薬剤送達用担体及びそれを利用した医薬

JP 2007-217307 A 2007.8.30
(57)【 要 約 】
【課題】 生体適合性に優れ、効能の異なる薬剤を所望のタイミングで徐放させることが
できるような薬剤送達用担体を提供する。
【解決手段】 α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、カルシウム欠損型水
酸アパタイト、水酸アパタイトなどを含み、中空球状粒子構造をとることを特徴とする薬
剤送達用担体、及びその製造方法。
【選択図】 なし
(2)
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸カルシウムを含み、中空球状粒子構造をとることを特徴とする薬剤送達用担体。
【請求項2】
リン酸カルシウムが、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、カルシウム
欠損型水酸アパタイト、及び水酸アパタイトからなる群から選ばれる少なくとも1種であ
ることを特徴とする請求項1に記載の薬剤送達用担体。
【請求項3】
薬剤送達用担体が、血管から生体内へ投与する薬剤送達用担体であることを特徴とする
請求項1又は2に記載の薬剤送達用担体。
10
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の薬剤送達用担体の内部と表面に薬剤を担持させ
たことを特徴とする医薬。
【請求項5】
担体の内部にゆっくりと効果を発揮させたい薬剤を担持させ、担体の表面に早く効果を
発揮させたい薬剤を担持させたことを特徴とする請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
カルシウム塩とリン酸塩とを含む溶液に超音波を照射し、前記溶液の霧状の液滴を発生
させる工程、前記液滴を加熱し、リン酸カルシウムを含む中空球状粒子を形成させる工程
、及び前記中空球状粒子を回収する工程を含むことを特徴とする薬剤送達用担体の製造方
20
法。
【請求項7】
超音波照射時の振動数を変化させることにより中空粒子の粒径を制御することを特徴と
する請求項6に記載の薬剤送達用担体の製造方法。
【請求項8】
回収した中空球状粒子を加熱することを特徴とする請求項6又は7に記載の薬剤送達用
担体の製造方法。
【請求項9】
回収した中空球状粒子を洗浄することを特徴とする請求項6又は7に記載の薬剤送達用
担体の製造方法。
30
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の薬剤を生体内の必要な場所に送達するための担体、及びその担体の製
造方法、並びに前記担体を利用した医薬に関する。本発明の薬剤送達用担体は、生体適合
性に優れ、また、効能の異なる薬剤を二段階で徐放することができ、抗癌剤や血管新生抑
制剤などの送達に有用である。
【背景技術】
【0002】
薬 剤 送 達 シ ス テ ム ( Drug Delivery System:DDS) は 必 要 な 薬 剤 を 必 要 な 場 所 に 送 達 す る
40
技 術 で あ る 。 DDSは 既 に 公 知 の 技 術 で あ り 、 そ の 担 体 と し て 生 分 解 性 ポ リ マ ー ( PLLA) や
生体高分子(コラーゲンやゼラチン)などが利用されている。例えば、ポリマーを担体に
使用する場合、薬剤をポリマー基材に練り込むことが多く、薬剤の放出はポリマーの溶解
が律速となり、効能の異なる薬剤を所望のタイミングで徐放させるようなインテリジェン
トな薬剤徐放は難しい。また、ポリマーの生体適合性は生体が許容できるレベルであるが
優れているとはいえず、生体由来材料には免疫系の問題がある。
【0003】
ところで、リン酸三カルシウムなどのリン酸カルシウムは、生体適合性に優れているこ
とから従来から様々な生体材料として利用されてきている。例えば、特許文献1には、噴
霧熱分解法によってリン酸カルシウムの中空体を得て、これを生体材料として使用するこ
50
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とが記載されている。また、特許文献2には、噴霧熱分解法によりリン酸カルシウムの中
空状粒子を形成し、これをジルコニアを含む基材上に堆積させた生体材料について記載さ
れている。
【0004】
リン酸カルシウムを薬剤送達用の担体として使用することは、特許文献3に記載されて
いる。特許文献3には、リン酸カルシウムからなるビーズやリン酸三カルシウムからなる
成形多孔体をドラッグデリバリー材料として用いることが記載されている。しかし、特許
文献3には、リン酸カルシウムを中空球状粒子とすることや担体を血管から投与すること
