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平成 21 年 9 月 25 日
No.212
大垣市教育総合研究所
学 習 館 TEL74-6666,FAX74-6697
情報工房 TEL75-7020,FAX77-2520
PTA活動を経験して
大垣市PTA連合会 母親代表 井上直美
我が家には二人の子どもがいます。今年はようや
く下の子が中学3年生になり,「義務教育最後の年,
これで授業参観や行事で学校に出かけることも少な
くなるなあ。
」と淋しく感じかけた時に,今回の予期
せぬ大役をいただくことになりました。中学のPT
A役員経験はわずか1年,そんな私にこんな大役が
務まるのかと,当初はとても不安でした。学校PT
Aでは,次々といただく様々な行事の開催通知に,
ただ追われるようにその日その日を過ごしては「な
んとか終わった」とほっと胸をなでおろす毎日でし
た。その間に,市P連の会合が入り,両方の会議が
重なることも何度かありました。休日も研修会等で
頻繁に出かける私に,家族からは「また?」と冷や
やかな目を向けられ,まるで針のむしろの上にいる
ような居心地の悪さを味わうこともしばしばでした。
それが,先日の日曜日,午後からの研修会に出かけ
るため家族の昼食を準備していた時のことです。「急
がないと間に合わない」と焦りながら台所に立ってい
ると,母親のただならぬ様子に,今まで全く手を出そ
うとしなかった中3の娘が「何か手伝おうか?」と言
ってくれたのです。「ありがとう。じゃお昼になった
ら,ラーメンの麺を2分間ゆで,温めたスープに入れ
て,ここにある野菜を上にのせて,お父さんにも出し
てくれる?」と頼むと,
「うん,わかった。
」と快く引
き受けてくれました。お湯も野菜も準備しておいたの
で,カップラーメンとほとんど
変わらない簡単な調理でした
が,これまではそんな簡単なこ
とすら娘にさせる機会がなか
ったことに,自分でも驚きまし
た。専業主婦で毎日家にいたた
め,特別に手伝わせる必要性を
感じなかったうえ,「家事はお母さんの縄張り」とい
う暗黙の了解がお互いにあったからだと思います。で
も,「近い将来,独立して一人暮らしをすることにな
ったら」と考えると,自分が楽をするためでなく子ど
もを自立させるために,「いろんなことを手伝わせ,
憶えさせないと」と,この時初めて痛感しました。本
人にも受け入れる態勢が整った今がチャンスです!
ある意味,これはPTA役員をお受けしたことに対す
る神様からのご褒美なのかもしれない,と思えます。
もう一つ私がいただけたご褒美だと思えるものは,
-1-
子どもを思ってくださるたくさんの方々との出会い
です。学校PTAでの役員会や行事で毎月お会いする
校長先生や教頭先生は,上の子が在学中はとても遠い
存在でした。でも,先生方も家庭に帰れば私たちと同
じ“悩める親”であり,思うようにいかない子育てに
ご自身も日々一喜一憂されていることを,行事等でご
一緒させていただくうちに理解できました。そして多
くの先生方が子ども一人一人をまるでわが子のよう
に平等に気にかけてくださっていることを肌で感じ,
「先生方のお気持ちに,私たち親も応えないと」と強
く感じるようになりました。また,同じように他校で
役員をされている保護者の方も,自分の子どもだけで
なく,校内の子どもたち全員の成長を願って役員を務
めておられます。自分の子どもと接する時間を削るこ
とになっても,ご自身の役割を全うされている姿を見
て,「私もがんばらなくては」と勇気をいただきまし
た。その他にも,教育総合研究所の先生方や子ども相
談センターの相談員の方,地区懇談会に参加していた
だいた地域の方々など,実に多くの大人が子どもたち
の健全な成長のために日々努力されているのを知る
ことができ,「子育ては自分一人だけでしているので
はない」ことを体感できました。
「子は親の鏡」とはよく言ったもので,わが子がふ
と見せるしぐさがあまりに自分にそっくりで,びっく
りすることがあります。扇風機のスイッチを足で消す
動作や,手がふさがっている時にドアを足でひっかけ
て閉める娘の姿を目にすると,「あ~,私の真似して
る。」と気恥ずかしくなります。行動だけでなく心の
中でも,子どもたちはきっと親の判断や思考回路を無
意識のうちになぞっているのだと思います。思春期の
彼らを口で説得するのはとても難しく,時に「よかれ」
と思ってしたアドバイスがかえって逆効果になって
しまうことを,上の子の時に痛感しました。私たち大
人にできるのは,真剣に“生きる”姿を子どもたちに
示すことだけ。後は子どもたちが正しい判断を下して
人生のターニングポイントを自力で乗り越えていく
のを,ただ見守ることしかできないのだと思います。
そう考えると,日々の自分の生き方に緊張感を感じず
