ ン ドイ ッチ EIAに よ り測定 し
この部位 での コア蛋 自の切断 を行 う酵素 はア
グ リカナ ーゼ と命名 されて い ますが 、そ の実
態 はい まだ明 らかではあ りませ ん。
おわ りに
以上 、股 関節 液 中の 各種 マ ー カー に よる軟
た結果 です 。病期 の進行 に よ り、MMP-2濃
骨破壊 の診断 につい ての研究結果 をご報告 し
度 が上 昇 して い くこ とが 明 らかです 。またM
ま した。 これ らの マー カーは OAの 病期診
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断 、す なわ ち残 存 軟 骨 の量 を知 る こ とに よ
に症例 を重 ねて研究 して い きた い と考 えてい
り、どの時点 まで骨切 り術 が可能か な どの 治
療法 の選択 に も有用 と考 えて い ます。またそ
ます。
の他 に もOAの 予後 の判定 、それか らこれか
[伊 丹]あ
ら開発 が本格化す る と思 われ る OAの 治療薬
りが と うご ざい ま した。特 に何 か 質
問 あ りま した ら。では ご ざい ませ ん よ うです
の薬効判定 な どに も有用 と考 えてお り、さら
か ら、 ど う もあ りが と うご ざい ま した。
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