については記載されていない。
【0005】
10
【 特 許 文 献 1 】 特 開 昭 61-132555号 公 報
【 特 許 文 献 2 】 特 開 20001-231849号 公 報
【 特 許 文 献 3 】 特 表 2003-515571号 公 報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の薬剤送達用担体は、生体適合性や徐放性などについて問題があった。本発明は、
これら従来の薬剤送達用担体の問題点を解決した新規な薬剤送達用担体を提供することを
目的とする。
【課題を解決するための手段】
20
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、超音波噴霧熱分解法によ
って作製したリン酸カルシウムの中空球状粒子が薬剤送達用担体として優れた効果を持つ
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、以下の(1)∼(9)を提供するものである。
(1)リン酸カルシウムを含み、中空球状粒子構造をとることを特徴とする薬剤送達用担
体。
(2)リン酸カルシウムが、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、カルシ
ウム欠損型水酸アパタイト、及び水酸アパタイトからなる群から選ばれる少なくとも1種
30
であることを特徴とする(1)に記載の薬剤送達用担体。
(3)薬剤送達用担体が、血管から生体内へ投与する薬剤送達用担体であることを特徴と
する(1)又は(2)に記載の薬剤送達用担体。
(4)(1)乃至(3)のいずれかに記載の薬剤送達用担体の内部と表面に薬剤を担持さ
せたことを特徴とする医薬。
(5)担体の内部にゆっくりと効果を発揮させたい薬剤を担持させ、担体の表面に早く効
果を発揮させたい薬剤を担持させたことを特徴とする(4)に記載の医薬。
(6)カルシウム塩とリン酸塩とを含む溶液に超音波を照射し、前記溶液の霧状の液滴を
発生させる工程、前記液滴を加熱し、リン酸カルシウムを含む中空球状粒子を形成させる
工程、及び前記中空球状粒子を回収する工程を含むことを特徴とする薬剤送達用担体の製
40
造方法。
(7)超音波照射時の振動数を変化させることにより中空粒子の粒径を制御することを特
徴とする(6)に記載の薬剤送達用担体の製造方法。
(8)回収した中空球状粒子を加熱することを特徴とする(6)又は(7)に記載の薬剤
送達用担体の製造方法。
(9)回収した中空球状粒子を洗浄することを特徴とする(6)又は(7)に記載の薬剤
送達用担体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の薬剤送達用担体は、生体適合性に優れ、また、効能の異なる薬剤を二段階で徐
50
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放することができ、抗癌剤や血管新生抑制剤などの送達に有用である。また、本発明の薬
剤送達用担体は、球状であることから血管の内皮を傷つけることなく、患部に送達させる
こともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の薬剤送達用担体は、リン酸カルシウムを含み、中空球状粒子構造をとることを
特徴とするものである。
【0011】
リン酸カルシウムの種類としては、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム
10
、カルシウム欠損型水酸アパタイト、および水酸アパタイトなどを例示できる。本発明の
薬剤送達用担体は、これら4種のリン酸カルシウムのいずれか1種のみを含むものであっ
てもよく、また、2種以上を含むものであってもよい。これらのリン酸カルシウムはα−
リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、カルシウム欠損型水酸アパタイトおよび
水酸アパタイトの順で生体内で吸収を受けるため、病態や加齢などを考慮してリン酸カル
シウムの組成を選ぶことができるが、最も好ましい組成は生体吸収性材料として実績のあ
るβ−リン酸三カルシウムあるいはβ−リン酸三カルシウムとアパタイトの二相混合タイ
プ で あ る 。 な お 、 「 カ ル シ ウ ム 欠 損 型 水 酸 ア パ タ イ ト 」 と は 、 式 : Ca1 0 - x (HPO4 )x (PO4 )6 x
(OH)2 - x ・ nH2 O〔 0< x≦ 1、 n = 0∼ 2.5〕 で 表 さ れ る 物 質 を い う 。
【0012】
20
中空球状粒子構造は、血管内に注入でき、薬剤を必要な場所に送達できるような構造で