にはいられません。PTA活動を経験したことで「心
の中の喜怒哀楽に向き合って,ごまかしのない生き方
をしよう」と考える機会を,私に与えてくれたこの環
境に,一言“感謝”です。
平成21年度 教育サロン 2009.8.25
そうすれば私は必ずあなたの話に耳を傾けます
「子どもから大人へ 思春期への対応」
愛知学院大学心身科学部心理学科
教授
江口 昇勇 先生
親として子どもとの対応で一番苦労するのが,
やはり思春期である。
◇子どもの話を「聴く」ことが難しい理由
教師 として 親と
して,子どもの話を
「聴く」ということ
が 非常 に難し い状
況にある。特に,教
師というのは,子ど
もの話を「聴く」こ
とが,とても苦手な人である。
カウンセリングが日本に導入されとき,「受
容・共感しよう」と,あまりにも一面的な受け止
め方しかされなかった。しかし,カウンセリング
で一番大事なのは,自己一致である。受容できな
いことはできないと,はっきり言わなくてはいけ
ない。しかし,原則「聴く」ということは必要で
ある。でも,我々はなかなか人の話が「聴けない」。
次の詩は,子どもから大人に向けた詩である。
“聞いてください” ラヴィング・イーチ・アザー
「私の話を聞いてください」と頼むと
あなたは助言を始めます
私はそんなことは望んではいないのです
受持ちの生徒が「先生,もう勉強するの嫌だ。」
と言ってきたとき,「そうだな,勉強ってつらい
な。勉強したくない気持ちよく分かるぞ。」とい
う先生が,この中で何人いるだろうか。子どもた
ちは,少し愚痴を言って,自分の肩に乗っている
重い荷をちょっと預けたいだけであり,黙って聞
いてもらったら,それで気持ちはすむのである。
でも,聞く側は自分の立場に固執し,クラスの
生徒が不登校になったら,子どもが不登校になっ
たら自分の立場がないと,自己保身に走る。
大人は大人の事情の中で,子どもの話が聞けな
くなる。ここに,「聴く」ということの難しさが
ある。純粋に子ども側に立てるならいいが,どう
しても大人自身の事情があり,自分の都合がある
ために,聴けない。
一方,思春期の子どもたちは,特に微妙なもの
を抱えている。だからこそ,この時期の子どもた
ちとかかわることは非常に難しくなる。
◇思春期危機をもたらすもの
思春期:体が子どもの体から大人の体に一気に変化
する時期
小学校高学年から中学校の時期。
・男の子=身長が急に伸びる。声変わり。
筋肉質の体になり,射精。
・女の子=胸がやや膨らみだす。
お尻も丸く膨らむ。腰が細くなる。
初潮を迎える。
この時期に難しいのは,体は大人になっても,
心は体と一緒に大人にはならないことである。大
人の体に,子どもの心がのっかっているという微
妙なずれが,思春期危機をもたらすのである。
どの時代,どの国,どの文化においても,子ど
もは必ずこの思春期を迎える。思春期を通過して
いない人類はいない。
「思春期」と似た言葉で「青年期」という言葉
がある。
「私の話を聞いてください」と頼むと
あなたはその理由について話し始めます
申し訳ないと思いつつ
私は不愉快になってしまいます
「私の話を聞いてください」と頼むと
あなたはなんとか私の悩みを解決しなければ
という気になります
おかしなことに,それは私の気持ちに反するのです
青年期:社会学的概念
大人でもない,子どもでもない時期
この時期の子どもたちは,「もう子どもじゃな
い」と言われて,大人の振りをすると「まだ,大
人じゃない」と言われる。だったら,子どものよ
うにしていればいいのかと思うと「もう子どもじ
ゃない」と言われる。「どっちなんだよ」と思う,
これが青年期である。
青年期は国・時代によって長さが違う。戦前の
日本のように国力がそれほどなかった時は,若者
たちを遊ばせておくわけにはいかず,小学校にい
たころから,労働力として期待されていた。そう
いう国では,青年期がとっても短い。
祈ることに慰めを見いだす人がいるのは
そのためでしょうか,神は無言だからです
助言したり,調整しようとしません
神は聞くだけで
悩みの解消は自分に任せてくれます
だから,あなたもどうか黙って
私の話を聞いてください
話したかったら,私が話し終えるまで
少しだけ待ってください
-2-
反対に現在の日本のように比較的豊かな国で
は,大学や専門学校に行く子が9割,最近では大
学を出てからも留学,あるいは別の専門学校や大
学院に進むという形で,なかなか就職していかな
い。自分の可能性を求めて,さまざまなモラトリ
アム(執行猶予)を楽しんでいる。この時期を,
青年期と呼んでいる。青年期を30歳という人も,
35歳という人もいる。社会学的な青年期の概念
があるから,この先40歳ぐらいまで青年期があ
るかもしれない。
子どもが思春期に入ったなあと,親が実感する
