輪中モデルによる水園都市 - 東海大学工学部建築学科

輪中モデルによる水園都市
指導教員 杉本 洋文 教授
7ACBM006 坂倉 忠洋
2-3.目指す都市像
1.背景と目的
1-1. 河川と都市活動の関係性の変化
当敷地は県央地区の新たな交通拠 点であり 、様々な交
日本の河川は江戸・東京に見られるように、交通輸送手段
流が発生し、地域の姿を変えて行くと考えられる 。そこ
としての舟運を発達させ河川空間を生活の中心に置いてきた
で、企業や大学の研究機能が集積している 立地特 性を活
が、陸上交通の発達や水害の深刻化により舟運の姿は消え
かして、21 世紀の大きな課題である「環境」をテーマと
人々の生活は河川に背を向けるようになった。
した研究創造都市 を目指すべきと 考える。寒川倉 見地区
1-2. 都市化による水害と治水計画
は、駅機能と既存の都市を融合させる都市づくり を目指
近年の水害の原因は、都市化の進展による都市型洪水が多
す。平塚大神地区 は、都市そのも のが社会交流 システム
く見られる。また、ヒートアイランド現象による短期間局所
を備えた環境実験都 市モデルとなるように 、農地や水系
型集中豪雨も増え、防災面から都市構造の見直しが求められ
を活かした環境づくりに職・住・学・遊が備わった親自
る。現在は土木技術による河道地中化などの治水計画ととも
然型の都市デザインによって河川と共存する「水園都
に人工的な親水空間が整備されているが、自然水害も増えて
市」を提案する。
いる。これからの都市づくりでは立地する自然環境を把握し、
主要な都市づくりの基本方針は以下の通りとする
自然環境条件を活かした親水、治水、都市整備などの一体的
■親自然型の環境交流都市
な計画を立案するべきである。
■シームレスな交通ネットワークシステムの構築
1-3. 目的
■職・住・学・遊の融合都市
本修士設計では、相模川
■水・風・太陽等自然エネルギーの環境循環型都市
沿いの寒川町倉見地区への
■サスティナブル建築の導入
東海道新幹線新駅の設置に
3. 都市構成の手法
伴う、平塚・寒川地区の一
Fig.1 計画地と周辺交通図
マスタープラ ンは、イアン・マクハーグたちによる 都
体化開 発計画「ツインシティ 計画」をふまえ、水を活か
市解析 手法「レイヤ ー・ケーキ」を参考にして計画し、
した開発が求められている平塚地区を対象敷地とし、
本計画 の各レイヤー を整理して、多重レイヤー を相互に
(Fig.1)その敷地の持つ自然的要素を抽出し、都市構造を可
組み合わせて多様な場所を発生させる計画手法とした。
視化させながら 、個性をつくりだ す水と緑、生活環境が
共存する新たな都市デザインを提案する。
2.調査・分析
■景観
■地形 ■水ネットワ ーク ■緑ネットワー ク
■交通ネットワーク ■土地利用 ■建物
(Fig.3)
かつて水と共生するために 生まれた「輪中」の空間モ
2-1. 相模川流域の河川利用と治水対策
デルを用いて、地域条件を考慮して計画を行う。
相模川は、かつて より多くの水害に見舞われ、ダム建
設や都市型洪水対策「safety リバー50」が計画された。
しかし 、これらは 人工的な土木技 術で、地域特性 は考慮
してお らず、今後の降雨の質的変化を考慮した水害に対
応して計画していかなければならないと予想される。
2-2. 対象敷地周辺の土地利用
平塚側では住宅地 や水田が広がり、寒川側では工場や
倉庫などが立ち並ぶ。計画地付近の水路の変遷を見ると,
平塚側 では多くの水路が残ってい るのに対し、寒川側で
は市街化により多
くの水路が暗渠化
されているのが分
かる。(Fig.2)
Fig.3 環境を軸とした重層レイヤー概念図
Fig.2 対象敷地付近の水路変遷図
Water Park City Development adopted WAJYU Model
SAKAKURA Tadahiro
4. マスタープラン
4-1.景観
対象敷地内において大山軸・富
士山軸・高麗山軸の3本の景観
軸がある。寒川からのアクセス
Fig.4 敷地内景観軸の分布
軸を富士山軸沿いに設定し、メイン軸とする。(Fig.4)
Fig.8 土地利用形成図
4-2. 水
4-6. 建物計画
既存の水系を利用した水利計画を立案し、計画地内 の
現状では堤防や無秩序に配置された建物により 場の特
河川間 に調整池を設け、計画地内 外の川の流れをコント
性である景観軸や河川空間との連続性が感じられ ない。
ロールする。そして 、調整池内 に輪中型の点在する島を
そこで 、建物の構成で富士山軸 と河川空間 を意識したス
構成し、親自然の都市環境をつくりだす。(Fig.5)
カイラ インやビスタ を形成する。また、輪中の形成によ
ってで きた残土を再利用しスーパ ー堤防化するこ とで、
寒川や河川敷と緩やかにつながり 、場の特性を可視化す
ることができる。(Fig.9)
Fig.5 自然の川を利用した輪中空間の形成
4-3. 緑
計画地内は、線を形成する道路沿いの街路樹ネットワ
ーク、面を構成する緑地帯や公園等のネットワー ク、河
川敷を使ったレクレ ーション 機能を持った緑地などを結
Fig.9 建物構成概念図
5. 都市の更新
び付けた緑のネットワークを形成する。(Fig.6)
敷地が持つ自然環 境条件を活かして都市空間 を構成す
ること で、河川をはじめとする 周辺環境と調和しながら
更新することが 大切だと考える。そして、都市の変革に
対しても柔軟に対応しながら 、持続可能な開発を行うこ
とがで き、場の力を保持したまま 将来の都市像を構成す
Fig.6
緑のネットワーク形成図
ることが大切となる。(Fig.10)
4-4. 道
計画地には幹線道路 R129 が通り、農地を中心とした道
路体系 である。これに、新幹線駅 を結ぶ道路と回遊道路
を合体させた循環する内ループと、既存の外周道 路を結
ぶ外ループの2つの周回道路 をつくる。さらに徒歩・自
転車の専用道、水路には水上交通 を設置し、循環バスな
どの交通手段によっ て、それぞれの交通手段 がシームレ
スに乗り換えられる道路体系とする。(Fig.7)
6. 結果
Fig.10 場の力により構成された空間パース
本修士設計は、場の力を利用した都市構成手法において、
かつて 農生活と水とが共存するた めに生まれた輪中シス
4-5. 土地利用
Fig.7 水・陸交通ネットワーク形成図
既存の土地利用 は農業、居住、河川敷の3つに大別で
テムを用いることに よって、河川と共存する都市デザイ
ンの都市像を提示できた。
きる。それに対し寒川からのメイン道路上に中心街がで
参考文献
きる。そこから 各地域へと連続性 を持たせた土地利用を
1)「建土築木2 川のある風景」内藤廣著/鹿島出版会/2006 年
行うことで周辺環境に調和した都市空間ができる。(Fig.8)
2)「水辺から都市を読む」陣内秀信他著/法政大学出版局/2002 年
3)「舟運
都市 水辺からの都市再生」陣内秀信他著/鹿島出版会/2008 年
2008 年度修士設計梗概 東海大学大学院工学研究科 建築学専攻