あ れ ば 特 に 限 定 さ れ な い 。 球 状 粒 子 の 粒 径 も 特 に 限 定 さ れ な い が 、 0.1∼ 20 μ mで あ る こ
と が 好 ま し く 、 1∼ 5 μ mで あ る こ と が 更 に 好 ま し い 。
【0013】
本 発 明 の 薬 剤 送 達 用 担 体 は 、 超 音 波 噴 霧 熱 分 解 法 ( 例 え ば 、 M. Aizawa, T. Hanazawa,
K. Itatani, F. S. Howell and A. Kishioka, "Characterization of hydroxyapatite po
wders prepared by ultrasonic spray-pyrolysis technique", J. Mater. Sci., 34, 286
5-2873 (1999).や 板 谷 清 司 , 相 澤 守 , “ 噴 霧 熱 分 解 法 を 利 用 し た 多 機 能 セ ラ ミ ッ ク ス の 作
製 ” , J. Soc. Inorg. Mater. Jpn., 10, 285-292(2003).な ど ) に よ っ て 作 製 す る こ と が
できる。即ち、カルシウム塩とリン酸塩とを含む溶液に超音波を照射し、前記溶液の霧状
30
の液滴を発生させ、次いで、前記液滴を加熱し、リン酸カルシウムを含む中空球状粒子を
形成させ、更に、前記中空球状粒子を回収することによって、本発明の薬剤送達用担体を
作製できる。
【0014】
カルシウム塩とリン酸塩とを含む溶液は、通常の超音波噴霧熱分解法に用いられるもの
で よ く 、 例 え ば 、 Ca / P比 が 1.50前 後 と な る よ う に 調 製 さ れ た 硝 酸 カ ル シ ウ ム 、 リ ン 酸 水
素二アンモニウム、及び硝酸を含む溶液を使用できる。溶液中のカルシウム塩及びリン酸
塩の濃度により、リン酸カルシウムの組成比が変わるので、カルシウム塩及びリン酸塩の
濃度によって、粒子のリン酸カルシウムの組成を調整できる。
【0015】
40
超 音 波 の 周 波 数 は 、 通 常 の 超 音 波 噴 霧 熱 分 解 法 に 用 い ら れ る も の で よ く 、 例 え ば 、 0.5
∼ 3.0 MHzと す る こ と が で き る 。 超 音 波 の 周 波 数 に よ り 、 粒 子 の 粒 径 を 変 え る こ と が で き
る 。 例 え ば 、 粒 径 2.5 μ m程 度 の も の を 得 た い 場 合 に は 、 超 音 波 の 周 波 数 を 0.5 MHz程 度 と
す れ ば よ く 、 粒 径 1 μ m程 度 の も の を 得 た い 場 合 に は 、 超 音 波 の 周 波 数 を 3.0 MHz程 度 と す
ればよい。
液 滴 の 加 熱 は 、 通 常 、 低 温 と 高 温 の 二 段 階 で 行 う 。 低 温 加 熱 の 温 度 は 300 ∼ 500 ℃ と
す る の が 好 ま し く 、 高 温 加 熱 の 温 度 は 800 ∼ 1100 ℃ と す る の が 好 ま し い 。 加 熱 時 の 温 度
により、リン酸カルシウムの組成比が変わるので、加熱温度によって、粒子のリン酸カル
シウムの組成を調整できる。
【0016】
50
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上記方法によって得られる中空球状粒子に対して洗浄処理を行ってもよい。この洗浄処
理によって、硝酸イオンが除去され、粒子の表面積が増大し、より好適な薬剤送達用担体
となる。
また、上記方法によって得られる中空球状粒子に対して加熱処理を行ってもよい。洗浄
処理と同様、加熱処理によっても硝酸イオンを除去できる。また、加熱処理によって、リ
ン 酸 カ ル シ ウ ム の 組 成 を 調 整 す る こ と も で き る 。 例 え ば 、 Ca/P比 1.50の 溶 液 か ら 中 空 微 小
球 を 合 成 し た 場 合 、 1000 ℃ で 加 熱 す る と β -リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム 相 が 、 1200 ℃ で 加 熱 す
る と α -リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム 相 が 得 ら れ る 。
【0017】
本発明の薬剤送達用担体に薬剤を担持させたものは医薬として利用することができる。
10
担持させる薬剤としては、例えば、抗がん剤のプラチナ製剤(シスプラチン、カルボプラ