のは,どんな時だろうか。母親は自分の男の子に
それを強く感じる。
◇小学校1・2年の頃
・母親のことが大好きで,後ろをついて歩く
・学校であったことをいっぱい話したがる。
◇小学校3・4年の頃
・友達や学校,先生のことなどについて,聞けば
答えるが,聞かないと何も話さなくなる。
◇小学校の5・6年の頃
・とっても簡単になり,「別に」「普通」「微妙」
という3つしか返事がない。
・本当は,何も聞かれたくないが,返事をしない
と母親が不機嫌になる。仕方がないから「別に」
「普通」「微妙」と答える。
◇中学生の頃=思春期ど真ん中
・全身からオーラを出し,「寄るな」「触れるな」
「関心もつな」「絶対部屋に入るな」というア
ンタッチャブルなサインを送る。
女の子は,異性である父親にこうしたサインを
おくる。
◇小学校低学年の女の子
・父親に対して抵抗感がない。
・父親の膝にちょこんと腰かけ,テレビを見なが
ら「お父さん」と言ってくれる。
◇小学校中学年の女の子
・もうすでに父親を煙たがる。
例えば,煙草を吸っている父親を,近くにある
ものを使ってあおぎだす。タバコが煙いのでは
なく,実際は心の中で「存在が邪魔。そこにい
ることが許せない。本当にうっとうしい。」と
いうサインを送っている。
◇小学校高学年の女の子
・ストレートに父親に向かって,嫌う言葉を言う。
「臭い。臭う。加齢臭。エッチ。変態。気持ち
なま
悪い。歩く生もの。粗大ゴミ。」
本来,子どものボキャブラリーの中にはない言
葉でも,言うことで母親が喜ぶことを先読み
し,代弁して言っている。
◇中学生
・言葉よりも明らかな行動で,父親への毛嫌いの
感情を示す。
例えば,父親の入浴した後の湯船には入らな
い。父親の使った後のトイレも使いたくない。
-3-
洗濯機に,自分と父親の下着が一緒に入ってい
ると,台所から菜箸をもってきて,父親のもの
だけつまみだす。
どうして,男の子は母親に,女の子は父親にこ
うした態度をとるのかが,思春期の問題である。
大人の体に子どもの心がのっている状態のため,
本来の子どもの心ではなく,そこに芽生えつつあ
る性衝動が,こんな意識をもたらすのである。
男の子にとっては,母親の中に女性を感じてし
まう。自分でも未知の領域に,母親の中に女性を
意識する自分がいる。でも,信じたくない。
命の電話にかかってくる,中学生の男の子から
の相談の中で,母親との近親相姦の相談が非常に
多い。実際に起こるのはごくごくまれではあろう
が,この数の多さは,この時期の男の子たちが母
親に女性を感じてしまうことを意味している。で
も,こんなことは友達にも話せないし,自分の中
でどう処理していいか分らないとき,一番簡単な
のが電話相談である。しかも,この時期の子ども
たちは,大人に対して素直に話せないので,悪ぶ
って相手を困らせるような表現で話をする。対応
する電話相談員が,こうした子どもたちのからく
りさえ分かっていれば,「この時期に,そういう
夢を見たり想像したりすることは,おかしいこと
でもなんでもない。それは,大人になっていく階
段だよ。」と答えてやれば,「そうなんだ。」と安
心して,電話を切ることができる。こうした電話
相談がたくさんあるという事実が,この時期の男
のたちの心理を突いている。
女の子も一緒である。女の子は,父親にオスの
要素を感じてしまい,近親相姦的なイメージが心
の中に浮かぶ。そんなこと思いたくないけど,浮
かんでしまい,父親がなんとなくエッチに思え,
危険に感じる。そのため,「そばに寄るな。近づ
くな。あっちへ行って。」ということを言い続け
る中で,自分を守り近親相姦タブーを避けようと
している。
これは,自然な営みであるから,この時期はそ
っとしておくのが,一番いい。子ども自身が成
長・成熟を遂げてくると,男の子も女の子も,母
親・父親と和解する。この時期は,だいたい大学
生になってからである。
大学生になると和解が進むのには,二つの要素
がある。一つは,大学生になり就職活動をしたと
き,あらゆる企業から面接のたびにけんもほろろ
に扱われる。誰からも見捨てられるような存在で
しかないという,ありのままの現実に向き合うこ
とになる。そのとき,父親を見ると,この厳しい
社会の中で,ちゃんと一生懸命仕事をしてお金を
稼ぎ自分たちを養ってくれているという現実と
向き合うことになる。
もう一つの要素は,大学生になるまでに女の子
たちも恋愛を経験する。性とは何か,男とは何か
ということが,だいたい見当がつくようになる。
そういう意識で,ふと父親を見ると,すでに生殖
能力をもたない,哀れな老人の域に達している。
そして,父親は優しくしてあげなくてはいけない
存在となっている。
せいぜい中学・高校の6年間を,少し距離を取
ってやると,子どもたちも楽に過ごせるのではな
いかというのが,私の経験である。