チ ン ) 、 パ ク リ タ キ セ ル 、 メ ド ロ キ シ プ ロ ゲ ス テ ロ ン ( ホ ル モ ン 剤 ) 、 5-フ ル オ ロ ウ ラ シ
ル ( 5-FU) 、 血 管 新 生 抑 制 剤 の サ リ ド マ イ ド や Bevacizumabを 例 示 で き る 。 こ れ ら の 薬 剤
を本発明の薬剤送達用担体に担持させるには、薬剤を含む溶液中に本発明の薬剤送達用担
体を浸漬して凍結乾燥すればよい。薬剤溶液中に浸漬する時間は特に制限はなく、合目的
的 な 任 意 の 時 間 で よ い 。 通 常 、 数 分 ∼ 48時 間 、 好 ま し く は 、 1∼ 30 時 間 で あ る 。
【0018】
本発明の薬剤送達用担体は、担体の表面と内部(空隙部分)に異なる薬剤を担持させる
ことができる。このような二種類の薬剤の担持は、例えば、以下のようにして行うことが
で き る 。 ま ず 、 担 体 を 内 部 に 充 填 し た い 薬 剤 Aに 浸 漬 し た の ち 、 十 分 に 真 空 脱 気 し て 薬 剤
20
を 内 部 に 充 填 さ せ る 。 そ の 後 、 微 小 球 表 面 に 担 時 さ せ た い 薬 剤 Bを 含 む 溶 液 中 に 担 体 を 浸
漬 し て 凍 結 乾 燥 す れ ば よ い 。 こ の と き 、 ゼ ラ チ ン な ど を 用 い て 薬 剤 Bを 含 む 溶 液 の 粘 性 を
増加させて担体表面にコーティングする方法を採用してもよい。
【0019】
担体の内部に担持させた薬剤は生体内へゆっくりと拡散していき、一方、担体の表面に
担持された薬剤は直ちに生体内へ拡散していく。従って、担体の内部にゆっくりと効果を
発揮させたい薬剤を担持させ、担体の表面に早く効果を発揮させたい薬剤を担持させるこ
とが好ましい。ゆっくりと効果を発揮させたい薬剤としては、血中半減期の長い薬剤を例
示 で き 、 例 え ば 、 Bevacizumab( 血 中 半 減 期 : 17-21日 ) 、 サ リ ド マ イ ド ( 血 中 半 減 期 : 9.
4時 間 ) 、 パ ク リ タ キ セ ル ( 血 中 半 減 期 : 9.9-16時 間 ) 、 メ ド ロ キ シ プ ロ ゲ ス テ ロ ン ( 血
30
中 半 減 期 : 16日 ) な ど を 挙 げ る こ と が で き 、 早 く 効 果 を 発 揮 さ せ た い 薬 剤 と し て は 、 血 中
半 減 期 の 短 い 薬 剤 を 例 示 で き 、 例 え ば 、 シ ス プ ラ チ ン ( 血 中 半 減 期 : 約 40分 ) 、 カ ル ボ プ
ラ チ ン ( 血 中 半 減 期 : 2-3時 間 ) 、 5-FU( 血 中 半 減 期 : 24分 ) な ど を 挙 げ る こ と が で き る
。
【0020】
本発明の薬剤送達用担体は、通常、カテーテルなどにより血管に注入して使用するが、
これ以外の使い方をしてもよい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。
40
【0022】
〔実施例1〕 生体吸収性微小球の合成
〔超音波噴霧熱分解装置〕
本実験で用いた超音波噴霧熱分解装置の概略図を図1に示す。本装置は、噴霧部、加熱
部、粉体捕集部および制御部から構成される。各部の詳細を以下に示す。
【0023】
i) 噴 霧 部
試 料 溶 液 を 霧 状 に す る た め の 噴 霧 器 と し て 超 音 波 発 振 器 ( 本 多 電 子 製 HM-303N) を 用 い
た。その概略図を図2に示す。超音波発振器からの振動を、水を媒体としてラップ膜に伝
え 、 試 料 溶 液 を 振 動 さ せ る こ と で 液 滴 を 発 生 さ せ た 。 発 振 器 の 周 波 数 は 2.4 MHz で あ っ た
50
(6)
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。
【0024】
ii) 加 熱 部
加 熱 部 は 小 型 電 気 炉 ( ア サ ヒ 理 化 製 作 所 ARF-30 M: 最 高 使 用 温 度 1200 ℃ ) を 上 下 二
つ に 重 ね て 使 用 し た 。 下 部 電 気 炉 は 低 温 ( 300∼ 500 ℃ ) に 設 定 し 、 液 滴 の 乾 燥 お よ び 溶
媒 の 除 去 、 上 部 電 気 炉 は 高 温 ( 850∼ 1000 ℃ ) に 設 定 し 熱 分 解 に 用 い た 。 こ の 二 つ の 電 気
炉 に よ り 反 応 管 ( ム ラ イ ト 製 ; 長 さ 1 m, 内 径 3 cm) を 加 熱 し た 。
【0025】
iii) 粉 体 捕 集 部
粉 体 を 捕 集 す る フ ィ ル タ ー と し て 、 ガ ラ ス 繊 維 製 試 験 管 型 ろ 紙 ( 東 洋 ろ 紙 社 製 THIMBLE
10
FILTER 86R 22 mmφ × 90 mm) を 用 い た 。 ま た 、 溶 媒 で あ る 水 が 捕 集 し た 粉 体 中 に 混 入 し
な い よ う 捕 集 部 の 周 り を マ ン ト ル ヒ ー タ ー を 用 い て 約 120 ℃ に 保 持 し 、 水 蒸 気 の 凝 縮 を 防
いだ。
【0026】
iv) 制 御 部
上部および下部の電気炉の温度はそれぞれクロメル/アルメルの熱電対を用いて測定し
、 シ マ デ ン 製 SR-22温 度 調 節 計 お よ び PAC15Z電 力 調 節 器 を 用 い て 制 御 し た 。
【0027】
〔試料溶液の調製および合成〕
リ ン 酸 カ ル シ ウ ム 粉 体 を 合 成 す る た め の 試 料 溶 液 を 、 Ca / P比 が 1.50と な る よ う に 硝 酸
20
カ ル シ ウ ム ( Ca(NO3 )2 ) , リ ン 酸 水 素 二 ア ン モ ニ ウ ム ( (NH4 )2 HPO4 ) お よ び 硝 酸 ( HNO3 )
を用いて調製した。本実験で用いた試料溶液の調製条件および熱分解条件を表1に示す。
【0028】
【表1】
30
40
【0029】
噴霧用試料溶液を超音波噴霧熱分解装置の下部に設置した超音波発振器を用いて微細な
3
液 滴 と し 、 加 熱 部 に 空 気 流 量 1.5 dm ・ min
- 1
導入した。導入された液滴は溶媒の除去およ
び析出物の熱分解を経て粉体となった。粉体の収量は溶液の濃度に依存したが、1 時間あ
た り 約 0.2∼ 0.5 gの 範 囲 で あ り 、 収 率 は 約 70∼ 80 % の 範 囲 で あ っ た 。
【0030】
合 成 粉 体 の 結 晶 相 の 同 定 を 粉 末 X線 回 折 法 (XRD)と 赤 外 吸 収 ス ペ ク ト ル 法 (FT-IR)に よ っ
て 行 い 、 各 粉 体 中 の 水 酸 ア パ タ イ ト ( HAp) 、 β − リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム ( β -TCP) 、 及 び
α − リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム ( α -TCP) の 比 を 求 め た 。 結 果 を 図 3 に 示 す 。 図 3 に 示 す よ う に
50
(7)
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、 熱 分 解 温 度 の 低 い 場 合 に は 、 結 晶 相 は 水 酸 ア パ タ イ ト の 単 一 相 ( Sample No.1) 、 又 は
水 酸 ア パ タ イ ト と β − リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム と の 混 合 相 ( Sample No.2-5) と な っ た 。 一 方
、熱分解温度の高い場合には、結晶相はα−リン酸三カルシウムとβ−リン酸三カルシウ
ム の 混 合 相 ( Sample No.6-9) と な る こ と が 多 か っ た が 、 溶 質 濃 度 の 高 い Sample No.10で
は、水酸アパタイトも存在した。
【0031】
ま た 、 粉 体 ( Sample No.1-5) の 形 態 観 察 を 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 (SEM)に よ っ て 観 察 し た 。
各 粉 体 の SEM写 真 を 図 4 に 示 す 。 SEM写 真 か ら 各 粉 体 粒 子 の 平 均 粒 径 を 求 め た と こ ろ 、 0.85
-1.4μ mで あ っ た 。
【0032】
10
〔超音波振動数による粒径制御〕
超 音 波 発 振 器 (明 治 大 学 物 理 学 科 崔 博 抻 教 授 作 製 )の 振 動 数 は 岩 通 製 フ ァ ン ク シ ョ ン
・ ジ ェ ネ レ ー タ ー SG-4105を 用 い て 調 節 し 、 エ ヌ エ フ 回 路 設 計 ブ ロ ッ ク 株 式 会 社 製 HSA4101
0 10 MHzス ー パ ー ボ イ ラ ー 電 源 を 用 い て 超 音 波 を 伝 送 さ せ た 。 な お 、 実 験 に 適 用 し た 振 動
数 は 0.5, 1.0, 1.5, 2.5, 3.0 MHzと し 、 試 料 溶 液 お よ び 電 気 炉 条 件 は 表 1 の Sample No.