思春期というのは,第二の分離固体化の時期と
いう。第一の分離固体化の時期というのは,だい
たい1~3歳の頃で,この時期の子は,物理的な
意味で,赤ちゃんが母親から自立して,自分で行
動するときである。
第二の分離固体化の時期は,精神的な意味で親
から子どもが自立する時期である。思春期におい
て,子どもがそれほどの大きな問題もなく通過す
る場合と,思春期に子どもが大きくつまずく場合
がある。それは,最初の幼児期における親子関係
が,どこまで基礎工事として丁寧になされている
かに絡んでくる。
幼児期においてさまざまな虐待,ネグレクト,
あるいは過大な期待を背負っている場合,思春期
において子どもたちはどう親子関係を取ってい
いかということで,大きな問題を抱える。特に,
中学生になって,いわゆる性的に相当早熟な状況
になり,援助交際など性非行に走る女の子の場合,
背景に何らかの間接的・直接的性虐待があると理
解してあげることが重要である。また,親が愛情
を示してくれないから,思春期に入って異性に母
親的なスキンシップを求める場合がある。周囲か
らみたら援助交際に見えるが,本人にしては,た
だスキンシップを求めているにすぎないという
ことがままある。これなどは,幼児期の親子関係
が,思春期において病理的な現象を示すという際
立った例だといえる。
◇中学生のこころの健康
5年間カウンセリングに出向いた学校で,毎年
中学生のバウムテストを実施した。その結果,一
番驚いたことは,本当に未成熟,未熟なことであ
る。大学生で同じテストをすると,最近増えてき
ているが,ちょっと問題かなと分けられる大学生
が,3~10%ぐらいいる。
同じ基準で中学生のバウムテストを健康・不健
康に分けると,70~75%が不健康になる。女の子
を比べると,はるかに男の子のほうが,健康度が
低いし,未成熟である。
今の中学生は,小学校3・4年生が学生服を着
て中学校に来ているようなものである。この子た
ちは,自分の心の中にあるものを,言葉にして表
現することはできないだろう。そのため,何かあ
るとすぐに攻撃・行動に出てトラブルも多いし,
衝動的になりやすいという傾向があると考える。
コラージュ療法という方法で,健康度を図って
いる先生から,やはり,大学生・高校生・中学生・
小学生の中で,中学生のコラージュが一番不健康
だときいた。
コラージュ(切り貼り絵)療法
あらかじめ,人・物・動物・風景などをそれぞれ
切り抜きして,一枚の作品を完成させる簡単な自己
表現方法で,その過程で心がいやされる技法
中学生のコラージュは,人物が空を歩いていた
り,空に寝ていたりして,大地から浮遊している。
それだけ,どの年代よりも現実から遊離した表現
が多いという特徴がある。もう一つの特徴は,人
物を表現するときに,人を半分に切って,右側を
男性・左側を女性,または顔は男の人・胸は女の
人・腰回りは男の人というように,男女のパーツ
を合成してつくる作品が,とても多い。この時期
の中学生が性というものに対して,同一性障害を
起こしているか,そうした不安を抱えていること
が,こんな表現になっていると考える。すると,
何故この時期の子のバウムテストが,こんなに不
健康なのか,一つ説明がつけられる。
中学生の不安定な精神状態を説明するのに,対
人恐怖症がある。精神医学の領域では,中学校2
年生の男の子が対人恐怖症の発症のピークを迎
えると,昔からいわれている。バウムテストを見
ると,他の時期にはあまり見られない思春期特有
のバウムが見られる。一クラス40人に2人ぐら
い,木に影をつけるのである。影ではない方の木
は,その子の心を表わし,影の方は思春期の心を
表わしていると考える。
中学生になると男の子は,性衝動の高まりから
多くの場合マスターベーションを経験する。心は,
その行為を不潔・良くないと拒絶するが,一番衝
動が激しいから,いくら禁止しても体が勝手に動
いてしまう。それが,心と体の分裂ということを
意味し,この表現に表われていると考える。
今までは,体は必ず自分の思う通りになってき
たのに,コントロールできないもう一人の自分が
-4-
いるという不安・恐怖を感じている。こんなこと
を人に知られないようにするために,緊張感の中
で過ごしている彼らは人の目がとても気になる。
しかし,秘密をもつということは,とても大事
なことでもある。誰にも話せない秘密をもつこと
によって,初めて自分ということを自覚する。自
分と向き合うことは,成長への大きな要素でもあ
るのだが,秘密をどうしても抱えきれない子が,
対人恐怖症という症状になりがちである。秘密が
自分から漏れてしまう(自我漏えい)不安が対人
恐怖症をつくっていると考えている。人の目が怖
いという他者視線恐怖である。
重症対人恐怖になると,自己視線恐怖になる。
自分の目を見ることで,自分の考えがすべての人