4で 行 っ た 。 各 粉 体 の SEM写 真 を 図 5 に 示 す 。 図 5 に 示 す よ う に 、 振 動 数 を 大 き く す る に
従 い 粉 体 の 粒 径 が 小 さ く な る 傾 向 が み ら れ た 。 振 動 数 を 0.5∼ 3.0 MHzに 調 整 す る こ と で 、
粉 体 の 平 均 粒 径 を 1∼ 2.5μ mに 制 御 す る こ と が で き た 。
【0033】
〔洗浄粉体の調製〕
20
3
合 成 し た 粉 体 ( Sample No.1-5) 約 2 gに 対 し 、 50 cm の 純 水 中 で 超 音 波 洗 浄 を 1分 間 行
3
っ た 。 こ の 洗 浄 操 作 を 2回 行 っ た 後 、 ア セ ト ン 20 cm で 置 換 し 、 液 体 窒 素 で 急 速 冷 凍 後 、
凍 結 乾 燥 を 24 時 間 行 い 洗 浄 粉 体 と し た 。
【0034】
洗浄粉体と非洗浄粉体の赤外吸収スペクトル及び比表面積をそれぞれ図6及び図7に示
す 。 な お 、 粉 体 の 比 表 面 積 は BET法 に よ り 測 定 し 、 粉 体 の 粒 度 分 布 は SEM写 真 か ら サ ン プ ル
数 200-400個 の 粒 子 径 を 計 測 し て 求 め た 。
図6に示すように、非洗浄粉体において観察される硝酸イオンの吸収ピークが洗浄粉体
では消失している。従って、粉体を洗浄することによって粉体から硝酸イオンを除去でき
ると考えられる。
30
【0035】
図 7 に 示 す よ う に 、 洗 浄 粉 体 の 比 表 面 積 は 、 非 洗 浄 粉 体 の 表 面 積 の 1.5-2倍 に 上 昇 し て
おり、洗浄処理により粉体の表面積を増大できると考えられる。
【0036】
〔加熱粉体の調製〕
合 成 し た 粉 体 ( Sample No.4) を 示 差 熱 重 量 分 析 の 結 果 か ら 以 下 の 条 件 で 加 熱 し た 。
加 熱 温 度 : 600 ℃ , 800 ℃ , 1000 ℃ , 1200 ℃
昇 温 速 度 : 10 ℃ ・ min
- 1
保持時間: なし
加 熱 し た 粉 体 と 加 熱 し て い な い 粉 体 の SEM写 真 、 粉 末 X線 回 折 (XRD)、 赤 外 吸 収 ス ペ ク ト
40
ル、及び比表面積をそれぞれ図8、図9左、図9右、及び図10に示す。
【0037】
図 1 0 に 示 す よ う に 、 800℃ 以 上 の 加 熱 に よ り 粉 体 の 比 表 面 積 が 減 少 し た 。 ま た 、 図 9
左 に 示 す よ う に 、 800℃ 以 上 の 加 熱 に よ り 、 結 晶 相 が α − リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム と β − リ ン
酸 三 カ ル シ ウ ム の 混 合 相 と な っ た ( 但 し 、 1000℃ の 加 熱 で は β − リ ン 酸 三 カ ル シ ウ ム の 単
一相)。更に、洗浄の場合と同様、加熱により粉体から硝酸イオンが除去された(図9右
)。
【0038】
〔実施例2〕 薬剤徐放実験モデル
〔 ウ シ 血 清 由 来 ア ル ブ ミ ン ( BSA) の 吸 着 実 験 〕
50
(8)
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PBS(-)溶 液 を 用 い て BSAの 2000 ppm溶 液 を 調 製 し た 。 合 成 し た 粉 体 ( Sample No. 4) 0.1
3
g に 調 製 し た 溶 液 5 cm を 加 え 、 恒 温 振 と う 槽 ( 37 ℃ , 100 回 ・ min
- 1
) 中 で BSAを 吸 着
さ せ た 。 BSAの 吸 着 量 は 、 以 下 に 示 す 時 間 で BSAを 吸 着 し て い た サ ン プ ル を 、 遠 心 分 離 し 、
上 清 を 取 り 出 し 、 吸 光 光 度 計 で 残 っ た BSAの 量 を 測 定 し た 。
【0039】
吸 着 時 間 : 30 min, 1, 3, 5, 10, 24, 48, 72 h
吸 収 波 長 : 280 nm
BSAの 吸 着 時 間 と 吸 着 量 の 関 係 を 図 1 1 に 示 す 。 図 1 1 に 示 す よ う に 、 BSAの 吸 着 量 は 24
時間でほぼ一定になった。
【0040】
10
〔 BSAの 徐 放 実 験 〕
3
合 成 粉 体 1.0 gに 、 PBS(-)溶 液 を 用 い て 2000 ppmに 調 製 し た BSA溶 液 50 cm を 加 え 、 恒 温
振 と う 槽 ( 37 ℃ , 100 回 ・ min
- 1
) 中 で BSAを 24 時 間 吸 着 さ せ た 。 遠 心 分 離 で 上 清 を 取 り
除 い た 後 、 BSAを 吸 着 さ せ た 粉 体 を 真 空 脱 気 に よ っ て 乾 燥 し た 。 乾 燥 後 、 粉 体 は BSAの 徐 放
評価に用いた。
【0041】
3
乾 燥 し た 粉 体 に PBS(-)20 cm を 加 え 、 恒 温 振 と う 槽 ( 37 ℃ , 100 回 ・ min
- 1
) 中 で BSA
の 徐 放 挙 動 を 調 べ た 。 以 下 の 設 定 時 間 ご と に 、 遠 心 分 離 を し 、 上 清 を 新 し い PBS(-)と 交 換
し 、 徐 放 評 価 終 了 後 、 上 清 の BSAの 量 を 吸 光 光 度 計 で 測 定 し た 。
徐 放 時 間 : 30 min, 1, 3, 5, 10, 24, 48, 72, 120, 168 h
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BSAの 除 放 時 間 と 総 計 除 放 量 の 関 係 を 図 1 2 に 示 す 。 図 1 2 に 示 す よ う に 、 48時 間 ま で
に 急 激 な 一 段 階 目 の 除 放 が 、 48時 間 以 降 ゆ っ く り な 二 段 階 目 の 除 放 が 確 認 さ れ た 。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実験に使用した超音波噴霧熱分解装置の概略図。
【図2】実験に使用した超音波噴霧熱分解装置の噴霧部の概略図。
【 図 3 】 粉 体 結 晶 中 の HAp、 β -TCP、 α -TCPの 存 在 比 を 示 す 図 。
【 図 4 】 粉 体 粒 子 の SEM写 真 。
【 図 5 】 超 音 波 の 振 動 数 の 異 な る 粉 体 粒 子 の SEM写 真 。
【図6】粉体の赤外吸収スペクトル。
【図7】粉体の比表面積を示す図。
【 図 8 】 加 熱 粉 体 粒 子 の SEM写 真 。
【 図 9 】 加 熱 粉 体 の 粉 末 X線 回 折 図 ( 左 ) 及 び 加 熱 粉 体 の 赤 外 吸 収 ス ペ ク ト ル ( 右 ) 。
【図10】加熱粉体の比表面積を示す図。
【 図 1 1 】 BSAの 吸 着 時 間 と 吸 着 量 の 関 係 を 示 す 図 。
【 図 1 2 】 BSAの 徐 放 時 間 と 徐 放 量 の 関 係 を 示 す 図 。
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(9)
【図1】
【図2】
【図7】
【図11】
【図12】
【図10】
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(10)
【図3】
【図4】
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(11)
【図5】
【図6】
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(12)
【図8】
【図9】
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(72)発明者 江本 精
福岡県福岡市城南区七隈7−45−1 福岡大学医学部
(72)発明者 大野 俊樹
神奈川県川崎市多摩区東三田1−1−1明治大学生田校舎
(72)発明者 崔 博坤
神奈川県川崎市多摩区東三田1−1−1明治大学生田校舎
(72)発明者 鹿又 宣弘
東京都新宿区大久保3−4−1 早稲田大学
Fターム(参考) 4C076 AA31 BB12 DD26A FF34 FF68 GG12
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