に伝わってしまうのではないか,伝播してしまう
のではないかという自我漏えいの不安が,この病
気をつくっていると理解すると,分かりやすい。
これらの中核にあるのは,うまくコントロール
できない自分の中の異質な性衝動というものと,
自分がどう付き合っていけばよいか分からない
ということの表れである。
対人恐怖症になった子に,
「自然なことであり,
成長の中でみんなが通過すること,だから,あま
り自分を変な人間と思わなくてよい」という説明
をすると,とても安心した顔をする。
【思春期危機のさまざまな姿】
精神病理:思春期妄想症,自我漏えい,セネストパ
チー(身体違和感),自己臭,醜形(貌)恐
怖,重症対人恐怖,自己視線恐怖,思春
期やせ症,摂食障害
みんなが自分のことをおかしなやつだと言っ
ていると妄想的になることを,思春期妄想症とい
い,分裂症の妄想症とは違う。思春期妄想症は,
思春期に限って起こることで,思春期を通過すれ
ば,この病気は自然と治っていく。もちろん中に
はそのまま統合失調症になる人もいるが,多くは
思春期で終わる。ある意味,思春期は精神病理の
宝庫といえる。
思春期危機には,行動化もある。
【思春期危機のさまざまな姿】
行動化:自己破壊衝動(リストカット,薬の多量服
用,シンナー嗜癖,覚せい剤),他者攻撃
(家庭内暴力,陰湿ないじめ,ストーカー
行為),暴走族,喧嘩,性的逸脱行為(性的
虐待の結末),性への耽溺
これらの問題行動は何故起こるかというと,秘
密を一人で抱えていると,秘密の衝動がどんどん
大きくなり,心の中で巨大なモンスターに変わる。
そのモンスターが,その子に破壊的衝動を引き起
こすが,彼らはどう処理していいか分からない。
自分の中の破壊衝動と向き合うために,この時期
-5-
の子ども達はさまざまな行為をする。例えば,残
酷なシーンの出てくる戦争映画や戦闘シーンの
あるゲームなど,自分が経験するよりもはるかに
強烈な刺激を自分の中に注入することで,自分の
中の衝動性と向き合い,自分の中のモンスターを
一生懸命中和・解毒している場合もある。
大人たちの目から見たら,何くだらないことを
やっているのだと思うが,彼らは彼らで必死なの
である。もし,それをしなかったら,どうなるか。
その最も典型的な例が酒鬼薔薇聖斗である。あの
少年は,自分の中のモンスターと戦い,最後はモ
ンスターに乗っ取られてしまったのである。
このように考えると,親たちによって過保護に
守られ,危険なこと・危ないことを全く経験せず
にきてしまっている今の子たちに取っては,思春
期という時期を通過することは,とても不利なの
である。
私は,小学校の帰り,カエルのおなかを膨らま
せて解剖したり,足をザリガニ釣りの餌に準備し
たりした。日常の中で,こういう生活を送ってき
た我々からみると,自分の中の衝動性や攻撃性と
いったものを,自分の中で飼いならしてきたわけ
である。野生とか,自然とか,荒々しさといった
ものを,自分の生活の中で経験して飼いならして
きた我々と,バーチャルな世界だけで戦いゲーム
に明け暮れている子ども達,どちらが本当に健康
なのか微妙なところである。
子ども達
のすること
には,必ず意
味があると
分かって指
導すること
が重要とな
る。子どもた
ちは,今の環
境の中で自分の中の攻撃性・衝動性を処理するた
めに,バーチャルの遊びをしていると考えると,
単につまらないことと遮断するのでは,子ども達
は納得しないのである。
友達をつくれず,孤立・孤高する,引きこもっ
ている子は,爆発的・破壊的行動に走ることがあ
る。いい子・目立たない子が,いきなり尊属殺人
とか,マスコミを賑わす事件を引き起こすことが
あるが,無理していい子をしてきた子たちが解離
を起こし,こうした行動になるということである。
では,この思春期危機をどう乗り越えていった
らよいのか。一番大事なことはチャムシップとい
って,同性・同年代の仲間と秘密を共有すること
である。秘密を共有化することは,破壊衝動を無
毒・解毒・中和することにつながる。しかし,今
の中学生たちは,このチャムシップがなかなか持
して,口働き・手働きはしないということ。
てない。学校が終わればすぐに家に帰り,それぞ
れが塾に通う。その中で,みんなが蛸壺化されて
いって,こうした問題を一人一人が自分で背負う
しかなくなっている。それが孤立化や暴走化につ
ながっているのかと考える。
◇思春期と攻撃性
中学校ではいわゆる非行・乱暴な子たちに対し
て,その行動をコントロール・制御しようという
動きになり,彼らの破壊的・衝動的な行動を押さ
えることに力を注ぎがちだと考える。でも,この
時期は衝動性が非常に高まる時期なので,押さえ
ようとすればするほど逆に反発されることが多
い。一番大事なことは,彼らの破壊衝動・攻撃衝
動を,どうやって社会的に承認される方法で表出
させてやるかということである。全身全霊で打ち
込める対象に燃焼させるようなことが,どこかで
模索できないかと考える。ちょっとでもタガが緩
むと暴走するのも,この子たちの特徴であるので,
手綱を引き締めながらも,がんじがらめにするの
でなく,どういう形の表出方法があるかというと
ころを模索してもらえるとありがたい。
ある学校の生徒指導は,それはこわい先生で,
鬼と言われていた。でも,不思議なことにその先
生はヤンキー系の子たちに人気があり,卒業後も
憎まれ口を言いながら,学校に会いに来る。口々
に,学校が面白くない,就職先でトラブルを起こ
したといって,その先生に相談している。それは
なぜかというと,その先生がこの子たちの裏事情
をみんな知っているからである。「問題行動を起
こすことは絶対に許さないが,そういう行動をと
る裏には親の虐待・母親の不倫がある。これだけ
のことがあったら,ああいう行動にでても仕方が
ないと思っている」と常々話していた。この人は,
裏事情をつかんだうえで子ども達に向き合い,彼
らが暴走せざるを得ないだけの背景をみんな分
かっているという心の深さがある。もちろん社会
的に認められる方法が一番いいが,認められない
方法で表現する子たちにもそれなりの理由があ
ることを,どこかで認めている。行為は憎むが,
その人格は否定しないというスタンスが,こうい
った子たちには必要であろうと考える。
◇思春期の子どもへの対応
最後に,子どもたちが安心して思春期を通過す
るために大人たちができること,できないこと,
してはいけないことという話をする。
まず,基本的に思春期の子に対する親の態度で
ある。子どもたちが異性の親に距離を置き,何か
話しかけても拒絶しようとする,こうした拒否的
な態度をとる場合,親ができることは,信じて見
守ることである。見守るということは,気働きは
-6-
気働き=子どもの心がどうなっているか,思春期を
どう迎えているか,どんなところに思春期
の兆候が表れているかということを,アン
テナをいっぱい張り巡らせて,あれこれ思
いめぐらすこと。
口働き・手働き=口で何か言うとか,自分の思いど
おりにならないとすぐにたたくこと。
子どもは親があれこれ指図・干渉することを,
とても嫌がる。親自身が自分の子どもを信じてい
ないから干渉する,言っても聞かないから手を出
す。そうする時,子どもは「何故信じないのか」
と心底親を軽蔑する。何故信じて黙って見守らな
いのかは,親の度量,親のキャパシティーがない
からである。子どもは,そういう親のキャパシテ
ィーの無さがいらつく。はっきり言って子どもが
信じられないのでしょうということを,子どもは
親に伝えている。
そんな時,子どもの心の中で起こっていること
が予測できていると,安心して待つことができる。
そのためには,自分自身の思春期を振り返ってみ
ることも一つである。親に何も言いたくなかった
し,親のあんなところこんなところが嫌だったな
ど,そういう自分の思春期を振り返ってほしい。
それでも対応困難な時は,専門家の門をたたいて
みることである。自分たちにできることはやるが,
できないときは中学校のスクールカウンセラー
など外部の専門家のアドバイスを聞くことも,と
ても大事なことである。
子どもたちが思春期を迎えるとき,親としてど
う対応したらよいのか。自然体で性の受容とその
実現を,モデルとして子ども達の前で堂々と見せ
ることである。つまり,夫婦は仲が良いというこ
とを,子ども達に自然体で見せることだと思う。
中には誤解して,「うちはオープンで18禁のビ
デオを子ども達の見えるところに置いてある」と
いう人がいるが,これは間接的に性虐待である。
子どもが年齢に相応しくない過激な刺激を見る
ことは,子どもを性虐待することと同じである。
大人はちゃんと管理しなくてはいけない。
むしろ性というものを親が過剰に拒否する方
が問題である。母親が性というものを過剰に排除
する中で,自分の性が受け入れられなくなり,摂
食障害になるという子を病院で数例見てきてい
る。自然さが一番大事なのである。過剰な露出で
もなく,自然な営みの中で子ども達に伝わってい
くことが,思春期の迎え方として大事である。
(第2回教育サロンにおける講演の概要です。
)
パソコンを稼働させたまま,夕方の6時まで空き
時間や休み時間に少しずつ修正を加えて,新しい
通信を完成させたとします。12時間ずっと自動
バックアップが働き,70回以上の書き込みがさ
れることになります。こんな使い方をすると③数
ヶ月であっという間に書き込み限界数がきて USB
メモリの寿命を迎えることになります。
このように, USB メモリの使い方を工夫しない
と,③のようにあっという間に使用限界がきてし
まうことがあります。
USBメモリは壊れやすい?
7月号の所報にも掲載した USB メモリのトラブ
ルが連続しています。そこで,USB メモリについ
て,調べてみました。
*USB メモリの寿命について
一般的に USB メモリの書き込み回
数の上限は数千回~数十万回とい
われています。かなり差があるのは
使われている部品の違い,製造時期
や製造プロセスの違いによるそうです。書き込み
回数の限界については昨年度の11月号に詳し
く解説しました。
いったいどれくらいなのか,次のように計算し
てみました。まず,USB メモリはその特徴上デー
タの読み出しのときには,負荷はほとんどかかり
ませんので読み出し回数は無視します。
書き込み限度数を一万回とし,一日に更新また
は 書 き 込 む文 書 を 十 個と し ま す 。そ う す る と
10,000÷10=1000 つまり,1000 日,①約3年は
大丈夫ということになります。
しかし,Word などのソフトを利用していると自
動バックアップという機能がはたらきます。これ
は,何らかの不具合が起きて作成中のデータが異
常を起こしたとき自動バックアップしたデータ
で復元しようという便利な機能です。通常は意図
的にオフにしない限り,この機能は働いています。
そこで,この機能を働かせたまま USB メモリに文
書などを直接書き込んだり,読み込んで修正した
りしたときについて,計算してみましょう。Word
の自動バックアップは,標準で10分に設定して
ある場合が多いようです。この機能は特に文書な
どに修正を加えなくても,パソコン上に文書を読
み出しているだけで働きます。
書き込み限度数一万回,文書を USB メモリから
パソコン上に読み出してる時間を一日5時間と
します。通常の書き込む文書1日10個とし,5
時間で自動バックアップされる回数30回,合計
40回よって,10,000÷40=250 つまり,②250
日で限界になります。
または,朝8時にパソコンを
立ち上げ,学級通信の作成をす
るために USB メモリから以前の
通信を読み出します。そのまま
*USB メモリの故障の原因について
USB メモリはその使用方法上,パソコンへの抜
き差しが多く繰り返されます。すると当然,パソ
コン側の USB ポートと USB メモリの端子は摩耗し
たり,物理的にガタがきたりして壊れることがあ
ります。最近ではユーザーの増加から,パソコン
の USB ポートや USB メモリの端子を1万回は抜き
差しに耐えられるものにしている製品も出てき
ていますが,まだまだ千回程度の耐久性のものが
ほとんどです。
先生方の使用しているパソ
コンも USB ポートの故障,部
品の破損はパソコンの故障原
因の上位になっています。
≪こんな時に壊れやすい≫
・ハードウェアの安全な取り外しを忘れ,ノート
パソコンから USB メモリを取り外した。
・再度差し込んだが,「このフォルダは空です」
と表示されるようになった。
・パソコンの本体に USB を差し込んだ状態で本体
を傾けたり,落とししたりして,USB メモリの
端子部分が折れてしまった
・USB メモリをポケットや鞄の中に入れたまま,
押しつぶして,メモリの接続部分が曲がってし
まった。
・接続はできるが,データが読み出せない。
では,どんな利用方法が良いのでしょうか。ま
ず,USB メモリを作業用に利用しないこと。つま
り,一時保存,データの移動用に使うことを原則
として,普段はデータをサーバの適当なフォルダ
内に置き,そこにアクセスして作業を行うことで
す。次に,抜き差しや持ち運びは丁寧に行うこと
です。
しかし,それでも故障・不具合は起きてしまい
ます。また,小さなメディアですので紛失もない
とは言い切れません。大切なデータは,媒体が何
であろうと,必ず異なる媒体にバックアップ保存
をしておくことが何より重要になります。
-7-
?!子どもを悪くする法12ヶ条!?
不登校の子どもを動かす友人からの誘い
アメリカのデンバー少年裁判所が
発表し,親に向かって警告を発した
ことがあります。少年犯罪の原因と
背景を分析し,
「こんな育て方をすれ
ば,必ず,子どもは非行に走る」と,
逆説的な言い方で戒めたものです。
先日,研究所で第4回「ほほえみ保護者会」を行い
ました。この会は,研究所の適応指導教室に通う通級
生・来所相談生の保護者やこれまでに相談されたこと
がある保護者の方が集まり,わが子の様子や親の思い
を交流し合うものです。今回は,
『友人からの誘い』が
話題となりました。
通級生A男の保護者は,
「学校へ行くことはできない
けれど,友達は何人もいます。夏休み,友達から電話
がかかると,
『わかった。行くわ!』と言って,地域の
行事に出かけていましたね。
」
とおっしゃっていました。
また,通級生B男の保護者は,
「夏休み中,研究所の学
習相談日には行けなかったけれど,中学校の友達とは
よく遊んでいました。その子と一緒に,時々中学校に
行って,担任の先生とも会っていたようです。
」と語っ
てみえました。ある中学校に訪問相
談で訪れたおりには,ほほえみ相談
員の方から,
「今までずっと家にいて,
全く学校に来なかったC子が,相談
室登校の子に誘われたことで,2学期から急に相談室
登校を始めるようになり驚いています。
」と,うれしい
話を聞きました。
不登校や不登校傾向にある子どもたちの多くは,友
達関係を結ぶことが苦手で,時として仲間とのつきあ
いがストレスとなります。しかし,心を許せる友人も
いるということが,これらの話から分かります。そし
て,A男・B男・C子の事例から,不登校や不登校傾
向にある子どもが行動を起こすとき,その子を取り巻
く様々な環境(資源)の中でも,
『友人からの誘い』が
強く影響しているといえます。教員が家庭訪問をした
り相談室で声をかけたりすることは,
子どもの心に
「学
校や教室へ復帰しなくては」という葛藤を生んでいる
ことは確かです。しかし,最後の決め手は,
「心から安
心できる友人の存在」かもしれません。
不登校や不登校傾向の子ど
もの友人関係をもう一度確認
し,
『友人からの誘い』作戦を
行ってみてはどうでしょうか。
-8-
第1条.幼いときから冷たくあしらうこと。スキンシ
ップとか遊び相手になるのは禁物である。
→(情緒障害発生法)
第2条.欲しいといえばホイホイと買い与えよ。また,
うるさく細かく親の思うまま世話を焼け。
→(過保護・過干渉のすすめ)
第3条.子どもの間違いや失敗は理由を問わず叱りつ
けよ。殴ったりひっぱたくことはいっそうよろし
い。
→(叱り方の原則の否定)
第4条.食卓のだんらんは家庭から一掃すべし。子ど
もの話題や関心など他愛ないもので無駄である。
→(無関心のすすめ)
第5条.子どもがどこで何をして遊ぼうが気にしない
こと。遊び相手についても全く関心をもってはいけ
ない。
→(不良感染のすすめ)
第6条.できの良い兄弟やよその子と比較して「お前
はバカだ,誰々を見習え!」を連発すべし。
→(劣等感の助長法)
第7条.問題解決は感情で処理し,暴力に訴えるか集
団の実力を悪用するのが手っ取り早いことを子ど
もに示せ。
→(短絡的問題解決のすすめ)
第8条.子どもが良いことや努力をしてもほめず,む
しろ,ごまかしや裏切りなど悪事をうまくやったら
忘れずほめること。
→(ほめ方の原則の否定)
第9条.子どもの前では決して夫婦間の意見を一致さ
せるな。父親は難しい問題からうまく逃げよ。
→(しつけ基準の混乱のすすめ)
第10条.お金こそが人生の最高目標であると身をも
って教え込むこと。宗教や精神生活を軽蔑するよう
にせよ。
→(拝金主義・物質主義の奨励)
第11条.子どもの前で警察や役所や学校,特に先生
の悪口をいい,社会のきまりや公共機関,教師への
敵意を植え付けよ。 →(反社会性の学習助長法)
第12条.もし,以上のすべてを忘れても,次の一つ
だけを心がけるならば,あなたの子どもの非行化は
効率よく進むだろう。
「いつも夫婦仲悪く暮らし,憎しみ合い,できれば
不貞をはたらくこと」
→(モデルの否定)
この12ヶ条を学校現場にあてはめ,教師の子ども
への接し方を振り返ってみたいものです。また,保護
者との懇談会などで話題にしていけるとよいのではな
いでしょうか。